die.10










「下の名前で呼んでいいよなんて言ってくれた男の人、彼がはじめてだったんだ」



笑っちゃうよね、そう言って彼女は辛そうに笑った。



錆びたフェンスに寄り掛かると、年期のはいったフェンスはギシッ…と唸った。


「それだけなの…それだけ…」




それからはあっという間だった。
一緒に過ごして一緒に笑った。



「ご両親は…」

彼女が一人で暮らしているのを思い出し、雨竜は訊ねた。


は、また辛そうにしたが、口を開く。

「生きてるよ。喧嘩して一人暮らししてるだけ」
「あ、ご、ごめん…」

慌てて雨竜は謝るが、は首を振った。


「なんで謝るの?」
自分を嘲るように、笑った。
彼女は上履きの先を見ていた。


雨竜は、何も言えない。


「謝らなくていいよ…大したことじゃないし」


空を仰ぐ。
昨夜とは違い、よく晴れた空だ。


どこか遠くで、カラスが鳴いた。


「大丈夫なの。もう全部…もういっぱい泣いた。だから次に進まなきゃ…」



立ち上がり、は雨竜を振り返って笑う。
きれいな微笑み。





「ああ、そうだね…」





カラスが、何羽も鳴いていた。




















「雨竜ー!小説貸して!」
「またか!この間の返してよ!」
「なくした!」
「返せ!」


しばらく落ち込んでいたが立ち直ったのには、一人の男の存在がある。
オレンジ色の、髪の人。



!その小説俺借りたぜ?」
「黒崎返せ!今すぐ返せ!」
「やだね冗談の通じないお人は!」
「誰に向かって言ってるんだ!」

近寄り難い雰囲気のあった石田雨竜は、クラスの中でもはや滑稽な人物として扱われている。
それにはと一護の存在がある。



は笑う。
一護に向けて、雨竜に向けて、は、笑う。




「『ダイヤモンドの光る場所』!だろ?」
「そんなの貸してない!」
「私だってそんなの一護に貸してないわ!」

雨竜も笑う。
楽しさに、笑う。


「え?じゃあ『小さな小人』か?」
「それも違う!小人が小さいのは当たり前だ!」
「雨竜の言う通り!」

一護も、笑う。






「『大切な木』よ!」

「それだ!返せ!」
「返せ返せ連呼しないで頂戴気が滅入る!」

「お前ら静かにしろ!」
「先生彼女が僕の本を返してくれません!」
「新しいの買え!」






大切な、木。
きっとそれは雨竜と、一護。




















またこの思いが、支えが、枯れてしまうことのないように、私は笑いたい。


































一応「die」もこれで終わり、となります。
次はもっと明るい話を書こうと思います(勝手にして)。

最後までおつき合い下さった方々、ありがとうございました。






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