オメガのお母さんの話(その1)
omegamama.htm


ゆずりは第1公園で・・・


ゆずりは第1公園は
私がスージーをつれて
よく行く公園です。 
犬の集会所になっています。


もう1年くらい前から、
みなが寄り集まっていますが、
お互いを犬の名前を使って
呼び合っています。
「スージーのお父さん」とか
「オメガのお母さん」というふうに。


先日、もうなじみになった、
オメガのお母さんとオメガが
九州に引っ越ししてしまいました。
ご主人が転勤だそうです。


お別れのあいさつもできないまま、
その人の本当のお名前も
わからないまま、
いってしまいました。


なにか、心がポッカリ、
風通しがよくなった感じで、
みなう・つ・ろです。

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実は、
オメガには、義理の弟がいます。
熊(クマ)といいます。熊みたいなので、
クマ
という名前です。


「人間の名前のつけ方なんて、
みな、単純です」


オメガのお母さんが、
野良犬を拾ってきて、
クマと名づけたのです。



オメガは、盲導犬でした。
途中、股関節が悪くなり、
ヨタヨタ歩くようになって、
盲導犬として
役目を果たせなくなりました。


それを譲り受けたのが、
お母さんでした。




お母さんは、
野良犬を拾ったり、
お役目ご免の盲導犬をもらったりで、
なかなかのものです。


博愛衆に及ぼすというのは、
こういうタイプの人を言います。
クマは野良犬でしたから、
犬としての”人間性”を
取り戻すのに
時間がかかりました。




あるとき、
お母さんの前で
クマは猫をかみ殺してしまいます。
お母さんは
割って入る余地がなかったそうです。
クマはそれを食べようとしたから、
大変です。
きっと、
だれだって、慌ててしまいます。


お母さんはそのことを
淡々と私に話しました。
しかし、
私は淡々とは聞けませんでした。
とても興奮していました。


これを読んでいる人も
思わず顔をしかめているでしょう。



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しかし、
お母さんは根気良く
クマをしつけていきます。


ついに
野良猫を見ても
じっと座って
それを見つめるだけで
我慢できるまでに
成長したのです。


お母さんのしつけは、
見事でした。

やがて、お母さんは、
クマに、人間らしいものを
感じるようになります。




ある日、
お母さんはまた
野良犬を拾ってきました。
チビと名付けました。
コーギー犬種です。


脚が短く、耳が立って、大きい、
白と茶のブチの犬です。


ご主人がついに怒りました。
「今から捨てに行く!!」



3匹目ですからね。



お母さんは、
「私が悪い。仕方ない」と思いました。



ご主人は10キロ離れた
隣接する市の大きな川まで、
車の窓に覆いを掛けて、
ぐるぐるその辺を回って、
チビを捨てに行きました。





その晩
チビは、なんと
お母さんの家に帰ってきました。
雨が降っていたので、チビは
ドロドロでした。
「人間なんて、チョロイものです」


ご主人は
今度は自分のばかさ加減に
腹を立てました。



あくる日、お母さんは
チビに懇願するように
言いました。
「私が悪かった。お前を拾ったのが
間違いだった。
悪いけど、
お前を飼うわけにいかないの」


お母さんは
ポロポロ涙を流していました。


そう言いながら、玄関の扉を
開けて、外へ出しました。


チビはほんとに
どこかへ
いってしまったのです。





お母さんは、クマの首輪から
狂犬病の予防注射の認証メダル
を取って、チビの首輪にしっかり
くくりつけてやっていました。


こうしておけば
保健所に捕獲されても
当分殺されることは
ないのです。





お母さんは
当分気持ちが
落ち着きませんでした。
毎日が、何も手がつかない
状態でした。
そわそわしていました。


主人には言えない
自分の気持ちを
やはりだれかに、
打ち明けたいと思いました。


それが、
人間であれ、犬であれ。




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見事に成功したクマのしつけに、
お母さんは
クマの、人間みたいなぬくもりを
感じていたのです。
クマに自分の切ない気持ちを
吐露しました。


「クマ、お前ならわかるでしょう。
私は、ほんとは心にもないことを、
チビに言って、
追い出して
しまったの。
お願いだから、クマ、チビを
見つけて、つれて帰って」


お母さんは、そう言いながら
また、ポロポロ泣いていました。
チビの名前を何回も何回も
口にして頼みました。





クマは、
まるでお母さんの気持ちが
分かるかのように、
ほほに伝わる
お母さんの
大粒の涙を
ペロペロなめるのです。


クマは、外へ出て、その日から
三日三晩
帰ってきませんでした。





4日目の朝、早く
お母さんは、眠い目をこすりながら、
何か犬のクンクンという
泣き声が聞こえた、
ように感じました。


まさか、と思って
カーテンの隙間からのぞきました。
やっぱり、その「まさか」がありました。

クマでした。

シッポをちぎれんばかりに振って
門の前で
立っていました。


なんと、そばに、チビが
いるではないですか。
同じように、ちぎれんばかりに
シッポを振って・・・






あなたは、
この話を信じることができますか。


信じることができる人の
心の中には、
犬や猫たちとの
無限の、楽しい、心温まる、すばらしい
生活が
約束されていると思います。



そして
信じられない人の
心の中には
そのような話を信じることが
できる心が、


眠っているだけなのです。




付記

オメガのお母さんは
およそ1か月、
どこへ引っ越しされたのか
わかりませんでしたが、
ミスティのお母さんに
ばったり出会い、
引っ越し先を
教えてもらいました。


それで、
コーギー犬は、「チビ」だ
ということがわかりましたので
コーギーをチビに
訂正しました。


(2002/5/26)



「オメガのお母さんの話」
(その1)の
著作権は
オメガのお母さんに
あります。

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