PTA法(ドッサリース農法)



第5章化学式で見るPTA法 

化学式で見るPTA法(ドッサリース農法)

最終更新日:2010-12-29 

「万能の土壌改良資材」という意味不明な資材が、数千haの農家において絶大な支持を得ています。概ね、NPKの肥料よりも、土壌改良資材の経済的な負担が3〜10倍も大きいという奇妙な現象が生じています。

PTA法は、「低分子量有機酸カルシウムは炭素肥料」と読み替えることで、奇異な現象を解釈したものです。「万能の土壌改良資材」が「肥料」という側面を併せ持つのであれば、品目を問わず幅広い植物に利用することができます。

 この第5章では、化学式を用いてPTA法(ドッサリース農法)の姿を概観します。

ここでは、PTA法(ドッサリース農法)に関連する幾つかの化学式を例示して、PTA法(ドッサリース農法)として低分子量有機物の施肥がどの程度の効果があるかを概観します。

ただ「低分子量有機物の施肥」は仮説でしかありません。 しかし、このような仮説が現実のものであったときに、どの程度の効果が期待できるかを類推します。PTA法(光合成移転農法)は、光合成のリサイクル、或いは光合成産物のリサイクルともいえるものであり、巨大有機物の低分子量化には色々な方法があります。ここでは、炭素肥料の製法として天然由来の有機物の生石灰による分解を例示しています。

木質系の有機物を短時間に低分子量化するには酸分解となりますが、本サイトでは、高額処理となる酸分解は例示していません。


5.1 光合成

光合成は地球上の生命の全てを維持する最も基本的であり、また重要な化学反応です。化学式で表示すると次のようになります。

    6CO2 + 6H2O + hν(688kcal) = C6H12O6 + 6O2      (5.1)

葉緑体において、6モルの二酸化炭素CO2と6モルの水H2Oと688kcalの太陽エネルギーによって、1モルのブドウ糖と6モルの酸素が生成します。なお、ここで太陽エネルギーの「688kcal」という値は、文献によって異なるかもしれません。

しかし、概ねこのような値です。なお、この反応式では右辺においてブドウ糖が生成していますが、ブドウ糖C6H12O6ではなく、単に、炭水化物が生成する、とする文献もあります。

また、光合成を別の反応式で表現することもありますが、ここでは大雑把な物質収支を把握するだけで良いので、もっとも単純な化学式による表現としています。

光合成を示す化学式には、より複雑なものもありますが、このサイトでは、後の計算が楽なため、ここでは割愛します。ここでは、化学熱力学的な検討において数値を特定することで、後に検討しやすいために、あえて「ブドウ糖」と限定しています。なお、さまざまな研究から、実際の植物の太陽エネルギーの利用効率は最高でもサトウキビの3〜4%であり、通常は1%程度といわれています。

 5.2 ブドウ糖の燃焼反応

(5.1)式の左右の辺を入れ替えると、ブドウ糖の燃焼反応になります。

     C6H12O6 + 6O2 = 6CO2+ 6H2O - 688kcal         (5.2)

        180             6*32          6*44     6*18     688

        1000g          1067g                   3,822kcal

モル当りの発熱量と、1s当りの発熱量は以上の通りです。発熱量の単位は便宜上、kcalとしています。ここで、右辺の「-688kcal」は、太陽光線ではなく燃焼反応の発熱量を意味しています。

ブドウ糖1モルの重量は180gであり、ブドウ糖1kgでは1067gの酸素で燃焼し、3,822kcalの発熱量となります。物質の燃焼熱については「1sあたり」で表現されることも多く、石炭は約5〜7,000kcal、石油は約1万kcalです。このことから、ブドウ糖は燃料としてみてもかなりの熱量を持っている物質といえます。

 5.3 酢酸の燃焼反応

ドッサリース農法では、低分子量有機物を炭素肥料のように考えて施肥して、栽培する方法です。

この低分子量有機物を経済的に入手する手法として今日行われているのは、家畜糞尿のような天然由来の腐敗性有機物と生石灰とを混合して分解処理する方法があります。

その処理残留物には蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸のような低分子量有機物のカルシウム塩が多量に含まれています。

その主たる成分の一つが「酢酸カルシウム」です。このため、「低分子量有機物」の一つとして酢酸を例示することとしました。

また、酢酸は分子式CH3COOHからも明らかなようにC:H:Oの原子の比率が1:2:1であり、この割合はブドウ糖とまったく同一です。

次に、酢酸の燃焼反応を示します。

       CH3COOH + 2O2 = 2CO2 + 2H2O - 208.7kcal      (5.3)

酢酸は強い刺激臭が印象的な液体ですが、青白い炎を上げて燃焼する液体です。この式の両辺を3倍します。

       3CH3COOH + 6O2 = 6CO2 + 6H2O - 626.1kcal      (5.4)

             3*60              6*32      6*44     6*18      626.1

             1000 g          1067g                      3,478kcal

(5.4)式の右辺の原子数は(5.2)式のブドウ糖の燃焼反応の右辺と全く同一です。即ち、(5.2)式と(5.4)式では左辺の原子数も同一となります。

ブドウ糖180gと酢酸180gに含まれるCOHの原子数は同一で、これを燃焼するための酸素も192gで同一です。燃焼の発熱量だけが異なります。酢酸1kgは1067gの酸素によって燃焼し、その燃焼熱は3,478kcalとなります。

(ブドウ糖と酢酸ではCHOの構成比率が同じで、このため、完全燃焼の際の必要酸素量が同一となり、燃焼熱の差が明瞭に把握しやすいので、「植物が有機物を吸収する意義」を感覚的に理解し易いといえます。

このため、 便宜上、光合成の生成物をブドウ糖とし、生石灰処理の際に生成する低分子量有機物として「酢酸」に限定して説明しています。)

同じ重量のブドウ糖と酢酸を燃焼する時の発熱量は

        688 : 626.1 = 3,822 : 3,478 =  100 : 91

という割合であり、酢酸の発熱量が9%ほど低いと言えます。

光合成は、炭酸ガスと水からブドウ糖と酸素を生成する反応です。大雑把にいえば、酢酸は石油の1/3程の発熱量を持つ可燃性の物質とも言えます。

酢酸は、ブドウ糖と同様の比率の分子であり、また、ブドウ糖ほどではないにしても、ブドウ糖に程近いエネルギーを持っています。

作物が根から酢酸を獲得することは、

    1)同じ重量のブドウ糖の91%のエネルギーを光合成に依らずに獲得すること

    2)同じ重量のブドウ糖の構成元素と同一の元素COHを同じ比率で光合成によらず獲得すること

と表現することができます。

生体内では、ATP(アデノシン-3-リン酸)を使用して自由自在に有機物をいろいろな物質に変換できます

この変換でエネルギーが不足するときは、ATPで補う事ができます。

但し、植物がブドウ糖からATPを生成する場合の効率が55%程度と見込まれており、ヘスの法則から示唆されるエネルギーの不足を充当するだけではないことはいうまでもありません(1モルのブドウ糖から38モルのATPが生成します)。

また、吸収されたさまざなな低分子量有機物が、ブドウ糖以外の物質に転換・同化されていると、また、異なる値となります。

適切な比喩ではありませんが、植物が光合成によってブドウ糖を獲得する行為と外部から酢酸を獲得する行為とを「富士登山」に例えると、「本来、頂上まで全てを徒歩で登るべきところを、8合目或いは9合目から頂上まで徒歩で登るだけでよい」というほど負担が軽減されることを意味します。

或いは、酸素濃度21%で呼吸するのと、濃度100%の酸素で呼吸するのとの違いがあるのかもしれません。

勿論、現実の姿は、この化学熱力学の方程式が示すようには単純であろうはずもありません。

しかし、熱力学的に見れば、植物が低分子量有機物を吸収して、ATPで同化が出来るものであれば、有機炭素の獲得が光合成だけの場合に比べて、僅かなエネルギーで旺盛に生長できる根拠になりそうに思えます。



第19図 ブドウ糖1sを獲得する時のエネルギーの比較
(左が光合成で獲得する時、右が酢酸1sを吸収した時)

光合成で1kgのブドウ糖を獲得すること、根から1kgの酢酸分子を吸収することは、各々、3822kcal、3478kcalを獲得することと考えられます。

不足する344kcalは、ATPで補えるかもしれません

その場合、生体内では、ブドウ糖⇒ATPの反応効率は55%と言われています。

     ブドウ糖100kcal ⇒(ATP転換反応)⇒ ATP 55kcal   (効率η=55%)

不足する344kcalをATPで補うとすれば、344kcalを生みだすブドウ糖のエネルギーは次のようになります。

     344kcal ÷ 0.55 = 626kcal(ブドウ糖として)

ブドウ糖1kgを獲得する場合

     光合成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・3,822kcal・・・・・太陽エネルギー吸収量・・・100%

     根からの酢酸吸収・ATP同化・・・626kcal・・・・・・ブドウ糖消費量・・・・・・・・・17%

言い換えれば、PTA法のいう低分子量有機酸の吸収、同化という有機物を獲得する経路が成り立つのであれば、酢酸を例にすると、熱力学的には170gのブドウ糖の消費で、1000gのブドウ糖が獲得できる勘定となります。

実際にはこのように進行しなくても、エネルギー的に見れば、負荷が軽減される同化経路が存在することが示唆されます。或いは、低分子量有機物は、ブドウ糖ではなく他の同化過程へ利用されるかも知れません。何れにしても、低分子量有機物の獲得は、光合成に依らない有機炭素とエネルギーの獲得になります。

以上が、ヘスの法則に基づいた一つの見方です。

さまざまな有機物が根から吸収される場合に、生体の遺伝子がどのような同化の挙動をするかを予測する手段はありません。

生物の遺伝子は、過去に獲得してきた様々な機能を親から引き継いで、今日に至っています。

遺伝子の塩基配列を解明できても、精々、アミノ酸の配列を記述できるだけであり、そのアミノ酸配列がどのような生体の挙動に繋がるかを解析する術を持ち合わせていません。

生体の遺伝子あるいはその遺伝情報に基づいてどのような生体反応が優先して進行するかは、俄に知るすべを持ちません。

ただ、このHPでは、PTA法(ドッサリース農法)の見方は、熱力学的な見地から植物が光合成に依らない有機物を獲得するとしたならば、恰も光合成が助勢されるような現象が生じても、強ち不自然ではない、という視点を提案するにすぎません。

そして、現実に生じている現象に照らしても、このような視点はさほど不自然ではないように感じます。

特に、この有機石灰質土壌改良資材を果樹や花を愛でる樹木(桜・サツキなど)に施用すると、「収量が衰えた果樹老木が狂ったように以前にも増して旺盛に果実を実らせ、しかも、格別に美味しい」、或いは、「開花力が衰えた花の樹木(桜)に施用すると、老木が以前にも増して旺盛に開花して、見事な見栄えとなる。

しかも、衛生的な資材のため、花見客にとって都合が良い」、あるいは、「庭のサツキが、南側の新築家屋で日陰となり、開花しなくなったものが、この資材の施用によって、旺盛に開花するようになった」・・・このような施用効果の実績は、光合成が弱った老齢樹木や日当たりの悪い樹木に対して「光合成が増したように作用する」と見ることもできます。

 5.4 酸化カルシウムCaOによる天然由来の腐敗性有機物の分解

以上の5.1〜5.3では、植物が有機物を吸収し、同化することの物質収支およびエネルギー面での優位性を、現実に即した酢酸という低分子量有機物を取り上げて、具体的に検討したものです。

炭素肥料を製造する手法として、工業的に得られる高濃度あるいは高純度の低分子量有機酸や、副生物として得られる低分子量有機酸を出発原料として、酸化カルシウムによって中和して有機酸カルシウムを製造するのであれば、特定の化学組成をもつ低分子量有機酸カルシウム塩が得られます。

しかし、現実には、この炭素肥料の出発原料は「糞尿」とか「野菜くず」というような成分が特定しにくい廃物であることがほとんどであり、これらの出発原料には「無数」といってもよい位の有機化学物質(有機炭素化合物)が含まれており、個々の分子の含有率も常に変動していると思われます。

なぜならば、比較的詳細に研究されている大腸菌の1個の細胞を取り上げて見ても、その中に含まれている物質の種類は無数に上ります。なお、この大腸菌は、排せつ物に多量に含まれているものの一つです。

細胞には無数の生体高分子が含まれ、且つ、その生体高分子を構築している途上の中間的な分子、あるいは、重合反応を推進するための中間体など、無数の化学物質が共存しています。

原料に無数の種類の化学物質(有機化学物質)が含まれている状態のものに、生石灰CaOを加え、混合するだけの処理操作であり、一つ一つの分子に着目した処理操作ではありません。

このため、生成物にはまだ多数の化学物質(有機物)が含まれています。ここでは、家畜糞尿のような有機廃物に生石灰を作用させる分解反応について概観します。

家畜糞尿のような天然由来の腐敗性有機物に酸化カルシウムCaOを作用させると、アンモニアが発生し、有機酸が生成します。

生成した有機酸は、カルシウムと結合して有機酸カルシウムとして固定されます。

ここで生じる主な有機酸としては酢酸、コハク酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸などです。

酸化カルシウムによるこの分解反応のあらましを概説します。

5.4.1 タンパク質のアルカリ加水分解反応

第9章の基礎的な事柄において記すように原形質の過半数を占めるタンパク質は、アミノ酸が多数結合した生体高分子物質です。

このタンパク質に酸化カルシウムCaOが作用すると、アンモニアが発生し、有機酸が生じます。

このとき揮発するアンモニアNH3の窒素の由来は、アミノ酸の結合部であるペプチド結合(-NH-CO-)の窒素がアミノ酸単位毎に分断され、更に、強いアルカリ性によってアミノ酸が分解されてアンモニアが遊離して発生するためであり、炭素骨格は有機酸となります。

少なくとも、この反応系で生石灰CaOは硝酸態や亜硝酸態の窒素をアンモニアに還元する化学ポテンシャルはありません。

実際、酸化カルシウムによる分解反応の残留生成物は、蟻酸・酢酸・プロピオン酸・コハク酸というような低分子量有機酸のカルシウム塩です。

このように、酸化カルシウムCaOによる分解反応によって、原形質の約55%を占めるタンパク質のペプチド結合が断裂してほぼアミノ酸毎に分断されるため、処理後、生命現象は維持できません。

即ち、酸化カルシウムによる生体組織の分解によって蛋白質は構成するアミノ酸、或いは、それ以下の低分子量有機物に分解される可能性が極めて高いものといえます。

蛋白質がアミノ酸レベルに分解することは、殺菌という観点から見て極めて重要な意味を持ちます。

また、原形質の過半数を占めるタンパク質がほぼ構成単位のアミノ酸レベル以下に分解されることは、分解残留物(揮発しないで残る成分)の施肥後の細胞膜の透過性においても重要な意味を持ちます。

左の図は、アミノ酸が重合を繰り返してタンパク質を構築する
際の模式図です。

カルボキシル基にアミノ酸のアミノ基が結合して、脱水しつつ
重合を繰り返し、薬品でしかないアミノ酸が生体組織である蛋
白質に変貌します。

タンパク質は巨大な分子ですが、炭素の鎖が、ペプチド結合
で組み合わされたものです。

図は、炭素原子と炭素骨格の結合を黒く示しています。

図では、グリシン←アラニン←グリシンというように順次アミノ
酸が結合する場合を模式的に示していますが、他のアミノ酸
でも同様です。


元素の色分け
第20図 アミノ酸の重合の模式図
第21図 CaOによるタンパク質の分解の模式図

酸化カルシウムCaOによるタンパク質の分解を模式図で示したものです。

酸化カルシウムCaOは、非常に活性な側面を持つ薬品です。

しかし、通常は空気中の水分や炭酸ガスを吸収しているために、その性質は穏やかなものです。

この分解反応に用いる酸化カルシウムは、極めて活性が高い酸化カルシウムですが、実は、この活性が高い酸化カルシウムこそが酸化カルシウム本来の性質といえます。

大多数の人が日頃接する酸化カルシウムは、酸化カルシウム本来の性質を現わしていない、と見ることもできます。

「活性のある生石灰」という表現に対して「そのような生石灰は聞いたことがない」とする見方も散見しますが、生石灰粒子の表面が水分や炭酸ガスを吸収した生石灰しか体験したことのない人にとっては奇異に感じるかもしれません。

生石灰粒子の表面が炭酸カルシウムや水酸化カルシウムで被覆されていると生石灰本来の「活性のある生石灰」とはなりません。

敢えて混乱を招くかもしれませんが、ここでは、必要に応じて「活性のある生石灰」というような表現を織り交ぜて説明を進めています。

このような酸化カルシウムと家畜糞尿や生ゴミのような天然由来の腐敗性有機物を接触させるとアンモニアが発生します。

このアンモニアの由来の一つはアミノ基とタンパク質の骨格に含まれる窒素原子と考えられます。

アンモニアは大気に揮発し、系外へ去ります。

窒素が除かれた炭素骨格の断片は、そのまま反応系に残留します。

ただ、反応系には多量のカルシウムがあるため、生成した有機酸は「有機酸カルシウム」の形態で存在します。

有機酸カルシウムは、概して水溶性であるばかりでなく、酸によって溶解します。

このように、タンパク質が酸化カルシウムによって分解された際の残留物は、ある意味で、タンパク質の断片であり、この断片を利用してタンパク質を作るとすれば、炭酸ガス・水から合成するよりはより少ないエネルギーで構築できるように思われます。

ここでは、生体組織の中心的な役割を持つタンパク質のCaO分解の操作が、ほど良い程度の分解に止まり、再び、生体組織を構築するには便利な素材(低分子量有機物)が多量に保存されていることが視覚的に推察できます。

PTA法は、巨大な生体分子を小さな低分子量有機物まで分解して、この低分子量有機物を作物に供給して、再び、生体子分子に同化する、という見方をします。

PTA法では、炭酸ガスを経ることなく有機炭素を再び植物に還流するために、一般的に想定されている炭素の生物地球化学的循環に比べて、少ないエネルギーで炭素が循環することができます。

必ずしも適切な事例ではありませんが、「組み立て式プレハブ住宅」のように、車両に積載できる程度の部分に分割してなるプレハブ建築は、一度分解しても、トラックで場所を変え、簡単な手間で組み立てることができます。

 「トラックに積載できる大きさ」が、「根から吸収できる程度の有機物」であり、有機物で吸収された有機炭素であれば、簡単に利用できるのではないでしょうか。

■普通の光合成がブドウ糖という単一の化学物質の合成であり、このブドウ糖から全ての生命活動が導かれるものであれば、建築現場で丸太から製材して家屋を建築するようなものであり、大変な手間です。他方、プレハブ住宅であれば、積み木を組み立てるように簡単に組み上がります。精々、「ボルト・ナット・座金」というような接合部材を新規に追加する程度です。

■光合成移転農法は、光合成によって生じた有機炭素が、生態系をさまざまな形の有機炭素として流れ、その過程で「生石灰処理」のような操作を受けて「細胞膜を透過しやすい程度の有機炭素化合物(低分子量有機物)となる

  
 
第22図 低分子量有機酸の例(数値は、分子量の概略値)
5.4.2 生体膜の分解

単純脂質は、グリセリンの3つの水酸基(-OH)に脂肪酸がエステル結合しているものです。

この脂肪酸の一つがリン酸に置換されたものがリン脂質です。リン脂質は生体膜の主たる構成物質です。

生体膜は、細胞の組織を機能毎に区画する大切なものです。生体膜が存在しなければ細胞は機能しません

このリン脂質からなる生体膜に対して酸化カルシウムCaOが作用すると、先ず、リン脂質のリン酸が燐酸カルシウムとなって取り除かれ、生体膜は膜としての機能(形状)を失います。

生体膜からリン酸が失われてバラバラとなると、生体膜に内包されたさまざまな物質は外部に漏洩して混然一体となって、最早、生体の機能は失われます。

上の図のように生体膜(細胞膜)は、内外に対しては親水部が配列し、親油基は互いに2重膜の内側に配置されています。

そのリン脂質間の結合は大変弱く「流動モザイク」といわれるように常に揺動しています。

因みに、隣接するリン脂質分子は、毎秒1千万回程度の頻度で入れ替わるような激しい揺動です。

リン脂質の親水基であるリン酸基がカルシウムによって除去されると、親油基である脂肪酸は、水相である細胞質においては、膜を形成しつづける根拠を失い、互いにバラバラとなります。

例えが適切とは言い難いかもしれませんが、生体膜が消滅するということは、ミカンの果実の一房毎を仕切る皮が消滅してミカンジュースのようになった状態です。

それまでのミカンの房は固体のように手にとって食べることができますが、生体膜が消滅すると、全体としては液体となり、手にとって食べることはできません。

脂質と酸化カルシウムとの反応で最も重要なものは、生体膜であるリン脂質のリン酸に対してカルシウムが強固に結合する反応です。

このため、細胞膜という二次元的に広がりを持つ生体膜が「ゼロ次元」ともいえる点にしかならず、何かを包含する膜の機能が消失され、それまで膜で包んでいた内容物は、完全に解放され、周囲の物質と渾然一体となります。

細胞には、細胞膜や核膜の他に機能を区画する生体膜があり、それらは全て膜の機能が失われてしまいます。

このように生体膜の二次元構造が消失すると、膜の内部と外部を仕切る機能が消失し、個々の機能が消失するため生体膜を持つ生命体は生命を失います。

生体膜の構造が維持できない状況の下では、生体膜に保持されていたさまざまな組織が外部に漏洩するため、酸化カルシウムとの接触が良好なものとなり、分解処理が妨害を受けることなく良好になされます。

即ち、細胞膜の消失による生体機能の消失で殺菌がなされ、さらに、バリアー(障壁)が消失して全体が反応剤CaOの作用を受けやすくなります。

5.4.3 核酸の破壊

核酸は、生命の遺伝情報をつかさどる生命体の本質ともいえる物質です。

ヌクレオチド(塩基(ATGC,AUGC)−五炭糖(デオキシリボース、リボース)−リン酸)が多数連なって全ての生命体の遺伝子を形成しています。

このヌクレオチドが多数連なる部位はリン酸です。

酸化カルシウムCaOによるリン酸の除去は、核酸に対しても同様です。

核酸はリン酸によって巨大なつながりを持つ分子ですが、酸化カルシウムCaOがリン酸と結合してリン酸カルシウム(Ca3(PO42)を生成して核酸からリン酸が取り除かれます。

このため残余の成分は互いに結合する手掛かりを失い、ひとつ一つのヌクレオチドがリン酸を失って互いの結合力を消失します。

このような作用によって核酸の鎖からリン酸が取り除かれるため、一つひとつの塩基毎(ヌクレオチド毎)にバラバラに分断されます。

その後の、分解された成分の更なる分解については推測する手掛かりを持ちませんが、この分解処理の生成物には「酢酸カルシウム」ばかりでなく「蟻酸カルシウム」も多量に含まれていることから、この蟻酸の由来がヌクレオチドの塩基(ATDG、AUGC)に由来していることも容易に推測されますが、検証はされていません。

参考までに、核酸を構成するATGCのヌクレオチドの原子の配置を次に示します。

酸化カルシウムCaOがこのようなヌクレオチドに作用すると、タンパク質と同様にC-N結合が切断されて、アンモニアと低分子量炭素化合物とが生成することが予想されます。

このように酸化カルシウムCaOによる天然由来の腐敗性有機物(家畜糞尿や生ゴミ、野菜屑等)の分解反応では、タンパク質、生体膜、核酸という物質に対して強い分解作用を発揮します。

生体組織を構成する成分にはそれ以外の多糖類、二糖類、単糖類、脂質など成分もありますが、それらのひとつひとつの反応前後の挙動が特定されているわけではありません。

しかし、生体組織に生石灰CaOを適切な条件の下で作用させると蛋白質、核酸、生体膜という成分が確実に分解されます。

下の図では黒丸●が炭素原子、赤丸が窒素原子、水色が酸素原子、茶丸がリン原子、橙丸が水素原子を示します。

炭素骨格●−●が残り、炭素・窒素結合●−が切断するものと思われます。二重結合や結合を示す色は無視しています。

 酸化カルシウムによるDNA、RNAの分解で最も重要なものは、リン酸の引き抜きです。

 不溶性リン酸カルシウムの生成によって、少なくとも、DNA、RNAは各ユニット毎にバラバラに分
解されます。

 引き続き、塩基の分解が見込まれますが、その分解反応がどのようなものかは証明されていませ
ん。

 糖は、更に燐酸と結合し、リン酸の持つ多数の結合子が各ユニットを結びつけています。

そして、これらの塩基は、その左右の外側の糖と結合しています。

NAの塩基のアデニンAとチミンTとを模式的に示します。

第23図(a) 遺伝子の塩基配列の例(アデニンとチミン)

RNAでは、チミンTがウラシルUとなります。

第23図(b) 遺伝子の塩基配列の例(アデニンとウラシル)


 DNAの塩基のグアニンGとシトシンCとを模式的に示します。

第23図(c) 遺伝子の塩基配列の例(グアニンとシトシン)

DNAの配列を模式的に示した図です。

但し、図の左右のリン酸と糖の鎖は作図の手間を省くために単純に左右対称としています。正しい構造は、二重らせん構造になります。別の資料を参照してください。

上の3図に示したATGCの4つの塩基の何れかが中央に配置される。

遺伝子の鎖に酸化カルシウムCaOが作用すると、リン酸カルシウムが生成し、リン酸は遺伝子の鎖から取り除かれます。

このため、分子量が数百万にもなる巨大な有機分子である遺伝子も速やかに単一のユニット毎に分断されて低分子量有機物に転換されます。

巨大な有機分子であるDNA、RNAがCaOの作用でバラバにされる様子を模式的に示すための図として示しました。

第24図 DNA配列の模式図

アデノシン‐3‐リン酸ATPの模式図を示します。ATPは、全ての生命体において共通してエネルギー通貨として用いられています。

遺伝子や酵素の指示に従い、所定の元素の物質収支が釣り合う範囲において、エネルギーが不足する場面ではATPの左側のリン酸を放つことでエネルギーを与えることができます。 また、その場合のエネルギーは加算できる特徴があります。

その生体内で万能の威力を発揮するATPも他の塩基や炭素骨格と比べて、あまり違いはないように見うけられます。

勿論、その機能は全く異なることは言うまでもありません。

ここでは、いろいろな生体組織を構成する物質の姿が、そんなに違いのないことを模式的に示しました。

第25図 ATP(アデノシン‐3‐リン酸)の模式図
 5.4.4 化学結合の結合エネルギー

左の図は、有機化合物に関連する幾つかの化学結合の結合エネルギーを示したものです。

数値の単位は「kcal/mol」としています。

家畜糞尿や生ごみなどの有機廃物に生石灰CaOを添加して混合した場合、アンモニアが発生します。

このアンモニアの窒素原子は、蛋白質や核酸の骨格に含まれる窒素原子と推測されます。

即ち、「C-N」「N-N」というような結合が断裂して窒素原子が取り除かれ、アンモニアNH3が生成するものと推測されます。

勿論、このような反応を実際にトレーサーで検証した訳ではありません。

ただ、生成物から、生石灰の混合によって得られる化学エネルギーのレベルが極度に高いものであって有機廃物中の殆どの化学結合を無差別で断裂するものではないことが予測されます。

また、この図から、そのような推測が、強ち現実離れしたものではないことが判ります。

5.5 植物の有機物の吸収と低分子量有機酸の挙動

PTA法(ドッサリース農法)では、植物の物質吸収と同化は、凡そ、次のように考えています。

@ 植物は経根吸収によって低分子量有機物を吸収できる。

A この低分子量有機物は、主として、有機廃物の生石灰処理で生成する有機酸カルシウムの有機酸を想定している。

B 処理生成物にはアミノ酸はなく、その吸収は想定していない。

C この有機酸カルシウムは水溶性であり、酸性が強いほど非解離状態の有機酸の割合が多くなる。

D 有機酸の細胞膜の透過は、濃度拡散となり、細胞膜内側は吸収水の水流で低濃度領域が形成され、拡散に適している

E 非解離の有機酸が細胞内へ移行することで、有機酸の解離平衡は非解離酸の生成に向かい、結果として、低分子量有機酸は、順次、非解離酸となり、細胞に取り込まれる

F 経根吸収によって植物内に取り込まれた有機物は導管を介して葉部に運ばれ、蒸散によって葉部に濃縮される

 以下、詳細に検討します。

【植物の有機物の吸収】

PTA法(ドッサリース農法)では、植物(作物)が根から有機物を吸収することを前提としています。

ところが、かなりの割合の人が、「植物は、無機物を吸収して有機物を合成するものであって、植物は有機物を必要とせず、吸収もしない。」という見方をしています。

圃場に施肥された堆肥のような有機物は、ゆっくりと分解して無機化し、その際に、有機物に含まれていたNPKなどさまざまな無機成分が解放されて、無機物の状態で作物に吸収される、というような見方です。

このような堆肥や有機質資材の理解によって、「植物は有機物を吸収しない」と思われているようです。

しかし、さまざまな研究によって、植物が有機物を吸収することは確認されています。

古くは、従属栄養植物の研究の過程で、ある種の植物は植物に寄生し、植物の生み出す有機物を吸収していることが判り、「従属栄養植物」という概念が生まれました(WOOD-WERKMAN)。

また、食虫植物のように捕獲した動物を餌にする植物もあります。

しかし、従属栄養植物や食虫植物は、私たちの日常生活において主食となったり、主たる副食となるような重要な役割を演じていません。精々、研究者の研究テーマとして、研究者の生業を提供しているだけともいえます。実質的には、全く経済性を持たない知識でしかありません。

このため、植物(作物)の根から有機物を吸収することに関しては、格別重要視されていなかったといえます。

PTA法(ドッサリース農法)では、家畜糞尿や食品加工残渣のような有機物に生石灰を添加して分解し、低分子量有機物となして圃場に施肥します。

そして、PTA法(ドッサリース農法)では、この低分子量有機物を作物に吸収させ、見方によっては「炭素肥料」というように考えて栽培を進めるものです。

植物が有機物を吸収することは知られています。

ただ、その吸収量は生長に影響するほどのものではない、という認識が支配的かもしれません。

しかし、PTA法(ドッサリース農法)では、植物に吸収される有機物が生長に影響するものと考えます。

家畜糞尿や食品加工残渣を生石灰で分解した時のスラリーの成分は、低分子量有機酸カルシウムを主体としたものです。

植物の有機物の吸収は、細胞膜における物質移動の問題です。

PTA法(ドッサリース農法)としては、できるだけ低分子量有機物が細胞膜を透過して植物体内に取り込まれることが望ましいと言えます。

この細胞膜の物質透過については、一般的に次のように認識されています。

(高橋英一著「ここまでわかった作物栄養のしくみ」1993年12月20日農山漁村文化協会発行:194頁〜202頁参照)

(この記載の概要は、概ね次のように要約できます。詳細は原典をご覧ください)

    1) 水やガスは細胞膜を透過する

    2) 分子量が小さい有機物は透過する。分子量の目安としては200以下

    3) 電荷をもつイオンは透過しにくい

    4) 大きな分子は透過しにくい

    5) 電荷をもつイオンでも、能動移送で細胞内に取り込むことができる

(上記文献以外のもので、次のことが検証されている)

    6) アミノ酸が吸収されている事実は、検証されている。

無数に存在する化学物質について、細胞膜の透過を正確に表現する手法はないようですが、凡その目安として、「小さいものを透過しやすく、イオン化していると透過しにくく、一部、イオン化していても能動移送で取り込むことができる」というようなものでしょうか。

さて、PTA法では、結果的には有機酸カルシウムが主成分となって施肥され、この有機酸カルシウムの有機酸が植物に取り込まれて、植物に同化されるものと考えて栽培を進めます。

ここで、有機酸は酸である以上、ある条件の下では解離して酸はマイナスイオンとなって存在します。

この低分子量有機酸を便宜上、HAと記して次のように解離するものと考えます。

        HA = H + A

酸の解離に関しては、解離定数Kaというものがあります。さまざまな有機酸の解離定数Kaは文献にあります。

それぞれの濃度を[HA][ H][ A]として示します。

解離定数Kaは次のように定義されます。

        Ka = [ H][ A]/ [HA]

ことPTA法(ドッサリース農法)でいえば、それぞれの有機酸HAがイオン化されているか否かが重要です。

仮に、有機酸がイオン化されているのであれば、細胞膜を透過することは困難と思われます。

有機酸が解離せずに非解離酸として水に分散しているのであれば、細胞膜を透過する可能性が高まります。

その意味で、前記の式を次のように書き換えます。

        [HA]/[ A] = [ H]/Ka

この式は、非解離状態の酸分子の濃度[HA]と解離状態の酸イオンの濃度[ A]の比率を求めるものです。

ここで[ H]は水素イオン濃度で、pHという値で馴染みのある因子です。

        pH = -log10[ H]= log10(1/[ H])

一般的な土壌のpHは4〜7程度であり、概ね中性とされるpHが6.5です。

そして、通常は作物が根酸を放出することから、栽培が進行したり、重ねることで土壌のpHは徐々に酸性化することになります。

また、農業資材の性質を推し量る尺度として「ク溶性」という概念があります。

2%くえん酸水溶液(pH2.1)に対する資材の溶解性を示す尺度です。

そして、根の先端から放出される根酸は概ね1%くえん酸水溶液と同程度のpHと言われています。

即ち、ここで対象となるpHは2〜7程度であるとしてよいでしょう。

根の先端が約pH2.5で、土壌のpHが精々pH7程度と見込みます。

今、把握したいのは 

             [HA]/[ A] = [ H]/Ka

という酸の解離の程度です。

次いで、pHと水素イオン濃度[ H]の関係を概観します。

          pH    2    3   4     5    6    7

         [ H]   10−2 10−3 10−4  10−5  10−6  10−7

敢て、pHと水素イオン濃度の関係を具体的に示したのは、両者が簡単な関係にあるためです。

文献にある酸解離定数KaはpKaの形で与えられることもありますが、Kaそのものを記載していることもあります。

次に、低分子量有機酸のいくつかの酸解離定数Kaを示します。

また、その下には各々の有機酸の[HA]/[ A]のpH依存性を図示しました。

根の先端から放出される根酸が凡そ1%くえん酸と同程度と言われており、pH2.4程度であれば、図から明らかなように、多くの低分子量有機酸は非解離の酸分子として水中に分散していることが判ります。勿論、実際のpHは判りませんが、現実に、リン酸肥料の性質を評価する目安で、「く溶性(くえん酸に対する溶解性)」という指標があり、そのpHがどの程度のものであるかを、ここでは参考にしています。

即ち、低分子量有機酸カルシウムの形態で施肥された有機酸は、作物の根の近傍のpHにおいては、解離する割合は低く、多くの場合非解離の酸分子として水に溶けており、濃度拡散によって細胞膜を透過しやすい状態にあるといえます。

そして、仮に、細胞膜を透過したとすれば、植物の土壌からの水分吸収の水流に同伴して上部へ運び去られるために、有機酸を透過させた細胞内の有機酸濃度は直ちに希釈される。

このようにして、細胞膜の外から内側へ向かう有機酸の濃度拡散は継続して行われることが予想されます。

有機酸は「酸」という解離しやすい形態の分子であるため、細胞膜を透過するに際して不利な側面を持ちますが、根酸によって生じる根の表面のpH状態では、ほとんどが分子状の有機酸となって溶解していることが予測され、「解離」の可能性が吸収を阻害する要因にはなり難いといえます。

 【土壌のpH:室温等の測定】

●私たちは、圃場の土壌のpHを求めるときには、土壌を採取し、水に溶解してpHを求めます。

勿論、その手順は目的に応じて決まっており、マニュアルに沿って土壌pHが測定されています。

しかし、土壌の全ての場所で、その測定されたpHであるというものではありません。

局部的に見れば、土壌のpHに対して、作物の根のpHはより酸性に傾いていると言えます。

●私たちは、省エネのため、出来るだけ室温を測って冷暖房の温度を調節しています。夏なら28℃、冬なら18℃に沿うようにしています。

しかし、その部屋に住んでいる定温動物のヒトの体温は39℃とか、36℃とかでかなり安定しています。

部屋の温度計の場所では、間違いなく18〜28℃の範囲の適切な温度ではあるのですが、ヒトの体温までは18〜28℃にはなっていないようです。

●作物を栽培する形態に「養液栽培」があります。さまざまな成分を厳密に管理できる栽培手法であることから、今日ではなくてはならない栽培手法です。

その場合、土壌のpHを測定して、養液のpHを土壌pHに合致させてしまうと、現実の土壌の経根吸収とは別の条件となってしまいます。

低分子量有機酸の名称(分子量) 酸解離定数Ka またはpKa
ギ酸(46.03) Ka=1.8×10^(-4)
酢酸(60.05) Ka=1.8×10^(-5)
プロピオン酸(74.08) Ka=1.7×10^(-5)
酪酸(88.11) Ka=1.5×10^(-5)
くえん酸(192.12) pKa1=3.128,  pKa2=4.76,  pKa3=6.40


第11図(再掲載) 酸性領域における低分子量有機酸の未解離分子の割合

下の図は、根の先端部における土壌中の固体ドッサリース(低分子量有機酸カルシウム)と根の先端との間のpHの推移を模式的に示したものです。

図において、根の先端の細胞膜の外側表面のpHを凡そ2.5、ドッサリース固体表面のpHを7と仮定していますが、この数値はあくまでも仮定したものです。

さらに、その間のpHを赤い線で示しましたが、「ドッサリース側が高pHで、根の先端側が低pHとなっている」旨を示しているにすぎません。

根の先端部とドッサリースとの間隔は、根が伸長することから「だんだん接近する」ものと思われますが、ここでは適切に表示することができませんので、固定された位置関係で説明します。

第26図 植物の根の周辺のpHの模式図

更に、次の第26図(a)はドッサリースから溶けだした有機酸の濃度拡散を模式的に示したものです。

有機酸の濃度は相対濃度であり、単にドッサリースの固体表面を離れて、根の先端に近づくほど有機酸の濃度が低下することを青線で模式的に示しました。

ここでいう有機酸の濃度とは「その地点における非解離有機酸分子と解離有機酸イオンとを合わせた濃度」です。

細胞膜の外側表面に到達した有機酸は、濃度拡散によって細胞膜を透過するものと推測されます。

さらに、根の先端部(根毛を含む)の内部に透過した有機酸は、根が活発に吸収している水流に同伴して速やかに植物体の上部へ運び去られてしまい、根の先端部の細胞内の有機酸濃度は極めて低い値となります。

この根の先端細胞の内部における有機酸濃度が水流によって極めて低い値となることから、その濃度差が常に大きく保たれることで、根の先端から低分子量有機酸を主体とした低分子量有機物の吸収が水流と共に間断なく行われるものと推測します。

尚、下の図では、理解を助けるためにpH値の一部や、赤い線のpHの推移をそのまま残しています。

根における水分の吸収は、植物の蒸散と深い関わりを持ちますが、関係湿度が低く、温かい空気の流れがあれば活発な蒸散が生じ、根において大きな水流が生じます。

根における水分の吸収は、根の表面の細胞膜の内面から細胞膜を透過した有機酸を根の先端細胞から運び去る働きをします。

この根の表面細胞からの有機酸の除去は、根の先端部における分子状(非解離)の有機酸濃度を下げるために、根の先端細胞の外表面における有機酸の細胞内への拡散を助ける結果となります。

このように、根の水分吸収は、根に吸収されたさまざまな成分を上部へ運び去ることで、根の先端部におけるこれら吸収成分の濃度を低下させ、更なる吸収を手助けすることとなります。

特に、低分子量有機酸は、pHの状態によって分子状とイオン状との割合が変化し、イオン状態であれば電荷をもつために細胞膜を透過しにくいことが予想されます。

ここでは、より多くの低分子量有機酸を植物体内へ取り込むことが望ましく、そのためには、水分の吸収が低分子量有機酸の吸収を助勢することとなります。

その意味で、栽培に際しては水分を遮断するような栽培は、この資材を施用する場合には望ましくありません。

第26図(a) 植物の根の周辺のpHの模式図(有機酸の濃度拡散の様子)

次の第26図(b)は、前記2つの図面に、有機酸の解離の度合い(緑色の矢印線)を加味した様子を模式的に示したものです。

緑色の矢印は、低分子量有機酸がドッサリースの側から根の細胞に向かって拡散する時のpHの低下(赤い線)に伴い非解離有機酸分子の割合を高める様子を模式的に示したものです。

有機酸全量(非解離有機酸+解離有機酸イオン)は、濃度拡散であるために青い線の矢印のように低下します。

物質が細胞膜の透過するには、電荷を持たない方が有利と推測されます。

ここで、都合のよいことに有機酸の解離の状態を示す[非解離有機酸/解離有機酸イオン]は、pHの低下と共に高まることが前記の有機酸の解離のpH依存性から判ります。

とすれば、ドッサリースに含まれていた低分子量有機酸カルシウムの低分子量有機酸は、解離しない有機酸分子の割合が高い状態で植物の根の表面に存在することとなります。

この解離しない低分子量有機酸の濃度の高さが植物の根における吸収に影響します。

即ち、低分子量有機酸が濃度拡散によって根の細胞膜を透過する量は、根の外表面(境界膜)における非解離有機酸濃度に影響されるものと予想されます。

また、このようなPTA法における低分子量有機酸が植物に吸収されるメカニズムには、濃度拡散が関与していることから、「根の先端部の細胞内における低分子量有機物の濃度の低下」が重要な牽引力となっていることが推測され、その意味では、栽培に際して適切な水分の補給に心掛けることが重要な作業となるものと推測されます。

第26図(b) 植物の根の周辺のpHの模式図(有機酸の解離の様子)

前記第26図(b)では、ドッサリースが右側から左側へ拡散して、吸収される図となっている。

次の図は、反対に、左側から右側へ拡散して吸収されるように図示したものです。

土壌に施肥されたドッサリースの有機酸カルシウム(固体)は、土壌中の水分に溶解したり、根の先端部から放出される根酸によって溶解して、水に溶け出す。

そして、有機酸カルシウムを含む水溶液が根の表面に近づくに従い、根酸によってpHが低下し、非解離状態の有機酸の割合が高まった状態で根毛の表面に到達し、根毛の細胞膜に対して非解離状態の有機酸が濃度拡散によって透過する。

植物は、葉部の気孔から大気に対して水分を蒸散し、その蒸散水分量を補う形で土壌の水分が根毛から吸収され、導管を通じて葉部に至る。

このようにして根から導管を通じて葉部に至る水流が形成されており、NPK或いはCa、Mg、その他のミネラルは土壌から吸収され、葉部に移送されます。

この蒸散によって形成される水流は、根毛の細胞内(根毛の細胞膜の内側表面)にさまざまな成分の濃度が低い水流の領域を形成し、この濃度の低い水へ向かって細胞膜の外部からさまざまな物質が濃度拡散する。

即ち、根毛の細胞膜内の成分濃度が極めて低いので細胞膜を介した濃度拡散がより容易となる。

しかし、その水流は蒸散によって水分が分離されるため、葉部においてはさまざまな吸収された成分が高濃度となり、同化に利用されやすい状態となる。

PTA法の場合、有機酸であれば、イオン化することで電荷を持てば根毛の細胞膜を透過しにくい状態となるが、たまたま、植物の根からはかなり酸性度の強い根酸が放出されており、有機酸が高い割合で非解離状態となっており、細胞膜を透過し易い状態にある。

これがため、非解離状態の有機酸が細胞膜を透過し、根毛細胞内に至り、直ちに、水流によって根毛細胞から取り除かれて導管に至る。

このように考えると、土壌に施肥された有機酸カルシウムは、さほど問題なく作物に吸収され、植物の同化に寄与するように思われる。

 上記の土壌水の成分の電荷の状態を検討します。ここでは、ドッサリース中の有機酸カルシウムを酢酸カルシウムのみとし、また、根酸をHAとし、根酸HAが最も強い酸性を示し、根の周辺の水のpHを支配しているものと仮定します。

 土壌水の水、酢酸カルシウム、根酸が解離し、左のようになっています。

 しかし、其々の解離反応は、さまざまな解離平衡に支配され、ここでは根酸HAの水素イオン濃度が支配しています。即ち、[H+]が大きな値となっていることが予想されます。

 勿論、この解離平衡の関係は平衡状態におけるもので、現実には、過渡的な現象となっており、非平衡状態であるため、このような平衡関係に向かうべく系が移行しつつあるものと推測されます。

 更に、水溶液の電荷は、正電荷と負電荷とが釣り合っているため、電荷の平衡関係も保たれているはずです。

 そして、根酸HAが支配してるとすれば[Ca2+]の濃度は小さな値となり、水溶液中のカルシウムCaはイオン化されている割合が小さく、生体膜を透過し易い状態にあるといえます。



5.6  酢酸以外の有機酸の吸収

家畜糞尿のような有機廃物に生石灰CaOを添加して混合して、殺菌・分解したときの生成物には前述のようなさまざまな成分が含まれています。

その成分は原料によっても異なりますが、概ね、生体高分子成分が低分子量成分にまで分解された断片が残っています。

この生石灰CaOによる分解作用は、ペプチド結合の断裂、リン酸の固定、CN結合の断裂というような見方ができ、さまざまな生体高分子量物質を分解します。

この時、分解生成物として生成する低分子量有機物(有機酸)にはさまざまなものがあります。

ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム等多数の低分子量有機酸が検出されます。

これは、生体組織(細胞組織等)には、それらを構成する主要な構成成分の他に代謝の中間体も含まれており、仮に大腸菌1個を取り上げて見ても数えきれない有機分子から構成されています。

その無数の有機分子を生石灰CaOによって分解した時の生成物も多数になり、また、その比率も様々なものとなります。

特に、原料が「廃棄物」として取り扱われているため、さまざまな種類の廃棄物が混合しているものを「一つの原料」として取り扱うのがほとんどで、一般的な鉱工業産業の原料と異なります。

この第5章の冒頭において、「酢酸」を取り上げて、光合成との比較をしています。

他の低分子量有機酸については、適切な比較をするものが思い浮かびません。

ただ、根から低分子量有機酸が、水分吸収と共に植物組織に供給された場合には、さまざまな同化の過程に直接入り込んで利用されるものと思います。この点については全くその推測を裏付ける根拠を持ちません。

そして、何れの低分子量有機酸であっても、当該植物にしてみれば、光合成を経て獲得するよりはエネルギーの消費が少なくて済むように思います。

次に、第15図を再掲載します。

PTA法(ドッサリース農法)では、低分子量有機物を炭素肥料として施肥して作物に供給するように考えて栽培を進めるものですが、第15図の右側の「低分子量有機物」が植物体の様々な同化の過程に利用されていることを模式的に示したものです。

ただ、一次同化、二次同化に吸収された低分子量有機物が利用された事実を検証した訳ではありません。

第15図(再掲載) 生物地球化学的循環からみた堆肥化処理とドッサリース処理の違い
5.7 生成物中のさまざまな成分

PTA法(ドッサリース農法)では、家畜糞尿や野菜くずのような有機廃物に生石灰CaOを添加して分解処理をし、その生成物を「炭素肥料」と考えて栽培を進めるものです。

このように、多くの場合には出発原料が「廃物」のために成分が常に変動するおそれがあります。

次の第30図「食物連鎖における吸収と同化」に示されるほとんどのものが、生石灰処理の対象となります。

植物残渣、排せつ物(分解者)あるいは動物組織等が生石灰処理の原料となります。

以上に述べたタンパク質や核酸、糖質、脂質というような成分ばかりではなく、各々の生成の過程に関与する様々な物質や代謝の過程におけるさまざまな物質に対して生石灰が作用して様々な生成物を生じます。

この中のどの物質を取り上げてみても、殆ど無数ともいえる有機物が含まれています。

そのような有機物の宝庫ともいえる原料に生石灰が作用し、低分子量化、中和反応、加水分解等の反応が一気に並行して進行します。

結果として、生成物中に固定される有機物は多種多様なものとなります。クエン酸回路だけを取り上げても、10種類程度の有機酸が関与しており、それらの有機酸は、有機酸カルシウムとして固定されます。

なお、この生石灰と有機酸の中和反応は、有機酸の種類が多種多様であり、生石灰CaOが2価の塩基であるため、カルボン酸と結合する種類の組み合わせが一様ではなく、生成する有機酸カルシウムの分子式は多様なものとなります。

原料自体が、排せつ物や植物残渣というような廃物であるため、成分が不安定なものであり、さらに、其々のごく一部を取り上げてみても無数の有機物が含有されているために、ここでは、特定の成分を取り上げることはできません。

ただ、タンパク質、核酸、脂質、糖質というような主要な構成成分の他に其々の同化における中間体があり、これらの物質が生石灰によって固定されて、生成物を構成します。

このため、中間体のようなもののカルシウム塩が「炭素肥料」として圃場還元され、その有機分が吸収された場合には、作物における光合成の過程ではなく、一次同化や二次同化の過程の中間体として直接作用することは容易に推測できます。

このように、生石灰処理の生成物に含まれる低分子量有機物は、生命体における同化に深くかかわりあいのある物質か、それから誘導される物質であるために、作物に取り込まれた場合には、極めて、迅速に同化過程に取り込まれるものと思われます。

もちろん、「迅速か否か」という視点では、比較するものがなく適切ではありませんが、施肥行為としてそれなりの効果があるのではなか、という見方ができるものといえます。

筆者は、この低分子量有機物の吸収・同化の過程を科学的に検証してるものではありません。単に、推測しているだけのことです。

第30図(再掲載) 食物連鎖における吸収と同化
5.8  物質の推移:  採卵鶏を参照して

(化学式とは直接関係はありませんが、現実の効果を簡単に記します。当業者の方は、其々が必要とする規模に換算する術をお持ちと思いますので、ここでは普通の消費者が判りやすいように、1羽の採卵鶏の1日当りの物質の収支として示します。飼育羽数を掛けると施設の規模に応じた数値が得られます。)

採卵鶏を参照して、物質の推移を例示します。

採卵鶏を取り上げた理由は、鶏糞に異物が入り込むことが少なく、また、洗浄水が大量に追加される可能性がなく、「固体廃棄物」として、鶏糞を取り出しやすいためです。

さらに、採卵鶏の生産物は「卵」であって、多くの人々に馴染みが深く、また、その産卵の頻度も凡そ9割と計算しやすいためです。

次の表は、下から順番に、採卵鶏1羽の餌→鶏糞→卵→鶏糞処理量→炭素肥料生産量→野菜の生産量という一連の推移の概要を示したものです。

あくまでも、目安に過ぎませんが、それぞれの物質の水分量(水色)と固形分量(黄色)の占める割合を示しました。

棒グラフは10g単位で示していますので、各々の数値を正確に図示されていません。

あくまでも、凡その目安となる程度の数値ですが、詳しくは、各々数値で示したものでお考えください。

【採卵鶏の餌】

通常、採卵鶏は毎日105g程度の飼料を食べます。飼料の成分は、いろいろな成長段階に応じて調合割合を変えていますが、凡そ、105g程度の給餌量となっています。

【鶏糞量】

1羽の採卵鶏は、平均して毎日160gの鶏糞を排泄します。その水分は日本では夏に高くなりますが、凡そ、75%です。

【卵】

鶏は、凡そ10日に9個程度の卵を産みます。但し、10日に7個位までは飼育しているようです。

表では、個体重量55gの卵を毎日0.9個産むものとしています。

【鶏糞処理量】

生石灰CaOによる鶏糞処理では、鶏糞に水を添加して処理状態を整えます。およそ水分90%として処理をするものとすれば、処理量としては400gになります。

【粉末資材生産量】

生石灰処理の後、反応生成物を通風乾燥して粉末化します。このサイトではこの粉末を「ドッサリース」と称しています。

その生産量は、およそ130gとなります。

【野菜生産量】

生産されたドッサリースを利用するには、対象が多すぎて全てを示すことはできません。

ドッサリースを利用できるものは、陸上植物のほぼ全部が対象となります。

各々の対象(品目)に応じて、おおよその最適施用量があります。

ここでは、対象を人参とし、ドッサリースの施用量を2t/10aとし、標準収量を2500kg/10a、増収率40%としています。

一羽の採卵鶏の鶏糞で生産されるドッサリース130gの施用面積は0.065u(約25p□)であり、通常であれば160gのニンジンが収穫されます。

ドッサリースの施用により、凡そ40%程度の増収となり、その収量は224g程度となります。

ドッサリースによる増収効果は、人参の重量で64gとなります。

栽培の品目にもよりますが、「美味しさ」が評価されない品目では、概して、増収効果だけがPTA法(ドッサリース農法)の増収効果となります。

芝・牧草・街路樹・庭木・デンプン用馬鈴薯・ビートのようなものです。

私たちが直接口にする作物では、「食味」「美味しさ」が云々される場合が多々あります。

メロン・国産米・ワイン(ブドウ)・フルーツ全般・野菜全般・・・・私たちが口にする農産物には、大多数の割合を占める「美味しくないもの」に比べて、10倍以上も高価な美味しい同一品目があります。

即ち、「食味の改善」というドッサリース農法の効果を評価する場合には、「収穫量全体の単価の上昇」という別の見方が必要となります。

この第5章は主として化学式を用いてPTA法を概観することを主眼としており、この「収穫量全体の単価の上昇」を含めた経済性については第11章を参照願います。

ここでは、簡単な図面だけ例示します。

平均的な日本人の毎日の食生活を参照すると、一人が卵を消費することに伴い、PTA法では野菜が65g増産される勘定になります。(ただし、栽培する野菜を人参と想定した場合です。)

因みに、日本人の好ましい食生活において毎日の野菜摂取量は約350gとされています。

第27図 採卵鶏の物質の推移(1羽1日の物質推移)

第6図(再掲載) PTA法からみた採卵鶏1羽の1日の物質収支

第7図(再掲載) 同量の鶏糞がもたらす堆肥化処理とPTA法の経済的価値の比較

堆肥の経済的価値は、上図の左下の灰色の四角で示し、高さは生産重量、幅は単価、面積は販売額を意味する。

ドッサリースも同様に、上図緑赤枠で示し、高さは生産重量、幅は単価を意味する。赤い四角枠は、ドッサリースの販売額(生産額)を意味する。黒四角枠、赤四角枠が同一同量の鶏糞が最終的に施肥資材となった時の経済的価値(金額)となる。


トップエネルギー肥料植物から見た光合成移転理論第2章PTA法の糞尿処理第3章PTA法による栽培第4章PTA法の考え方第5章化学式で見るPTA法第6章低分子量有機物第7章光合成移転農法第8章PTA法のまとめ第9章PTA法の基礎知識第10章PTA法からの視点第11章有り得ない選択・PTA法第12章作物の美味しさについての一考察第13章PTA法の有機物吸収の考え方第14章炭素肥料が理解されない理由第15章PTA法サイトの図面集PTA theory is recycling of photosynthesis, carbon fertilizer and energy fertilizerツイッターのためのPTA法・光合成移転農法PTA法とランドラッシュ・第三の道か?ゲストブックにログイン