PTA法(ドッサリース農法)


第4章PTA法の考え方 

PTA法は、物質収支、エネルギー収支の全要素の施肥


第4.1章 一般的な肥料元素:NPKCaMg・・・何故COHはないのか?

第4.2章 堆肥や有機質資材:堆肥・有機栽培も遅効性NPK補給資材

第4.3章 低分子量有機物を供給する意図の栽培:低分子量有機物を施肥しても従来は微々たるもの

第4.4章 PTA法(ドッサリース農法)の第1の仮説:「低分子量有機物を作物が吸収する」

第4.5章 PTA法(ドッサリース農法)の第2の仮説:「吸収された低分子量有機物が植物体内で同化吸収される」

第4.6章 生物地球化学的循環から見たドッサリース農法

第4.7章 作物の成長過程に与えるPTA法(ドッサリース農法)の効果

第4.8章 日照不足による不作

第4.9章 植物が低分子量有機物を吸収する意義

第4.10章 生態系からみたドッサリース農法

第4.11章 光合成の時間的空間的移行(PTA法

第4.12章 植物の根の模式図

第4.13章 植物の養分の吸収についての見方

第4.14章 花咲じいさん:炭素肥料の手掛かりの一つ:果樹・庭木の例


最終更新日:2010-12-29


PTA法(光合成移転農法)の考え方

2つの口:光合成と吸収

有史以来、「吸収」を完璧に見落としていた!!


【肥料と言う側面からの見方】

1)ある種の低分子量有機物が吸収・同化されるのは、炭素肥料と見ることができる。

2)低分子量有機物の成分にCOHが含まれるなら、炭素、酸素、水素肥料と見ることができる。

3)ある種の低分子量有機物が吸収・同化されるのは、エネルギー肥料と見ることができる。

4)ある種の低分子量有機物が吸収・同化されるのは、光合成を経ない有機炭素の獲得と見ることができる。

5)植物の生長には「物質収支」「エネルギー収支」とが必ず成り立っている。

6)今までの農業は「物質収支」だけに拘っているが、何故か「COHの収支」を除外している。

7)今までの農業は「エネルギー収支」は全く考慮していない。

8)PTA法は、「COH、エネルギー」を含め、物質収支・エネルギー収支の全要素を施用対象の視野に入れている。

9)低分子量有機酸カルシウム塩は、高濃度の有機酸を作りやすい。

10)細胞膜を透過できる有機物は、水に溶け、電荷を持たず、分子量が小さい、ものが透過しやすい。


【植物という側面からの見方: 生長の2つの口】

1)これまでの、作物の生育は光合成によってのみ営まれていました。【これが間違い】

2)作物どころか、独立栄養植物についても光合成を唯一の有機炭素獲得源と考えていました。【これが間違い】

3)植物は、「光合成」と「吸収」との2つの生長のルートがありました。

4)「有機物の吸収」のルートは、光合成以上に植物を育てるもののようです。

5)完全に見落としていた「吸収」を機能させることで、収量が激増し、食味が大幅に向上しています。

6)光合成は、人が為すべきことはありません。祈るしかありません。

7)「吸収」は、人が補助しなければ機能しません。不便です。しかし、手当てをした分だけ応えてくれます。


家畜糞尿や有機廃物をそのまま投棄するよりも、厳密に殺菌分解してから耕地へリサイクルする方がはるかに経済的で、処理をする者にも、耕地へ利用する者にも、そして、このリサイクルを気付いていない消費者にも、より大きな利益をもたらしている現実があります。

PTA法(ドッサリース農法)は、この信じ難い現実を理解するための一つの考え方です。

快適な環境を維持し、集約された丁寧な農業が、野放図な農業よりも経済的に優位となっている事例を理解しようとするものです。

家畜糞尿や有機廃物の衛生的な処理に、生石灰CaOを混合し、分解する手法があります。環境保全や公衆衛生の面からは良いとは判っても高額な処理のため、ほとんど顧みられることはありません。

しかし、現実には、適切な条件の下では処理コスト以上の営農収益をもたらし、連綿と営まれています。


PTA法(ドッサリース農法)は、「低分子量有機物は炭素肥料のように振舞う」と考えることで、不可解な現実を解釈しようとするものです。

「低分子量有機物」とは、過去の光合成によって生産された有機炭素に他ならないものであり、「過去の光合成産物」と言えるものです。

有機物を「過去の光合成産物」と言うのであれば、私たちの周囲に、膨大な量の過去の光合成産物があります。

世界の耕地における炭素の固定量が「4PgC/y」程度と見積もられ、地球上の化石燃料を除く蓄積有機物は「≒2500PgC」と見込まれており、原理的には毎年の耕地の炭素固定量の600倍以上の有機炭素が私たちの環境に保存されています。

この膨大な量の過去の光合成産物を、現在の光合成と共に取り込んで農産物の収穫に結び付ける思想がPTA法(光合成移転農法)です。

もし、このような見方が自然の姿の一端を示すものであれば、世界中の耕地の生産性は飛躍的に高まることが示唆されます。

PTA法(光合成移転農法)は、その意味で「光合成のリサイクル」「光合成産物のリサイクル」と言い換えることもできます。


PTA法(光合成移転農法)は、従来の栽培では重要な位置を占めていた窒素・リン酸・カリ・或いはその他の必須ミネラル成分は、作物が必要とする全量を従来から利用されていた化学肥料(化成肥料)によって補います。

「PTA法(光合成移転農法)の炭素肥料」で、これらの従来の肥料要素を補う考えはしません。

従来通りの量を、従来用いていた化成肥料(化学肥料)で補ってください。

「PTA法(光合成移転農法)の炭素肥料」に、NPK等の肥料要素を混合することもできますが、PTA法では、事前の肥料の混合に格別の技術的な意義もなく、寧ろ、栽培全体を考えた場合には、「炭素肥料」と「NPKなどの従来の肥料要素」とを分けて管理することの方が、遥かに実状に合致しているものと考えるからです。


【原料と利用先が同じ】

上の図は、堆肥化処理と本サイトで紹介する生石灰処理との位置付けを示したものです。

大雑把にいえば、原料(家畜糞尿など)と最終的な利用用途(耕地)とは同じです。

大方の常識に従えば、「堆肥化処理」によって堆肥を生産して、耕地に利用します。

本サイトで紹介するPTA法(ドッサリース農法)では、原料(家畜糞尿など)を生石灰で分解してから、残渣を耕地に利用します。

原料を同じ用途に利用するのであれば、通常は、その中間的な処理は「安価で簡便」であることが望ましいといえます。

【堆肥化処理:常識的な処理形態】

原料として「家畜糞尿などの有機廃物」を想定した場合、安価に簡便に始末するには、通常、「堆肥化処理」が一般的です。

通常の適正な堆肥化処理は、家畜糞尿のような汚物であっても適切に汚染物質が低減若しくは除去されて、環境保全の観点から十分な処理と考えられています。

現在の堆肥化処理は、原料の有機物を好気性雰囲気に保持し、好気性菌の活動(増殖)によって原料の有機物を分解するもので、増殖の際の呼吸による発熱が堆積物に蓄熱され、堆積物の温度が上昇し、その温度の下で活発に増殖する菌が増えて原料の有機物を分解します。

原料の有機物が少なくなると、増殖量が低下し、同時に発熱量が少なくなるために堆積物の温度が低下します。

堆肥化処理施設の方式にもよりますが、2週間ほどの高温(約70℃)が続き、その後、40〜50℃の中温といわれる温度が維持されます。

この高い温度によって大腸菌やウイルスが死滅し、匂いや汚物感のない物質(堆肥)になるとされています。

耕種農業の現場では、更に、半年〜1年程度保管してから、「堆肥」として圃場に施用されます。

この堆肥化処理では、適切な水分条件(水分60%程度)に調整すれば、迅速に堆積物の温度が上昇して、生分解が促進されます。

高温発酵中の人的操作も0.2〜1回/日程度の攪拌で全体がもれなく高温条件の下に保持されるようにするだけでよく、極端に大規模なものでなければ、畜産業者が日常業務の合間に家畜糞尿を堆肥にすることができ、堆肥化施設さえ設置すれば、その後の経費は「燃料費」と「ブロワの電力料金」程度の費用で済むことから、比較的安価に処理できる方法です。

このようにして生産された堆肥は、緩効性肥料として幅広く利用されています。

多くの場合には、10a当り2トン程度の施用量が望ましいとされています。

ただ、完全な有機栽培では、栽培に要求される肥料成分量の全てを天然有機物によって充当しなければなりませんので、2トン以上の堆肥を施肥する場合もあります。

【生石灰処理:PTA法(ドッサリース農法)】

生石灰処理も、家畜糞尿のような有機廃物を耕地に利用する資材に転換するために行われる処理です。

家畜糞尿のような有機廃物に生石灰を加えて分解処理しても、その目的は、生成物を圃場還元して耕種農業に貢献することにあり、そうであれば、堆肥化処理の目的と変わるところはありません。

圃場に持ち込まれる物質は、元々、家畜糞尿に含まれていたものと生石灰CaOとだけであり、その他には格別のものがありません。

従来から、圃場にはカルシウムCaは施肥されていました。

それゆえ、原料の「家畜糞尿」と「生石灰(カルシウム)」とが圃場へ供給されるだけのことであり、生石灰処理は格別な資材を圃場へ供給しているものではありません。

その意味では、生石灰処理は格別問題のある資材を圃場へ持ち込むものではなく、普通に利用されている物質を圃場へ利用しているもので、その意味では、なんら障害のあるリサイクルの形態ではありません。

ただ、ほとんど人手を要さない「堆肥化によるリサイクル」に比べて生石灰処理は、かなり設備も手間も要する処理と思われます。

【現実には、安価な堆肥化処理でも経営の負担になっている】

家畜糞尿や野菜くずなどの有機廃物の常識的な処理とリサイクルは堆肥化です。

設備も安価で、処理の手間も比較的少なく処理経費も安価で、例えば、堆肥化施設に対して公的助成がなされれば、堆肥の販売益で処理経費を賄えるのではないか、との見込みもあり、もっとも数多く採用されている形態です。

ただ、現実的には生産された堆肥の販売益で処理の経費を充当できず、畜産の大きな負担となっています。

PTA法(ドッサリース農法)では、家畜糞尿や野菜くずのような有機廃物を、堆肥化処理に比べて遥かに高額な生石灰処理をして、その生成物を圃場に利用するリサイクルです。


第3図(再掲載) PTA法(ドッサリース農法)のフロー図


PTA法(ドッサリース農法)は、低分子量有機物を「炭素肥料」と考えて栽培する新しい栽培の取り組み方です。

但し、ものの見方が新しいだけで、同様の栽培は約30年も前から行われています。

法外もなく経費がかかり、早晩、姿を消すであろうと見られていた処理と栽培手法が25年以上も継続して営まれ、

訳もなく格別美味しい農産物を生みだし、しかも、収量が激増する。

その効果は食物ばかりでなく、庭木や樹木にもおよびます。 

PTA法(光合成移転農法:ドッサリース農法)は、この訳の判らなかった劇的な効果を解釈する一つの見方です。

その意味では、考え方は新しくても十分な実績に基づいています。

従来の優れた実績とは、

家畜糞尿のような天然由来の腐敗性有機物を生石灰で分解した残留物を「有機石灰質土壌改良資材」として施肥し、

幅広い作物において、著しい増収効果と、著しい食味の改善(美味くなる!)を重ねていたものを、

『炭素肥料』という別の見方を加えたのがPTA法(ドッサリース農法)です。

即ち、従来は「土壌改良資材」として認識されていた農業資材を「炭素肥料」という見方に変えたものがPTA法(ドッサリース農法)です。

ドッサリース農法は次の2つの事柄を仮説として設定しています。

  • 施肥された低分子量有機物が作物の根から吸収される。

吸収された低分子量有機物が作物の同化に用いられる。

結果として、土壌改良資材として施肥された資材の低分子量有機物は作物に吸収され、同化されるので「炭素肥料」とも言い換えることができる。

人の衣食住に例えれば; 「土壌改良資材」=衣住 :「肥料」=食

PTA法(ドッサリース農法)は、土壌改良資材から肥料に見方を変えたものです。

    従来の見方        ⇒  PTA法(ドッサリース農法)の見方

    有機石灰質土壌改良資材  ⇒  炭素肥料

    土壌環境の調整        作物に吸収され、同化


4.1 一般的な肥料元素:NPKCaMg・・・何故、炭素・酸素・水素COHはないのか?


これまでの耕種農業では、第1表に示されている必須養分元素16種のうち窒素N、リンP・カリウムKの3元素を主要な施肥元素とし、次いで、カルシウムCa、マグネシウムMgが副次的な施肥元素と考えられています。

そして、それ以下の成分元素(微量要素)については、土耕では稀にしか施肥しません。

勿論、水耕栽培では微量要素であっても適切に補給されています。

しかし、作物を構成する元素で最も占有率が高い炭素C、酸素O、水素Hの3元素について、施肥で補うという考え方は稀です。

勿論、研究のために炭酸ガス濃度を高めて栽培することは知られています。

しかし、露地栽培のような形態で、作物に積極的に炭素を補給する考え方は多くはありません。

一般的には、COHの3元素については光合成によって、周囲の炭酸ガスと水を利用して獲得できると考えられています。

従って、敢てCOHの3元素を肥料によって補う、という見方はしていないようです。

COHの3元素は、周囲の環境から得られるものとしても、仮に、意図的に補給することができるとすれば、植物(作物)はどのように変化するのであろうか、という疑問を議論される機会が少なかったように思えます。

「農業の生産性は低いのだから、COHの肥料を製造する経済的メリットがない」と思考が、それぞれの思考回路の中で完結して、決して外部へでなかったのかもしれません。

COHの3元素が肥料として可能なものであるか否か、とその製造コストが高いこと、及び、農業の経済的価値の生産性が低いこととは、まったく異なる次元の事柄であり、経済性の低さを根拠に、「COHの3元素の肥料としての可能性の如何」を云々するのは論外と思えます。

しかし、現実に、COHの3元素が炭酸ガス、水以外の形態、例えば、低分子量有機物として施肥した場合の植物(作物)がどのような影響を受けるかを検討した事例は多いものではありません。

ただ、有機物が植物に吸収されることは放射性炭素C(14)を用いて検証されているとの報告もあり、また、生態学の成書にもその旨の記載があります。このため、通常の独立栄養植物であっても、有機物を経根吸収することに格別の障害があるとは思えません。

即ち、最初の仮説の「施肥された低分子量有機物が作物の根から吸収される」という事柄は、仮説にも当らない当然の事柄かもしれません。


4.2 堆肥や有機質資材:堆肥・有機栽培も遅効性NPK補給資材


有機物を含む農業資材としては、堆肥や有機配合肥料が流通し、 これらには多量の有機炭素が含まれています。

とすれば、今日、普遍的に利用されている有機質資材とドッサリースとはあまり違いはないように見受けられます。

堆肥や有機質資材の場合には、含まれている有機炭素は高分子量有機物の形態が支配的な割合を占めており、これら高分子量有機物は作物の細胞膜(主として根の細胞膜)を介して直ちに吸収できない形態です。

とすれば、今日、普遍的に利用されている有機質資材とドッサリースとはあまり違いはないように見受けられます。

堆肥や有機質資材の場合には、含まれている有機炭素は高分子量有機物の形態が支配的な割合を占めており、これら高分子量有機物は作物の細胞膜(主として根の細胞膜)を介して直ちに吸収できない形態です。

勿論、堆肥や有機質資材の種類は膨大な数に上っており、その一つひとつを取り上げて云々することはできません。

しかし、概して、湿潤状態で平地に物理的に積上げることができる資材(堆積できる肥料:所謂、堆肥)であれば巨大な分子量の有機物からなるものといえるでしょう。

現在の堆肥や有機質資材は、その有機物が長い時間をかけて無機化するときに開放されるN・P・Kあるいは広範囲なミネラル成分が作物に吸収されるため、幅広い成分にわたって肥効成分を持続的に補給する資材と認識されています。

すなわち、実際の肥料に関する文献や資料によれば、これらの堆肥や有機質資材に含まれる窒素、リン、カリウムというような元素の割合の高低(高いほど肥効が高い)が数値として示されて、云々されています。

そのような観点からすれば、家畜糞尿のように窒素、リン、カリウムを多量に含む資材は有機肥料としてたいへん価値が高いものと言えます。

しかし、このような家畜糞尿に活性度の高い生石灰CaOを添加して、分解処理すると有機高分子物質の骨格に含まれる窒素原子は主としてアンモニアとして大気に揮発して失われ、最も重要な肥効成分であるN分が減少します。

リン酸もカルシウムと強固に結びついて即効性の肥効は失われます。

また、生物の細胞膜(リン脂質)のリン酸がカルシウムと結合するため、生体膜が消失して水溶性のカリウムを保持する機能がなくなるために、これをほ場に施肥するとカリウム分は速やかに流亡します。

それゆえ、窒素・リン・カリウム分に富む家畜糞尿といえども生石灰処理によって、その主要な肥効成分である窒素・リン・カリウム分は大幅に低下し、且、細胞が破壊されるために、「持続性」「緩効性」と言われる性質が失われます。

即ち、従来の考え方では家畜糞尿を生石灰で分解処理することは、本来備わっていた肥効を著しく低下させるものと考えられます。

このことから、従来の農業の現場においては、酸化カルシウムによる処理は利得が全くない処理方法と考えられていました。

即ち、従来の堆肥や有機質資材を利用した栽培では、ドッサリース農法が意図する「炭素、酸素、水素」を施肥によって補う、というような見方はされていないと考えられます。

堆肥とドッサリースでは、出発原料が「有機廃物」と全く同一で、最終的に利用する場所も「耕地」と全く同一であり、その中間において「生分解(堆肥)」、「生石灰分解(ドッサリース)」の違いでしかありません。

しかし、この違いによって、その経済的価値に50倍、100倍という差が生じています

この差は、従来のNPKという肥料要素に着目しただけでは理解できません。


4.3 低分子量有機物を供給する意図の栽培:低分子量有機物を施肥しても従来は微々たるもの


勿論、低分子量有機物を作物に吸収させる意図を持った資材や栽培法も多数あります。

「木酢」「酢酸」「アミノ酸」「アセトアルデヒド」「各種葉面散布剤」等のような有機物を作物に施肥する考えは、作物に直接有機物を吸収させる意図でもあり、PTA法(ドッサリース農法)と軌を一にしています。

それ故、低分子量有機物の施肥はPTA法(ドッサリース農法)だけのものではありません。

ただ、従来の栽培に低分子量有機物を用いている点ではPTA法(ドッサリース農法)と軌を一にするものであっても、その施用行為が「炭素肥料」を施肥するというような見方まではしていません。

その理由は判りませんが、炭素・酸素・水素の3元素は、作物(植物)にとって光合成で獲得できる元素であり、肥によって補うべき元素ではない、という考え方が普通かも知れせん。

また、作物の炭素・酸素・水素の元素を施肥によって賄うとすれば、相当の重量の施肥量となります。「木酢」「酢酸」「アミノ酸」「アセトアルデヒド」「各種葉面散布剤」等の有機資材の施用に際して、相当の重量の有機物を施肥する考え方はありません。

いずれも有機炭素の施肥量としては微々たるものです。

PTA法(ドッサリース農法)では、酸化カルシウムCaOによる家畜糞尿を分解処理して乾燥粉末化した資材の場合であれば、10a当たりこの粉末資材の実重量で500kg〜2000kg程度の施肥量となります。

原料の処理条件にもよりますが、この施肥される実重量のうち概ね25〜35%は有機物が占めることとなり、有機物量として10aあたり100〜700kg程度が補給され、標準的に収穫される作物の有機物量と比べても無視できない量となります。

仮に、標準的な収量が10a当り1500kg程度とされるホウレン草の根を加えた総重量が2500kg/10aと仮定し、その平均水分が90.4%、残部の9.6%が有機物量と仮定すると、標準収量におけるホウレン草の総有機物量は約240kgとなります。

PTA法に基づいて施肥された低分子量有機物の全量が作物に吸収され、同化に用いられていることを検証したわけではありませんし、作物の根を含めた全体の個体重量を測定したわけでもありませんが、現実の栽培で行われているドッサリースの施肥量は、作物が獲得する有機物量に比べて無視しえないものがあるように思われます。

このため、従来はこの資材を有機石灰質土壌改良資材と認識していたものを、「炭素肥料」と見方を変えたものがPTA法(ドッサリース農法)です。


4.4 PTA法(ドッサリース農法)の第1の仮説:「低分子量有機物を作物が吸収する」


PTA法(ドッサリース農法)は、現実に行われている優れた栽培の仕方について、「炭素肥料」というあたらしい見方を取り入れて解釈したものです。

即ち、家畜糞尿のような天然由来の腐敗性有機物を生石灰によって分解処理した生成物(残留物)を、「有機石灰質土壌改良資材」として用いた栽培が極めて良好な成績を上げており、この「有機石灰質土壌改良資材」に含まれている低分子量有機物が、結果的には「炭素を作物に供給する炭素肥料と同義」と考えることで、現実の現象を理解しやすくなります。

このようにして、第1番目の仮説として、「作物が低分子量有機物を吸収する」、という仮説を設けました。

しかし、作物あるいは動物が低分子量有機物を吸収することは、格別不思議な現象でもなく、実際にあり得る現象といえます。

前述のように、PTA法(ドッサリース農法)以外の栽培手法においても様々な低分子量有機物が施肥されています。

これらの施肥は、土壌を改良する意図はなく、作物に吸収させる意図で低分子量有機物を施肥しています。

このことから、PTA法(ドッサリース農法)において設けた「作物が低分子量有機物を吸収する」という仮説は、格別疑問を持たれるようなものではなく、むしろ、周知ともいえる事柄かもしれません。

因みに、作物が体外から物質を吸収するという現象は、「細胞壁」と「細胞膜」とを介して体外の物質を体内に取り込む現象です。

細胞壁はかなり大きな物質を透過できますが、細胞膜は「リン脂質の二重膜からなる生体膜」からなるものであり、かなりの制限があります。

即ち、細胞膜を透過できる物質については、例えば、次のような傾向が指摘されています。

   1) 水は透過する

   2) 分子量200以下の有機物で電荷のないものは透過しやすい

   3) ある種のイオンチャンネルを利用できるイオンは透過しやすい

低分子量有機物のカルシウム塩を主として含むドッサリースは、天然由来の腐敗性有機物を生石灰によって分解処理した残留物であり、その有機物としては「蟻酸」「酢酸」「プロピオン酸」「コハク酸」というような分子量が200以下の有機酸のカルシウム塩が主体となっています。

このため、いずれの有機酸も解離定数が小さく、通常のpH領域であれば十分な量の非解離状態の有機酸分子が存在します。

それらは非イオン化分子であり、且、低分子量であるためにリン脂質である生体膜を透過しやすい状態にあると言えます。

このようにして見れば、前記の第1番目の仮説である 「低分子量有機物を作物が吸収する」 という事柄については、あながち誤りとは言えないものと思われます。

なお、堆肥のように生体細胞が含まれるものでは、生物の巨大有機物が主体となっており、植物が吸収できる分子量からはかけ離れ過ぎているために、仮に、分解の過程で一部の有機炭素が低分子量有機物となって植物にとりこまれることはあっても、その割合は低いものと思われます。

化成肥料のみで栽培した作物に比べて、堆肥を用いた作物は確かに食味の上で違いがあり、「やや美味しい」と感じるものではあっても、PTA法(ドッサリース農法)に比べて格段に違うのは、吸収される低分子量有機物の量の違いかもしれません。

植物の根から有機物が吸収されることについて、1981年、玖村敦彦らによって研究が報じられています。

「岡田謙介・玖村敦彦 日本作物學繪紀事50(別2)pp.91‐92 1981 1001」です。

その要旨は、「サツマイモをポットで栽培し、古い年代の材料から調合した堆肥を施用して、14Cを測定して堆肥由来の炭素がどの程度サツマイモに取り込まれたかを調べた。サツマイモの炭素の10〜20%が堆肥由来の炭素であった」というものです。

この研究では、堆肥の有機炭素が有機物として吸収されたか否かは、判然としませんが、しかし、堆肥の炭素が10〜20%という高い割合でサツマイモに取り込まれています。 

PTA法(ドッサリース農法)では、品目によっては+250%(100⇒350)という増収効果があり、低分子量有機物として施肥することで、経根吸収をしやすくしている可能性が有ります。

PTA法の前提となる「植物が根から有機物を取り込む」という見方が誤りではないことを裏付ける資料と言えます。


フリー百科事典『ウィキペディア』:「エンドサイトーシス」の項目に、”植物とエンドサイトーシス”の欄に次の記載があります。養分としての有機物の取り込み

植物は、分子構造の小さい無機質のみを取り込み、すべての有機物は体内で合成していると考えられていた。

有機物は分子が大きいため、細胞壁と細胞膜を通り細胞内に入ることが、不可能と考えられていたからだ。

しかし、近年の研究では、植物もエンドサイトーシスにより、直接に有機物を取り込むことが確認されている。


次の第11図は、家畜糞尿を生石灰で分解したときの残留物に認められる低分子量有機酸について、各々の有機酸がどの程度解離するかを概観したものです。

酸として、HAなる分子式の酸を仮定して次のグラフの意味を概説します。

酸HAは、水中で次のように解離するものとします。

        HA = H + A

この酸HAの解離定数Kaは次のように与えられます。

        Ka=[H+][A-]/[HA]        [H+],[A-],[HA]は、水素イオン、酸イオン、非解離酸分子の濃度を意味します。

非解離酸分子の濃度[HA]と解離した酸イオン濃度[A-]の比率は次のように書きかえることができます。

        [HA]/[A-] = [H+]/Ka

酸HAの非解離分子[HA]と解離酸[A-]とが等しい濃度では

        [HA]/[A-] = [H+]/Ka = 1

        [H+] = Ka

このことから、水素イオン濃度が酸HAの解離定数Kaと等しい状態で、酸の解離酸と非解離酸の濃度が等しいことが判ります。

そして、それよりも水素イオン濃度が高ければ(強い酸性であれば)非解離酸の割合が上回ることも示されます。

このグラフの縦軸は、 [非解離酸の濃度]/[解離酸の濃度] の数値を示しています。

酢酸、プロピオン酸および酪酸の3つの有機酸の解離定数(Ka)は互いに近似しているために、その線は重なって示されています。

pHが低いほど(酸性が強いほど)、これらの有機酸の非解離酸の割合が高まることが判ります。

また、縦軸の未解離酸の比率が「1」とは、当該有機酸が解離している濃度と非解離酸の濃度が等しいことを示します。

このグラフ化から、クエン酸を含めてpHが3以下では、非解離の割合が高いことを示しています。

家畜糞尿の生石灰分解生成物で一番割合が高いと思われる酢酸カルシウムで言えば、pH4.5以下であれば過半数が非解離状態にあることが判ります。

作物は、根の先端から「根酸」を放出して、根の周囲の土壌に含まれている必須養分元素を溶解し、根から吸収しています。

この根酸の放出によって根圏は酸性に傾いているため、「炭素肥料」として施肥された低分子量有機酸カルシウムを主体とするドッサリースは溶解され、その低分子量有機酸は相当量が非解離の分子状態で水に溶解します。

即ち、これらの有機酸は十分に分子量が小さく、また、かなりの割合で非解離状態にあるため、作物の根の細胞膜を拡散により透過し、作物細胞内に移行する可能性が生じます。

また、作物は、葉から蒸散した水分を補うために根圏から相当する水量の水分を吸収するために、根から上部に向かう水流が根圏細胞における有機酸濃度は低下します。

即ち、根から吸収される水分による水量に同伴して非解離の低分子量有機物は速やかに作物の各部分へ移送されることが推測され、「低分子量有機酸」「根圏近傍の酸性による低分子量有機酸の非解離」「吸収された水分による速やかな系外への持ちだし」などによって、植物の根においてドッサリースに由来する低分子量有機物の植物への取り込みが俄に現実味を帯びてきます。

勿論、このドッサリースに由来する低分子量有機酸の吸収については放射性炭素C(14)を使用したり、あるいは炭素同位体C(13)を使用して、MS等を利用して検証すれば、比較的簡単に検証できる事柄ではあります。

(ここでは、低分子量有機酸が吸収されるものと仮定して、以下、検討を進めます。)


第11図 酸性領域における低分子量有機酸の未解離分子の割合


4.5 PTA法(ドッサリース農法)の第2の仮説: 「吸収された低分子量有機物が植物体内で同化吸収される」


PTA法(ドッサリース農法)では、第2番目の仮説として、「植物体内に吸収された低分子量有機物が同化吸収される」ことを設定しています。

ここではこの第2番目の仮説について検討します。

植物の体内では様々な反応が進行しています。

その数を云々することができないほど無数の反応が並行して進行しているものと思われます。

例えば、同じほ場に隣接して異なる種子を播種して栽培した場合(例えば、小松菜とダイコンというように)、双方に全く同様の化成肥料(例えば、7-7-7)を施肥して生育したとき、恐らく、双方の作物は同様の成分を吸収して居ながら、全く異なる作物として生長します。

即ち、小松菜の種は小松菜になり、ダイコンの種からはダイコンが育つものと思います。

また、作物における物質吸収の最初の過程は光合成によるブドウ糖の獲得です。

全ての作物が、このブドウ糖を元手にして、それぞれの遺伝子の情報に基づいて夫々別の個体を構築します。

その様々な過程において、無数の有機物質を合成し、それぞれの個体として生長を遂げます。

ただ、一般的には第12図に示したように光合成によってブドウ糖を合成した後、一次同化作用によってアミノ酸、脂肪酸、グリセリン、単糖類のような分子量の低い有機物を合成し、これらの比較的移動しやすい低分子量有機物が植物体内の方々に移動して、所望の部位で二次同化作用によって蛋白質、脂質、糖質、核酸という分子量の大きな生体高分子を合成するように考えられています。

このような一次同化作用、二次同化作用の様々な同化過程でさまざまな低分子量有機物が関与していることから、仮に、作物の体外から低分子量有機物が吸収された場合には、同化作用に取り込まれて、何らかの役割を果たすものと思われます。

即ち、作物が物質を吸収して生長する過程において、自己が産生した有機物ではない低分子量有機物が補給された場合、作物は自由自在に、必要に応じて同化の過程に利用することは、あまり無理のない考え方といえなくもありません。

PTA法(ドッサリース農法)は、このように二つの仮説に基づいて、

      「作物が低分子量有機物を吸収し、更に、これらの低分子量有機物を同化作用に利用する」

結果として、

      「低分子量有機物は炭素肥料のように振舞う」

という新しい見方をするものです。

果たして、施肥された低分子量有機物が植物(作物)に取り込まれて、その組織となり得るかは、トレーサーを用いれば簡単に判明することですが、同位体元素を用いて検証することは植物の栽培の専門家である農家であっても手軽に行うことは経済的に難しい側面を持ちます。

しかし、施肥された低分子量有機物の挙動の如何が科学的に検証されなくても、家畜糞尿のような腐敗性有機物と生石灰とを混合して殺菌分解した残さを「有機石灰質土壌改良資材」として圃場施用して、それなりの効果を上げ続けている実態に変わりはありません。

従来は、土壌改良資材として施用していた資材(有機石灰質土壌改良資材)を、「炭素肥料」と考えて施肥することで、より現実を正しく把握できる、とするのがこのPTA法(ドッサリース農法)が提案するものの見方です。



第12図 植物の生長の過程の模式図


4.6 生物地球化学的循環から見たドッサリース農法


第13図は、生物地球化学的循環から見たドッサリース処理の位置付を図示したものです。

   (a)従来の見方は、従来の炭素の生物地球化学的循環を示しています。これは、前記第12図に他なりません。

   (b)dossarys農法の見方は、ドッサリース処理を加味した生物地球化学的循環を図示したものです。

一般には、植物は炭酸ガス・水および太陽光を利用して光合成によってブドウ糖を産生し、次いで、一次同化、二次同化を経て自己の体を生長させます。

光合成以後の過程において土壌から吸収したさまざまな必須元素を利用して生長します。

しかし、植物を成長させるための最初の行為は、光合成となります・(a)参照。

他方、ドッサリース農法では、植物(遺骸)・動物(遺骸・排泄物)・分解者(細菌・微生物)のような腐敗性有機物を活性度の高い酸化カルシウムCaOによって分解します。

このとき、原料中の有機炭素は巨大高分子有機物から低分子量有機物まで分解されるだけで、無機化(炭酸ガス化)するほどの化学ポテンシャルはありません。

この生石灰処理を経た処理残渣には、植物が吸収しやすい低分子量有機物が多量に含まれています。

このため、生産者である植物は光合成によらず低分子量有機物を根から獲得できます(PTA法では、そのように仮定します)。

従来の基本的な考え方は、植物が有機炭素を獲得する場合には主として葉の葉緑体における光合成によるものとされています。

しかし、第13図(b)のように根から低分子量有機物を獲得すると、獲得された低分子有機物は少ないエネルギーで植物体内の他の有機物に転換されることが予想されます。

即ち、PTA法(ドッサリース農法)では、光合成以外にも「低分子量有機物を吸収する」という経路によって有機炭素を獲得することになります。

生体内の同化では、有機炭素でありさえすれば、ATPを用いて同化に利用できる物質になるように思われます。

この低分子量有機物は、その源を辿ると、光合成によって空中の炭酸ガスが固定されたものであり、その意味で、ドッサリース農法(Dossarys Farming)を光合成移転農法(Photosynthesis Transfer Agricultural Method:PTA法)という見方をすることもできます。

即ち、光合成によって有機物となった炭素を、安易に炭酸ガスとして無機領域へ還流するのではなく、低分子量有機物として生産者である植物の組織に還流することは、ある意味で「光合成産物の移転」と言えなくもありません。

リサイクルと見るか、リユースと見るか、いろいろな見方はあろうかと思いますが、其々の感性に合ったものであれば何でも構わないと思います。



第13図 炭素の生物地球化学的循環の見方の比較


4.7 作物の成長過程に与えるPTA法(ドッサリース農法)の効果


第14図は、作物の生長の過程の模式図で、(a)は従来の考え方です。前記第12図に示したものと同じ模式図です。

この第14図では、光合成よって得たブドウ糖を、@ 組織を構成する有機炭素源、および A 活動エネルギー として用い、そして、土壌から吸収したさまざまな必須養分元素(NPK等)を利用して、一次同化で簡単な低分子量有機物(単糖類・アミノ酸・有機酸・グリセリン等)を合成し、次いで、二次同化で高分子有機物(タンパク質・脂質・炭水化物・核酸等)を構築して、自らの生体組織を生長させます。

ところが、PTA法(ドッサリース農法)の考え方(b)では、さまざまな高分子有機物からなる植物・動物・排泄物などの物質をCaOによって分解することで、骨格の窒素原子はアンモニアとして失われるものの、有機炭素は低分子量有機物にとどまり、それを、圃場還元して作物を栽培すれば、作物の根から低分子量有機物が作物体内に取り込まれ、僅かなエネルギーで作物組織に転換されます。

これは、光合成によって炭酸ガス・水からブドウ糖を合成し、更に、さまざまな植物組織を構築することに比べ、圧倒的に少ないエネルギ−で済むものと予想されます。

第14図において、CaOによる有機廃物(遺骸・排せつ物等)の分解が行われますが、従来では、分解者がこの位置に相当し、有機炭素を炭酸ガスへ転換します。


第14図 作物の成長の過程の新しい見方


4.8 日照不足による不作


ある種の作物が不作になった時に『今年は日照不足により◎◎が不作です』というニュースに接します。

第9章の第1表に示したように、一般的な耕種農業においては炭素・酸素・水素の3元素は施肥に頼っていません。

光合成によって自然に獲得できることになっています。それで、通常はNPKという元素に注目して施肥が行なわれています。

今日の日本の農業において、肥料が不足するような事態は考えられません。もし、肥料が不足するのであれば、明らかに生産者の怠慢です。しかし、今日の農業でNPKの主要肥料要素が不足する事例は皆無と思われます。

しかし、不作の原因が日照不足であれば、COHの元素の獲得(ブドウ糖の獲得不足)であり、NPKというような元素の施肥では対応できないことになります。

このように『日照不足が原因で不作』ということであれば、PTA法(ドッサリース農法)のように低分子量有機物を施肥することで、少ない光合成であっても従来に比べて大きな生長を促すことができるかもしれない、とする見方も生まれます。

PTA法(ドッサリース農法)は、押並べて次の二つの事柄を仮説として設定しています。

  • 植物に低分子量有機物が吸収される

植物体内に吸収された低分子量有機物が同化作用に用いられる

そして、結果的には、低分子量有機物の施肥は「炭素肥料」のように振舞うという仮説を導いていますが、科学的に検証したわけではありません。

現実の耕種農業において、劇的な施用効果が生じている、ということを唯一の手掛かりに、実際にありそうな見方を模索したものがPTA法(ドッサリース農法)です。


4.9 植物が低分子量有機物を吸収する意義


第15図堆肥化とドッサリースの生物地球化学的循環の比較、は従来の堆肥化処理とドッサリース処理における大まかな物質循環を模式化したものです。

PTA法(ドッサリース農法)についてはあくまでも仮説でしかありませんが、ここでは植物(作物)が低分子量有機物を根から吸収する意義について類推します。

生物地球化学的循環の視点からすれば、生命群が獲得するエネルギーはブドウ糖の形で表すことができます。

生命が獲得する太陽エネルギーの量はブドウ糖の量で評価できます。

通常、ブドウ糖1モル(180g)を獲得するためには光合成によって688kcalの太陽エネルギーを獲得しなければなりません。

なお、光合成によって1モルのブドウ糖が合成されるときの太陽エネルギーについて、ここでは「688kcal」という数値を用いていますが、文献によっては他の数値となっているものもあります。

また、単位系をSIとしていないのは、「kcal」が馴染みやすいと思われたためです。

ブドウ糖1kgを合成するとすれば、太陽エネルギー約3,822kcalとなります。

ここで1kgのエネルギーを例示したのは、燃焼熱の表示として「1kgの発熱量」という考え方が一般的なためです。

他方、家畜糞尿等を酸化カルシウムCaOによって分解処理したときの残留物に含まれている酢酸カルシウムの酢酸(CH3COOH)が植物の根から吸収されたと仮定すると、植物は光合成によらず有機炭素(有機物)を獲得したことになります。

仮に、作物が酢酸1kgを吸収するであれば、酢酸1kgの燃焼熱は3,478kcalです。

ブドウ糖1kgと酢酸1kgでは、その構成元素の数は全く同一です。

そして、両者を完全燃焼するとした場合、必要とされる酸素量は全く同一です。そこで、化学熱力学では、「ヘスの法則」によって次のような見方もできます。

        ブドウ糖1kgの燃焼熱=3,822kcal

        酢酸1kgの燃焼熱  =3,478kcal

        酢酸1kg+エネルギー(344kcal)=ブドウ糖1kg

植物が、光合成でブドウ糖1kgを獲得することは「3,822kcal」のエネルギーを獲得することとも言い換えることができます。

他方、酢酸1kgを獲得することは「3,478kcal」のエネルギーを獲得することです。

双方共に、獲得する炭素、酸素、水素の重量(原子の数)は全く同数です。

何らかの手段で、1kgの酢酸に「344kcal」のエネルギーを加えれば、ブドウ糖1kgに転換できる可能性があります。

実際の生体内でどのような生化学反応が進行しているかは検証していません。

しかし、光合成でブドウ糖1kgを獲得するには3,822kcalという大きなエネルギーを必要とします。

しかも、そのエネルギーは太陽エネルギーという自然条件に支配されるものです。

ところが、根から酢酸を吸収して植物体内で利用できれば、ブドウ糖1kgを獲得するために僅か344kcalのエネルギーで足ります(約9%)。

生体内での生化学反応でエネルギーの補充に利用されるものは「ATP(アデノシン-3-リン酸)」です。

ATPは、「生体内における万能のエネルギー通貨」とされています。1モルのATPが7〜10kcalのエネルギーを出します。

仮に10kcalとして計算すれば、1kgの酢酸をブドウ糖に転換する際に補充する344kcalのエネルギーのためにはATP35モル(350kcal)を消費します。

ブドウ糖1モル(180g)からは38モルのATPが生成されることが判っています。

このことは、約166gのブドウ糖から得られる35モルのATPで、1kgの酢酸から1kgのブドウ糖が得られる勘定となります。


ブドウ糖が約5倍に増幅されたようにも見受けられます。  

勿論、生体内ではこのような単純な生体反応ではなく、複雑な反応が進行していると思います。

しかし、太陽エネルギーという自然のエネルギーによって支配される光合成は、地球全体でみれば安定しているものの、局地的に見れば不安定なものといえます。

日照の不足によって不作や凶作が引き起こされることはままあります。

低分子量有機物の施肥によって、少ない光合成でも、根から吸収された低分子量有機物を利用して、ATPによって少ないエネルギーで大いなる生長を獲得するのであれば、大変助かることです。

仮に、酢酸のような低分子量有機物を根から吸収してATPで体内同化に取り込むことができれば、エネルギー的に見れば、かなり楽に生長を遂げることができるように思われます。

適切な比喩ではありませんが、「酸素濃度21%の通常の大気による呼吸」と「酸素濃度100%の純酸素による呼吸」との関係と似ていなくもありません。

肺の機能が低下した場合に、純酸素による呼吸にすれば呼吸は楽になります。


第15図 生物地球化学的循環からみた堆肥化処理とドッサリース処理の違い


第15図の左は堆肥化処理、右側はドッサリース処理です。

家畜糞尿やし尿や生ごみのように、所定の過程を辿り、後は分解されて炭酸ガスになる有機廃物について、従来は左側の堆肥化処理のように「分解者」によって分解し、有機炭素を炭酸ガスに転換する流れです。

これに対して、PTA法(ドッサリース農法)は有機廃物を「分解者」の手に依らず生石灰CaOによって低分子量有機物まで分解し、炭素肥料として作物に供給し、吸収・同化させる流れです。

このように、PTA法(ドッサリース農法)は、分解者への依存が極端に少ないリサイクルの形態です。

PTA法は、どちらかといえば、「吸収」「同化」「分解」「施肥」の過程の在り方を工学的に見て、人為的に操作できる「分解」「施肥」の工程を形作ったものといえます。

光合成で獲得したエネルギーを効率よく活用するには、PTA法(Dossarys農法)の形態が望ましいといえます。

殊更、分解者に遺骸・排せつ物の分解をゆだねる必要は全くありません。


4.10 生態系からみたドッサリース農法


PTA法(ドッサリース農法)は、本質的には生態系の新しい見方を提案するものです。

それを理解しやすい身近な産業が「農業」であるために、「農法」として紹介したものです。

第1図は、生態系の炭素循環を模式的に示したもので、ドッサリース農法による、新しい炭素循環の見方も併せて示したものです。


第1図(再掲載) 生物地球化学的炭素循環の比較


第1図の左側は、従来の生態系の炭素循環を示すものです。

無機領域の二酸化炭素は、光合成によってブドウ糖(炭水化物)となり、光合成に引き続く生体内での同化作用によって様々な有機炭素となります。

その過程では、低分子量有機物の形態から順次高分子量有機物が合成されて生物体として生長します。

そして、その遺骸や排泄物が分解されて、生体内の有機炭素は無機炭素である二酸化炭素として無機領域に還流します。

このような無機領域と有機領域とを循環している炭素が、無機領域から有機領域へ流入する原動力が光合成です。

私たち生態系の全ての炭素と生体エネルギーとが光合成によって生み出されています。生態系における炭素循環について、第15図の左側のように理解することに無理はないと思います。

第15図の右側の図がPTA法(ドッサリース農法)の見方です。

PTA法(ドッサリース農法)でも、全ての生体エネルギー、全ての有機炭素の源泉を辿ると光合成に行き着くと考えることは軌を一にします。

他方、PTA法(ドッサリース農法)では、家畜糞尿のような天然由来の腐敗性有機物を分解して生成する低分子量有機物を施肥することで植物に吸収させ、ATPによるエネルギーの供給によって生体同化作用に取り込まれる、という有機領域内での炭素原子の循環を提案するものです。

例えば、通常、家畜糞尿のような排泄物になった有機炭素は細菌によって分解されて炭酸ガスとなり、再び、有機炭素となって有機領域に還流するためには「光合成」に依らなければならない、と考えるのが一般的です。

他方、PTA法(ドッサリース農法)では、家畜糞尿や生ゴミのような腐敗性有機物の有機炭素を何らかの手段によって低分子量有機物(低分子量有機炭素)まで分解して植物に施肥することで、有機炭素が、有機炭素のまま再び植物に取り込まれて巨大生体組織の一部として同化される、と考えます。

即ち、PTA法(ドッサリース農法)では、有機領域内で有機炭素が循環する新しい炭素サイクルを提案するものです。


このように、PTA法(ドッサリース農法)は、単に「ドッサリース農法」というように一つの農業の取り組み方を示唆するだけのものではなく、生態系のもっとも根本となる炭素循環について、有機領域内における有機炭素の循環、という新しい見方を提案するものです。

生態系の基本的な部分において新しい見方が可能になれば、現実の社会活動の幾多の部分において、従来とは違った新しい合理的な見方ができます。


4.11 光合成の時間的空間的移行(PTA法)


今日、耕種農業は光合成産業とも言われています。

野菜工場や電照菊のような人工照明による栽培を除けば、大方の耕種農業における光合成は太陽光に支配されています。

栽培品目の種子・苗あるいは株が圃場にある間、当該圃場における光合成の成果が収穫となります。

生産者は、栽培期間において当該圃場で生じた光合成の産物として農産物を手にします。

しかし、隣接する原野(未利用緑地)においても、当該圃場とまったく同様の光合成が生じていることが容易に予想されます。

ただ、隣接する原野における光合成は生産者にとって何も益するものがありません。

これまでの多くの耕種農業においては、収穫する農産物の栽培期間以外の時間帯、あるいは、育成している圃場以外で生じた光合成を収穫物に転換することはできません。

PTA法(ドッサリース農法)は、時間的空間的に異なる時・場所で行われた光合成の産物を、自らが所望する圃場の作物に転換することでもあります。

光合成を時間的空間的に移動する、という視点はPTA法(ドッサリース農法)に固有のものかも知れません。

次の第16図は、光合成の移転の考え方を模式的に示したものです。


耕地にも、隣接する未利用地(原野)でも等しく光合成が行われています。

原野の雑草を堆肥原料としたとき、未利用地の雑草に含まれるNPKその他の養分は肥料として耕地に持ち込まれます。

  しかし、従来の見方では炭素・酸素・水素からなる有機物を耕地に持ち込む思想はありません。

 PTA法(ドッサリース農法)の考えでは、未利用地の光合成産物(高分子量有機物)を生石灰で分解処理して低分子量有機物とし、耕地へ施肥することで耕地の有機炭素獲得量を増加させす。

 NPK等の肥料成分は人為的にいくらでも施肥できます。

 有機炭素の施肥は光合成の移転とも言い換えることができます。

 光合成を固定し、時間的空間的に移転するのがPTA法の見方です。

第16図 光合成移転の模式図

PTA法(光合成移転農法)は、「今の太陽」と「過去の太陽」とを合体させる見方をする栽培です。

「今の太陽」は、誰もが知っている今の太陽です。限りがあります。日当たりに良い所では、良く育ちます。日当たりが悪い地域は生育も悪い。

「過去の太陽」は、周囲に溢れる有機物に他なりません。有機物を低分子量有機物に分解すれば、作物が吸収し、同化できます。

作物が有機炭素を吸収・同化することは、言い換えれば、過去の光合成産物を作物が食べることに他なりません。

PTA法(光合成移転農法)は、膨大な過去の太陽(有機物)を、今の太陽に加える、全く新しい農業の見方です。

世界中の耕地の生産性が飛躍的に高まる画期的な農業の取り組みです。

4.12 植物の根の模式図

次の第17図は、植物の根の先端部分を模式的に示したものです。

植物の根は、その先端部において「根酸」を放出し、周辺の土壌からさまざまな物質を溶解して自らの体内に取り込んでいます。

一般的な植物は、第9章に示したようにC,O,H,N,K,Ca,P,Mg,S,・・・というような16元素が必須元素と言われています。

これらの必須元素のうち、空中に存在し、植物が取り込み易い元素はC,O,Hの3元素であり、その他の元素は土壌に存在している割合が高く、その供給源として土壌に頼ることは自然の成り行きかも知れません。

植物が、土壌からさまざまな物質を取り込むに際して、「根酸」という酸性物質を根の先端部から土壌に向けて放出し、根の周囲の水分に溶解した物質を水とともに吸収しています。

勿論、水に溶解していてもイオン化していたり、分子量の大きな成分は吸収されにくい傾向があるようです。 この根の先端部における様子を以下に模式的に示します。

左の図は、植物の根の先端部を模式的に示したものです。

a:植物の根の先端部

b:根毛

c:土壌

d:土壌に分散しているドッサリース(低分子量有機酸カルシウムの固体)

植物が、根の周辺の土壌から自らが必要とする成分を吸収するために根酸を放出し、成分を溶解します。

e:根の先端から放出される根酸

f:根酸と反応して溶解した低分子量有機酸カルシウム

根酸の酸性によって、土壌の様々な成分が溶解されますが、ドッサリースの主成分である低分子量有機酸カルシウムも溶解します。

土壌の成分と反応した根酸は中和されて酸性の度合いが低下します。

その低下の度合いは、土壌の状況によってさまざまです。

根の先端部は、土壌に格別の障害物がなく、根酸がほどほどに中和されたのであれば、おそらく根の先端部を前進させ、新たな根毛も形成されます。

g:根酸で溶解した低分子量有機酸カルシウムの痕

gは、溶解したドッサリースの痕であり、周囲の水に溶解して、その周辺に高濃度の低分子量有機酸の領域を形成します。また、根の先端部から放出された根酸は、土壌の中和作用によって、時間的に見れば徐々に酸性の度合いを弱めす。

根の先端はさらに根酸を放出すると共に前進を進めます。

h:根に吸収された低分子量有機酸カルシウムの痕の印

根に吸収されたドッサリースの痕を黄色の丸で示す。

根毛が伸びて、根を分岐することもあるが、ここでは省略しています。

根の先端部は、根酸を放出して前進を続けて、新たな周辺土壌から様々な成分を取り込みます。

根から吸収される成分は次のように考えられています。

1)水

2)水に溶解している成分で電荷を持たない成分で分子量が小さいもの

3)電荷を持つ成分でも、能動移送ができる成分

第17図 植物の根の先端部の模式図

PTA法では、「根から低分子量有機物が吸収される」という見方をしています。

有機物が植物の根から吸収されることは、確認されていますが、それがどの程度植物の生長に寄与しているかは確認されていません。

PTA法では、

1) 低分子量有機酸カルシウムの施肥量が他の方法に比べて異常に多いこと

2) 固体状で土壌に分散している低分子量有機酸カルシウムが、根の近傍の水分に高濃度で溶解する

との理由で、

3) 根の近傍の土壌の水分に高濃度低分子量有機酸の領域が形成され、この水に分散した低分子量有機酸分子が、濃度拡散によって根の細胞膜を透過し、根が吸収する水分によって植物の上部に移送され、同化される、

 と推定しています。

次に、根の先端部における物質の挙動をもう少しゆっくりと検討します。

ただし、以下のことも、あくまでも想定される物質の挙動を示しただけで、検証したものではありません。


第18図(a) 根の先端部の拡大した模式図

上第18図(a)は、根の先端部を拡大した模式図です。

根毛は省略しています。 根の最先端部は黄色で示しました。 根の先端から放出される根酸は「赤」で示しました。

dは、土壌に分散している有機酸カルシウムの固体粉末です。但し、施肥した時の状態として固体粉末であっても、土壌と馴染む過程で一旦溶解して、再度固体となる場合もあります。必ずしも、施肥した状態の固体粉末の状態に限定するものではありません。

大きな矢印→は、根が土壌水分を吸収する様子を模式的に示したものです。根における物質 の吸収は

        (1)シンプラストsymplast        (2)アポプラストapoplast

を利用する形態に分けられますが、いずれにしても生体膜を透過します。このため、ここでは両者を区別しません。


第18図(b) 根の先端部の拡大した模式図:根酸の拡散

放出された根酸eが周辺土壌に拡散する様子を、同心円状に示しました。

根酸e根の先端部(黄色)から遠ざかるに従いpHが高くなります。

根酸eが希釈されることと周辺土壌によってpHが緩衝されるためです。

普通の露地栽培では、ドッサリースは10a当り0.6〜3トン程度であり、作土の厚みを10〜20センチメートルとすれば、土壌に占めるドッサリースの割合は0.1〜2%程度であり、僅かな割合と言えます。

それで、左の図ではドッサリースを濃紺の半円で示しています。


第18図(c) 根の先端部の拡大した模式図:ドッサリースの溶解と拡散

ドッサリースdは、多くの場合、有機酸カルシウムを主成分としてい2%クエン酸で溶解すると、原料にもよりますが重量でいえば、70〜80%の成分が溶解します。

このように、根酸eによって溶解した有機酸カルシウムを主体としたドッサリースは、やはり、同心円状に広がります。

ただし、大雑把な傾向として、有機酸カルシウムを溶解させる原因である根酸eの発生源である根の先端部に向かう側への拡散が多くなることが予想されます。

何故なら、根の先端とは反対の側の土壌は有機酸カルシウムを溶解する性質がないからです。

なお、根の先端は徐々に前進するものと思われますが、ここでは、動きを止めて示しています。

周辺土壌よりは根酸eを中和する能力が高く、根酸eと接すると根酸を中和して溶解します。

やがて、根酸に溶解した有機酸カルシウムは、根に接し、根の細胞膜を透過して、根に吸収されるものと推定されます。

根酸に接して溶解した時の有機酸カルシウムは「正の電荷を持つカルシウムイオンCa2+」、と「負の電荷を持つ有機酸(便宜上Aと表記します)」となります。

しかし、この有機酸Aは、その場の水溶液のpHによって解離状態が支配されます。

根の先端部は根酸eの濃度が最も高く、また、周辺土壌のpHの中和作用を受けていないためpHが最も低いものとなっています。

いろいろな植物の根の汁をしらべて、植物の根から放出される根酸の度合は1%くえん酸水溶液程度のものと言われています。

一般的な肥料の溶解性を示す指標に「2%クエン酸水溶液(pH2.1)に対する溶解性」をク溶性と称していますが、現実の根酸は、その半分の濃度程度と見積もられています。

とすれば、根の表面のpHとしては2.5〜3程度の値を想定してもよいでしょう。

そして、固体の有機酸カルシウムdの位置がpHが一番高い状態となっています。即ち、根の先端と固体の有機酸カルシウムdとの間はpHが最も急勾配になっているものと思われます。

固体の有機酸カルシウムdから根の先端に対して根酸によって溶解した有機酸が濃度拡散します(ここでは、根の先端は移動しないものと仮定しています。)。

水に溶解した根酸は、根に近づくほどpHが低下します。

pHが低下するほど有機酸の解離状態は、分子状の有機酸の割合を高めます。

すなわち、解離の割合が下がります。その傾向は、前記第11図示しましたが、再度示します。

固体状のドッサリースdが「酢酸カルシウム」であり、その周辺土壌のpHを「7」と仮定し、根の先端部から放出される根酸eのpHを3として見れば、固体から溶解した時点のpH7の状態では1%程度が非解離状態であるのに対し、pH3となれば非解離状態の酢酸分子の割合が、酢酸イオンの100倍ほどにもなります。

即ち、土壌に固体状に分散している有機酸カルシウムは、根酸によって溶解し、根の先端に近づくに従いpHの低下のために分子状に分散する割合を増して、分子状有機酸が高濃度となった状態で根に接し、根の細胞膜を濃度拡散によって透過するものと思われます。

そして、根では、概して、葉面における水分の蒸散を補うように多量の水分吸収がなされており、その水流が細胞の内側に拡散した有機酸を根の先端部から植物の上部へ運び去り、根の先端部の細胞内の有機酸分子の濃度を下げるために、常に、根圏土壌のドッサリースに由来する有機酸が根の細胞内へ送り込まれるものと推測されます。

 ・ヒトが食べ物を消化するために胃酸を出すように、植物も根の周辺土壌から養分を抽出して吸収しやすくするために、根酸を放出しています。有機酸カルシウムは、酸に溶解します。

 ・根酸によって溶解した有機酸カルシウムの「有機酸」の部分はpHの状態に応じて解離の度合いを変えます。

 ・・pHが低ければ、「分子状(非解離状態)」の割合が高くなり、pHが高ければ解離状態の割合が高くなる傾向にあります。

 ・根酸によって溶解した有機酸は、根の先端に近づくに従ってpHが低下し、「分子状の有機酸」の割合を高め、根の表面上で最も分子状の有機酸の濃度は高まります。

根の先端部の細胞における物質吸収では、「イオン」は吸収しにくいとされています。

しかし、有機酸は分子状態となっており、細胞膜の抵抗は大きいものではないかもしれません。

これら有機酸は分子量が200以下の割合であることが多く、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、ギ酸というように何れも低分子量有機物のものが過半数を占めます。

このため、施用されたドッサリースの全部ではないにせよ、高い割合のものが根酸によって溶解され、そして、根に吸収されやすい形態となっています。


第11図(再掲載) 酸性領域における低分子量有機酸の未解離分子の割合
4.13 植物の養分の吸収についての見方

PTA法(ドッサリース農法)は、植物が施肥された低分子量有機物を根から吸収し、この低分子量有機物を同化によって植物体内に取り込む、と考える栽培の見方です。

  1) 植物が根から低分子量有機物を取り込むこと

  2) 植物体内に流入した低分子量有機物が、植物の生長に利用されること

この2点がPTA法の根幹をなす考え方ですが、一般的にはほとんど顧みられなかった考え方です。むしろ、「殆ど、無視して良い」という捉え方でした。

それゆえ、PTA法では、低分子量有機物の吸収について、いろいろな角度から検討したいと思います。

次の第2図は、既に示したものの再掲載です。

この図は、施肥した低分子量有機物が作物に吸収されることを示したものですが、土壌の養水分が作物が吸収される過程を模式的に示しているといえます。

作物の根から吸収される物質は、水に溶解しているものでなければなりません。また、電荷を持つ物質は、細胞膜を透過しにくい傾向があります。前記、第2図の栄養分・養分および水分の吸収過程を次の図に書き換えます。

この図は、土壌の有機酸が植物の蒸散・水分吸収によって移動する模式図です。

作物の養水分の吸収は、先ず、@葉面の気孔からの水分の蒸散がけん引力となります。

その結果、A土壌の水分が根から吸収されて、導管を介して葉面に至る水流が生まれます。

その水流に、土壌中の水分に溶解している養分(無機成分)が同伴して吸収されて、葉部に至ります。

PTA法で着目した土壌中の低分子量有機酸カルシウムはBの赤い→に示すように、根毛の外表面に到達し、細胞膜を拡散によって透過し、細胞内に到達し、C水流によって搬送され葉面に至り、D水分の蒸散によって濃度が高められて同化に際して作用し易い高濃度の状態が醸成されているものと推測しています。

赤い→B〜C〜Dは、一応、低分子量有機酸の濃度の高低を示しています。

根毛における低分子量有機物や養分の吸収は、激しい水流によって根毛と外界とを隔てる細胞膜の内側に生じる低分子量有機物や養分の濃度が殆ど「ゼロ」の状況が、濃度拡散を促進するものと思われます。

即ち、根毛の細胞膜を透過した低分子量有機物や養分は、水流によって直ちに運び去られてしまい、根毛細胞の細胞膜内側の濃度は限りなく「ゼロ」に近いものとなり、土壌水分における濃度との差が、濃度拡散を促進させます。

このように、葉面における水分の蒸散は根圏における養分の吸収のみならず、PTA法における低分子量有機物の吸収についても同様のことがいえます。

このため、PTA法(ドッサリース農法)においては、極力水分を遮断する栽培ではなく、適切に水分を補給する栽培形態が望ましいと言えます。

4.14 花咲じいさん:炭素肥料の手掛かりの一つ:果樹・庭木の例:

植物が有機物を吸収する現象は、従来から知られています。

そして、従前の認識では「植物の有機物の吸収は微量で生長に影響を与えない」という認識が支配的です。

しかし、PTA法(ドッサリース農法)では、「低分子量有機物の施肥は炭素肥料と考えてはどうだろうか」 と全く異なる見方をします。

その根拠の一つが、果樹や庭木の例です。従来の肥料の作用では説明できない効果があります。

   1) 果樹老木の収量低下

   2) 老木の開花力低下

   3) 日陰による開花不能

果樹や庭木のように、樹木の場合には一旦植えてしまうと移動が困難な場合があります。

そして、その場所で、そのまま栽培を継続しなければなりません。

野菜なら、次の作付の時に場所を変えたり、品目を変えることができます。樹木の場合には、その変更ができない場合があります。

また、樹木の場合には老木になると収量が衰えたり、開花力が衰えたりします。

果樹が老木になり、収量が低下すると、通常は、伐採して若木に更新します。

サツキのような庭木は、庭の南側に建物が建設されて日陰になったり、元々、日陰側にしか庭が取れなかったりして、日照不足のために開花できない場合があります。

このような場合には、そのまま栽培を継続するしかありません。

上記1)〜3)のような樹木に対して、ドッサリースをその樹木の周囲に施肥し、浅く耕起してよく土壌に混合することで、

   ・ 老木となった果樹の収量が、若い時以上に回復した

   ・ 老木の開花力が回復して、若い時以上に見事に開花した

   ・ 日陰の庭木が開花した

というように、いずれも良好な結果を得ています。

このような効果は、「低分子量有機物が吸収されて、少ないエネルギーで通常の活性が維持できる」とする見方をすると、凡その傾向が納得できます。

ただ、このような作用を想定した農業資材は、従来類例を見ません。

勿論、これは「家畜糞尿のような腐敗性有機物に生石灰を添加し、混合して得られる処理残渣からなる有機石灰質土壌改良資材」を施肥した結果に他なりません。

野菜の栽培では、播種・定植するに際して耕地をある程度深くまで耕し、必要に応じて土壌改良資材を施用して土壌環境を整えたり、元肥を施肥するのが一般的です。

その際に、例えば、このドッサリース(有機石灰質土壌改良資材)を施用して、所定の深さまで混合することはできますし、実際に行われています。

このような形態では、「土壌改良」という使い方も妥当な表現です。

しかし、樹木に対する施肥では、土壌表面に施用して、浅く耕起する程度でしかありません。

これでは「土壌改良」というほどの作土の土壌が改善されるとは言い難い状態です。

そうであっても、劇的な効果を示すことから、「肥料の施肥」という見方がより相応しいように思えます。

PTA法(ドッサリース農法)が、「低分子量有機酸カルシウムは炭素肥料のような役割を果たしている」とする根拠の一つです。

第4.15章  PTA法(光合成移転農法)が提案する新しい概念のまとめ

【炭素肥料】

従来の耕種農業では窒素N・リンP・カリウムKを主要肥料要素とし、カルシウムCa、マグネシウムMgを副次的な肥料要素とし、それよりも含有率が少ないミネラル分を微量要素として施肥していました。

そして、作物中の最も割合の高い炭素C・酸素O・水素Hの3元素は、光合成によって獲得できることから肥料として施肥する見方はしていませんでした。

PTA法(光合成移転農法)は、「低分子量有機物」を施肥して作物に吸収させ、ATPで作物に同化させる、という見方をする栽培です。この目的で施肥される「低分子量有機物」は、「炭素肥料」と言い換えることができるでしょう。

ただし、我が国の法律としては「炭素肥料」という肥料は規定がありません。

「炭素肥料」という見方は、当サイトにおいて、約30年前から行われている家畜糞尿や有機廃物に生石灰を添加・混合して殺菌分解し、その生成物を「有機石灰質土壌改良資材」として圃場にリサイクルしている事例において発現している好ましい現象を解釈するために取り入れた概念であり、「土壌改良資材」と表示して流通している資材の「有機酸カルシウム」の「有機酸」の部分が作物体内に取り込まれて効果を奏しているのではないか、とする見方です。

即ち、作物体内に取り込まれるものであれば、周辺環境を整える「土壌改良資材」ではなく、「肥料」として解釈した方が理解し易い、と考えたものです。

PTA法(光合成移転農法)は、新しい耕種農業の見方を提案するものですが、「NPK或いは他の従来の肥料要素は、作物が要求する全量を従来の化成肥料(化学肥料)によって補う」というものです。

即ち、PTA法は、新しく炭素肥料を提案するもので、従来の肥料(NPK)の削減には全く無縁である点が、極めて奇異な農法の提案でもあります。


【有機圏内炭素循環】

「生態学」とか「生物地球化学的炭素循環」という用語は、日常とは掛け離れた世界の出来ごとのように感じられます。

しかし、これらは、私たちの最も基本となる事柄を考える学問です。全て、生態学・生物地球化学的炭素循環の下で私たちの生活が営まれています。大変重要な学問分野と言えます。

私たち生命体は、今確認できる範囲では地球上に固有の現象であり、その最も中心となる物質は「炭素」です。

無機炭素である炭酸ガスと水と光が、葉緑素によって炭水化物(ブドウ糖)に転換され、このブドウ糖の一部が生体組織を構築する有機炭素となり、残部が生体エネルギーとなって生体反応を推進します。

この光合成によって生じた有機炭素が、食物連鎖によっていろいろ形態を変えながら他の生命体に形を変え、最終的には、排泄物・遺骸となり、カビや細菌等の分解者によって分解され、二酸化炭素になります。

炭素原子は、無機物である炭酸ガスと有機物である生体組織を循環していますが、生命への入口は光合成です。

植物が行う光合成は、無機炭素を有機炭素に転換する重要な化学反応です。

しかし、PTA法(光合成移転農法)では、低分子量有機酸が有機炭素のまま作物に吸収され、作物の組織として同化します。

これは、従来の光合成による有機炭素の生成ではなく、有機炭素そのものの獲得であり、光合成の著しい節約となります。

動物や従属栄養植物が有機炭素を獲得することは知られていますが、作物が有機炭素を吸収して同化する性質を産業に利用する思想はありません。

PTA法(光合成移転農法)は、植物が有機炭素を吸収して同化する性質を農業に利用する考えの新しい農業です。

この形態では、生物地球化学的炭素循環において、植物が有機炭素を吸収・同化する点が従来とは異なる見方をします。

この有機圏内炭素循環と言う炭素の流れは、少ないエネルギーの補給によって循環できるために、あたかも光合成を増幅するような効果があります。

また、有機圏内炭素循環では、有機炭素として作物に施肥される有機物は、高率で作物に移行するため効率が良いと言えます。従来の、有機物の施肥は施肥された有機物は炭酸ガスとなって大気に解放され、光合成によって取り込まれることとなり、施肥された圃場の作物に移行する割合は限りなくゼロに近いものとなります。



トップエネルギー肥料植物から見た光合成移転理論第2章PTA法の糞尿処理第3章PTA法による栽培第4章PTA法の考え方第5章化学式で見るPTA法第6章低分子量有機物第7章光合成移転農法第8章PTA法のまとめ第9章PTA法の基礎知識第10章PTA法からの視点第11章有り得ない選択・PTA法第12章作物の美味しさについての一考察第13章PTA法の有機物吸収の考え方第14章炭素肥料が理解されない理由第15章PTA法サイトの図面集PTA theory is recycling of photosynthesis, carbon fertilizer and energy fertilizerツイッターのためのPTA法・光合成移転農法PTA法とランドラッシュ・第三の道か?ゲストブックにログイン