流転蓮華・後編


  私の身分は呂布の妾。そう、側室ですらないの。でも政略結婚だったり体裁を整えるための結婚だったりする奥様方と違って、私と奉先様は海よりも大きな(海って見たことないけどさ)愛で結ばれているのよ♪

 あ、だからって別に奥様に愛がないとかそう言うんじゃないからね。奥様方も奉先様のこと大切に思っているし、奉先様だってそうよ。ただ私と奉先様の間にはそれ以上の深いものがあるっていうだけの話。えへ☆

 それに奉先様の一人娘の玲蘭ちゃんがとっても可愛くて、私のこと慕ってくれてる。
 私が奉先様の屋敷に来たそんなある日、彼が私に髪飾りをくれた。
「わあ、かわいい。これって何の花をかたどってるのかな。牡丹?」
「蓮華だよ。ほら、俺たちが始めてあったのもまた巡り合えたのも蓮池だったろ。だから、何て言ったらいいか……」
「……え?」

 ……………。

 本当にもう、何て言ったらいいか声が出ない。そうかー、覚えててくれたんだ。
 でも似合わないよ。普段は戦場で槍を持って血にまみれている、体格もいい奉先様が。「人中の鬼神」と呼ばれている呂布様が。
 でもだからこそ……

「ん、どうした貂蝉。これ気に入らなかったか」
 私が黙り込んでしまったのを見て、彼が不安げに声をかける。
「ううん、そんなことないよ。とっても嬉しい。ただ嬉しくって、だって私、小さいときからお父様以外の人にこんなにしてもらったことないし、優しい言葉かけてくれた人達だって私のことただの遊女としか見てくれなくって……だのに奉先様は……」
 なんで嬉しいのに涙なんか出てくるのよ。ほら、笑顔でお礼を言わなきゃ。泣いちゃ駄目だよ、泣いては……
 どうしてなの。どうしてあなたはそんなに優しくしてくれるの。どうして私なんかに………

 かえって不安になるよ、あなたの優しさに。あなたの愛の大きさに。私というちっぽけな人間には大きすぎるから。すべてを受け止められるか分からないから。そして、私なんかを好きになってくれたことに対して申し訳なくなってくるから。
 彼は何もいわずに私を抱き締めた。そしてそっとくちづけると私の手から髪飾りを取り上げ、髪に挿してくれた。


 世の中は董卓が死んだからといって平和にならなかった。むしろかえって多くの人達が争い始めたように見えた。誰もが天下を取ろうとしている、群雄割拠の時代。呂布、字は奉先様もそんな中の一人。
 どたたたた、ぴしっ (あ、「どたたたた」というのは使いの人が走ってきた音ね。「ぴしっ」は奉先様の前で礼儀をとった音)
「将軍、大変です。李かく・郭し の両名が挙兵し、こちらに攻めてこようとしています」
 がたん。
 「将軍」は椅子を蹴たおして立ち上がる。そう、奉先様はもう誰かの配下の武将ではない。自ら部下を用い兵を率いるいわば「君主」になった訳。

「んだと、生意気な。よーし、こっちも出撃の準備だ。ふん、腕がなるぜ」

 初めの敵は元董卓の配下。これって董卓を裏切った奉先さまを仇として狙ってくるんでしょ。なんであんなデブで性格悪くて我がままやりたいほうだいでえーと、とにかく嫌な奴なんかの敵討ちしなくちゃいけないの。うー、あいつのこと考えただけでぞーっとする。

「あいつらにはあいつらなりの正義ってものがあるんだよ、きっと」
 とは奉先様配下の将、張遼さんの言葉。そんなものなのかなあ。

 かくして奉先様を始めみんなは戦に行ってしまった。えーん、寂しいよー。
 みんなが出陣してから何日かが経ったとき
「貂蝉姉様、父様は何時帰ってくるのかな」
 遊んであげているとき玲蘭ちゃんが尋ねた。その言葉で私ははっとした。ああそうか、そうだよね、寂しいのは私だけじゃないんだよね。それに……私の義父である王允様はどうしたのだろう。だれも教えてくれないし、聞こうとしても話をそらされてしまう。もしかして……いやいや、そんな事。
 
きっと玲蘭ちゃんも同じなんだろう、父親の安否が判らない不安。私は玲蘭ちゃんの頭をぽんと叩いて彼女を励ました。
「なーに悲しんでるの。あなたの父様は強いからすぐに敵を倒して帰ってくるよ。ねっ」
 そう、大丈夫だよ。自分に言い聞かせてみる。私が頼れるのは奉先様しかいない。そして彼はきっと大丈夫。なにしろ私の惚れた人だから、私の信じた人だから……この貂蝉ちゃんの愛した人だもん、大丈夫。



 今私たちは小沛の城にいる。あの後けっきょく都を出なくちゃいけなくなって、すったもんだの末に劉備って人のお世話でここにくることになったの。(あのね、ここでは一応『すったもんだ』の一言で表しちゃってるけど、本当はこんな言葉一つで表せるようなもんじゃなかったんだよ。ただそうするといくら時間があっても足らなくなるからこうしただけなんだからね。私たちの苦労、察してくれる?)

 でも劉備の義弟とか言う二人はあまり歓迎してないみたい。そして奉先様の軍師である陳宮さんも。
「殿っ、私の進言を聞いてくださいっ」
「ん、また後でな」
「殿、ここは慎重に敵の様子をうかがうのが得策かと……」
「よーし、このまま突撃だあっ」
 いつもこんな風らしい。そりゃ軍師だったら怒るよね。自分の意見を聞いてくれないのだもの。しかもそのせいで失敗してしまっている。うーん、奉先様ったらぁ。でも陳宮さんが考えていたのは別のことだった。



 うーん、今日はいい天気だな。私、庭で伸びをしながら思う。え、傾国の美女と言われたこの私が伸びをするなんて想像できない? 確かに他人に見せられない姿ではあるわね。もちろん奉先様にも。まあ、このとき私は一人だったし。奉先様は兵の訓練、玲蘭ちゃんは奥様と市へお買い物。うん、はっきり言って、暇だ。

「貂蝉殿、ちょっとよろしいですか」
「あら、陳宮さん。別に私は構いませんけど、どうしたのですか」
 珍しいこともあるもんだ。別に私陳宮さんと親しいって訳じゃなかったし、だいいち話したこともなかったから。
「それは……その、呂布将軍に関することなのですが……」
「はい」
 なんだかいいづらそう。奉先様のことで陳宮さんが何か話すとすれば、やっぱりあれかな。
「じつは、殿があまり家臣の言葉に、その、頼ろうとなさらないでいるのはご承知ですよね」
 頼ろうと。あは、別に私に気を使わないでくれたっていいのに。
「些細なことでしたら構わないのですが、重大な、それも我ら一同の命に関わるようなときに私の策を用いてくださらないでは困るのです」
 んん、何が言いたいんだろう、私に諫めてほしいのかな。
「で、その理由はだいたい貂蝉殿、あなたにあります」

 へ? 私?

「目の前の敵を倒す兵力があるのにそれをしない、横の敵を叩く方が良いのに正面突破をする。なぜだか判ります?」

 判るもんか、んなこと。

「それがあなたなんです。あなたの身が心配だから危険なことをしない、あなたといたいから戦いをやめて帰ってしまう。ちょっと大袈裟ですがそうなのです」
「……で、陳宮さんは私にどうしてほしいと……」
「殿には、曹操を倒して天下を取ってもらいたい。そしてそのためには他のことに気を取られては困るのです。聡明な貂蝉殿なら判っていだたけるかと……」

 陳宮さんのいいたいことは何となく分かる。とくにこの人って、あの曹操を見限って奉先様のところにきたから、奉先さまに天下を取ってもらいたいって言う気持ちはすごく理解できる。(いまこの曹操って人、とても実力をつけてきているすごい人らしいんだ)

 できるけどそれって、……それって私に出ていけって事?
 だって別に私は…………心の中で必死になって反論してみる。でも、陳宮さんのほうが正しくて私はそれを認めるのが怖いだけって事も同時に判っている。
 いつの間にか彼は去っていたみたいだ。庭にいるのは私だけだった。



 陳宮さんが言った事、私、気付いていない訳じゃなかった。ただ奉先様が一緒にいてくれるのが嬉しくて、なるべく他の事は考えないようにしてただけなんだ。他の事――戦で負けること、それによって奉先さまを裏切る部下も出ていること――本当に奉先様に天下を取ってほしいのなら、本当に奉先様のことが好きなら、私は……

 そう考え、私はふと気付いてしまった。なんで私は、貂蝉という女の子は、呂布という人が好きなんだ?

 あまりにも基本的なことで悩んでしまう。小さい頃、今度生まれ変わったら、なんて事言ってる私に希望を持たせてくれた人。それが初恋の人で実は奉先様だった。董卓、呂布を仲違いさせるため都の宮殿にいた頃も彼にひかれていた。でも彼を好きだと判ったのは彼が昔のその人だと知ったとき。ならば別に他の人でも良かったのだろうか。初恋のその人であるなら。奉先様である必要なんてないのだろうか。


 庭の片隅で私、ひたすら考えていた。で、その考えをまとめようかというとき――

 かつんかつん

 あ、人がくる。なんだか気まずいのでそのままじっと息を潜めてしまう。やってきた二人の人は私に気が付かないで会話を交わしているので、私ははからずも盗み聞きしているようになってしまった。

「ったく兄貴ってずるいよな。訓練を見てたと思ったらいつの間にかいなくなってるんだもんな。きっとまた貂蝉殿のところだよ」
「そう愚痴るな、張遼。別に兵の訓練くらい俺たちでできるからいいじゃないか」

 ん、私のこと? とすると「兄貴」っていうのは奉先様のことで、この二人は張遼さんと高順さん。高順さんは奉先様の片腕とも言える勇将なのよ。今の話からすると奉先様は私に会いに部屋にいったのかな。でもさっきのことがあるから部屋に戻ろうという気になれない。

「だいたいいつだってそうだよ。いつも貂蝉殿や姫君が優先で俺たち家臣のことは後なんだ。たまに腹立つよ。俺たちは一体何なんだってさ」
 張遼さん、結構怒っているみたい。やっぱりさっき陳宮さんが言ってた事。奉先様みんなにけっこう迷惑かけているんだ。う、罪悪感。私がいるからこんな風になってしまうのかも。このままではここを裏切って出ていく人が増えてしまう。それだけは何としても避けたい。

「で、なんだ、腹立つから他のところに行くのか。劉備とか曹操とか袁術のところに」
 ……もし「うん」とか張遼さん答えたらどうしよう……

「いーや、行かない。一度仕えたらとことん忠誠を尽くすってのが義ってもんだろう。高順の兄貴は?」
「ふん、義か。……しかし出ていかないと言うなら俺もだ。俺は別にここが嫌な訳ではないし、いく当てもない」

「良かったあ」
 ついつい声を出してそこから立ち上ってしまう。

「うわっ、貂蝉殿。びっくりした」
「良かったあ、良かったあ、二人とも奉先様のところにいてくれのね」
「……聞いてたのですか、今の話」
「なんだ張遼、気付かなかったのか。ずっとそこで座っていただろう」
「……気付かなかった。それで貂蝉殿、良かったって何が?」
「二人とも奉先様を裏切らないって言ってくれたじゃないですか。それが、嬉しいの……」
「だって当たり前のこと。そりゃ確かにどーにかしろとか思う事もあるけど、別に他のとこがいいとか思わないから。安心していいよ。高順の兄貴もそうだって」
「えーん、良かったあ、嬉しいよぉ。だって他の人とか逃げ出したりしてるから。張遼さんも高順さんもそうかって心配したのぉ。えーん、良かったあ」

 目が曇ってきて、涙? あれ、なんで泣くのよ。でも気持ちとはうらはらに涙は止まらなくなって……
「わ、泣かないでよ。まるでおれが泣かしたみたいじゃないか。ねえってば……なんとかしてくれよ、高順の兄ぃ」
「知るか。泣く子も黙る張遼って呼ばれているんだろ、自分でどうにかしろ」
「そんな事知るかぁっ。女の子のことなんて判る訳ないだろう」


 明け方、まだ日が昇るか昇らないかのうちに私は目を覚ました。隣で寝ている奉先様の様子をうかがって……よし、大丈夫、寝てる。薄明りの中、手紙を書く。机の上に置いたその上にこれを置いて……。夕べのうちにまとめておいた荷物を持って部屋を出た。こっそり足音を忍ばせ城の入り口までやってきた。誰にも見咎められてないよね。門番にはなんて言おう。うまく城の外へ出られるといいんだけど。

 城の外へ出る……そう、結局私は奉先様から離れることにした。陳宮さんに言われたこともあるし、私自身、奉先様と接していくのに不安を感じたから。私が好きなのは小さい頃会った奉先様で、呂布と言う将軍ではないと思うといたたまれなくなってしまうから……

 これからどうやって生きていこう、女の子が一人でやっていけるだろうか、そんなことを考え考え城門の前にきた。

「あのー、すいませんっ。まだ時間じゃないことは分かっているんです、でも門を開けて貰えないでしょうか」
 ちょっと切羽詰まった感じで言ってみる。

「やだ」
「やだってそんな……あのっ、実は故郷の母が急病だって知らせが……、あれ?」

 この門番ってなんだか見覚えが……

「どうしたの、嘘までついて外に出たいんじゃないの」
 ち、張遼さん! なんでここにいるのっ!?

「ましてこんな朝早くに出るって事は尋常じゃないよな」
 高順さんまで、なんで?

「昨日の君の様子が変だったから、侍女たちに聞いたんだ。それでおれたちに会う前に公台と会っていた、って聞いたから、問い質したんだ」
 公台って陳宮さんの字ね。
「問い質したんではなくて、脅したんだろうが」
「ま、それはともかく、もしかしたらって思っておれたちはここで張ってたわけ。そしたら案の定君が来た」
「だって、だって、陳宮さんに言われたことってもっともで、私さえいなければ……」

 じり、じり、じり。言いながら後退り。
 えーん、この二人の雰囲気、何か怖いよ。

「昨日君は俺たちに将軍を見捨てるなっていったのに、自分は見捨てていくのか」
 がしっ。高順さんが腕をつかむ。普段喜怒哀楽をあまり出さない分怒ると、うー、怖いよー。

「公台の言ったことなんか気にしなくていいよ。あいつは曹操が力をつけてきているから焦っているんだ」
「ありがとう、でも……」
「……おーせーん、ちょーせーん」
 びくっ。奉先様だ。やだ、今は会いたくない。しかし逃げ出そうとしても腕は高順さんにつかまれたまま。

「それにね、貂蝉殿ほど呂布の兄貴を愛してる人っていないと思うよ」
「おい、張遼、行くぞ。あとは俺たちの出る幕じゃない」
「そうだな。しかも兄貴の馬は赤兎馬だから、蹴られたらまず死ぬな。ははは」

 …………行ってしまった。はっ、私も早くどこかに、でもどこへ行ったら……

 私がそこに立ち尽くしていると奉先様が私の前まできて……

 ぱちん。頬が鳴った。

「馬鹿野郎、俺のところ以外にどこへ行くって言うんだ」
「奉先様……」
「私がいると邪魔になるだと、貂蝉。なにを考えているんだ」
 彼の手に握り締められた紙。さっき私が書いた手紙。

『今までありがとうございました。私がいてはきっと天下統一の邪魔となるやも知れません。
あなたと過ごした日々は忘れることがないでしょう。御武運をお祈りしております』

「天下を取ったってな、貂蝉」
 私の腕を掴んで力任せに引き寄せる。私はほとんどつんのめるようにして奉先様の胸に倒れ込んだ。
「おまえがいなければしょうがないんだ。誰のために天下を取ろうって思っているんだ」
「……私の、ため?」
「いいや違う」
 大きくかぶりをふって

「俺と、おまえのためだ」

 …………。何も言わず彼の胸に顔を押し付けながら、私、今はっきりと理解できた。過去なんかどうだっていい、今のこの人、呂布という人が好きなんだって。そうよ、この人が好きなことに理由なんか要らない。ただこの人だから好き。それだけで十分。

「あ、後これだ」
 彼が差し出したのは蓮華の髪飾り。手紙と一緒に置いてきた物。
「ありがとう」
 それを受け取ると自分で髪に挿した。
微笑む。
自分でもびっくりするくらい穏やかに微笑めた。うん、この人と一緒なら大丈夫。私ももう大丈夫。迷ったりしない。


 それからも私はお城にいる。奉先様の態度も昔と変わらない。しかし他のだれもが納得している、これが呂布、奉先という人なんだって。
 それでも納得できない人達がいた。その人達は曹操と通じた。昔私たちが世話になり、助けたこともあった劉備も曹操についた。多勢に無勢、奉先様たちは捕らえられてしまった。


「張遼将軍以下の兵たちは曹操に下ったそうだ」
「呂布将軍や高順将軍は首を切られたっていうじゃないか」
「陳宮殿は不憫にも曹操の前で首を切られたというし」
「しかしどうしようもないのは呂布だな。一人みっともなく命乞いをしたというし、それが駄目だと口汚なく罵ったというではないか。温候だか飛将軍だかしらないが、恥というものを知らないのかね」

 その後の城内は口さがない話で一杯だった。この城はすでに曹操軍の者が占領していて私たちは近く許昌に送られるらしい。

「姉様ー、やだやだやだ。父上が死んじゃったなんて嘘だよね、ねえ嘘って言ってよー」
「玲蘭ちゃん……」

 泣きたいのはこっちだよ。嘘って言ってほしいのは私のほうだよ。なんで私を置いていってしまうのよ。一人にしないでよ……

 他の人達も酷いじゃない、奉先様の悪口ばかりいって。裏切り者って言うけどさ、こんな世の中だもの、いつだれが敵味方になるか判らないのに。あの劉備だって私たちのこと裏切ったじゃない。命乞いしたって事だってそうだ、それだけ純粋に生きたかった、という事。私との約束のために……

 ああ、そうだ。彼が汚名として言われた事ってみんな私のためなんだ。董卓を殺したこともみんな――

それだけ私は愛されていたって、世間に何と言われようと私を愛してくれたためにやったことなんだって、ちょっと自惚れたっていいよね……。ほらいいでしょう、私はこんなに愛されているんだよ、世間を全て敵に回すほど愛されているんだよ、どう、羨ましいでしょう………………

 でも、もう彼はいないの……


 気が付くと池の前にいた。いつの間に城を出たのだろう。蓮池だったみたいだけど、今は花が咲いていなかった。葉っぱが浮かんでいるだけ。これからなにを頼って生きていけばいいのかな。城へ戻る気はないし、ましてや曹操のとこなんて絶対いや。

 奉先様は言ったよね、生きていればきっと幸せになれるって。でもそのあなたこそが私の幸せだったんだよ。あなたがいなかったら生きていたってしょうがない。

 あなたと過ごした日々、すごく幸せだったよ。これ以上望めないくらい幸せだったよ。……だから、いいよね。

 今度生まれ変わるとき、また会えるといいね。そして一緒になろうね。もしかするとお互い過去のことは忘れているかもしれない。でも、蓮華の花を見ればきっと判るよ、二人はむかし恋人どうしだったって。

 そして。

 季節外れの蓮華が池に舞った――

<了>


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