三日目




摩周湖ブルー


朝、一縷の望みを抱いて旅館の窓を開けた。

曇天だった。それでも僕は羅臼湖に行こうか迷ったけれど、行ってみて昨日の二の舞になるの
は嫌だったから、摩周湖や阿寒湖に行き先を変えることにした。

とうとう知床の山々は僕にその姿を見せてはくれなかった。アイヌの神々に嫌われたかな。

北海道はドライブに最高だ。沖縄でも思ったけど、やっぱり信号なしに真っ直ぐ突き進めるの
は気持ちが良いもんだ。晴れ間が見えて、本当にそう思った。

硫黄山に着いた。高校生の時訪れたことのある場所だ。あの時は友人と自転車で来た。旅も
後半でお互い言い争いが増えていた頃だった。友人は山に登りたいと言い張った。走るだけで
も辛いのに無茶言うなと僕は返した。結局硫黄山は登れる山ではなかったから事なきを得た
けど、ホント無茶なヤツだったな。


硫黄山

そこで彼と久しぶりに再会した気がした。彼はもうこの世にいない。なのに僕は初めてこの地を
訪れてから倍の年月を生きている。

不思議なものだな。もう過ぎ去ってしまっているのに、あの頃の僕や彼にふとした拍子に再会
できたりするんだ。だから思い出は多い方がいい。例え辛い思い出だって、何もないよりはい
い。 
阿寒湖ではアイヌコタンへ行った。アイヌ民族の集落という触れ込みだったが、そこは土産物
屋が連なっていた。アイヌ舞踊を上映もしていた。つまりアイヌの人々はそうして生計を立てて
いるということだ。同情すべきではないのかも知れない。でも観光なくしてはアイデンティティを
保てない現実に悲しい気がした。倭人が奪ってしまったものはとてつもなく重い。


             アイヌコタン

でも、多かれ少なかれほとんどの民が何かしらを奪われて、巨大な渦の真ん中に吸い込まれ
て生き長らえて来たのだ。歴史とはそういうものだ。

旅の終着点、網走に着いた。見事な秋晴れだ。もしかしたら羅臼湖に今日は行けたかも知れ
ないと思うと少し残念だけど、それもまた縁だし仕方がない。硫黄山で懐かしい人に出会えたし
良しとしよう。今日は最後の夜だ。美味しい酒と肴を味わいに出掛けよう。


網走の黄昏           



今日の一句

流浪人 泊まる港で しじみ汁



エピローグ


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