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天路家集

天国への道
あるいは
羊飼いの歌







風の子のいたずら





あなたは風の子を見たことがありますか。
そう、スイスの山間に吹き、北極のオーロラを指揮し、都会の路上を颯爽と渡りめぐるあの風の子供のことです。色で言えば水色。音で言えばソプラノ。瞬間にして永遠なものの予感のする、かわいい、つむじ模様の衣をまとったもの。
タケルは、そうした風の子を飼う少年でした。
まるで羊の群れをあやつるように、タケルは風の子を自由自在にあやつることができました。
今日はそうしたタケルのもとに、あたらしい風の子が生まれたのです。
 
「おとう。今日、生まれたばかりの風の子はいつものとはちょっくら違う。」
パッチリと目を開いた、オーロラが生んだばかりの風の子を見つめながら、タケルは不思議そうな顔をしました。
オーロラが生んだ風の子は、キラキラと眩しいくらい光り輝いていたのです。 その子は、愛らしい水色の子犬のようにくるくると風のゆりかごの中を駆け巡っては、タケルの方を見上げてニッと笑うのでした。まだ10歳に満たない幼いタケルにさえも、それはそれは、この世のものと思えない愛らしい風の子の誕生でした。

 その日から、タケルは、10日と10晩、10億光年の遠くを流れる光の糸をあつめて編まれたゆりかごの傍らで、風の子の姿を見つめては起き、見つめては眠りました。周りにはいつも32個の風の子が小さく渦巻いていて、ときおりタケルの手のひらに飛び乗ってはゆりかごの中を覗き込み、飛び降りてはまた渦巻いて駆け巡っていました。
風の子はそうしてタケルに見守られながら他の風の子と変わりなく、生まれた時と同じようにキラキラと光輝いたまま大きく成長しました。タケルはそうした風の子をヒュペリオンと呼ぶことにしました。


 ここで風の子の生まれた時代背景を説明しておきましょう。
 時代は天正元年のことです。その年はおおきな星が空から降り落ちてきた年でした。


そんなある日、
タケルの元に帰ってきた風の子達が耳もとで囁きました。
「タケル、隣の村で大変な事が起こっている」
風の子達は、口をおおきくさんざめかせてタケルの周りを飛び回りました。ヒュペリオンもキョロキョロと他の風の子達の言葉に耳を傾けています。
よく見ると、もう少しで風の学校を卒業する年齢にさしかかっているその風の子の衣は無残に擦り切れ、ところどころ赤い血に染まっていました。
「おとう、風の子達が・・」。タケルの声におとうが駆けつけました。
「今年は、隣の村に来たのか」。おとうはつぶやきました。

おとうは思い出すのも苦しそうでしたが、タケルに向かってはっきりと言いました。
「奥深い地の底から這い上がって、地の上にあるすべてのものを食い尽くしてしまう、あの悪魔が、ついに隣村で目をさましたんだ」
おとうの目は涙に潤んでいました。
「ついに最後の時が来てしまったのか・・なあ、タケルよ。」
「何?」
「村を出よう。」おとうは、言いました。
「ここを出るの?いやだよ。風の子達は?ヒュペリオンは、どうするの?」
風の子達は、じっと二人の話を聞いていました。

 その頃、タケルの住む村を流れる川では、風の子たちが見たことのない大異変が起きていました。いつも清麗な川の流れは、どす黒い吐血のように赤く染まり、おびただしい熱が川面から蒸気をあげはじめていました。すべての魚は暑熱に耐え切れず、うろこをきらめかせながら川の流れから跳ね上がっていました。周辺の草木は息をすることもままならず、喘いでいました。
時を選ばず、場所を選ばず、出現した悪魔が繰り返す惨事でした。

「おとう、お願いだよ!このまま、ここを出たって同じだよ。」タケルは言いました。
「タケル、どうしようもないんだよ。」おとうは、じっと遠くを見つめてつぶやきました。
「やっつけてやる。皆を苦しめてきた悪魔を・・」
タケルの周りを風の子達が飛び始めました。
ウォンウォン、とすごい音があたり一面に響きます。
 そして、風の子はそれぞれの手をつなぐと大きな螺旋を描いて、その真中にタケルの体を包み込みました。螺旋の回転がますます速度を増します。タケルの耳元にはもはや疾風怒涛の唸り声しか聞こえません。目にも止まらぬ速さで回転する螺旋の風の真横に突っ立っているお父は、渦の中からタケルを引き出そうとしましたが、もはやどうすることもできません。風の輪はあれよあれよという間に、タケルとともに大空に舞い上がっていってしまいました。
「タケル・・目を覚まして。」やさしい声にタケルは、静かに目を開けました。
「ここは、何処?」光り輝く風景に、先ほどの恐ろしい疾風が嘘のように、風の子達も穏やかに飛び回っていました。
「タケル・・ここは風の中だよ。さっきはびっくりしたよね、でもタケルの怒りが皆に伝わったんだよ。でも、怒りは不幸を招くよ。」
タケルはじっと耳を傾けました。「ヒュペリオン?ヒュペリオンなの?」
これから、飛び方を教えて、みんなの仲間入りをするはずのヒュぺリオンがそこにいました。「タケルの気持ちが僕の時を早めたんだ。皆もタケルと同じ気持ちだよ。ずっと人間達を悲しませてきた悪魔をやっつけたいんだ。だから知恵を使おう。怒りだけじゃ、だめだよ。」
ヒュぺリオンは、生まれたときよりもずっと光り輝いていました。


さて、ここで、読者の皆さんは少し時空の旅をすることになります。
ヒュペリオンのゆりかごが10億光年の遠くを流れる光の糸を集めて編まれたものであることはお伝えした通りです。
タケルの隣村で地の異変が起きていた、まさにその頃、ヒュペリオンのゆりかごが育まれた10億光年彼方の宇宙では、無数に輝く星の光を殺してしまう、歴史上有数の大異変が起きていました。これまで輝く光の膝下にかしずく服従の象徴と考えられていた漆黒の闇が急激にその力を伸ばし、ことごとくの光を食い殺してしまう暴挙に出ていたのです。ここでは、その漆黒の闇のことを「黒衣の大王」と呼んでおきましょう。黒衣の大王は、地球上の形にたとえれば狛犬のような姿をしていて、その黒く巨大に裂けた口蓋をかっと張り開けて咆哮し、闇の軍団を鼓舞していました。大王が一回吼える度に、闇の軍団の兵士は千本の漆黒の針をその皮膚から吹き出し、広大な宇宙を駆け巡る原子線にその針を忍び込ませ、光り輝くものに執拗な攻撃を浴びせていたのです。すべての輝く光は、ひとたびその針に触れると、喰らい尽くされて漆黒の闇に変じてしまうのです。
太陽系の辺縁に浮かぶ地球は、黒衣の大王の世界から見るとすべてを滅失させるべき相手でした。宇宙に浮かぶその球体は宝石のように光り輝き、その地表は生命の喜びにあふれ、あらゆる光は乱舞し春を謳歌していたのです。タケルの隣村で起きていた地の異変も、実は、闇の兵士の皮膚から発射された針が地球上の光に突き刺さるときに起きる異変なのでした。いわば地球に宿る光が、闇に食い殺されて輝きを失う、その瞬間の苦悶の刻印でした。

「ヒュペリオンよ、ヒュペリオンよ」
ヒュペリオンは天上から呼びかける声を耳にしました。
 

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2000年09月02日 18時31分57秒


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