忍者バトル

そこには侍と忍者がいた。
「刀を持つ私を相手に拳でこれだけ戦うとは……」
「これでも忍者のハシクレ、甘くみてもらっては困るというもの」
「おぬし、なかなかやるな」
「しかし私がこれだけだと思ったら大間違いだ」
「な、なにぃ! まだ隠された何かがあるというのか」
「ゆくぞ!」
「その両手で結んだ印。まさか……」
「分身の術!」
「さ、3人に増えたぁっ!」
「ふははは! 見たか、我が忍術。これぞ忍者の真髄!」
「いったいどれが偽物なんだ、そしてどれが本物なんだ……」
「教えてやろう、全部本物だ」
「なにぃ!」
「では、ゆくぞ!」
「うわあ! 拳を避けきれん!」
ぱちっ!
「ん? 攻撃は確かに俺に当たったようだが、ずいぶんと弱いパンチだな」
「なんせ重さが3分の1になってしまったからな。拳の重さも3分の1なんだ」
「なるほど、忍術も万能とはいかないものだな」
「忍者といえども物の理にはあがらえぬもの。それでは気を取り直して……」
「ん? ちょっと待ってくれ。3人いるのはいいんだが……一人、居眠りしてないか?」
「ああ、奴のことか。人間、一日24時間のうち3分の1は眠っているもの。それが彼なんだ」
「なるほど、分身の術にも色々と事情があるもんだな」
「忍者といえども人の域は出ぬものだ。それでは話はこのくらいにして……」
「ん? ちょっと待ってくれ。寝ている奴とは別に一人、攻撃してこないのがいるぞ?」
「ああ、奴のことか。人間、色々な一面を持っているものでな」
「ほお」
「自分で言うのも照れくさいんだが、拙者にも心優しい部分がある。それが彼なんだ」
「なるほど、よく見れば足元の蟻や草花を踏まないように歩いている様子。なんとも感心なことだ」
「それでは無駄話もこのくらいにして……」
「ん? ちょっと待ってくれ。ひとつ質問なんだが」
「なんだ」
「おぬしの分身の術、いったい何の得があるんだ?」
そこには眠る者が一人と花を愛でる者が一人、そして二人の男が悩み立ちつくしていた。