--------君が消えた日



その日は特別な日だったけれど、
特に変わった事はなかった。

その日は本当に特別な日だったのに、
何もいってやる事が出来なかった。



「ハヤテ」
足をすすめる恋人を
すこしでもとめたくて呼び止めた。

「ああ、さん」
足を止めた恋人は
自分の名前を呼んだ。

「ハヤテ、いくなよ」
いくなよ、だなんていったとしても。
とめられない。知っている。

「いきますよ。私は忍者です」
そんな事は知っているよ。
わたしはあなたの側にいたじゃないか。

「ハヤテ」
再び足をすすめる恋人の名を
未練がましく呼び止めた。

「さん。
 私が死んでも、追わないで下さいね」
わかってるよ、そんなこと。
そんなバカなマネ、したくもないさ。

「ハヤテ、死ぬな」
そんなの無理なのに。
忍者なのだから。

「できるだけがんばりますよ」
がんばったってどうにもならない事はあるだろ。
そんなこと、いうな。


「…月、が眩しい」


「ああ、月光ですね」
ニコーと笑い、人さし指をたてた。


「ああ、月光…ハヤテだな」
納得するように、恋人を指差した。


「そうですね……私はこんなに眩しくないですけど」
照れたようにいう恋人を、
もう見れないのかも知れない、そう思う自分が大嫌いだ。


「いいえ。ハヤテは眩しいよ。わたしにとっては」
最後の挨拶になるかも知れないのに。
こんな、ことを。

「そうですかね?ゴホッ……おや、また咳が」
話して、いた。

「いつもなら、夜は咳でないのにな」
くだらないことを。


「そうですね…今日は、特別な日なんでしょうか……」


特別な日?君が消える日?特別な君がきえゆく日?


「ああ。きっと特別な日だ。一生…忘れられない…日だ………」
月光が知らせている。
特別な日を。


「縁起悪い事言わないで下さいよ…
 私はまだ死にませんから………」
眉をひそめてハヤテはいった。


「本当だよな。ハヤテはまだ死んじゃいないのに。でも、死ぬかも知れない」


「きっと、死にませんよ」

「証拠なんてない」

「私が証拠ですよ」
もう一度、ハヤテは月光のように笑った。


「ああ、そうだな……。いってらっしゃい、ハヤテ」

「いってきますよ、」


君が消えた日、月光は眩しかった。
君がいた日、太陽は眩しかった。

いくつになっても、この日だけは忘れない。


きっと、この日だけは月光が眩しいから。


いくつになっても、この日だけは覚えてる。


きっと、この日しか月光は眩しくないから―







あとがき
これ、名前をいれないと「トリンス」という風に設定してあるんですが。
…おいしそう(トリンキーとかとまざってる)
なんとなく語呂がよかったんでつけたんですが。
…やっぱおいしそう。
君が消えた日。別名ハヤテさんファン衝撃の日。






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