スパイダーリリー






下に一本。






が、湿った草に倒れ込む。
雨水はまだ草に付着していて、服を濡らした。



黒い髪が、草に散らかる。
遠くの方で、人が走る音が幾重にも重なって聞こえた。

各隊長、副隊長は今斬魄刀を携帯しているのだろうか。
物騒で、仕方がない。



目を閉じる。耳を澄ましていると、叫び声も聞こえた。






「呑気なもんだな」
風が吹き、黒い髪は揺れた。
花の上に、髪が被さる。

広げられた手が、僅かに動いた。


「斬魄刀を携帯しているのでしょう」

目を開ける事が、酷く億劫だった。
変わらず、人の走る音が聞こえた。振動すら、伝わって来る。
叫び声に少しだけ恐怖心を抱く。



「ああ」


の横で、膝を折る。
湿った草に散らばる黒い髪を踏まぬように、少しだけ間をあけて。


「今朝の死体を見て…何を思いました」


藍染の、死体。
目蓋の裏に張り付いて、とれない映像。
雛森が、叫ぶ。
隊員達は声にならぬ叫びを上げて。
その中で市丸が、一人笑んでいる。



「何も」





赤く奇妙な形をした曼珠沙華の上に被さった、黒い髪を両手で集める。
指の隙間から、黒い髪が零れ落ちる。




「私はかなしいと、思いました」



涙が、閉じた目の隙間から一筋零れる。
湿った草の上に、そのまま落ちた。


「俺はそうは思わなかった」



の目が、僅かに開く。
その目は、戸惑いながら空を見ている。



「長年あの人の下で働いていたからかもしれない」





また、叫び声が聞こえた。
例の旅禍が、暴れているのだろう。
時々、爆発音も聞こえる。



「衝撃を受けただけだったかもしれない」





風が、吹く。黒い髪を持ち上げて、白い髪を揺らす。



空は、青い。雲は、白い。隣の冬獅朗は、顔を変えないまま。




「間抜けだな」




藍染の下に一本、咲き誇る彼岸花。
日番谷の下に一本、泣き崩れる死人花。





また、叫び声。幾重にも重なっている雄叫びと、走る音と、叫び声。
その全てに、僅かの恐怖心を抱く。





「いいえ」





涙は枯れた。数人の旅禍にやられていく同僚達の為にも涙は流れる。




大切だった隊長の為にも、涙を流す。

藍染の下に咲く、一本の死人花。




「間抜けは、あなた」





冬獅朗が、僅かに眉根を顰める。



風が、また髪を揺らしていく。
開いた目は、空を見据えている。



「市丸を、殺す」



広げられた片手には、斬魄刀。


「騒ぎに乗じて」



彼岸花が、起き上がる。
黒い瞳を、鋭くどこかに向けて。



「殺されても、死なない」


斬魄刀を握る手に、力を込める。




死人花は立ち上がる。





泣き崩れる死人花、日番谷の下に一本。







「俺が、殺してやる」
「物騒ですよ、日番谷隊長」














立ち上がる死人花、日番谷の下に一本。















微妙な…。とにかく彼岸花。
私が好きなだけです、彼岸花。







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