ブルーブルーのエッセイ

 

●キャッチボール禁止

ある場所のトイレには、こんな張り紙がある。

「キャッチボール禁止」

どういう意味かわかった方は、すぐにある場所とは何処かがピンときただろう。

はじめて、ある場所に足を踏み入れたとき、私はこの張り紙の意味が解らなかった。

入ったのは男子トイレではない。女子トイレである。

会話のキャッチボールっていうことで、トイレの中では私語禁止ってことだろうか? それともボールでキャッチボールをするっていう意味なんだろうかと考えた。

 

キャッチボールという言葉がすぐお分かりになられた方ならば、「ガジリ」という言葉も当然ご存じだろう?

では、略して「朝定」:「朝のサービス定食」という言葉は?

 

ある場所とはカジノである。

ではキャッチボールとは何だろうか?

キャッチボールとは、カジノで儲けたお金を、客同士で分け合うことである。

ガジリとは、サービスチップ目当てで通う客のことである。

では、サービスチップとは何かと言えば、おまけでくれるチップのことである。

入店と同時に10万円分のチップを買うと、おまけで1万5千円分のチップをくれるのである。

ただし、このサービスチップはゲームに勝ち、店のチップにしなければ換金することが出来ない。

店側からすればこのガジリ屋は、カジノに寄生する寄生虫のようなものだ。

ガジリ屋達は、このサービスチップ目当てに店に通いつめ、中にはそれだけで生活をしている人達も沢山存在している。そういう人達は一日に何件もの店に通いつめるのだ。店側から出入り禁止(デキン)と言い渡されるまでだ。通っているのは、学生ばかりでなく、他のカジノ店で働いているディーラーや、不法滞在している感じの外国人、中には、主婦までいるのだ。

考えてみたら、一日、一件の店で一万五千分(換金の際、手数料として5%引かれる)を稼ぎ店三件回れば、四万ちかくのお金にただ座っていれば手に入るのだ。

ガジリ屋達は、このサービスチップを手に入れるために、なるべく店の中で長時間居続けようとする。

時間を潰すにはどうすればいいか。ゲームをすれば自分のチップが減ってしまう。だが、店の中にいなければあらない。店によっては、2時間いないと、現金に換金してくれない場所や、ペナルティとして15パーセントの手数料を差し引くというところまである。

バカラというゲームをご存じだろうか。2枚引いたカードが8により近い方が勝ちという簡単なゲームである。

ガジリ屋達の時間の潰し方は、このバカラを永遠とやり続けることである。

ただし一人でやっていたのでは、手持ちのチップが減ってしまう。ではどうすればいいんだろうか。二人組みになればいいのである。二人が互い違いにかけ続ければいいのである。

賭けはプレイヤー側にかけるか、バンカー側にかけるかどちらかである。

二人組みになり、お互いが逆を賭け続ければいいのである。

何故、トイレに「キャッチボール禁止」と張り紙があるかと言えば、客同士で財布の中身を受け渡しするのが、トイレの中という場合が多いからである。

蛇足だが、朝のサービス定食というのは、朝まで営業しているカジノ店が、客足確保のため、サービスチップを出しているである。

世の中、不景気だと騒がれているが、アンダーグランドなこの業界はまだ日本全国のあちらこちらに存在するのだ。

カジノ店と警察は密接に結びついている。

店側は、警察にいる知り合いに頼み、摘発の時期と場所の情報を手に入れているのである。

私の知り合いで大学生の頃、ディーラーをしていたという人がいる。

月収50万から、景気のいい頃では150万は貰っていたそうだ。

今はディーラーの数が、余っているので、なかなか高収入を得ることが出来ないそうだ。

かなりの店がイカサマをしている。トランプに傷をつけていたり、トランプの札を入れ替えていたり、トランプの裏の絵柄に細工がしてあったりする。

ディーラーがトランプを透視出来るように、あるコンタクトレンズをはめている場合もある。トランプの裏に特殊なインクで書かれた染料が、そのコンタクトレンズをつけると、浮き上がって見えるそうだ。

 

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