測量の歴史等

  1. 地球は自転し、太陽の周りを公転しています。地球の半径の決定は紀元前3世紀のエジプトで、
    エラトステネスがシエネ(現アスワン)とアレクサンドリアの距離と太陽高度を測って地球の半径を割り出したのに始まります。
    シエネの井戸で太陽が正中し、同時に5000スタジア(Stadia)=890km離れたアレキサンドリアに立てた棒と棒の影及び太陽の天頂角
    7°12'から地球の半径R=7082kmを割り出した。
    現在のGRS80での半径R=6371kmに比べて11%長いだけである。
    近代測量の発展に貢献した測量技術の一つは、「三角測量」である。三角法での測量の始まりはつぎのようである。
    1)BC7世紀:リンド数学のパピルスが「傾きを距離と高さの比で表す」
    2)BC6世紀:タレスが「ピラミッドの影:その高さ=自分の影:身長からピラミッドの高さ測定」
    3)BC3-BC2:ヘロン、ディオプトラ(分度器)作成
    4)263年:劉 徽(りゅうき)、島の高さ測定
    5)8世紀:玄宗の命で僧一行が子午線1°測定(123.7km)
    6)9世紀前半:アル=フワーリズミーがシンジャール平原で緯度差1°の弧長測量
    <三角測量のための基礎知識>

    1464年[独]レギオモンタヌス「三角法」を表す
    1528年[仏]ジャン・フェルネル、パリ-アミアン間の子午線1°(110.598km)を車輪の回転数から計算
    1533年[蘭]フリシウス、三角測量法を表す
    1586年[独]ヨスト・ビュルギ、正弦表作成
    1588年ビュルギ、ネピアとは異なる「対数」発明
    1590年ティコ・ブラーへ、地形図図化のための三角測量実施
    <近代三角測量の始まり>
    1615年に最初の三角測量(数%の誤差)がオランダ人ヴィレブロルト・スネル(スネルの法則発見者)によって行われた。
    1669年に本格的な三角測量においてジャン・ピカールによって子午線弧長が0.3%程度の誤差で行われる。
    しかし、この辺までは地球は真球であった。
    1713年、ジャック・カッシーニはダンケルク・ペルピニャンで行った測量結果、
    1720年に「地球の大きさと形状」において「地球は南北に扁長な楕円体」
    であると提唱した。一方、振り子時計をパリから赤道にもって行くと遅くなることから、
    アイザックニュートンは万有引力により「地球は極において扁平な楕円体」
    とし、これを支持する学者が多くいた。この大論争に決着をつけるため、フランス学士院は1735年ブーゲー(P.Bouger)
    の測量隊を赤道付近(現在のエクアドル)に派遣し、翌年モーペルチュイ(Maupertuis)を隊長とする測量隊を北極付近(ラプランド)へ送った。
    その結果、緯度差1°の子午線弧長は赤道付近より極付近の方が長いことが分かった(1735年~1740年)。
    (表)緯度差1oの弧長
    場所緯度弧長(m)
    ラプランド66゚20'N112,992.6
    フランス45゚00'N111,162.0
    ペルー01゚31'N110,657.0
        
  2. 日本では明治10年代に開始した三角測量のため地球楕円体は1841年のドイツ人Besselの値を採用してきたが、2002年測量法を改正し、人工衛星等で決定された世界測地系(GRS80楕円体)に変更した。
        (表)世界で利用されてきた楕円体
    楕円体赤道半径a(m)扁平率の逆数1/f
    GRS806,378,137298.257222101
    Bessel18416,377,397.155299.1528128
    Clarke18806,378,249293.46
    国際19246,378,388297
    Walbeck18196,376,895302.7821565
    Krassovsky19406,378,245298.3
    WGS84(GPS)6,378,137298.2572236
    Helmert19066,378,200298.3
    Hayford1909(国際1909)6,377,388297
    Everest18806,377,301.243300.80176
    Bohnenberger1810-18456,376,602324
    国際1909(マドリッド1924)6,378,388297
    オーストラリア球体19656,378,160298.25
    Germain18656,377,397.20299.15
    Struve6,380,880263.597
    PZ90(GLONASS)6,378,136.0298.257839303
    (詳しくは"Grids & Datums," Cliff. Mugnier(LSU),ASPRS参照。)
  3. 地点の位置は、地理学的経緯度及び平均海面からの高さで表されるが、最近ではGNSS測量で測定されることになり、グリニジ旧天文台の原子午線と赤道との交点と地球の重心とを結んだX軸、赤道面上でX軸から90°のY軸、及び地心から北極方向へのZ軸とするX,Y,Z地心直交座標系が用いられる。
        
  4. このXYZ系をITRS(International Terrestrial Reference System)系という。ヨーロッパではETFSが設定される。     
  5. 地球はなぜ扁平楕円体か?緯度差90o~89o=1oでの子午線弧長は111.6939km、緯度差1o~0o=1oでは110.8441kmであり、極の方が赤道での子午線弧長より長くなっていることからわかります。
        
  6. 標高や等高線の高さの基準:標高の基準面は「東京湾平均海面」(ジオイド)です。ジオイドは、平均海水面を陸地までに延長した場合に全地球を覆う仮想地球です。陸地に延長は仮に細い溝を掘り、その場所まで海水を導いた場合にその場所で示す平均的な水面がジオイドです。言い換えれば、ジオイドは地球全体を、重力のみの影響を受けている平均海水面で覆ったと仮定する形です。厳密な定義は、ジオイドは定義された質量と自転角速度を持つ、地球楕円体の表面と同じ重力ポテンシャルの値(正規重力ポテンシャル)をもつ等ポテンシャル面です。この面は常に鉛直線(重力の働く方向)に垂直です。このジオイド面は北極では地球楕円体より16m高く、南極では27m凹んでいる。しかし、水準測量は水準面を基準して行われる。水準面は等ポテンシャル面であるので、これに沿う仕事量はゼロである。水準面は地球の外側にはいくつも存在するが、そのうちの平均海面と一致するのがジオイドである。2つの等ポテンシャル面の差をdW、ポテンシャル面の距離をdhとすると、重力gはg=-dW/dhで表される。地球は回転しているので、赤道の重力は極の重力より少し小さい。したがって、赤道面上と北極上における2つの等ポテンシャル面間の距離は、赤道上の方が少し長いことになる。そのため、緯度に応じて重力補正しなければなりません。現在水準点では重力が直接観測され、これを補正するため正標高といいます。これに対し、標準的な重力で補正したものを正規標高と呼んでいます。楕円補正量dh(mm)=-5.28sin(φ12)・(H1+H2)/2・(φ21)/ρ、ここでH1,H2:点1,2の標高、φ1、φ2:点1,2の緯度、φが度単位ならばρ=180°/π(円周率)とする。
  7. 下の表は、地心からの距離と標高を比較したもので、エベレストとマリアナ海溝のチャレンジャー海淵では標高差は19,759mであり、楕円体地心距離の差は15,834mとエベレストの方が高い。しかし、エベレストとチンボラソ山(エクアドル)を比較すると、標高差は2,538mであるが、地心距離の差は逆転して-2,185mとなり、世界一の山が変更になる。
        (表)高さの基準を変えた場合の山の高さや海の深さの比較(例)
    地球上の位置緯度経度ジオイド高(m)標高(m)地心距離(m)
    エベレスト27o59'16"N86o55'40"E-298,8486,382,277
    チャレンジャー海淵11o19'29"N142o11'16"E(+35)-10,9116,366,443
    富士山35o21'38"N138o43'39"E42.53,7766,374,833
    北極海海底86o19'18"N133o22'09"W(+35)-4,0686,352,808
    チンボラソ山1o27'50"S78o48'54"W+176,3106,384,462
    経緯度はGoogleEarthで計測し、地心距離はGRS80で計算した。
  8. 距離や面積を求める基準面:地図で表される基準点には、三角点と水準点があります。三角点は明治初期から最近まで三角測量、つまり角度を測って地点の経度緯度(又は平面座標xy)を求めていましたが、現在はGNSS測量で三角点の地心直交座標XYZが求められます。この基準面が回転楕円体になります。三角点(電子基準点も三角点です)は回転楕円体面から地点までの高さを意味します。一方、水準点は水準測量で求めるジオイド面からの地点の高さになります。回転楕円体面からのジオイド面までの高さをジオイド高といいます。したがって、距離や面積は標高にジオイド高を足した回転楕円体面からの楕円体面を基準とした面での値になります。
  9. 方位角と方向角:球面(楕円体)上のある点Aにおける子午線(北)を基準として、任意の点Bまで右回りで測った角を方位角といいます。楕円体にたとえば横円筒をかぶせて地図(平面)にするとき、回転楕円体の点A,Bは横円筒上では点a,bに投影されます。この点aから見た北(座標の北)を基準にして点bまで右回りに測った角が方向角です。方位角(α)と方向角(T)との差を子午線収差(γ)、又は真北方向角(n)といいます。α=T+γ=T-n
        
  10. UTM図法とは:明治の三角測量では回転楕円体に球を当てはめて、これに横円筒をかぶせて平面に直す、ガウスの二重投影が採用されていた。これに対し楕円体に1/10,000だけ短い半径の横円筒をかぶせるのが「平面直角座標系」、1/2500だけ短い半径の横円筒をかぶせるのがUTM(Universal Transverse Mercator)投影です。これをガウス・クリューゲル投影といいます。
  11. 平面直角座標系は投影原点の縮率をm?=0.9999とし、UTM図法ではm?=0.9996としています。概略的にいうと、地球の半径(球)をRとすれば、平面直角座標系の円筒は半径0.9999Rであり、UTMでは半径0.9996Rといえます。     
  12. 三角点やGPS点などの位置の縮尺係数point scale factorはm=m0[1+y2/(2M1N1m02)+y4/(24M12N12m04)]で表される。また、球面距離Sを平面距離sに変換する式はS/s=1/m0[1-(y12+y1y2+y22)/(6r2m02)+η2t(x2-x1)(y22-y12)/(6r3m03)] =1/m0[1-(y1+y2)2/(8r2m02)-(y2-y1)2/(24r2m02)+η2t(x2-x1)(y22-y12)/(6r2m02)]、ここでη=e'cosφ,t=tanφ,平均半径r=√(MN),子午線曲率半径M=a(1-e2)/W3/2,卯酉線曲率半径N=a/W,W=√{1-e2sin2φ}、φ:その点の平均緯度、第1離心率e2=(a2-b2)/a2,第2離心率e'2=(a2-b2)/b2,a=赤道半径、極半径b=a(1-f)、扁平率f=(a-b)/a
    (注意)縮尺係数mとs/Sは非常によく似ているが、数学的な定義が異なる。m2=(ds/dS)2=(dx2+dy2)/{(Mdφ)2+(Ncosφdλ)2}(微小距離の比)であるのに対し、s/S(距離補正値distance scale factor)はS=∫1/m dsで定義される。通常は、mにより平面距離sを求めない。mとs/Sの違いは~1000m程度の距離ではほとんど変わらないので混同されている。UTMや平面直角座標系での縮尺係数mと投影距離yの関係は次の表のとおりです。ここで、地球半径r=6,371kmです。
    (表)UTM(m0=0.9996)
    縮尺係数(m)と原点からの距離(y)の関係  
    y(km)0180254334(3°)
    m0.999611.00041.00097
    (表)平面直角座標系(m0=0.9999)
    縮尺係数(m)と原点からの距離(y)の関係
    y(km)090127
    m0.999911.0001
  13. 光波や電波で測定した曲線に沿った距離(曲率がR/k;光の屈折係数k=0.13~0.14、実際にはkは実験で求める)Gは気差(Ψ/2)と球差(ω/2)を持つので、正の観測での水平距離L1=Dcos(α1-Ψ/2+ω/2),ここでα1=高低角、Ψ/2=気差、ω/2=球差、反の観測での水平距離L2=Dcos(-α2+Ψ/2-ω/2),正反の平均での水平距離は近似的にL=Dcos(α12)/2、回転楕円体上の距離S=Lcos(α12)/2/(1+Hm/R)、Hm=(H1+i1+H2+i2)+N,H1=点1の標高,i1=点1での器械高、H2=点2の標高、i2=点2の器械高、N=点1、点2のジオイド高です。なお、正反観測の平均を取ることで、気差(Ψ/2)と球差(ω/2)の影響は消える。上の平均を取る式で、α1,-α2が通常10o以下の角なので L=( L1+ L2)/2=[ Dcosα1+ Dcosα2]/2≒Dcos(α12)/2と計算しても値は変わらないので、この式が用いられる。(式を導くときには注意すること。) 各国の旧測地系はLSUのCliff.Mugnierが「Grids & Datums,ASPRS,1997-現在」を著しているので、ASPRSのHPからpdfをDLすることができる。もちろん回転楕円体の値はそれぞれ異なるが、天文測量で原点の経緯度を決め原点から信号Aへの原方位を観測し準拠楕円体を決定した。その方法はどの国も同じであり、回転楕円体を地図に投影する方法は各種採用されているが、UTM図法はほとんどの国で採用されている。
    (表)アメリカ合衆国State Plane Coordinate System
    国が広いために、何種類もの投影法で基本的な図を作成している例。     
    図法適用図形採用州
    ランベルト正角円錐東西に長い州ケンタッキー、テネシー、ノースキャロライナ
    UTM南北に長い州ベルモント、インディアナ
    斜めメルカトール1州のみアラスカ
    NOAA, Manual NOS NGS 5, James E. Stem, 1983
        

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