アゲイン





「えー…そこで…」
イルカが黒板に白墨で図を描く。教室の中の半分の生徒は真面目に授業を受けているが、残り半分の生徒は真面目なんて物じゃない。大体が寝ているか、お喋りをしているか、この場にいないかだ。
今この場にいないのはキバ(赤丸)とナルトだ。二人だけではあるが、この二人は席が隣同士な為、二つだけポッカリと穴が空いているので次にイルカが生徒達の方を向けば気付くだろう。
二つとひとつの穴に。


「イッシッシ。上手くいったってばよ」
意地の悪い笑みを浮かべて、ナルトが熱いコンクリートの上に寝そべっているキバに言う。

「あったり前じゃねーか!なあ赤丸?」
「わう!」
キバのパーカーの中で赤丸が元気よく吠える。その様子を見て、キバもニシッと笑った。
今日の空は青く、雲ひとつない。キバはそのどこまでも高い空を仰ぎながら、ボーっとナルトの話を聞いていた。

「あーっ。やっぱりここにいたっ」
屋上の出入り口のドアをキィ…と音をたてて入ってきた少女は。イルカのクラスの生徒の一人だ。
「ゲッ…。なんでお前まで」
「私も抜け出してきたのよっ。だってこんな天気の良い日にチャクラの練り方なんて教わるもんじゃないわ」
ふん!と言って、少しだけ偉そうにしながらはタンタンとキバのほうに寄ってきた。

「なんだよ…。オレに用か?」
キバは小さく溜息を吐くと、自分の顔を覗き込むを必然的に見た。
下を向いている為、黒い髪が肩から滑り落ちている。
「うんにゃ。用なんてなーいよ」
陽気な声をあげると、はキバを見るのをやめて、体操を始めたナルトを見やる。

「…ナルト悪趣味。こんな日には体操もやめようよ」
さっきのキバと同じように溜息を吐くと、はナルトのほうに歩み寄った。

「キバが正解だわ。私も寝る」
手を勢い良く振って、ナルトのすぐ隣まで来ると、はナルトを軽く叩いた。
「ね。ナルトも寝よ」
脅迫紛いな事をやっているような気もしなくはないが、ナルトは大人しく恐い笑みを浮かべている少女に従った。





十分後、彼らは三人並んでぐっすりと眠っていた。
真ん中にの右隣にキバ、左隣にはナルト。
屋上には静かなの寝息と、キバとナルトの大きないびきが響いていた。

と、キバが薄ら目を開けた。ナルトのいびきがうるさくて目を覚ましたのかもわからない。

「…。うるせえ…」
キバはナルトのいびきに、正直な感想を上げた。事実とてもうるさい。
このいびきの音だけで、下の階にいるイルカが気付きそうな物だ。

「今何時だろ…」
ぼーっとする頭で考えると、少年は一先ず自分のパーカーの中に入って眠る赤丸を今まで自分が寝ていた場所に寝かせる。それから、時計を見た。二時十八分。一時間近く寝ていたようだ。

「あー…。どうしようかな」
まだもナルトも熟睡状態なのを見て、キバは朦朧と思った。
どうしよう。


「…。おきろー。バカナルトーアホー」
言ってみても、効果は全くない。元より起こすつもりもなかったが、やはり返答がないと少し寂しかったりする。
「ちぇっ」
眠気が覚めない。もう一度寝ようか。


「………」
少女の寝顔を見て、少年は呟く。
「……キスしてェ…」
の寝顔はキバにとって可愛さ満点だったらしい。
白い肌に、長い睫毛が影を落としている。頬に、髪がかかっていた。
少女はスー…と寝息をたて、まわりは誰もいない。ナルトがいるが、ナルトは大いびきをかいて寝ている。
チャンスだ。と、キバは思った。
好きな女の子が自分の目の前で寝ているのに、どうこうしないで大人しくしていられる男がいるわけない。
そうだ、と自分に言い聞かせて、キバは這っての横まで来た。静かに、音をたてないように。

が完全に寝ているのを確かめて、キバはニヤリと笑った。

の上に影が落ちる。上には、キバ。
少女の顔の両側にはキバの爪の長い手が置かれている。
静寂を破るのはナルトのいびきのみ。あたりは静か。が起きる様子も見当たらない。.

影が重なった。

キバがの桜色の唇に口付けを落とす。触れるだけのキス。

「ギャア!」
「キャア!」
の目が、開いていた。キバはゲッと思いながら、後ろに仰け反る。
マズイ。怒っただろうか?
ちなみにギャアは、キャアはキバだ。

は体を起こして、俯いた。
…悪ィ…」
一応付き合ってはいたが、恋人同士ではあったが。
彼女は不意打ちとやらが大嫌いできっと今のそれも不意打ちに入るのだろう。
マズイ。マズイ。嫌われたかもしれない。

キバは真剣にを見つめる。彼女の第一声はなんだろう。馬鹿とか、大嫌いとかだろうか。

「何すんのかと思ったら…。バカ」
やっと顔を上げた彼女の一言めはそれだった。やっぱり、馬鹿って言われた。
「…。目、覚めてたんだけど、気配感じたから何するのかなー…って。したら…バカ」
の顔が紅潮しているのを見て、キバはもう耐えられなくなった。

ー!!」
「ギャアー!!」
抱き着いたキバにが反応して思いっきり叫び声を上げた。
「…色気ない声だなー…」
「色気ある声なんて出したくもない」
ナルトはまだ寝ている。あ、今寝返り打った。

「…。放れ」
「ない」
が言い終わらないうちに、キバが答える。
は最早耳まで赤くなっているが、抱き着くキバには見えていない。
見えていても何も変わらないだろうけど。
それどころか今は見える位置にいても目には入らないのではないだろうか。
今のキバはの体温と感触をかみしめてを抱き締めているし。

「…。バカー」
「あー…うん?」
幸せに浸りながら、特に抵抗もしないを抱き締める。心地良い。




キバの幸せを壊す音が聞こえた。バンッ!
イルカだった。
「お前らー!!」
思いっきり叫んだイルカは、冷静になって前を見た。
「お前…ら……」
きっと今度は違う意味のお前らだったなとは思った。
顔を赤くするに、抱き着くキバ。横で熟睡するナルト。

「……。ごめんなさい」
生徒に変に丁寧に謝って、イルカはキィ…と唸らせて扉を閉めた。
カンカン、と階段を下る音が聞こえた。


「……。バカー…。どうすんのよ。イルカ先生にバレちゃったじゃない…」
「…。まあ…。なんとかなるだろ」
一先ずから放れて、キバが言う。
「んじゃあさ、これからは授業中でもイチャつけるなっ」
キバがすごく嬉しそうな顔で嬉しそうな声を上げた。

「なんでよ」
は呆れたようにキバを見やった。
「ホラ。イルカ先生にバレたからさ…」
「関係ないわよ…。人前で抱き着かないで」
少女はもう呆れて物も言えないのか、大きく溜息を吐いてからはもう何も喋らなかった。


「なあ、
「何よ」
呼ぶキバの声に、は彼の方を向く。
と。

ちゅっと音をたてて、またキスされた。
突然の事には後ずさる。
「バカ!アホ!犬!」
「最後の侮辱になってねェし」
けけけっと楽しそうに笑い声を上げる少年を、少女は顔を赤くして、眉を顰めて見る。


ふと、少女は空を見上げた。
空は、一時間程前少年が見た時と変わりなく青く高かった。









シメが無理矢理でアイタタタ。



BACK