烏
 
昔 烏は人語を解し饒舌であった
情熱をもって世界を語り人間を語った
世のため人のため語る言葉に己の使命を感じていた
しかし
熱弁をふるえばふるう程
聴衆は退屈し私語を囁き
ときには背を向けてあくびをする者もいた
烏は激怒したが
こころを静めたあと大衆の無知を悲しんだ
その後烏は次第に寡黙となっていった
いかに己の意を伝えるかということより
より少なくより難解な言葉をもちいた
失望と呪訴の言葉を暗諭で語り 
ときには梵語で呟いた
やがて言葉の空しさに気ずいた烏は
或るとき全ては一言で足りることに気ずいた
 
「カア−」