die.7










「石田くん…」

ぼんやりと開いた目には、雨竜が映っていた。
頼り無い手は腹の上に置かれ、もう片方の手はまた川へ飛び込もうとしているかのように川の方を向いている。


頼り無い雨竜は泣き腫らした赤い目にを映し、また涙を滲ませそうになった。


「……ッ」


生きていてよかったと、それは漫画なんかではありふれた、けれど重い感情だ。



「…なにを、泣いているんですか……」

蚊が鳴くよりもか細い声で、は呟く。
その声は、夜の静けさがなければ決して聞こえないほど、小さな声だった。

深夜午前、三時。
彼女は家族に怒られるだろうか。
自分は家族に怒られるだろうか。


そんなことは、どうでもいい。

生きていた、生きていた。それだけでいい。




「…泣いてなんて…ない…ッ」

嗚咽の混じった声は、なんとも格好のつかないものだった。
けれど彼女はふと笑った。

それは気違いじみた笑みでもなく、にやりと言った類いの笑みでもなく、にっこりと、そういう笑みだった。
軽い笑顔が、心に染みて行く。



彼女の細い右手首には、包帯が巻かれているはずだった。
今はもう、ない。

川で流れてしまったのだろう。

傷口が見える。川の水は傷に染みただろうか。
きっと染みただろう。痛かっただろう。


不甲斐無い自分に憤りを覚え、けれどそれはが生きていたという安堵で相殺される。







ただ、今は笑っていたい。












「黒崎、くん」

は小さく呟いた。聞こえなければそれでいい。けれど名前を呼ぶ。


「…

表情を変えぬまま、一護は返事を返した。




「ちょっと、いいかなあ」

不器用な笑顔をつくりながら、はゆっくりと呟く。

雨竜は、周りに悟られないよう、本の影から彼らを見ていた。

























あと2くらいで終わると思います。もうちょっとおつきあい下さいませ。






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