’01 Postseason Databook

−AmericanLeague−

オープン戦でジーターが戦線離脱、開幕には間に合わないという危機で迎えた今季だったが、終わってみれば最強のライバルと目されたレッドソックスがペドロ・マルティネスの故障でずるずると後退、以降は追い上げてくる者もなく地区優勝を決めた。まるで共に優勝したくないと言わんばかりの連敗の末にポストシーズン行きを決めた昨年に比べれば、不安材料は比較にならないほど少ない。メジャータイ記録の116勝でALDSに臨むマリナーズには、当然マスコミやファンの目が集中するはずだが、ワールドシリーズ4連覇という偉業を前にしたヤンキースにとっては余計なプレッシャーを感じなくていいということで好都合という言い方もできるだろう。

今年のヤンキースのポイントは何と言ってもFAで獲得したムシーナの存在だろう。失点はないが打線も打ってくれない、というジレンマで終えた昨シーズンを経て、ムシーナがヤンキース打線に望むものはとにかく早い回に3点でもとっておいてくれというものだったはずだが、4月5日の今季初登板で7回2/3を投げて無失点で今季初勝利を飾って以降、打ち込まれて3連敗とらしくない投球を続け、やはりヤンキースという常にの重圧のかかる環境では無理なのかとファンを落胆させた。それでも次第にヤンキースの野球に慣れ、8月28日からは5連勝、今季17勝と数字をまとめてフィニッシュしたところはさすがだった。

期待をいい意味で裏切ったといえばクレメンスもその範疇に入る。5月15日まで9試合に登板して4勝0敗、その間勝敗のつかなかった試合でチームは2敗しているが、これに絡まず、運のあるところを匂わせていたが、5月20日の対マリナーズ戦で今季初めて黒星がついてから、怒涛の連勝が始まった。5月26日から登板した全ての試合で勝って9連勝、途中勝敗に関係のなかった4試合を含めて9月19日の対ホワイトソックス戦で今季20勝を挙げるまで、合計16連勝をマーク、20勝1敗と史上最高勝率を手にすることになった。終盤で連敗し、結局20勝3敗で最多勝をアスレチックスのマルダーに譲ったが、史上最多となる6回目のサイヤング賞はほぼ確実な状況にある。

ヤンキースはこの二人に15勝のペティートを加え、ALDSに向けて実績、経験共に先発陣には隙がない。しかもポストシーズン男のヘルナデス兄が最終盤で間に合い、ロングリリーフでブルペンに入る可能性が高まった。メンドーサとのコンビは壊れかけた試合を再生するにふさわしい陣容と言えるだろう。

打線はマリナーズ同様走る野球を標榜する。ソリアーノの43個を筆答に、20盗塁以上がノブロック、ジーター、それに引退が噂されていたオニールの4人、これにB・ウィリアムスが11個で続き、四球で出ればいつでも得点圏に走者が進む怖さがある。長打ではマルティネスが34本塁打で気を吐き、ポストシーズンとなれば何かどでかいことをやってくれるジャスティスも控える。派手さはないが、野球を知り尽くしたメンバーが織り成す成熟した試合展開は今年も相手チームを苦しめることになるだろう。

だが、準備万端のヤンキースも死角はブルペンということになる。ネルソンをFAで失い、駒不足からシーズン中にウィタシックやウォーラーズを獲得、ここまで急場を凌いできたが、チョート、A・ヘルナンデスらが思ったほどの結果を残せず、競った展開となった7回、8回に注ぎ込むべき投手が実質スタントンのみという状況は非常に苦しい。昨年まではこのポイントが万全だったが為に先発をあきらめるタイミングを見失うことがなかったが、必要以上に引っ張る傾向が強くなると、守護神のリベラにつなぐ直前で試合をひっくり返されてしまう可能性もある。4連覇への道は、この点を誰がフィックスするかにかかっているだろう。ストットルマイヤー投手コーチのお手並み拝見といきたいところだ。

●ワイルドカードながら他の2地区の首位よりもはるかに勝率の高い驚異的な成績でポストシーズンに駒を進めてきた。特にオールスター戦以降は58勝17敗、マリナーズの8月中の地区優勝決定を阻止、最後の10試合を8勝2敗、しかも6連勝でフィニッシュと上り調子のままヤンキースとの対戦に臨む。

この快進撃を支えたのは、何と言っても先発投手陣だ。昨年の20勝投手ハドソンをエース格に、クレメンス、モイヤーのベテラン二人を抑えて最多勝のタイトルを最終盤で逆転し獲得したマルダー、8月、9月と2ヶ月連続月間MVPを受賞したジートは自身9連勝で閉幕と、この3人で合わせて56勝25敗という圧倒的成績を残した。チーム防御率3.59はマリナーズに次いで2位、先発の防御率3.72はア・リーグのトップだ。守護神イズリングハウゼンはタイトル争いには絡めなかったものの、ブルペンの防御率3.27も侮れない。投手陣にこれといった穴が見つからないのが、今年のアスレチックスの特徴と言える。若手を我慢して使ってきたハウ監督の忍耐が、ようやく花開いた証拠でもある。

打線も強力だ。首位打者はイチローに譲ったが、ア・リーグMVP投票でも再び対決が予想されているジアンビ兄を中心に、シーズン中にロイヤルズからやってきて8月の月間MVPを獲得したダイ、サイクルヒットを記録したテハダ、ここ一発の場面では常に勝負強さを発揮する9月の月間MVPチャベスと打線は誰をとっても褒め言葉しか出てこない。ジアンビ兄についてはボンズもシーズン後の記者会見で、自身が樹立したシーズン本塁打の記録を更新する可能性がある選手として名前を挙げている。これに今季不調に苦しんだリードオフマンのデーモンが復調してくればもう怖いものはない。デーモンは昨年もオールスター戦直前から打撃が好調となったが、「早く打率を.250に戻したかったけど、それに4ヶ月もかかってしまった」と語っている。移籍初年度というプレイするには難しいシーズンだったが、今季オフでFAとなるだけに、ここは各球団のGMに真のパフォーマンスを見せて、いい契約条件を勝ち取りたいところだろう。これに加えてベテランのガントが経験不足の若手達の穴を埋めるような打撃をすれば、どこからでも得点を挙げる恐怖のラインナップが完成する。

反面、今季のアスレチックスは機動力が今一歩。やはりデーモンの不調も響いており、自慢の打線が湿った時に、ハウ監督が足を使った攻撃でアクセントをつけられるかどうかがポイントとなりそうだ。

守備面ではデーモン、ダイの外野陣は安心して見ていられるが、チーム合計で125の失策を記録、ア・リーグ11位となっている点は不安材料だ。アスレチックスの代名詞である若さがこうした面で出てくると、試合巧者のヤンキースにも俄然可能性が出てくる。短期決戦では修正が利かないだけに、基本に忠実な守備で確実に1勝をもぎ取るような意識を持ちたいところだ。だが、月間MVPが始まって以来、初めて2ヶ月連続して投手、野手の両部門を独占したアスレチックスだけに、ハウ監督は「あと11勝する。そこがゴールだ。持てる力を発揮すれば、そこまで行くことができる」と自信をみなぎらせている。昨年もALDSでヤンキースと戦い、第5戦まで粘ったが本拠地ザ・ネットで涙を飲んだ。今年はヤンキースタジアムからのスタート、昨年とは逆のパターンでシリーズは進む。北米大陸を東西に渡るシリーズは、ベテラン揃いのヤンキースよりも、やはり回復力のある若手の多いアスレチックスが有利と言わざるを得ないだろう。

今年の両者の直接対決は6勝3敗でアスレチックスが勝ち越している。トーレ監督も「アスレチックスは今最も勢いを感じるチームだ。オールスター後はマリナーズよりも勝っている」とコメントしたが、これは得意の褒め殺しではなく本音のように感じる。それほど今年のアスレチックスは隙の少ない陣容という言い方ができるのだ。

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Game 1

●開幕からの圧倒的な勝率を閉幕まで維持、最終戦でレンジャースに3−4と敗れて1906年にカブスが残したシーズン116勝の記録更新は果たせなかったが、それでも実に95年ぶりのメジャータイ記録を樹立した今季のマリナーズに、注文をつける部分など何もない。アレックス・ロドリゲスという攻守の要を失い、投手陣も中継ぎのネルソンを補強しただけというシンプルな改造で今季に臨んだが、実力の程が心配されていたイチローの加入でチームは打って勝つから走って勝つに大きく方向転換、これが見事に成功した。ここ数年、スーパースターとの契約更新の際には、シーズン中からマスコミがこの件を取り上げて、その度にフロントだけでなくベンチにも影響が及んでいたことは否めない。ランディ・ジョンソンが放出される直前にはセギーとクラブハウスで乱闘騒ぎが起きたし、グリフィーには脅迫状が舞い込んで不穏な空気が流れ、ロドリゲスの時にはできたばかりのセーフコ・フィールドを本塁打が出やすいように改造しろ、という途方もない要求まで突き付けられた。そうした、言わば試合とは関係のない雑音が消えた今年、選手達はようやく試合に集中することができたとも言えるだろう。

戦力的には野球を良く知るベテランが内堀を固め、新人達がその脇に陣取るというスタイルで、ワールドシリーズを知るのはオルルドとネルソンのみというメンバーながら、昨年のALCSをほとんどの選手が経験しているという強みがある。先発ローテは初めて防御率のタイトルを手中にしたガルシアが第一戦に登場、38才にして自身初の20勝を挙げたモイヤーが第二戦、第三戦には圧倒的な制球力を誇るシーリーが登板、3人併せて54勝という豪華な面々が顔を揃える。第4戦までもつれれば17勝のアボットが控えており、この陣容で連敗することは考えにくい。中継ぎ陣もパニアグア、ネルソン、ローズと左右それぞれ駒が揃い、ア・リーグのセーブ王争いで2位に食い込んだ佐々木が最後を締める。ロングリリーフには10勝を挙げたローテ投手のハラマ、ないしはハラマのマイナー降格でチャンスを得たピネイロのどちらかを立てればよく、バランスのよさはア・リーグの他チームに比類のないものになっている。

打線はイチロー、マクレモアの1、2番コンビが足で塁を稼ぎ、オルルド、マルティネス、ブーンの中軸が単打、長打を打ち分けてこれを返すというスタイルが確率、オルルド、マルティネス共にミートのうまい好打者の上、今季別人のような活躍を見せたブーンは必要とあらば右打ちもでき、下位打線には俊足でチャンスにも強いキャメロンがいるという隙のなさを誇る。

気がかりなのは終盤に来てギーエンが結核に感染していることが判明、手術も行った為少なくともALCSまでは出場ができないという点だ。ピネラ監督はマクレモアにショートを任せ、マイナーから昇格させたヴァスケスをフォローに起用することで乗り切ろうとしている。その場合、今季で引退を決めているハビアーがレフトに入るが、キャメロン、イチローの右中間コンビが鉄壁なだけに、どうしてもレフトに穴を感じてしまう。また、佐々木が終盤に入って球のキレを失い、数字ほど相手が脅威と感じていないのではという指摘もある。佐々木が打たれて負けた場合、そのフォローができる投手はローズということになるが、インディアンス戦でヴィスケルにピアスがまぶしいと抗議されて激怒するなど、精神面に不安を抱えている。

マリナーズの今季を支えた一人は間違いなくイチローだが、逆にイチローを押え込まれた時に一発のないマリナーズは苦しい展開になることは十分予想される。イチローの足を止める為なら、一塁付近に水を撒くという作戦も実行されるメジャー、ポストシーズン特有の圧し掛かってくるような重圧も含め、イチローがそうした洗礼をどう乗り越えていくかには注目したいところだろう。

昨年はホワイトソックスの独走に圧倒され、ハーグローブ王国からマニエル体制への移行にも手間取り、最終戦までポストシーズン行きの可能性を残したが、試合消化の為に1日で別の2チームとダブルヘッダーを行うなどスケジュールにも苦しめられた結果、ポストシーズン行きを逃すという最悪の結果を招いてしまった。

首のかかった今季、マニエル監督は度々体調の不良から戦線を離脱したが、それでもベテランを纏め上げ、新人に自信を植え付けながらシーズンを戦い、開幕から勢いに乗ったツインズを夏場以降で捉えてからは、大きな連敗を喫することなく2年ぶりの地区制覇を果たした。

今季のインディアンスの焦点は、主砲ラミレスの穴を埋めるべく獲得したゴンザレスの活躍やいかにということだったが、打率.325、35本塁打、140打点と故障とチーム事情に悩まされたタイガース時代を払拭する活躍を見せ、一時はイチローの首位打者獲得を阻止する位置にまでやってくるなど、1年間、年俸1000万ドルという契約に恥じない成績を残している。ロフトン、ヴィスケル、アロマー弟と続くお馴染みの1〜3番トリオは大きな故障もなく今季を乗り切り、残念ながらA・ロドリゲスに本塁打王のタイトルをさらわれたとは言え49本塁打のトーメとどこからでも大量点が取れる打線は健在、相手チームにはこの名前が並ぶだけで脅威的という布陣でポストシーズンに臨む。

しかし、投手陣には不安がいっぱいだ。ALDSは3勝勝ち抜けの為、3連勝で終われば4人目の投手は必要ないということになるが、第1戦の先発はコローン、第二戦は故障上がりのフィンリー、第三戦はチーム勝ち頭とは言え新人のサバチアという布陣は決して万全とは言い切れない。コローンは球速164キロを時に試合終盤にも出せる驚異的なスタミナを誇るが、突然打たれ始めるという代え時の難しさを抱えており、身長2m1cm、体重113キロの巨漢サバチアも150キロ後半の重いストレートを投げながらコントロールに難がある。崩れるときは四球からというパターンは、短期決戦のポストシーズンでは交代時期の見極めに躊躇を招く。大ベテランのフィンリーは今回が86年のALCS以来15年ぶりのポストシーズンとなる為、経験という意味ではバーバの方が上という見方もある。ALDSでぶつかるマリナーズには19勝8敗と圧倒的な通算成績を誇っているが、これとて今の強いマリナーズを相手に挙げたものではないという部分に不安は残る。故障回復の程度も心配だ。

中継ぎ陣も苦しい。キューバから鳴り物入りでやってきたバエスも今一つ皮が剥けず、カーセイ、リードと比較的安定していたリリーフ投手陣をブレーブスに放出してロッカーを獲得、ウィックマンとのダブルストッパーを目論んだものの、このロッカーが背信投球の連続で、ここ18試合の登板で12失点と火消しではなく火付け役を演じる始末。ロッカーがポストシーズンのベンチ入りを果たせるかどうかでさえ怪しい。

ロッカーが加入した際、フロントにストッパーとして投げさせてくれる球団にトレードしてくれと直訴したウィックマンは、結局ロッカーの乱調で再び元の仕事場に戻った。防御率2.39をマーク、35回のセーブ機会に登板して失敗は3回のみと抜群の安定感を見せている。マニエル監督も「彼がいなければ今年の成績はありえなかった」とコメントするなど、ベンチから厚い信頼を得ているのは強みだ。

インディアンスの場合、立ち上がりで相手先発を打ち崩して大量点を挙げ、そのリードを数人の投手で失点しながらも守りぬくというパターンが確立できるかどうかが鍵だ。マリナーズとは全く色が違うだけに、かえって噛み合わない試合展開でマリナーズを慌てさせればしめたもの。後は自慢のリリーフ陣に本塁打を浴びせてブルペンを崩壊させれば、ALCSへの道は開けるだろう。

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Game 1


−NationalLeague−

●さすがのブレーブスも今季だけは地区制覇は難しい、シーズン中はフィリーズの快進撃に押され、一時は8ゲーム差までつけられた段階で、ファンの見解は一致していた。しかし、ロッカーを放出してカーセイ、リードとブルペンの駒を厚くしたのをはじめ、昨年の新人王ファーカルが故障で戦列を離脱すると、ロイヤルズから守備の名手サンチェスを緊急補強、引退を表明したブローニャに代わってFAでレンジャースに移籍したものの結果がなかなか出なかったカミニティを、そしてトドメの一発として元ロッテのフランコと契約して湿めきった打線のてこ入れを行った。シュアホルツGMの手際のよさが、またしてもチームの危機を救ったと言える。また、解雇したヴェラスに代わってマイナーからジャイルスを引き上げるなど、充実した下部組織の戦力もチームの底上げに一役買い、フィリーズ、そして終盤追い上げてきたメッツとの三つ巴の地区優勝争いの中でも、比較的安定した戦いぶりで無難に乗り切ることができた。

しかし、ナ・リーグの地区優勝チームでは勝率は最も低く、ワイルドカードでポストシーズンに進んだカージナルスにも成績では水をあけられている。NLDSも敵地ヒューストンからスタート、地区10連覇の偉業とは裏腹に、今年のポストシーズンは挑戦者という役柄の方がぴったりくる。95年にワールドシリーズを制して以来、幾度となくチャンピオンになる可能性がありながら、意外な勝負弱さを見せて敗退を続けているブレーブスだけに、今年は過去を払拭するような意識改革をベンチ全員が行う必要がありそうだ。

投手陣はベテランのマダックスとグラヴィンを中心に、故障から戻ってきたミルウッド、安定した投球を見せながら、打線がなかなか援護してくれない為に内容よりも大幅に低い成績しか残せなかったバーケットの4人がローテに入る。先発の防御率3.54はリーグ1位で、得点が取りにくい陣容であることは疑う余地がない。グラヴィンは昨年同様前半戦はらしくない投球が続き、これがフィリーズの先行を許した一つの原因になっていたが、後半は持ち直して本来の投球を続けている。気になるのはマダックスで、8月22日に今季17勝目を挙げて以降勝ち星がない。9月22日の対メッツ戦では初回に二人の打者と対戦したところで降板、この不安を払拭できないままポストシーズンに突入する。ブルペンはレムリンジャーを中心に中継ぎ陣には問題はない。ストッパーにはようやく右肩手術のリハビリを終えたスモルツが入り、その脇をライテンバーグが固める。

一方、打線は6年連続100打点突破の偉業を成し遂げたC・ジョーンズを軸に、天王山となった対メッツ戦でJ・フランコから逆転サヨナラ満塁弾を放って追いすがるメッツの息の根を止めたジョーダンの働きが鍵となる。ロペス、A・ジョーンズと意外性のある打撃でこれまでチームの危機を救ってきた二人が共に不調に終わっている為、どうしても今年のブレーブスは少ないチャンスを確実に得点に結びつけ、そのリードを投手陣が守りきるという展開にならざるを得ない。ファーカルが戦線離脱、故障がちだったヴェラスは解雇されてしまったことで、機動力は大幅に低下、シーズン85盗塁はナ・リーグ10位という低いランクというのも気にかかる。試合運びのうまいメンバーが揃っているが、ラッキーボーイの登場を待つようなことにもなりかねない。短期決戦のNLDSだけに、流れを自軍に引き寄せるようなプレイが出ればしめたものだが、果たして結果はどうだろうか。

昨年は地区優勝確実の前評判で開幕を迎えたが、カージナルスの圧倒的な強さに屈し、ポストシーズン行きを逃してしまったアストロズ。今季も前半からカブスの快進撃を許し、苦しい戦いを強いられたが、故障から完全復帰を果たしたアルー、ナ・リーグの首位打者争いを演じるまでに成長したバークマンが打線に加わったことでかつてのキラーB’sを彷彿とさせる陣容に変貌、チーム打率はナ・リーグ2位の.271、チーム本塁打も大台到達の208本をマークと打ち勝ってペナント奪回に成功した。

NLDSに向かうアストロズ打線に死角はない。ビジオ、バグウェルの看板スター二人は健在、これにバークマン、アルー、ヒダルゴと一発もあり勝負強さも兼ね備えるメンバーが続く。下位打線ではデビルレイズの水が合わず、放出を直訴してアストロズに移ってきたカスティーヤが、不振だったタンパ時代を払拭し、その打棒を欲しいままにしていたロッキーズ時代に戻ったようなパフォーマンスを見せている。どこからでも長打で点がとれる布陣は、いかにブレーブス投手陣にとっても厄介な存在であることは間違いがない。

投手陣は開幕時のローテから随分顔ぶれが変わった。昨年エースの称号を手にしたエラートンが全くの不振、99年の20勝投手リマも昨年から続く一発病に改善の後が見られなかったことで、チームは早期に改革に着手、まずW・ミラーを抜擢すると、シーズン中にリマをタイガースに放出してマリッキーを獲得、てこ入れを図り、ロッキーズからはアスタシオも獲得して万全の体制を敷いた。その上昨年のシドニー五輪代表だったオズワルトをセットアッパーからローテに入れ、レイノルズが故障から戻ったことで駒が完全に揃っている。投手陣の復調にはタイガースから帰還を果たしたオースマスの存在も大きい。打撃は相変わらず見るべきところはないが、リードとその強肩で度々投手達を救っている。ポストシーズンも97年、98年にアストロズで経験しており、これも若い投手にとってはプラス材料となりそうだ。
ブルペンはストッパーのワグナーが完全復活、セットアッパーにも三振のとれるドテルが陣取り、インディアンスの守護神だったジャクソンも故障から精彩を欠きながらも短いイニングでなら十分に戦力足りえる。

アストロズの不安は、やはりナ・リーグ15位の盗塁64という数字だ。これはかつてダイヤモンドを飄々と駆け回ったビジオの衰えに一因がある。後半戦は故障による不完全燃焼に終わった昨年を消去するにふさわしい好調な打撃を見せたが、リードオフマンとしての責任を果たしたとは言い難い。ヒットのつながる打線だけに、足を使った攻撃に重点を置く必要もないという声はあるが、やはりポストシーズンは水物、レギュラーシーズンと違う戦略で相手を驚かせて勝機を得ることも時には必要だ。野球をよく知っているブレーブスが相手である以上、自分のプレイを最後までさせてもらえなかった99年のNLDSで犯した失敗を繰り返す愚は避けたい。

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Game 1

●シリングをシーズン中に獲得、何とかして地区二連覇を果たそうとしたものの力尽きた昨年から、ダイヤモンドバックスは特に大きな補強をすることなく今季に臨んだ。ただし、フロントの期待を裏切ったショウォーターを更迭、ブレンリー新監督を起用することでチームに緊張感を持たせることは怠らず、ジャイアンツ、ドジャースと終盤まで三つ巴の地区優勝争いとなった中、安定した戦いぶりでジャイアンツに譲ったペナントの奪回に成功している。

ダイヤモンドバックスの強みは、何と言っても先発投手陣にある。シリング、ジョンソンの二枚看板が故障もなくシーズンを投げ抜き、共に20勝を越える最高の結果を残した。ジョンソンは最多勝こそシリングに譲ったものの、防御率、奪三振の2冠を手にし、シリングは22勝でカージナルスのモリスとタイトルを分け合っている。また当初はブルペンでロングリリーフを担当していたバティスタがシーズンの進行と共に安定度を増し、最終的にローテ入りを果たしたことも大きかった。デビルレイズからロペスを獲得して不測の事態に備えるなど、シーズン中のフロントの足も軽く、レイノソの故障離脱による穴は完全に埋まっている。ブルペンは復活を果たしたベテランのウィットが渋い投球で相手打線をかわし、今年こそストッパーとしてシーズンを投げ抜いてくれると期待されていたマンテイの故障離脱によりアジアのサブマリン金がその座に起用され、5勝19セーブ11ホールドと八面六臂の活躍を見せたことも大きかった。アンダースローから150キロを超える球を投げ込む金には新庄も驚きの声を挙げていたが、左打者に弱く、また精神的に脆弱な部分を露呈して信用を失った過去を払拭、今季は左打者も抑え、いよいよ佐々木に続くアジア人ストッパーとしての地位を固める時が近づいているようだ。もし金が登板すれば、96年のNLDSにメンバー登録されながら登板の機会がなかったパク・チャンホを追い抜いて、韓国出身投手では初めてポストシーズンのマウンドを経験することになる。

打線は一時三冠王の可能性も叫ばれたゴンザレスが中心となる。最終的にタイトルは獲得できなかったが、打率.325、57本塁打、142打点という成績は相手投手にとって脅威以外の何ものでもない。どのコースも打ち分け、しかも勝負強いとなれば、とにかくゴンザレスの前に走者を出さないことがカージナルスの最大の課題ということになる。また、ブレーブスでの不遇の1年を拭い去るような爆発を見せたサンダース、カブスから怒りのFA移籍を果たしたグレースも相変わらずのうまいバットコントロールを随所で披露して隙のない打線の形成に一役買った。その一方で、99年に初めて地区優勝を果たした時の原動力だったベルの長期に渡る不振は深刻だ。また走攻守揃った外野手の評価を欲しいままにしていたフィンリーも信じられないほどの低成績に終わり、チーム成績も比例して下降するべきはずだったが、この危機を救ったのが控えの野手陣の存在だった。デルーチ、バティスタ、コルブラン、カウンセルらが堅実なプレイを見せ、スパイビーはセカンドのポジションをベルから奪うことに成功している。これだけの選手が起用されながら、失策数はナ・リーグベストの84だったことは大いに評価できる。
個人的には、ウィリアムスの打棒復活に期待したい。故障に悩まされてきたここ数年の悪い流れを断ち切ったシーズンだけに、その集大成として記憶に残る本塁打をスタンドに叩き込んで欲しいものだ。

昨年、あれほどの強さを見せたカージナルスの予想外の苦戦は、今季前半戦のトピックスだった。先発陣のてこ入れの為に、満塁男タティースを放出して獲得したハーマンソンが、前半戦は大きく打ち込まれたのをはじめ、昨年の20勝投手カイルも精彩を欠くなど、一時は先発陣が崩壊、唯一モリスが大きな連敗を食い止める働きでチームを救っていた。しかし、打線がつながり始めた夏場からは怒涛の連勝を開始してカブス、アストロズの追走を開始、気がつけば最終盤で連敗を喫したアストロズを捉えて地区首位に浮上、最終節の直接対決で両者が星を並べた結果、アストロズが今季のカージナルス戦で2試合多く勝っていることから、カージナルスはワイルドカードでのポストシーズン進出となった。

ここまでのカージナルスの快進撃を支えたのは、昨年同様その強力な打線だった。中でも今年の新人プホルスは振れば打点の勢いでア・リーグのイチローと共に4月、5月の月間新人王を獲得、次々と新人記録を塗り替える爆発ぶりで、故障からの復調に手間取る主砲マグワイアを尻目に、カージナルス打線の中核の座をその手に入れた。ラルーサ監督も「プホルスがいなかったら、今季のうちはなかった」と語っている。プホルスは打撃だけでなく、ユーティリティプレイヤーとしてもチームを助け、一塁をはじめ三塁、外野を守り、好調な選手を起用したい時にはプホルスが動くことでラルーサ監督の采配を懐の深いものにしている。前半戦のチーム不振の戦犯となったのはエドモンズだったが、8月に入ってようやく真価を発揮、骨折でチームを離れたドリューも9月には戦列に戻り、打線は更に厚みを増した。また、ユーティリティプレイヤーとしてのみ名前を知られていたポランコが打撃でも活躍、144試合に出場して打率.307を残している。これまで1年おきにしか好成績を残せなかったリードオフマンのヴィーニャも自身初となる2年連続の打率3割でフィニッシュしている。

投手陣はシリングと最多勝を分けたモリスが、故障で苦しんだ過去3年間の鬱憤を晴らすかのような快投を続け、不振のランクフォードを放出してパドレスから獲得したウィリアムスは9月の月間MVPに選出される好成績を残すなど、昨年同様今年もカージナルスはフロントの冴えを見せている。その一方で、カイルは好不調を繰り返す不安定な投球を続け、今年こそはと期待されたベネス兄もローテから降格、ノーコン病に苦しむアンキールも今季初登板で1勝を挙げたものの5試合に投げた後にマイナーに送られるなど、3番手以降の先発投手陣には苦しめられ続けたが、新人のバド・スミスが9月2日にノーヒッターを達成、ひとり立ちの気配を濃厚にさせた点に救われた。スミスはこのポストシーズンで鍵を握る投手となりそうな予感がする。
またブルペンもストッパーが安定しない苦しい陣容で、ベレスが今季もピリっとしない投球に終わり、試合終盤はティムリンやクライン、ジェームスなどが入れ替わり立ち替わり登場する不安定さを露呈した。競った展開が続くと予想されるNLDSだけに、エキスポス時代には次々とブルペンが故障離脱してしったことに伴い、ストッパー役を演じたこともあるハーマンソンを思い切って起用するという手もあるかもしれない。

カージナルスにとって気がかりなのは、主砲マグワイアの不振だ。本塁打こそ29本放っているが、打率は.187と目も当てられない惨状で、本人もシーズン中から引退をほのめかす発言を繰り返すなど、精神的にも揺れ動いている。ポストシーズン進出はマグワイアにとって希望がかなった舞台となるだけに、気持ちを切り替えて大暴れしてもらいたいところだ。

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