「ルキア姉さん…」



彼女はそう、まるで本当に死人みたいに。





真っ白い肌(本当に生きているのかどうか不安に思うほどに)、美しい黒い髪(本当に生身の人間のものなのかどうかあやしいほど)、その白い肌に影を落とす長い睫毛(マッチ棒が一体何本乗るのか、機会があったら試してみたいほど)、目の下の隈(あまりに白い肌にそれはくっきりと目立ち、必要以上に不健康に見せている)、やけに似合う死覇装、そうだ、彼女は全てにおいて色が白と黒しかない人だった。



しろくろ

  の

はざまであなたはいきる







照らされる。薄明るい橙の照明。彼女と向き合って、茶を啜っている。
出された湯飲みには、読めない古代語が並んでいる。熱い緑茶は、外から戻って来てすっかり冷えきってしまったからだを暖めるのには、十分過ぎるほど熱かった。

…」
「はい?」

表情を変えず、背筋をピシッと伸ばして緑茶を覗き込んでいたままこちらを向いた。美しいとは常に思う事。
しかし、今日はいつもに比べ眉が少々下がり気味だと感じる。

「なにか、辛い事でもあったか?」

ルキアがそう尋ねれば、いいえ、とゆっくり、ゆうっくりと首を横に振った。


「何も、何も、ない」


彼女のその様は、そう、昔のルキアによく似ていて、それが彼女の心をくすぐるのだろうと、捉えて決して離しはしないのだろうと。
ただ、いつだって、結ぶより解く方が簡単なのだ、この、感情と言う拙い紐は。


「それは本当か?」
「ええ、全て本当、で」


彼女の言葉は常に拙い。足りないと感じる。最後の一言だけ舌に引っ掛って、出し損ねてしまっているようだ。いつもいつも、最後の言葉は引っ掛って、そしていつの間にか舌の上には沢山の言葉が重なっていってしまった。
その様子が、まざまざと目の前に浮かぶ。鮮やかに、色鮮やかに。

「…無理は、するなよ」
「分かっておりますわ」


彼女の拙い言葉が、ルキアとの関係を少しずつ、小さく、紡いでいく。細い風に飛ばされてしまいそうな糸は、あっさりと彼女が全て胃の中に収めてしまうのかも知れない。その位、行おうと思えば行えただろう。全てを飲み込んで、胃に収めて、全部終わったと言えばよろしいだろう。
「本当に、ルキア姉さんは心配性だわ」


美しく微笑む。年令は、僅かルキアの方が上なのに、彼女の方が幾らも歳を重ねて見えた。それはその落ち着いた微笑みのせいか。抜け落ちてしまっていそうな、淡々とした感情のせいか。

「…姉さんなど、つけなくてよいと言っているだろう」

本当の姉妹の筈はない。ただ、彼女がそう呼んでいるだけだ。ちゃんでは違和感が激しい、さんでも何処かやりきれない、殿でも口当たりが悪い、ああ、姉さんと呼ぼうか。

「…私の、本当の姉によく似ていますわ」



けれど、けれど





、私は、本当の、姉では、ないの、だよ





その位、解るだろう、


ルキアは立ち上がると、薄く微笑み、襖に手をかけた。

「長い事邪魔をした。私はここらで失礼させてもらうとするよ」

外は灰色で、彼女の心も灰色だろうと、外は雨で、彼女の心も雨だろうと、








襖を後ろ手で音も無く閉じた時、音も無くルキアは涙を零す。









1110 そういえばルキアさんて書いたことねーなーとか思って。ブリチて難しい、ウリャアだと現代ものだから書けるのだけども。