まあ、よく書いたものです。収拾がつきません。
少しずつここにあげておいて、とりあえずの保管箱にします。

「夜」1214

真冬の夜の
遠く遠く、声が聞こえる。
僕を呼んでいる。

僕は立ち尽くす。
言葉を必死に聞き取ろうとしている。

目を閉じ、息をとめて
苦しいくらい君の声を聞きたがっている。

どうか、こんな夜はみんな凍りついて眠ってください。
君と僕だけを残して。

「星がひとつ心に落ちた」1128

宇宙を見つめていると、吸い込まれそうになる。
闇はどこまでも深くて、星は切ないくらい遠くて、
足元がぐらりと大きく揺れて揺れて、
くらくらして宇宙に落ちてしまいそうになる。
見あげた空に、誰かを思うとき
苦しくて、痛くて、淋しくて、熱くて、
目を閉じて宇宙に沈んでしまいたくなる。
狂おしい願いに捕らえられてしまうのが怖くて
目を閉じて闇の静けさに耳をすましている。

ねえ。
あなたはいまなにをしているの。
なにをおもって、なにをかんじているの。

ひとりというのは、とても強くてとても弱い。
とても自由で、とても孤独で、とても不安で。
ねえ、あなたもそう思っているのではないかしら。

星がひとつ心に落ちた。
心の海に浮かんで、しんしんと光を落としている。

「空を見ている」1030

僕は、空を見ている。
果てしない空の向こうを見ている。
僕の足元から続いている、遠い遠い明日を見ている。

風が何度も何度も僕を呼ぶ。
けれど風は教えてくれない、この先に何が待っているのかを。
だから僕は踏み出したくなる、この先に何があるのか見たくて。

はるかな過去で手を振る君が見える。
やさしく、あたたかく手を振る君のもとへ戻りたくなる、
でも僕は行かなくちゃいけない。君に手を振り返して。

光が、静かに世界を包んでいる。
轟々と流れる時間の洪水のなかで、時は止まっている。
僕はいくつもの時を抱いて、時のなかを泳いでいける。

さあ、どこへ向かおう。
胸いっぱいに想いをこめて、
僕は空を見ている。

「星」1026

重くて、苦しくて、起きあがれなくて目が覚めた。

小さな石があったの。
黒くて、小さいのにとても重くて、
じっと黙り込んでいるだけの、小さな石があったの。

蹴飛ばすこともできなかったの。
放り投げることもできなかったの。
そっとしておいてあげたかったの。

このこはきっと星になりたかったの。
そんな気がした。

いつか、君が
星とは違う輝きを愛せるまで
私はずっと見ているからね。

「くりかえしくりかえしめぐるもの」1023

何度でも朝はやってくる。
ひとつとして同じ朝はないけれど、
それでも必ずやってくる。
初めて迎える朝だとしても、
まるでいつか見た夢のように思ったりする。

くりかえしくりかえし朝はくる。
一日が何度も何度もめぐっていく、
季節が何度も何度も通り過ぎていく。
ときどき僕はどこにいるかわからなくなる。

「月待ち」1022

月が欠けはじめると、決まって
わたしのこころに影がさします。
思わず震えるほど冷たい風が、
ひやりとこころに触れます。

何だかわからない不安におびえて、
こころがゆらゆらして目がまわります。
闇が怖くて、静けさが怖くて、寒さが怖くて。
ひとりが不安で、怖くて、泣いてしまう。

口を開いたら棘だらけの言葉がこぼれそう。
動けば、いらだちが仕草に表れてしまいそう。
まわりの誰かを傷つけてしまう。
手に負えない、私になってしまう。

できれば部屋でじっとしていたい。
空のした、風のなか、歩いていたい。
やわらかい香りと、やさしい音に包まれていたい。
月が還るまで、眠りつづけていたい。

月よ。 早く還ってきてください。
そうして私を白く照らして。

「よかった。君が笑っていて。」1016

遠い遠い空の下で、君は何を想っているのだろう。

風のように届いた、一通の手紙のなかに
君の空気が閉じこめられていた。

文字を見ればわかる。
今、君が幸せだってこと。

遠い遠い空の下で、君はきっと微笑んでいる。

花のような手紙を読んで、
心にふわりと蝶がとまる。

よかった。君が笑っていて。
こんど会いに行こう。


「こんな秋の日のすごしかた」1014

自転車で、遠くまで走るのが気持ちのいい季節になりました。
じっとしていれば肌寒い空気が、ここちよく頬にふれます。
透明な風が、髪を洗い、思わず目を閉じてうっとりとします。

稲の収穫をする夫婦をあちこちで見かけます。
あたりは金色で、遠くの山は青々としていて、
さらに高く空が広がっていて、
とてもとても気持ちのいい光景です。

さやさやと流れる川の水は澄んで、砂利が碧に見えます。
そばに寄れば、小さな魚の子が群れています。
ぱっと、飛び立ったのは翡翠色をしたかわせみ。
代わりに降りたのは、すらりとしたせぐろせきれいです。

畑の一角を、コスモス畑にしているところがありました。
今日はその隅の地面にシートを敷いて、灯りの準備をしています。
今夜は宴なのでしょう。
地面に座れば、背よりも高いコスモスに見おろされて、
暗くなったら月とコスモスしか見えなくなるでしょう。
ちょっとうらやましくなってしまいます。

山間のこの町は、山々に囲まれ、清らかな川の両脇のごくごく狭い
土地にあって、時の流れがゆったりとしています。
けれど、冬が来るのが早く、秋はごく身近な間だといいます。

「満月のしたで」1013

外へ出たら、夜がとても明るかった。
白く白く磨かれた満月が夜を照らしていた。

そのままずっと、空を見ていた。
月を、星を、夜を、雲を、風を、見ていた。

そうして思っていたのは今ここにいる自分のことで、
彷徨うような思いは闇に溶けていった。

白い月の魔法にかかりたかった。
体じゅう、すみずみまで白い光を届けたかった。

けれど月の光に照らされるものは、
必ず、夜につながる暗い影を落としている。

私にも、月の光と夜の闇とがあってほしい。
ちいさな世界が壊れてしまわないように。

月の光を受けて、水面にさざめく小さな波が、
銀色の小さな魚の群のように見えた。

いつまでもいつまでも、夜に包まれていたかった。
月の光を浴びていたかった。そのまま眠っていたかった。


「とべない」
          2000/02/12(Sat) 22:44:21

信じていたはずの翼で
海を越えられないことがわかったよ

どうしようどうしよう
風がだんだん強くなって 僕は目をあけてられない

海がこんなに 長いなんて知らなかった
僕の羽根がこんなに 弱いなんて思わなかった

僕は何も知らなかったんだ
いまやっと わかったんだよ

どうしようどうしよう
どこにも 降りる場所が見つからない


「高く」
          2000/02/29(Tue) 00:04:43

風を待とう
僕を呼んでいる大きな風を
僕を支えてくれる豊かな風を

ずいぶん翼をきたえてきた
風を捕まえるのも上手になった
羽根の手入れも丁寧に終えた

あと 僕に今できることは
僕の力を上手につかうこと
僕にぴったりの風を見つけること

さあ 風を待とう
遙かな国へ僕と旅してくれる風を


「いもうと」
            2000/02/03(Thu) 19:36:51

気まぐれに電話が鳴る

別に用はないけど と
いいわけしているいもうとの声
用がないのにかけてくるのが
なんだかうれしい

たわいもない日々のできごと
楽しかったこと 面白いニュース
手を動かしながら聞き流していると
なにげなく話しだす愚痴に
ふと 耳をすます

元気でいるかとても気になる
笑っているかいつも気になる

私のなかで あなたはもう
あのころの小さないもうとのままではないけれど
私のなかで いまもずっと
あなたは 大事な大事な大事ないもうと


「ビール」
          1999/11/24(Wed) 00:07:11

お酒をもう一生飲んではいけないと
きつく言い渡された父が
ある夏の日に夢から覚めてこう言った

「夢のなかで ビールを飲んだよ。
 うまかったあ、とってもうまかった。」

なんでだか、私はあとでひどく泣いた。
父のうれしそうな顔、こと細かに説明してくれた夢の情景、
気だるい夏の午後のせみしぐれ、
どれもがせつなくてかくれて泣いた。

どうしてなのだろう、
どうしていけないのだろう。
わかっているのに、わからない、
そしてなんだかとても悲しくなってしまったのだ。


「深夜」
          1999/11/05(Fri) 22:53:45

とろっとした濃い闇を ぼくは
飲みほしてしまいたい。

飲みつくしたさきには いったい
何が見えるのだろう。

虚無と思っていた闇に ぼくは
無数の星をみた。

いつまでもいつまでも見あげていたかった。


「手を」
          1999/10/05(Tue) 17:20:33

手をつないでいて
どうか 私が消えてしまわないように

日の暮れた空に星が散らばっていく
西の 暮れ遅れた空のはしに
泣きだしそうにまたたき続ける星がある

手をつないでいて
  どうか 世界が終わらないように

道路に 家々に 光が宿りはじめる
帰るところには明かりが灯っていてほしい
いつでも迷わずに戻れるように
手をつないでいて
どうか 私をつかまえていて

宇宙は拡散していくから
そこへ
ボタンのように星がとまっている
灯る明かりは
いつかそこへ帰るための目印


「一匹」
               1999/08/16(Mon) 23:45:03

一番星が空に揺れる
淡い色彩に包まれ 青に呑み込まれようとするその時間が
いちばん好きだった

苦しくて空をみあげてばかりいた
海の底ならきっとそんなふうに重い闇があるのだろう
光に背を向け ただ苦しみだけを抱いて

飛び立てることを強く信じながら
求めているものに背を向け 愛したいものから遠ざかり
空へさしのべた手が 凍りついていく

  私は小さな魚
  翼は持てなかったけれど
  月の光でうろこを磨いて
  泳ぎつづけよう
  青い青い海の底で

「はるか」
              1999/07/15(Thu) 09:37:18
闇の中を 銀河鉄道の駅を探して走った
それは 夜がとても素敵な時間に思えたころのことだ

僕はまだ七歳で 星がとても遠く感じた
手にとって確かめることのできない はるかかなたの存在

あれから二十年がたって 夜はずいぶん短くなった
そして明るくなった 
素敵なのは夜ではなくて 夢だったのかもしれないと
僕は思うようになった

それでも相変わらず星ははるかかなたにある
あれから 僕はそれほど変わっていないのかもしれない

また 銀河鉄道の駅を探しに行こう 走らないで ゆっくりと歩いて


「こわれていかないで」
                1999/05/07(Fri) 21:41:31

かたちあるものは
いつかかならずこわれるんだって習った

だけど かたちのないものなのに
こわれそうって感じるのはどうして

こわれるのではなくて 変わるのだと
風はすれ違いながらささやいていくけど

変わりたくないの
こわれるのはいやなの

泣きながら抱きしめている腕のうでのなかで
それでもくだけていってしまうのだろうか

「料理」
                1999/04/03(Sat) 09:54:53

ことことこと とお鍋がなって、いい匂いがしてきました。
ふたをあけるとふわっとのぼる白い湯気は
今日 さくらの向こう遠くにみた、雲のようです。

おかあさんはそっと味見をして、にっこりしました。
それから、ひとつ、ふたつと大きくかきまぜると、
お鍋のうえでむにゃむにゃとおまじないをとなえました。

そう、今日は、この家にひっこしてきてはじめて、
まいちゃんとまいちゃんのお父さんが出かけた日なのです。
新しい学校はどうだったかしら。新しい会社は・・ 
 
おかあさんは段ボールの箱から、真っ白なお皿をとりだしました。
ちょっとおっきすぎて、使ったことなかったけど・・
今日の夕ごはんにはふさわしいような気がしたのでした。

まもなくまいちゃんが帰ってくるでしょう。
そしたらふたりでテーブルに飾る花をさがしに出かけましょう。
それから駅までおとうさんを迎えに行きましょう。

新しい生活は、これからです。


「月をさがして」
             1998/10/09(Fri) 00:47:20

月がないとこの町は あまりにもまっくらで
わたしは夜を手さぐりで歩いていた

月がひかりはじめたのに 雨ばかりで
わたしは一晩中 夢をみようとしていた

月をさがして夜をさまよっていたのは
わたしのいちばん孤独な部分だったかもしれない

そうしてようやく月に出会えて そのひかりにつつまれて
はじめてしずかに目をとじて 安らぐことができた

あいかわらずわたしはひとりだったけれど
祈りにも似た しんとした心を持てたから

月は光 そして影
まばゆいほど 悲しいけれど

それでもみあげていたい
わたしはひとり 月もひとつだけだったから