一匹の羊 
 
九九匹の羊が笑っていたとき
一匹の羊が泣いていた
 
九九匹の羊が眠っていたとき
一匹の羊が起きていた
 
九九匹の羊が草を食べていたとき
一匹の羊だけがケシの花を見ていた
 
九九匹の羊が拍手をしたとき
一匹の羊だけがノオと言った
 
九九匹の羊が群れて歩いていたとき
誰かが視ているような気がして
一匹の羊が足を止めた
 
人の世の終り頃
一匹の羊を呼ぶ声が聞こえ振り向いた
いつか視力を失っていた羊は
その人が誰だか分からなくなっていた