日本国憲法


前 文

 日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために,諸國民との協和による成果と、わが國全土にわたつて自由のもたらす惠澤を確保し、政府の行爲によつて再び戰爭の慘禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも國政は、國民の巖肅な信託によるものであつて、その權威は國民に由來し、その權力は國民の代表者がこれを行使し、その福利は國民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔敕を排除する。

 日本國民は、恆久の平和を念願し、人間相互の關係を支配する崇高な理想を深く自覺するのであつて、平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しやうと決意した。われらは、平和を維持し、專制と隸從、壓迫と偏狹を地上から永遠に除去しやうと努めてゐる國際社會において、名譽ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の國民が、ひとしく恐怖と缺乏から兔かれ、平和のうちに生存する權利を有することを確認する。

 われらは、いづれの國家も、自國のことのみに專念して他國を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に從ふことは、自國の主權を維持し、他國と對等關係に立たうとする各國の責務であると信ずる。

 日本國民は、國家の名譽にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を逹成することを誓ふ。


第一章 天皇

第一條〔天皇の地位・國民主權〕

天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴であつて、この地位は、主權の存する日本國民の總意に基く。

第二條〔皇位の世襲と繼承〕

皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。

第三條〔國事行爲に對する内閣の助言・承認と責任〕

天皇の國事に關するすべての行爲には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

第四條〔天皇の權能の限界、國事行爲の委任〕

第一項 天皇は、この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する權能を有しない。

第二項 天皇は、法律の定めるところにより、その國事に關する行爲を委任することができる。

第五條〔攝政〕

皇室典範の定めるところにより攝政を置くときは、攝政は、天皇の名でその國事に關する行爲を行ふ。この場合には、前條第一項の規定を準用する。

第六條〔天皇の任命權〕

第一項 天皇は、國會の指名に基ゐて、内閣總理大臣を任命する。

第二項 天皇は、内閣の指名に基ゐて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

第七條〔國事行爲〕

天皇は、内閣の助言と承認により、國民のために、左の國事に關する行爲を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び條約を公布すること。

二 國會を召集すること。

三 衆議院を解散すること。

四 國會議員の總選擧の施行を公示すること。

五 國務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任兔竝びに全權委任状及び大使及び公使の信任状を認證すること。

六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の兔除及び復權を認證すること。

七 榮典を授與すること。

八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認證すること。

九 外國の大使及び公使を接受すること。

一〇 儀式を行ふこと。

第八條〔皇室の財産授受〕

皇室に財産を讓り渡し、又は皇室が、財産を讓り受け、若しくは賜與することは、國會の議決に基かなければならない。


第二章 戰爭の放棄

第九條〔戰爭の放棄、戰力の不保持、交戰權の否認〕

第一項 日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の發動たる戰爭と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛爭を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

第二項 前項の目的を逹するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。國の交戰權は、これを認めない。


第三章 國民の權利及び義務

第一〇條〔國民の要件〕

日本國民たる要件は、法律でこれを定める。

第一一條〔基本的人權の普遍性、永久不可侵性、固有性〕

國民は、すべての基本的人權の享有を妨げられない。この憲法が國民に保障する基本的人權は、侵すことのできない永久の權利として、現在及び將來の國民に與へられる。

第一二條〔自由及び權利の保持責任と濫用禁止〕

この憲法が國民に保障する自由及び權利は、國民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第一三條〔個人の尊重と公共の福祉〕

すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する國民の權利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。

第一四條〔法の下の平等、貴族制度の禁止、榮典〕

第一項 すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。

第二項 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

第三項 榮譽、勳章その他の榮典の授與は、いかなる特權も伴はない。榮典の授與は、現にこれを有し、又は將來これを受ける者の一代に限り、その效力を有する。

第一五條〔公務員の選定・罷兔權、全體の奉仕者性、普通選擧・祕密投票の保障〕

第一項 公務員を選定し、及びこれを罷兔することは、國民固有の權利である。

第二項 すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

第三項 公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。

第四項 すべて選擧における投票の祕密は、これを侵してはならない。選擧人は、その選擇に關し公的にも私的にも責任を問はれない。

第一六條〔請願權〕

何人も、損害の救濟、公務員の罷兔、法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正その他の事項に關し、平穩に請願する權利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第一七條〔國及び公共團體の賠償責任〕

何人も、公務員の不法行爲により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、國又は公共團體に、その賠償を求めることができる。

第一八條〔奴隸的拘束・苦役からの自由〕

何人も、いかなる奴隸的拘束も受けない。又、犯罪に因る處罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第一九條〔思想・良心の自由〕

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二〇條〔信教の自由、政教分離〕

第一項 信教の自由は、何人に對してもこれを保障する。いかなる宗教團體も、國から特權を受け、又は政治上の權力を行使してはならない。

第二項 何人も、宗教上の行爲、祝典、儀式又は行事に參加することを強制されない。

第三項 國及びその機關は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第二一條〔集會・結社・表現の自由、檢閲の禁止、通信の祕密〕

第一項 集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

第二項 檢閲は、これをしてはならない。通信の祕密は、これを侵してはならない。

第二二條〔居住・移轉・職業選擇の自由、外國移住・國籍離脱の自由〕

第一項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。

第二項 何人も、外國に移住し、又は國籍を離脱する自由を侵されない。

第二三條〔學問の自由〕

學問の自由は、これを保障する。

第二四條〔家族生活における個人の尊巖・兩性の平等〕

第一項 婚姻は、兩性の合意のみに基ゐて成立し、夫婦が同等の權利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

第二項 配偶者の選擇、財産權、相續、住居の選定、離婚竝びに婚姻及び家族に關するその他の事項に關しては、法律は、個人の尊巖と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二五條〔國民の生存權、國の社會保障的義務〕

第一項 すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。

第二項 國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない。

第二六條〔教育を受ける權利・教育の義務〕

第一項 すべて國民は、法律の定めるところにより、その能力に應じて、ひとしく教育を受ける權利を有する。

第二項 すべて國民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二七條〔勤勞の權利義務、勤勞條件の基準、兒童酷使の禁止〕

第一項 すべて國民は、勤勞の權利を有し、義務を負ふ。

第二項 賃金、就業時間、休息その他の勤勞條件に關する基準は、法律でこれを定める。

第三項 兒童は、これを酷使してはならない。

第二八條〔勞働基本權〕

勤勞者の團結する權利及び團體交渉その他の團體行動をする權利は、これを保障する。

第二九條〔財産權〕

第一項 財産權は、これを侵してはならない。

第二項 財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

第三項 私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三〇條〔納税の義務〕

國民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第三一條〔法定手續の保障〕

何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三二條〔裁判を受ける權利〕

何人も、裁判所において裁判を受ける權利を奪はれない。

第三三條〔逮捕の要件〕

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、權限を有する司法官憲が發し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三四條〔抑留・拘禁の要件、拘禁理由の開示〕

何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辨護人に依頼する權利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正當な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辨護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三五條〔住居の不可侵、搜索・押收の要件〕

第一項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、搜索及び押收を受けることのない權利は、第三三條の場合を除いては、正當な理由に基ゐて發せられ、且つ搜索する場所及び押收する物を明示する令状がなければ、侵されない。

第二項 搜索又は押收は、權限を有する司法官憲が發する各別の令状により、これを行ふ。

第三六條〔拷問・殘虐刑の禁止〕

公務員による拷問及び殘虐な刑罰は、絶對にこれを禁ずる。

第三七條〔刑事被告人の諸權利〕

第一項 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける權利を有する。

第二項 刑事被告人は、すべての證人に對して審問する機會を充分に與へられ、又、公費で自己のために強制的手續により證人を求める權利を有する。

第三項 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辨護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、國でこれを附する。

第三八條〔不利益供述の不強要、自白の證據能力〕

第一項 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

第二項 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを證據とすることができない。

第三項 何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三九條〔遡及處罰の禁止・二重處罰の禁止〕

何人も、實行の時に適法であつた行爲又は既に無罪とされた行爲については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四〇條〔刑事補償〕

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、國にその補償を求めることができる。


第四章 國會

第四一條〔國會の地位・立法權〕

國會は、國權の最高機關であつて、國の唯一の立法機關である。

第四二條〔兩院制〕

國會は、衆議院及び參議院の兩議院でこれを構成する。

第四三條〔兩議院の組織〕

第一項 兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。

第二項 兩議院の議員の定數は、法律でこれを定める。

第四四條〔議員及び選擧人の資格〕

兩議院の議員及びその選擧人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は收入によつて差別してはならない。

第四五條〔衆議院議員の任期〕

衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間滿了前に終了する。

第四六條〔參議院議員の任期〕

參議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半數を改選する。

第四七條〔選擧に關する事項の法定〕

選擧區、投票の方法その他兩議院の議員の選擧に關する事項は、法律でこれを定める。

第四八條〔兩院議員兼職の禁止〕

何人も、同時に兩議院の議員たることはできない。

第四九條〔議員の歳費〕

兩議院の議員は、法律の定めるところにより、國庫から相當額の歳費を受ける。

第五〇條〔議員の不逮捕特權〕

兩議院の議員は、法律の定める場合を除いては、國會の會期中逮捕されず、會期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、會期中これを釋放しなければならない。

第五一條〔議員の兔責特權〕

兩議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五二條〔常會〕

國會の常會は、毎年一囘これを召集する。

第五三條〔臨時會〕

内閣は、國會の臨時會の召集を決定することができる。いづれかの議院の總議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第五四條〔衆議院の解散と特別會、參議院の緊急集會〕

第一項 衆議院が解散されたときは、解散の日から四〇日以内に、衆議院議員の總選擧を行ひ、その選擧の日から三〇日以内に、國會を召集しなければならない。

第二項 衆議院が解散されたときは、參議院は、同時に閉會となる。但し、内閣は、國に緊急の必要があるときは、參議院の緊急集會を求めることができる。

第三項 前項但書の緊急集會において採られた措置は、臨時のものであつて、次の國會開會の後一〇日以内に、衆議院の同意がない場合には、その效力を失ふ。

第五五條〔議員の資格爭訟〕

兩議院は、各々その議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五六條〔定足數、表決數〕

第一項 兩議院は、各々その總議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

第二項 兩議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半數でこれを決し、可否同數のときは、議長の決するところによる。

第五七條〔會議の公開、會議録の公表、表決の記載〕

第一項 兩議院の會議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多數で議決したときは、祕密會を開くことができる。

第二項 兩議院は、各々その會議の記録を保存し、祕密會の記録の中で特に祕密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。

第三項 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを會議録に記載しなければならない。

第五八條〔役員の選任・議院規則・懲罰〕

第一項 兩議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

第二項 兩議院は、各々その會議その他の手續及び内部の規律に關する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五九條〔法律の制定、衆議院の優越〕

第一項 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決したとき法律となる。

第二項 衆議院で可決し、參議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多數で再び可決したときは、法律となる。

第三項 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、兩議院の協議會を開くことを求めることを妨げない。

第四項 參議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、國會休會中の期間を除いて六〇日以内に、議決しないときは、衆議院は、參議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

第六〇條〔衆議院の豫算先議と優越〕

第一項 豫算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

第二項 豫算について、參議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は參議院が、衆議院の可決した豫算を受け取つた後、國會休會中の期間を除いて三〇日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を國會の議決とする。

第六一條〔條約の承認と衆議院の優越〕

條約の締結に必要な國會の承認については、前條第二項の規定を準用する。

第六二條〔議院の國政調査權〕

兩議院は、各々國政に關する調査を行ひ、これに關して、證人の出頭及び證言竝びに記録の提出を要求することができる。

第六三條〔國務大臣の議院出席の權利・義務〕

内閣總理大臣その他の國務大臣は、兩議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について發言するため議院に出席することができる。又、答辨又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六四條〔彈劾裁判所〕

第一項 國會は、罷兔の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。

第二項 彈劾に關する事項は、法律でこれを定める。


第五章 内閣

第六五條〔行政權と内閣〕

行政權は、内閣に屬する。

第六六條〔内閣の組織、文民資格、聯帶責任〕

第一項 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣總理大臣及びその他の國務大臣でこれを組織する。

第二項 内閣總理大臣その他の國務大臣は、文民でなければならない。

第三項 内閣は、行政權の行使について、國會に對し聯帶して責任を負ふ。

第六七條〔内閣總理大臣の指名、衆議院の優越〕

第一項 内閣總理大臣は、國會議員の中から國會の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。

第二項 衆議院と參議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、國會休會中の期間を除いて一〇日以内に、參議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を國會の議決とする。

第六八條〔國務大臣の任命、罷兔〕

第一項 内閣總理大臣は、國務大臣を任命する。但し、その過半數は、國會議員の中から選ばれなければならない。

第二項 内閣總理大臣は、任意に國務大臣を罷兔することができる。

第六九條〔内閣不信任決議と解散又は總辭職〕

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、一〇日以内に衆議院が解散されない限り、總辭職をしなければならない。

第七〇條〔總理の缺缺又は總選擧と内閣の總辭職〕

内閣總理大臣が缺けたとき、又は衆議院議員總選擧の後に初めて國會の召集があつたときは、内閣は、總辭職をしなければならない。

第七一條〔總辭職後の内閣による職務執行〕

前二條の場合には、内閣は、あらたに内閣總理大臣が任命されるまで引き續きその職務を行ふ。

第七二條〔内閣總理大臣の職權〕

内閣總理大臣は、内閣を代表して議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係について國會に報告し、竝びに行政各部を指揮監督する。

第七三條〔内閣の職權〕

内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

一 法律を誠實に執行し、國務を總理すること。

二 外交關係を處理すること。

三 條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、國會の承認を經ることを必要とする。

四 法律の定める基準に從ひ、官吏に關する事務を掌理すること。

五 豫算を作成して國會に提出すること。

六 この憲法及び法律の規定を實施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の兔除及び復權を決定すること。

第七四條〔法律・政令の署名・聯署〕

法律及び政令には、すべて主任の國務大臣が署名し、内閣總理大臣が聯署することを必要とする。

第七五條〔國務大臣の訴追〕

國務大臣は、その在任中、内閣總理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の權利は、害されない。


第六章 司法

第七六條〔司法權・裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の獨立〕

第一項 すべて司法權は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に屬する。

第二項 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機關は、終審として裁判を行ふことができない。

第三項 すべて裁判官は、その良心に從ひ獨立してその職權を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

第七七條〔最高裁判所の規則制定權〕

第一項 最高裁判所は、訴訟に關する手續、辨護士、裁判所の内部規律及び司法事務處理に關する事項について、規則を定める權限を有する。

第二項 檢察官は、最高裁判所の定める規則に從はなければならない。

第三項 最高裁判所は、下級裁判所に關する規則を定める權限を、下級裁判所に委任することができる。

第七八條〔裁判官の身分保障〕

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷兔されない。裁判官の懲戒處分は、行政機關がこれを行ふことはできない。

第七九條〔最高裁判所の構成、國民審査、定年、報酬〕

第一項 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員數のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

第二項 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際國民の審査に付し、その後一〇年を經過した後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際更に審査に付し、その後も同樣とする。

第三項 前項の場合において、投票者の多數が裁判官の罷兔を可とするときは、その裁判官は、罷兔される。

第四項 審査に關する事項は、法律でこれを定める。

第五項 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齡に逹した時に退官する。

第六項 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相當額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八〇條〔下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬〕

第一項 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を一〇年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齡に逹した時には退官する。

第二項 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相當額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八一條〔違憲審査制〕

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。

第八二條〔裁判の公開〕

第一項 裁判の對審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。

第二項 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、對審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に關する犯罪又はこの憲法第三章で保障する國民の權利が問題となつてゐる事件の對審は、常にこれを公開しなければならない。


第七章 財政

第八三條〔財政處理の基本原則〕

國の財政を處理する權限は、國會の議決に基ゐて、これを行使しなければならない。

第八四條〔租税法律主義〕

あらたに租税を課し、又は現行の租税を變更するには、法律又は法律の定める條件によることを必要とする。

第八五條〔國費の支出及び國の債務負擔〕

國費を支出し、又は國が債務を負擔するには、國會の議決に基くことを必要とする。

第八六條〔豫算の作成と議決〕

内閣は、毎會計年度の豫算を作成し、國會に提出して、その審議を受け議決を經なければならない。

第八七條〔豫備費〕

第一項 豫見し難い豫算の不足に充てるため、國會の議決に基ゐて豫備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

第二項 すべて豫備費の支出については、内閣は、事後に國會の承諾を得なければならない。

第八八條〔皇室財産・皇室費用〕

すべて皇室財産は、國に屬する。すべて皇室の費用は、豫算に計上して國會の議決を經なければならない。

第八九條〔公の財産の支出・利用提供の制限〕

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、教育若しくは博愛の事業に對し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第九〇條〔決算審査、會計檢査院〕

第一項 國の收入支出の決算は、すべて毎年會計檢査院がこれを檢査し、内閣は、次の年度に、その檢査報告とともに、これを國會に提出しなければならない。

第二項 會計檢査院の組織及び權限は、法律でこれを定める。

第九一條〔内閣の財政状況報告〕

内閣は、國會及び國民に對し、定期に、少くとも毎年一囘、國の財政状況について報告しなければならない。


第八章 地方自治

第九二條〔地方自治の基本原則〕

地方公共團體の組織及び運營に關する事項は、地方自治の本旨に基ゐて、法律でこれを定める。

第九三條〔地方議會、長・議員等の直接選擧〕

第一項 地方公共團體には、法律の定めるところにより、その議事機關として議會を設置する。

第二項 地方公共團體の長、その議會の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共團體の住民が、直接これを選擧する。

第九四條〔地方公共團體の權能・條例制定權〕

地方公共團體は、その財産を管理し、事務を處理し、及び行政を執行する權能を有し、法律の範圍内で條例を制定することができる。

第九五條〔特別法の住民投票〕

一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半數の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。


第九章 改正

第九六條〔憲法改正の手續、その公布〕

第一項 この憲法の改正は、各議院の總議員の三分の二以上の贊成で、國會が、これを發議し、國民に提案してその承認を經なければならない。この承認には、特別の國民投票又は國會の定める選擧の際行はれる投票において、その過半數の贊成を必要とする。

第二項 憲法改正について前項の承認を經たときは、天皇は、國民の名で、この憲法と一體を成すものとして、直ちにこれを公布する。


第一〇章 最高法規

第九七條〔基本的人權の本質〕

この憲法が日本國民に保障する基本的人權は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの權利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び將來の國民に對し、侵すことのできない永久の權利として信託されたものである。

第九八條〔憲法の最高法規性、國際法規の遵守〕

第一項 この憲法は、國の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔敕及び國務に關するその他の行爲の全部又は一部は、その效力を有しない。

第二項 日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。

第九九條〔憲法尊重擁護の義務〕

天皇又は攝政及び國務大臣、國會議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


第一一章 補則

第一〇〇條〔施行期日、施行の準備〕

第一項 この憲法は、公布の日から起算して六箇月を經過した日から、これを施行する。 [一九四七年五月三日施行]

第二項 この憲法を施行するために必要な法律の制定、參議院議員の選擧及び國會召集の手續竝びにこの憲法を施行するために必要な準備手續は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。

第一〇一條〔經過規定第一−參議院未成立の間の國會〕

この憲法施行の際、參議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、國會としての權限を行ふ。

第一〇二條〔經過規定第二−第一期參議院議員の任期〕

この憲法による第一期の參議院議員のうち、その半數の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。

第一〇三條〔經過規定第三−憲法施行の際の公務員〕 

この憲法施行の際現に在職する國務大臣、衆議院議員及び裁判官竝びにその他の公務員で、その地位に相應する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、當然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選擧又は任命されたときは、當然その地位を失ふ。


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