Powder Of "MITH-KVAIN"





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unonn 





〜序記〜











濃密な朝靄に包まれた森の香り。
心と体が、今ここに存在しているという現象の全てが、緑の褥へと緩やかに浸透してゆく。
一歩、また一歩、繰り出す歩みの跫音を吸い込みながらゆっくりと、ただ変わる事なく続いていく日々の営みのように・・・・。
ラーラミにとってそれは生まれる前から触れていた体温であり、物心の輪郭そのものだった。来る日も来る日も森の深くに分け入っては悠久の時の広がりに身を横たえ、飽きる事なく声なき戦ぎに耳を預けた。
だからと言って、意味などなかった。長としての務めは誠心誠意果たしていたし、ラーラル自身その自負もあった。それに何よりタリリがいる。皆からの信頼も厚く、誰からも慕われているタリリが。いつもラーラルを見守り、そっと背中を押してくれるかけがえのない温もりが。
冷んやりとしていて、透き通った空気。夜を越え、昨日の記憶を生命の糧へと還元してゆく朝。全身で取り込んで手厚く吐き出す。その息の白さと儚さと・・・・。いつもより少し重たいような、ただの思い過ごしのようでもあるような。歩速を緩めて流れた吐息の尾を辿る。それは垂れ込める靄を伝って木々を縫い、幹を掠めて葉に弾ける。葉先から滑り落ちる一雫の朝露。梢がしっとりと揺れている。風が・・・・、微かに音色が震えている。
「どうしました?」
歩を止めたラーラルの背中に沈着なタリリの声が馴染み良く響き、たちまち靄の中に消えていった。二人を取り巻く湿った空気が、痛いほどの静謐を帯びていた。
「分からない・・・・、でも、何か胸騒ぎがする・・・・」
ラーラルは無意識のうちに胸のペンダントに手を添えていた。
タリリはいついかなる瞬間も、文字通り眠っているその間中も、ラーラルを長たらしめる為にこそ厳しく、時には無尽の寛容さで人としての姿勢を投影してくれた。でも何故かこの無私な癖にだけは決して介入しようとはせず、またそれはカティアの村の民達も同じだった。だからこそ、ラーラルも次第に問い質す事すら放棄するようになっていき、いつの日からか行為自体が弱さの十字架となっていった。そしてラーラルにとってそれは、朧気な自己認識の儀式だった。





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2002年11月08日 22時54分40秒


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