・股引は脚の形に穴を出づ  ・足多き炬燵にをりし独り言  ・押し並べてMの格付け日向ぼこ  ・歳までは数え切れずに除夜の鐘  ・冬の字は閉じ込められし相対死  ・木枯に目尻を下げて道祖神  ・美しきもの見せてもらいし雪女郎  ・観覧車廻りて聖夜の上に出る  ・皺深き目尻に溶ける雪やさし  ・冬ざれの渡良瀬渓谷鉄道駅  ・聖菓持ち妻の配下となる息子  ・年用意テレビを拭きて終わりけり  ・地肌まで日の射し込んで今朝の春  ・野沢菜の歯に挟まりて年を越へ  ・煤払口角の泡吹き飛ばす  比呂
                         


・前のめり生きた男の春炬燵  ・北国の憂さ撒き散らし雪解川   ・少しづゝ参道遠く初詣   ・茶柱を吹きし遊も松の内   ・犬の尾の真直に伸び寒の明け   ・立春や仏間の隅に闇縮む   ・大根切るネイルアートは春の色   ・二人して茶腹となりぬ春の雪   ・山笑い花粉は流る街の空   ・窓映る時雨の街に透ける我   ・赤城山春一番を押し返す   ・白寿なる古兵の唄う春の歌   ・大胸筋冬過ぎる度薄くなる   ・冬の蠅足擦りもせずに石の上   ・恋猫は眼病棟の屋根に立つ   国比呂
  


・花びらを暫くは置き春の風  ・紐の蝌蚪お天道様に動きだし  ・蝌蚪の尾を集めて思案四月馬鹿  ・足のある蝌蚪も混ざりて池満ちる  ・あっさりと過去を捨て去る蛙の子  ・鞦韆もねぢれ戻らぬ風当り  ・酔客は根につまづきて桜見る  ・散ったこと忘れて靖国桜咲く  ・車座を抜けてひとりの桜狩  ・花を植え花に囲まれ小餉かな  ・耳たぶの小さき女遍路笠  ・目の中に桜溢れて山下る  ・春の道笑顔に返す笑顔かな  ・生命線浅く濡らして流し雛  ・透き通る耳朶眩し白木蓮  ・内股の削げて人生春うらら  国比呂
  


・雨寒し蛙小石に擬態せり  ・湿舌に関東南部戻り梅雨  ・梅雨晴間葉先の滴小宇宙  ・赤色の紫陽花雨に溶け込まず  ・初鰹その眼で見たか海の底  ・梅雨晴間雫とどめて蜘蛛の糸  ・雨三日紫陽花彩を深くせり  ・父母の歳越えられぬかも半夏生  ・万緑に身を低くして谷の駅  ・この夏は越えられるかも雨上がる  比呂
  


・犬の鼻白く乾きて夏盛る  ・契約の付帯条項酷暑あり  ・見えるもの見ずに見つめて遠花火  ・蟻の列兵隊蟻も混りおり  ・蟻の列太郎も次郎も混ざりおり  ・夕風にそれぞれの夏終はりたる  ・涼風は今日初めての通り抜け  ・蝉三日蛍二十日や長寿国  ・声低く夜振り集まる二十五時  ・いじめっ子面影残し妻午睡  ・髪白き帰省子消える北の駅  ・美人画の裾ひるがえし涼の風  ・バスを待ち入日に光る日焼鼻  ・百日紅白きうなじに嫉妬する  ・何回も糠掻き回す残暑かな  国比呂
  


・我妻はススキを嬰のように抱き  ・月の客ビリーホリデイ似合う人  ・我が書斎蟋蟀もいる風も入る  ・富有柿鎖を長く犬眠る  ・短日に追われる人とすれ違う  ・秋耕や野太き声を運び来る  ・客送り夜風を入れて虫の声  ・秋出水鍵穴通る風もあり  ・空蝉を散骨にして手を洗う  ・夢食ひて水団食ふた夜長かな  ・霊水を口に含みて秋彼岸  ・素麺か冷麦なのか歳は過ぎ  国比呂