我々の作品


NOVEL

身を削るという言葉があるがまさにそれ。
 ここに(下書きノートの事)書いてあったのは、主に10代後半から書き出したものを今、自分の表現力で短く書き直したモノっす。自分自身、書いてて頭がだいぶ後退してきているのではと思いあたるふしも多々ありました。精神的にもね、そうとうバカっすよ。本当はノート一冊少しイカレタ文章で埋めようと思ったのですが無理でした。  書いてた中で一つだけ気にいったのは「ROCK STAR」と言うヤツで、あれは昔「サーカス」として書いてたものを今の気分で直しました。本当はイナカ町にサーカス一団がやってきて殺戮のうたげになるという。ライオンを放しがいにしたり、ナイフ投げの名人が観客にナイフを投げ出したり、ピエロが毒ガスまいたりする話で、それを見にきた子供が一人ゆかいそうに笑っているという内容でした。ただ、それを新たに書きおこす体力が今の自分にはなかったというか。  まぁしかし、いつもいつもなんか暗いものんばかり書いていたわけではなく、昔のを掘り出すと、きれいなモノとか優しいモノ、ポジティブのモノもたくさん書いてるんですよ。あの頃は二面性だったみたいで、ただ今は明るいのを書こうとするとそうとう精神をつかうワケで。やっぱなんだか、「うん、なんかね・・・。」ってヤツに染まっちゃうワケで。こっちサイドは書いてて楽なワケで。  それともっとしんどいのが長いのを書くことで、書き手として致命傷なんすけど、しばらく長いのは書けないっす。時間とか体力があれば、いずれちゃんとしたの一本書こうとも思ってますけど。DARK SIDE  暗い、ネガティブなモノが好きな人、そして何にでもこじつけられるような曖昧な事しか言い残していないノストラダムスの予言を信じてしまっているような貴方にはお勧めのコーナー。(ちなみにワタクシも世紀末思想とか嫌いじゃないです。) 1999  そのトマトは僕の目の前で潰れてグチャグチャになった。僕が着ていた真っ白いTシャツはケチャップまみれになった。蒸し暑い真夏の昼の出来事だ。問題になっている温暖化問題のせいか?それとも単に世紀末のせいだからなのか?  とにかく最近、異常に暑い。30度は楽に超えている。この暑さじゃおかしくなっても仕方ないのかもしれない。そういえば昨日も秋葉原でアジア系の少年グループが冷蔵庫欲しさにナイフを持って押し入り、店員の腹を何回も刺したというニュースを見た。この頃はそんな話題ばかりだ。僕の知り合いも何人かは自殺している。それもただ暇だったからという理由で。だから目の前で何が起ころうと冷静でいられる、無関心でいられる勇気が僕にはある。  死は限りなく身近な、そう、隣人のような存在に変わった時代、千年に一度と言う区切りの中で、世紀末に出した増えすぎた人類の答えなのかもしれない。  最近、高齢化社会問題が特にせっぱつまってきた。街を見渡しても2人に1人が老人だ。そこでいま話題になっているのが50才以上の人間の排除だ。50才を過ぎ頭脳、体力が衰え出した人間を薬で気持ち良く安楽死させていこうという制度で、国が指揮を取り計画を推進している。  この制度がすごい人気で失業者からの問い・・・ つづく。 ROCK STAR  その日、この町にロックスターが来た。  町は大騒ぎで大勢の人が会場に訪れ、僕ももちろん足を運んだ。  そしてライブは始まり ロックスターは現れた ギターではなく マシンガンを持って  最初の曲を期待する僕らに向けて、ロックスターはマシンガンを乱射した。  ダッダダダッー  会場はパニックになる程盛り上がり、不幸な人間は大勢死んだ。 僕の隣でロックスターの出現を待ち望んでいた僕の彼女も、体中に穴をあけて死んでしまった。  返り血を浴び、血まみれになったロックスターは言った。  「生き残ったヤツだけオレのライブに参加する資格がある。今日はオマエラの為に歌うぜェ。」  その日のライブは言葉では伝えきれない程サイコーだった。 やけに倒れている人間も多かったのは、熱くなりすぎて失神してしまった人達だろう。  血と汗と絶叫にまみれたその日を、僕は生涯忘れないだろう。 そしていつか、僕もあんなロックスターになりたいと思う。 闇  今はただ堕ちてく感じが心地いい。  暗闇の中はなんだか優しくて、光を求める気にもなれない。  むしろ光から暗闇に引きずり込んであげたいくらい。  頭痛も吐き気も止まないなら受け入れてしまおう。 薬に頼る必要もないし、いつか全部飲み込んでいくだろう。  今日の迷いも悲しみも苦しみも。いつか全部消えていくだろう。昨日の喜びも快感も希望も。  それでいい。自らを殺す事のできない臆病者だから。  闇が全てを覆い隠す事を望んで、薄暗い部屋で待っていよう。 WORLD  気を抜けば死んでしまうそんな世界で  気が付けば一人きりになった世界で  ポケットの中のナイフを握り締めてる。  夜の暗闇が怖くて、それを切り裂こうとして、やみくもにナイフを振り回した。 やがて夜が明け朝の光が差すまで。  朝が来ると少年は手首にそっとナイフを置いて目を閉じる。  爆弾が落ちて、「くだらない、死んでしまえ」と思っていた家族もクラスメイトも教師も、 知らない人達も犬も猫も、みんなみんな消えてしまった世界。  少年が待ち望んでいた世界を、きっと神様が叶えてくれたんだ。 獄中  男は檻の中にいる。  そこに入った理由さえ忘れてしまうほど月日が流れたのかもしれない。  男は時々夢を見る。  夢の中で男は戦場にいて、村を焼き払い、逃げまどう人達を一人ずつ冷静に処理していった。 何も考えずに、ただ目標に合わせてトリガーを引いていった。  いつに事かは分からないが、男はもう使われていない牢屋をみつけ檻の中に入った。 何故だか自分がその中で生きていかなければならない気がして・・・。 フラワー  この街にたくさんの花が育つように  たくさんの種を埋めたはずなのに  それはタネじゃなくて地雷だった  だから街中爆弾だらけだ  大人も 子供も 男も 女も ふっとんでく 花火みたいなモンさ  穴ボコだらけの街になったから、またタネを埋めやすくなった。  今度は間違いなくタネを埋めてたくさんの花を咲かそう。きれいな花を咲かそう。  みんなが喜ぶように。 セブンズエンド モリイズミ シロー(19)  ハシモト カズマ(20)  カスカベ リョウ(19)  トガワ ユメヒト(18)  キッカワ ケン(19)  ミシマ レイコ(19)  タチバナ ユキ(20)  シュー(20)  1stEND生贄  「エーッ、では次のニュースです。また若い男女がラブホテルで薬を飲んで死んでいるのが発見されました。今月に入って都内ではこの手のニュースが急増しています。  なんでもナンパの新しいカタチで、知り合ったばかりの男女がそのまま二人で自殺してしまうというモノで、発端はカリスマ的ファッションモデルだったモリイズミシローさんがその日知り合ったという女子高生Aさんと二人で薬を飲んで死んでいたというモノで、これが若者の間で流行り次々と同じ手法で自殺を図っているという事です。どう思います?木村さん。」  「人口減っていいんじゃないですかねぇ。」  「そうですか、ありがとうございました。それでは次のニュースです。連続で20人を・・・・」         ・         ・         ・  「あー、もしもし私、K子。ねぇ、今誰といると思う?シローよ、モリイズミシロー。そっ。私シローに誘われちゃった。一緒に天国の扉を開けようだって、スゴイでしょ。私達先に行って待ってるから。ウン、ウン。じゃあまた後でね。バイバーイ。」         ・         ・         ・  自分一人で死ぬのは怖かった。でも恋人を巻き込んで一緒に死ぬことなどできるはずもなかった。彼女には生きていて欲しかったから。だから気軽に一緒に死んでくれるやつを求めたのさ。ここで今気楽に電話してる女はスケープゴートみたいなもんさ。この儀式のイケニエさ。  こんなオレは地獄に堕ちるだろうか。いや、その身代わりになって進んで地獄に堕ちてくれる女がココにいる。オレには天国が待っているはずだ。 20××年7月 2ndEND悪夢  オレはその日、献血に参加した。普段なら無視しているはずだが、何故かその日は足を運んでしまった。それには少し理由がある。昨日、夜道でガキを轢き逃げしてしまったという罪の意識からだろう。  ちょっと田舎の方まで一人で釣りに出かけた帰り、田舎道で暗かったのと疲れのせいか、「どん!」と大きな音がしてぶつかるまで何が起きたのか全く分からなかった。  スピードは100キロ近く出ていたのでガキ(背格好から12〜15才位か)は隣の林のしげみの中までふっとばされ、血まみれで倒れていた。オレはすぐに辺りを見渡した。誰かに見られていないか、体中の毛穴が開き背中からいやな汗が流れはじめていた。気を失いそうになるのを必死で堪えていた。  幸いな事に目撃者はない。ここが田舎の道で助かった。オレはアクセル全開でその場から立ち去り、しばらくして車を止め、フロント部分を調べた。大きくへこんでは血などは見当たらずほっとして家路を急いだ。  家に帰り、カラカラの喉を潤すためにビールの缶を空け、テレビをつけていつもは見ないニュースを見たがその事についてはやっていなかった。その日は吐く限界までウィスキーを飲んで寝てしまった。  次の日、つまり今日になってもあの時の音と感触が忘れられず、起きてすぐ新聞を読んだがどこにもその記事は見当たらず、やっと少し安心できた。安心したせいか腹が減り、そんな気分じゃないが冷蔵庫が空っぽなので外食することにした。その帰り道、献血所をみつけフラフラと中に入ってしまった。中に入ると4人の人が座って順番を待っているようだった。オレもそこに腰かけ、受付で渡された紙に必要事項だかを書きながら昨日の事を考えていた。  まだニュースになっていないという事はまだ発見されていないということだろうか?あれはどう見ても即死だったのだから轢き逃げ事件として報道されるはずなのにやっていないということは、まだあの状態で置き去りのままなのだろうか?  「橋本さーん、どうぞ。」  オレは自分の名前を呼ばれ、ハッとして献血室に入った。中にはメガネをかけたいかにも神経質そうな医者と、黒髪の20代前半の人の良さそうな看護婦らしき女がいた。  「はい、じゃあそこのベットに横になって腕をまくって下さい。」  「はぁ、はい。」  医者がさっき書いたアンケートだかを読みながら、 「ふーん、橋本さんは初めてなのか、まぁリラックスしてください。」  「はぁ。」  「おっ、橋本さんはO型か。ちょうどいいね。」  「そうですね。」  看護婦が人なつこそうに笑いながら同意した。オレは何が丁度いいのか分からなかったが、まぁどうでもいいから早くしてくれと思い黙っていた。  じゃあパパッとやちゃいましょうね。その方が橋本さんもらくだろうし。佐野さん、用意して。」  佐野と呼ばれた看護婦は注射器を取り出して言った。  「痛くないですから。」  「えっ、注射うつんですか?」  「ただの局部麻酔です。」  医者が目を光らせながら答えた。オレは不安になってきたが今更辞めたいなどとは言い出せず黙っていた。それからオレは自分の腕から血を抜かれる様をただボンヤリ見ていた。  5分ほどして医者はウンとうなずき、「よし、血はこれくらいでいいでしょう。」という言葉に安堵しながら、献血とはこういうモノなのか、ちょっと良い事したなと思っていた。  「よし、じゃあ次いこうか。用意して。」  医者は楽しそうに言った。看護婦の佐野さんが腕につけられた採血用の器具を取り外してくれた。やっと終わったとオレは立ち上がろうと体に力が入らない。何故かまたものすごく不安になってきた。医者は誰かのカルテを見てフンフンとうなずきながら言った。  「あらあら、内臓グチャグチャ。肝臓も何もかも、体中取り替えないとダメだなぁ。こりゃひどいなぁ、顔も原型とどめてない。うーん、この顔でいいかなぁ、うん、まぁいいかな。とりあえず佐野さん用意して、中身の総移植という事で。患者さんこっちに連れてきて。ん?どうしたの橋本さん、そんなに不安そうな顔して。痛くないからねェ。」  そう言うと佐野さんが隣の部屋から台車を押してきた。台車の上には、医者の言うとおり顔もグシャグシャで誰だか分からないが、オレにはハッキリと見覚えのあるガキが寝かされていた。         ・         ・         ・  どれ位時間が経っただろう。今や完全に手術室と化したこの献血ルームで6人の医者たちがオレを取り囲み、オレの腹を裂いて隣に横たわっているガキに中身を移していく。そのかわりにオレの体には人工の内臓などを埋め込んでいる。不安そうにメガネの医者を見ているオレに気付いた医者はニッコリと 「だいじょうぶだよォ、痛くないよォ、多分この人工ので半日位はもつと思うからさぁ。じゃぁ次に心臓とって彼に移植して、最後に脳いって上がり・・・・・」  オレはその医者の言葉を聞き終わらないうちに気を失ってしまった。目が覚めたら何もかも元通りの日々に戻っている事を信じて。うーん、悪い夢を見てしまっているなぁ。 3rdEND天使の翼  1999年7月、見上げた空から降ってきたのは祝福の天使でもなく、恐怖の大王でもなく、ただの人間だった。  そのただの人間はトマトを落とした時みたいにグチャグチャになった。  オレの頭に浮かんだ言葉はただ一言、「ハッピーエンド」だけだった。街の人間は思い思いに錯乱して悲鳴をあげているが、人より死に慣れているせいかもしれない。目の前で人の死と言うモノに出会う確立も、一般的には人生で1、2度あるかないかだが、オレの場合、1年に1、2度目撃する。  つい最近オレの仲間も自殺した。1人はナンパした高校生と一緒に服毒自殺。そういやアイツの女だったレイコは、あの後2度自殺未遂を繰り返しているっけ。もう1人は車を運転中に中学生を轢き逃げして、自宅で腹を切り裂いて死んでしまった。そして今日、もう1人死ぬことになった。今、目の前でグチャグチャになっているオレの恋人リョウだ。  リョウは昔から自分が天使だと思い込んでいた。私の背中には翼があるんだって何度も何度もオレに繰り返していた。リョウの裸を何度見ても翼なんて見えなかったけど・・・。  リョウは20才の誕生日を迎える前に天界に帰らなければならない、だからオレとも別れなければならないと涙を流して言ってた。リョウの20才の誕生日は明日、その前日の今日、オレはケータイで呼び出された。この高層ビルの真下に。  最後に私が空を飛ぶところを見て。」  そう言ってリョウは電話を切った。  今、目の前のトマトの背中には翼など見当たらない。おまえは本当にリョウなのか?もしかしたらリョウはこの古い体を脱ぎ捨て、天使の翼で天界に旅立ってしまったのかもしれない。だとしたら、やっぱりこの血まみれのトマトはリョウでも、勿論天使でもなく、ただのトマトなのだろう。だからオレは悲しくない。寂しいけど・・・。  「ゲームオーバー」ではなく、「ハッピーエンド」だったから。 4thEND殉教  2人で死ぬのも1人で死ぬのもユメヒトはいやだった。集団で一気に死ぬ、そんな死に方を探していた。  ユメヒトはなぜこう考えたのか。1人では怖くて死ぬ事などできない。2人ではいざというときになってお互いに説得しだしてしまうかもしれない。しかし集団の中なら・・・とユメヒトは考える。  集団の中では個性は抹殺され、集団の意見はあくまで個人の意見になる。みんなが死のうと言えばそれはやっぱり死ぬしかないのだ。もっとも集団を統率すべき強力なカリスマの意思が要るが。自分はそれではない。自分は他の人間がそうであるように、何も考えずにただ死ねればいいのだ。なんて素晴らしい事かと思った。その場所は死を提供してくれる。仲間もいる。ユメヒトは条件をことごとく満たしてくれるその場所が、まさに楽園に見えてきた。  その教団の教義も活動も興味はなかった。はっきり言って教本を読んだ事も無い。集団自殺が目的であって、他の事など全くどーでもよかった。だから集団自殺が行われるその日、薬を手に持った教祖を名乗る男の最後の説法もまるで興味無かった。生まれ変わりがどうだの言っていたが、それに対してもクソくらえとしか思っていなかった。死んだら全てが終われるのに、なんでまた生まれ変わらなきゃいけないんだ、早く薬を飲ませてくれと・・・。  熱心にこのバカの話に耳を傾けている100人のバカ共を見て自分もバカらしくなってきたが、それでも1人で死ぬよりよっぽどいい。黙って聞いているフリをして、ハシモトやリョウが何を思って死んだのか考えてみたが結局分からなかった。  いつのまにか話は終わり、真剣な面持ちで教祖は言った。  「さぁ、みんな一斉に薬を飲もう!戦士たちよ、来世でまた会おう!」  教祖はそう言い、手に持っていた薬を飲んだ。それを見て100人の信者は一斉に薬を飲んだ。勿論ユメヒトも100人という集団の中で、結束の力に支えられて集団の力に全て委ねて、終われる喜びをかみ締めながら薬を飲んだ。         ・         ・         ・  その日、○△教団集団自殺という記事の号外が配られた。薬を飲んだフリをして助かった一部の者を除いた、死んだ95人全員の名前も小さく掲載された。誰も目にも止めないだろうが、そこにはユメヒトの名前もあった。 5thEND情死  「オレだ、ケンだ。○△教団のニュース見たか?まさかユメヒトの名前があるとはなぁ。」  「ああ、オレも驚いた。」  「今なぁ、オレ、レイコんち来てるんだけどな。」  「そうか、レイコは大丈夫そうか?」  「いや、もうどこ見てるのか、どこも見てないのか、まるで人形みたいなんだ。」  「そうか。」  「すまんなぁ、おまえもリョウが逝っちまってつらい時なのに。」  「ああ。」  「だけどまだおまえの番じゃないぜ。今日、レイコんち来たら下でオヤジさんとお袋さんが泣いててな、なんかかける言葉もなかったよ。」  オレ達幼馴染の中でケン、レイコ、シローの3人は、本当にいつも一緒にいた気がする。電話先のケンの声はどこか重く、その一方で潔い響きがあった。それがオレには少し痛かった。  10代も後半になる頃、どちらも選びきれないレイコを見てケンは見を引いた。ケンはいつも誰かに気を使っていて、その性格ゆえに損をする事が多かった。レイコとシローの幸せそうな姿を見るとホントに良かったと言っていた。あの時、あのセリフは本心だったとオレには思える。ケンは優しすぎる人間だった。  「シローはバカだよ。結局はレイコの心を殺しちまった。こんな事なら今更だけど、オレはあの時・・・。」  「ケン・・・。」  「バカだよなぁ、過去には戻れないっていうのに。」  「・・・・。」  「もう2度とレイコは戻ってこないのかな。今のこのうつろな瞳に輝きは戻らないのかな。なぁ、なぁ?」  「分からない。」  「全部終わりにしようと思う。もう全部・・・。最後に1度だけレイコを抱いたら、全部。オレもレイコも先に行くよ、シローが待ってる所へ。でも今度はシローに譲らない。壊す事で永遠にしたシローとの鎖を今断ち切るよ。じゃあな、今までありがとな。」  電話は切れた。  ケンはレイコの部屋に火をつけて、その中でレイコを抱きしめた。その時、何の表情も無くしたレイコの瞳に輝きが戻った事にケンは気付かない。レイコは目を閉じてケンに身を委ねていた。2人は抱き合いながら炎に包まれた。それと同時にレイコの両親も炎の中に消えていった。  オレはというと、シローが自殺する前に言っていた言葉を思い出していた。  「ケンはいい奴だから、オレが死んでもきっとレイコは大丈夫さ。今までの時間、レイコと時間を共有できた事でオレは充分満足してる。だからレイコは連れて行かないよ、オレ1人で逝く。あいつらが来るのはずっと先でいい。」  結局あの2人はシロー、おまえの後をすぐ追っかけていっちまったな。ガキの頃みたいに。 6thEND罪業  最初にシローが死んでから1ヶ月が過ぎた。その間にハシモト、リョウ、ユメヒトが死に、つい先日ケンとレイコまで死んだ。8人の仲間のうち6人死んで、残っているのはワタシとアイツだけになった。ただワタシには死ぬ理由なんてない。8人の中でも一番地味で平凡を貫いてきた自分にはこの先も平凡な幸せが待っているのだろう。短大を今年で卒業したら来年からは銀行員、何年か勤めたら結婚して子供を産んでささやかに生きていこう。喜びも悲しみも普通でいい。ただ隣にアイツがいてくれれば。  リョウが死んだとき、ユキは内心複雑な気持ちだった。いくら好きな男の彼女が死んだとはいえ、リョウとも長年の仲間だった。それに、リョウは少し変わった所があるが、とてもイイコだった。だから彼女の死を知った時、涙を流している自分がいてほっとした。  そうは言っても、リョウが死んでから今まで以上にアイツを意識している自分がいることも分かっている。結局自分はどっち側の人間なのだろうか?そして今日会うことになっているあいつは一体どういうつもりで会いにくるのだろう。ただの幼馴染として?それとも・・・。  ともあれ今日、何があっても大丈夫なように一番のお気に入りの服、下着を着けてきている。きっとそんな女心など、そういう事に鈍いアイツは気付かないだろう。だから余計に考え込んでしまうのだ。しっかり気合を入れて約束の場所に向かったら1時間前に着いてしまった。これでは流石に早過ぎると思い、アイツの事を考えながら街をプラプラしていたユキは、その日結局アイツに会えなかった。明日も明後日も、ずっとずっと答えを知ることも無く、全て終わってしまったのだ。ただ7人目が決まるのは、ユキが考えるよりずっと早く訪れてしまったという事で。  死ぬ事など考えもしない自分と、なんだかんだいっても死なないであろうアイツの2人が残ったならきっと続いていけるだろうと思っていた。  最期の時、ユキはリョウの無邪気に言った言葉を思い出していた。  「ユキちゃんも好きなんでしょ、シューの事が。」  勿論リョウには悪気はなかった。ただのその言葉を聞かされた瞬間、ユキの中で殺意というモノがふつふつと沸きあがった。その日からユキのリョウに対する嫌がらせが始まった。リョウの心を壊すように毎日のようにルス電に「死ね。」を連発し、天使なら高層ビルから飛んで見せろと囁きかけ、カラスの屍骸をおまえの翼だと宅急便で送ったりした。リョウの精神は次第に異常をきたしていった。いつもシューやみんなに話してた自分の御伽噺と現実との区別がつかなくなり、リョウは自らの存在意義を証明するかのよう飛んだ。天使になった自分をシューに見てもらうために。  ユキは今、鉄パイプの下敷きになっている。高層ビルの工事現場の近くを歩いていた時、誤って降ってきた鉄の塊の下敷きになってしまった、偶然に。  結局リョウはシューに嫌がらせについて何も語らなかった。だからシューはリョウの本当の死んだわけを知らない。ただユキの死因は知っている。偶然の事故だったことを。