不安のこと
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 彼女を失くした経験から、漠然とした不安というものが世の中にあるということを知った。

 いわゆる健常者のもっている不安は、必ず対象がある。

 仕事がうまくいくかどうか不安、勉強が進むかどうか不安。

 自分の将来が不安だというときでも、やっぱりそこにあるのは、ある程度具体的なイメージからくる不安だと思う。

 でも、今回感じた不安はもっと漠然としていて、具体的にどうすればいいのかが全然わからなかった。

 具体的な不安なら、対処法などがあって、自分の気持ちを少しでも静めることができる。それが、漠然とした不安だと、そもそも何が不安なのか自分で分からないし、対処もできない。

 もちろん、彼女がいなくなったことが不安の原因なのだが、そのとき感じた不安は、○○が不安という感じではなく、いてもたってもいられないという感じだった。対処法がないから、そこから目をそむけるしか方法がない。

 具体的には自分の快楽、食欲、睡眠欲、性欲、購買欲など、それらが満たされている時しか、目をそむけることができない。このうち、食欲、性欲、睡眠欲などは彼女のことを思っているうちにはなかなか沸いてこなかった。一番、気が晴れたのは買い物をしているときだったと思う。

 こういうことは、生前の彼女がよく言っていたことだった。

 彼女がいなくなって、初めて彼女の言っていた不安とか、買い物依存などのことが分かった気がする。

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