「ある雑誌の広告の問題点」
                                    
                                                                                                                                                                                     (2002年6月号)

                                    テープ起こしに関する広告の問題点を取り上げました.
                   

     (はじめに)

前回、6月19日に私が書いた二つの方法自体が間違いではないのですが、○月○日の○○
さんのアドバイスに基づいて、資料を精読してみた限り、『プチタンファン』に載った○社
のテープ起こしの広告が、いわゆる「業務提供誘因販売」に該当するということが、わかり
ました。したがって、私の二つの方法が当面やる方法として最善のものではないという結論
になりました。その点、まず○○さんを始め、私のコメントを読んでくださった方々に、大
変ご迷惑をおかけしまして、申し訳なく思っております。

そこで、話を整理する意味で、もう一度「業務提供誘因販売」というものを県民共済が出版
している『くらしの豆知識』と○○さんから紹介していただいた、HP「悪徳商法マニアックス」の両方を照合して、育児雑誌の『プチタンファン』に載っている広告のどの点が、法律に抵触する可能性があるのか、またどのような改善策を○社に要求すればいいのか、などを整理してみます。

「悪徳商法マニアックス」の説明を引用しながら、私の注釈も(   )付けで付記して、
説明します。

                                                                            戻る
(本文)                                 

2001年6月1日から施行されている「特定商取引法」に言う、「業務提供誘因販売」
には三つの要件があります。(1)「業務の提供と報酬を提示する」(2)「報酬の期待を
抱かせる」(3)「営業に利用する商品やサービスを販売する」です。

この説明は、県民済(〜県民共済生活協同組合)が発行する『くらしの豆知識』(2002年
版)では、次のようになっています。(同書の54ページを引用)
  
「業務提供誘因販売とは、業者が提供または紹介する業務をすれば収入(業務提供利益)が
得られるという勧誘により、その業務に使用するための商品や役務の契約(特定負担)をさ
せるという取引です。」

結局、上の「悪徳商法」の定義のほうが、より具体的に書かれているのでややわかりやすいと思います。説明はもっと具体的に書かれています。主として「悪徳商法」の説明を引用していますが、(    )内の説明は、dot.comの注釈です。


(1)第1要件の「業務の提供と報酬の提示」について
   
  
@具体的な内容: 「在宅ワークをしませんか?」という電話勧誘を受けたり、「在宅
   ワーカー募集」という広告を見て電話すると、「これくらい稼げますよ」と具体的
   な金額の提示があった。(実際、電話であろうと、新聞や雑誌、あるいはチラシの
   広告など、何であろうと、この要件は成立すると思われる)
   
  
Aこの要件の違法性の有無:明確な違法性は「なし」のように思われる。その理由と
   して、修了認定試験に合格すれば、登録できるとうたっているし、仕事もある程度
   保障されるているので、これでもって法律に違反しているとは言えないのではない
   か、と思われる。(問題は仕事の提供をどの程度の分量だとしているかである)

(2)第2要件の「報酬の期待を抱かせる」について
    
  
@具体的な内容:(「報酬の期待を抱かせる」というのは、ここでは、仕事の                     分量ときり離せない。仕事の分量をどのように定義して広告
           しているかによって、報酬への期待はいかようにも膨らみ、期待
           を増幅させるものと思われる)

  
Aこの要件の違法性の有無:明白な違法性が「あり」のように思われる。
             
    理由:仕事の量に関する広告文のすべてと、提示されている金額の最低のもの
       を取って、しん酌したとしても、聞き及ぶ範囲の額とはかけ離れている、
              と思われる。

         
 
《仕事の量に関する広告文から、すべてを原文どおり拾ってみる》

  
時代はいま「テープライター」を求めています。仕事は次々にあふれるば
   かり。ところが技能者は不足しているのです。今こそ始めるチャンス!
   すぐスタートなさってください。

  
仕事は豊富。マスコミ業界を始め、さまざまなジャンルから仕事が殺到!
       
                                                                      戻る
  以下の一覧を見てもわかるように、実にさまざまな企業・団体から仕事を請け
   負っています。

   
《印刷・マスコミ業界》

       
医療で見る20世紀(新聞社)
       
会社社長インタビュー(新聞社)
       
ガン患者へのインタビュー(出版社)
       
ラグビーに関するインタビュー(出版社)

   
《医療機関》

       
芸能人の趣味に関するインタビュー(出版社)
       
保育関連講演会(印刷会社)
       
中高年齢者の効果的な体力づくり(医療機関)
       
痩身セミナー(医学団体)
       
医師会記念式典(医療団体)ほか

   
《一般企業・組合など》

       
地域日本語講習会(地方団体)
       
社内研修セミナー(流通企業)
       
映像関連講習会(CM通信)
       
裁判資料(個人)ほか

  
「実際に需要はあるの?」「ここだけの話なんですが、今、実際マスコミ業界
   や一般企業からの需要はすごく多いのに、技能者の数はかなり不足しているん
   です。おまけに、年々テープライターを必要とする業界は広がり続けているか
   ら、仕事の発注も増え続ける一方!まさに始めるなら今って感じですよ。」
   (これは、原稿用紙を前において仕事している、ある女性の吹き出しの文章です)
           

 
《60分あたりの金額に関するもの》

  
60分テープ1本2万円!将来性有望!
  
「収入は大体どのくらい?」
   「プロフェショナルな技能だから、収入はかなりイイですよ。
   60分テープ1本で2万円以上、時給にして\2,800 〜\6000と、かなり
   効率よく稼げます。・・・」
   (これも、原稿用紙を前に仕事中の女性の吹き出しの文章として載っている)

 
dot.com の注釈                                                 戻る
  
   60分1本、2万円というのは、某先発会社の金額と同じである。
  「60分1本2万円以上、時給2800円以上」のデータから、最低の金額で単純計算
  してみると、この吹き出しの女性は、音質のいい60分のテープを1本、約7時間でこ
  なしていることになる。これは、音合わせや、誤りの修正などすべてを含む時間であ
  る。これはもうプロ並みの仕事量になる。というのは、某先発会社のプロたちが、平均
  的な60分テープをこなす時間が、音合わせを入れて5時間から7時間ぐらいであるか
  らだ。(広告用パンフレットから、参考引用)これは皆平均の時間である。 
 
  そして、某先発会社の1本2万円というのは、社員の給料や会社としての営業費や必要
  経費などをすべてを含んだ金額である。一方、この吹き出しの女性は税金を源泉徴収 
  されないで、青色申告もしなければ、全額が手元に入る労働の対価ということになる。

  後発会社がこのようなことをしていて、激しい競争に勝てるとは、にわかには信じがた
  い。あるいは、在宅ワーカーの足元を見て、同じ試験の合格者でも、金額による選別で
  もしているんではないか、と疑われても仕方ない。

  先発会社のパンフレットも、¥15000から¥27000と、自分の会社でも取らな
  い金額をかいてはいるが、まだ良心的に、同じパンフレットのどこかに、相場は 
  ¥15000、最低でも¥10000と正直に断っている。
  
(3)第3要件の「業務に利用する商品やサービスを販売すること」について

  
@具体的な内容:ここで言う「業務に利用する商品」とは、テープ起こしの教科書
   や音声の録音テープ、必要に応じてテープレコーダのことであるが、テープ 
   レコーダーは広告文に含まれていない。「サービス」とは、テープから起こされた
   提出課題を添削指導することである。

   そしてこれら両方を販売するのだが、通信添削講座受講料や、受講期間など
   については、添付のはがきやフリーダイアルで請求する詳しい資料に書かれてい
   るはずである。
    
  
Aこの要件の違法性の有無:違法性は「無い」ように思われる。

dot.com の注釈                                               戻る
  
  結論的にまとめると、某出版社発行の『プチタンファン』(6月号)の186〜187ページ
  にわたるA4サイズ2枚分の、テープ起こしの広告文は、いわゆる「特定商取引法」の
  「業務提供誘因販売」に規定される三つの成立要件、(1)「 業務提供と報酬の提
  示」、(2)「報酬の期待を抱かせる」、(3)「業務に利用する商品やサービス販
  売」のうち、(2)の「報酬の期待を抱かせる」において、同法律に大きく抵触する可
  能性を内在していると思われる。
  
  考えられる理由として、報酬金額の平均値ではなく、報酬金額の高い方を一方的に記述
  していると思われる点、かてて加えて、仕事量の観点からも、聞き及ぶ範囲での現状を
  しん酌した場合、広告文からすでに引用しているように、過度の期待感を抱かせる可能  性が大きいと言わざるを得ない。

  すでに説明したように、報酬金額の高さと仕事量の誇大な広告が相まって、一層大きな
  期待感を抱かせることになると考えられる。

よって、○社に勧告してほしい点を列挙すると
  
 
@報酬は、人によって差があるとしても、60分テープ1本あたりの、最高額と最低額を
   明示し、同時に、一人当たりの月間平均値を明確にせよ。(最低額から最高額までの金
  額を実態に応じて提示せよ)(60分テープは、内容的には一般的な話題、音質も日程も
  普通のもので、緊急ではないテープとし、以下同じとする。)

 
A仕事量も、一人あたりの月間平均値を提示せよ。
   (例:一人、月平均、60分テープ何本)
  
 
B修了認定試験の結果を添削答案とともに受験者に返却せよ。

 
C単位年度あたりの、受講者数、中途退学者数、卒業者数、修了認定試験合格者率を公表
  せよ。

 
D修了認定試験のテープ起こしの時間をもう少し標準的、常識的な設定にせよ。
  (少なくとも80%の受験生が書き起こすことができる時間にせよ)

 
E原稿用紙にテープを起こしていく方式は、そうでない場合と比べて、倍以上の時間がか
  かる。講座受講中の人ならまだしも、営業している人が、あたかも原稿用紙で間に合う
  と思わせる広告は廃止せよ。

 
F少なくとも、パソコンが必需品であることを明記せよ。

 
Gトランスクライバーという便利ではあるが、やや高価な機器をプロやセミプロがほとん
  ど、使っていることを参考のために記述せよ。フットコントローラーもあわせた金額も  また同様である。

 
H子供をひざに抱いて仕事ができる印象を与えているが、これは即刻廃止せよ。主婦が家
    事や、育児と並行してテープ起こしをやることの難しさを、十分説明せよ。

 
Iテープ起こしの需要が増えていることを、漠然と、抽象的にうたうのではなく、統計資
    料に基づいて広告せよ。
  
 
J(修了認定試験の合格率を公表すると同時に)テープ起こしには、どのような適性が必要
  か、しっかり広告文に記述せよ。また、かりに適性がなくても一生懸命努力すれば、ど
    の程度報われるものか、経験則に基づいて説明せよ。
 
   トップページへ                                                     戻る

                                     目次へ