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第九

平成10年12月18日(金)

昨日、長男を連れて「第九」を聞きに行ってきた。「第九」と言っても、
        「大工」
        「ダイク」
などと、他の言葉と比較して何が違うのかも、よく分からない私である。もともと、小さい頃から弟や妹に
「お願いだから、お兄ちゃんは人前では歌わないでね。」
「そうだよ、音痴なんだから」
と言われ続けてきた。クラシックには基本的には興味は無い。なぜ、そんな私が「第九」を聞きに行くことになったのか。

実は希望者に招待券を2枚いただけるというので、頂戴しただけなのである。いや自分で聞きたいとは、正直思わない。ただ、子供には良いチャンスかもしれないと思い、長男坊を連れてクラシックの鑑賞となったわけである。

これで私も、高校生のときには、友人と一緒にコンサートを聞きに行ったり、展覧会を見に行ったりと、多少は文化的な雰囲気を味わっていた。しかし、展覧会では、風景画なんぞはまだ見る気になるが、抽象画というやつは、こりゃー、だめである。クラシックコンサートにいたっては、寝ないで起きていられる自信は、全然無い。

今回のコンサートは、7時開始ということであった。我が家から、会場のサントリーホールまではどう考えても1時間以上かかるのだが、当日は仕事に夢中になっており、さあ帰ろうと思ったときに、やっと『あっ! 今日は長男をコンサートにつれて行く予定だった!』と思い出した。大慌てで自宅に帰り、そのまま子供と一緒に家を出たのが、6時8分。こりゃー、とても間に合わないかな、と思ったが、ひたすら急いで溜池山王の駅に着く。後は、早足でサントリーホールを目指す。到着時間は、7時20分近くになっていた。ホールに入ると、
        「ただ今から、15分の休憩に入ります。」
との、アナウンスが入っているではないか。プログラムを見ると、ブラームスの『大学祝典序曲 作品80』という曲の演奏があったらしい。座席は、左側の、一番後ろの席。しばらくすると、ステージには、東京交響楽団のメンバーが入場してくる。その後ろには、尚美学園「第九合唱団」の面々が並んでいく。
いよいよ、演奏だ!

うんーーーー、眠い。
なんだかステージでは演奏しているが、私はうつらうつら、頭が動いてしまう。左の方に座っている男性は、なんと、単行本を広げて、読書をしている。その隣の男性も、なんだか、ボーっとしている。前の座席に座っている人たちも、なんとなくつまらなさそうである。隣では、長男坊が聞いてくる。
「ねえ、お父さん。いつになったら歌が始まるの?」
「ちょっと、待ってね。」
‥‥‥(プログラムを読む)‥‥‥
「この『第九』は、全部で4つの楽章から出来ていて、4番目の楽章だけ、歌がついているんだよ。」
‥‥‥(しばらくたって)‥‥‥
「もう、第4楽章に入った?」
「さっき、ちょっと止まったのが、きっと楽章と楽章の切れ目だろうから、今、第2楽章だよ、きっと。」
‥‥‥(しばらくたって)‥‥‥
「もう、第4楽章に入った?」
「もう少しだよ」
‥‥‥(しばらくたって)‥‥‥
「もう、第4楽章に入った?」
「いいから、黙って聞いていなさい。」

やっと、ステージで、歌が始まった。いつもの、あの懐かしいメロディーである。とりあえず、ほっとして聞いていたのだが、だんだん分からなくなってくるので、やっぱり眠くなる。早く終わりにならないかなと思いながら、
        『やっぱり、クラシックのコンサートは、やめよう』
との思いを、新たにする。

帰路、息子に尋ねてみる。
「どうだ、面白かったか?」
「うん、面白かったよ!」
この言葉に、救われた。

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