お医者さんごっこ


「今日は暇だねえ」
「ホント、暇ねえ」
「じゃあ僕とお医者さんごっこしようか」
「この歳になってごっこ遊びなんておかしくない?」
「いや、むしろ大人ならではのお医者さんごっこを目指したいんだ」
「なるほど、大人ならではねえ……じゃあ、やろっか」
「僕がお医者さん、君が患者さん役ってことで」
「了解、まかせて」

「次の方、どうぞ」
「先生、お願いします!」
「そんなに息を切らして、どうなさいましたか?」
「うちのおばあちゃんが!おばあちゃんが!」
「落ち着いて、ゆっくり話してごらんなさい」
「うちのおばあちゃんが、胸が苦しいといって倒れたっきり……」
「こちらのおばあさんですね。倒れたのはいつですか?」
「15分くらい前でしょうか」
「おばあさん、分かりますか〜? 分かりますか〜?」
「倒れたっきり、意識がないんです」
「じゃあ心電図。点滴も始めましょう」
「昔から不整脈があるって言われてたんです」
「すぐに入院ですね」
「あわてて来たんで保険証を持ってきてないんですけど」

「ちょっとタイム。患者さん役じゃなかったの?」
「あ、正確には『患者さんの家族』かな」
「思ってたのとずいぶん違うんだけど……」
「大人なら本物志向じゃなきゃね。こーいうのも結構楽しくない?」
「うん、別の意味で楽しかったよ」
「大人ならではのお医者さんごっこ、続ける?」
「うん……いや、もういいや」
「今日は暇ねえ」
「ホント、暇だねえ」