天国考

天国のマンションには階段がありません
みんな翼が生えているので
501も502も空に向かってドアがついているだけです
ときどき窓に腰掛けて居眠りしているひとがいますが
落ちたらどうなるでしょう
下は雲やお花畑ですが
途中で翼を開くので怪我をすることはありません
仮に打ちどころが悪くて死んでしまっても
目が覚めるとやはり天国でそのまま窓に腰かけてまた寝てしまいます
天国には病院がないので白衣の天使はいません
警察も税務署もおよそ署と名のつくものはありません
天国はみな友達ばかりで
モンシロチョウとかアゲハチョウ以外 長のつく人がおりません
家来が欲しい人や
高い席に座りたがる人がいません
説教を聞く必要がないので
牧師さんや坊さんは毎日退屈でなりません
残酷な殺戮のお話に満ちた旧訳聖書や
四諦や八戒など聞いてもあまり楽しくないものネ
それで牧師さんは素直そうな猫などみつけては暗いところえ連れて行き
テサロニケ人への手紙や
オバデヤ書などの一節を年期の入った声で朗々と語り
おとなしく一節を聞いてくれるとご褒美に鰺の干物など呉れます
猫は早く鰺の干物を貰えないかと気を揉んでいます
ときどき散歩に見えるイエスさまも
ここに滞在するようになってから少しお太りになられたのでは…と
巷の噂さがあります
天国のヤクザさんは優しくて
目が合うとそばに寄って
何か欲しいものありますか
肩凝っていませんか
退屈してませんか
と話しかけてきます
天国には小鳥屋さんや観賞魚屋さんはありません
その辺を飛んでいるのに何で狭い籠に入れる必要があるでしょう
海の中や川の中をスイスイへっちゃらなのに
何で小さな水槽に魚を買う必要があるのでしょう
ここでは性別、年齢は自分の好みで勝手に決めるので
天国の住人の年齢は10代から30代がほとんどです
悲恋の主人公たちも皆結ばれて
毎日幸な日々をおくっています
何もしないと退屈なので
ロミオとジュリエットはパン屋さんをやっています
オルフエとユ−リデスは花屋さんをやっています
野菊の墓の
民さんと政夫さんは小学校の先生をやっています
夕鶴のつうさんと与兵も仲睦じいカップルの一つです
私鶴でいいの?
俺人間でもいいの?
もう機織らなくていいのね
うん 毎日ご飯炊いてくれるだけでいいよ
なんてっちゃって
天国にもおじいさんやおばあさんがいます
若くなってしまうと孫が分からなくなってマゴつくから
という理由からです
新聞が読めてタクアンが食べられて腰が痛くなければ
あえて若くなる必要はないのだそうです
天国の町外れで
雲を千切った綿菓子や
天然雪に花のシロップをかけたかき氷や
虹のカケラなど並べたお店を開いているのです
天国ではおじいさんやおばあさんが珍しいので
毎日子供達が大勢来て二人は大モテです
天国にもこの世にあるものが結構あります
雨も降るし風も吹きます
リクエストに応えて雪が降る日もあります
雲や草花など同じものが殆どです
えらく違うのは主に人間関係です
ところで
地獄はあらためて紹介しません
残忍なこと 醜悪なこと 悲痛なことは
この世に全部在ってこの世以上の地獄は無いからです