Project-YUCA


第二部

第二話 由香のめざめ??



「丸山ぁいるかぁ!?」

長谷川豊は内山和輝の研究室を訪ねてみた。

「おぉ、一人だけおるでぇ。」
「一人で充分だよ。(笑)」
「さよか。(笑)」
「ちょっと教えて欲しいことがあるんだ。」
「珍しなぁ。おまえは超能力は興味ないて言うてたやん。」
「それが、由香がテレパシーで会話したそうなんだ。」
「そいで?」
「誰が相手かって問題だよ。 そんな人間がいるのは不自然じゃないかなって。」
「そんなことないで、テレパシー使える人間は結構おるんやから。」
「その中に今井恭子っていう人間がいるかわからないかなぁ。」
「登録されてるかどうかならわかるで。ちょいと待ってや。」

内山和輝は自分の端末からどこかにアクセスし始めた。

「うーん、今井恭子いうのは居てないなぁ。」
「そうかぁ。」
「登録されてへんだけかもしれんけどな。」
「そういう確率は?」
「そら高いやろなぁ。なにせ登録に法的な義務は無いんやから。 登録方法すら知らんのが多いんとちゃうかな。 登録したかてメリットがあるわけでもないし。 現に、由香ちゃんかて登録してへんしなぁ。 せやから、あまり気にせんでええと思うで。」
「そうなのかぁ。でもちょっと気になったんだよ。 どこかの研究所でそういう能力を開発してる所ってあるのか?」
「そりゃいくつもあるけど。今井恭子いう娘は聞いたことないなぁ。」
「そうか。」
「由香ちゃんならテレパシーで話せるんやろ!? 由香ちゃんに聞いて貰えばええやん。 どのくらいの距離で会話してんのか興味あるしなぁ。」
「わかった頼んでみるよ。」
「結果聞かしてな。」
「あぁ。」

その日は他に進展はなかった。 本来の研究に没頭するうちに、 確かに気にするほどのことでもないだろうと思い始めていた。 由香が留守番してることもあり、早めに帰宅することにした。

「お兄ちゃんお帰りなさぁーい。」

帰宅すると、由香が待ちかねたように飛び出してくる。

「あのね。今日お昼御飯を買いに行く時ね。 誰かに見られてる感じがしたの。」
「で誰か見てたのか?」
「わからないんだけどぉ。何かそんな感じがしたの。」
「ふーん。」
「あ、信じてないでしょぉ!本当だからねぇ。」
「いや信じてるよ。 でも明らかに見てたという訳じゃないとどうしようもないだろ。」
「そうだけどぉ。気になったんだもん。」
「それより、今井恭子って娘の方が気になるよ。」
「そういえば、昼間に呼んでみたけど返事なかったよ。」
「うーん、夜じゃないと駄目なのかなぁ。
じゃあ今夜でもお話しできたら、どこに居てどんな人なのか、 聞いてみてくれるか。普段どんなことしてるとか。」
「うん。それよりさぁ。海とか山に行くのってまだなのぉ? 行こうよぉ。」
「そうだな。そろそろ行こうか。」
「わーいわーい。」

その時、長谷川豊が寄り掛かっていた本棚の上から、 置き時計が何の前ぶれもなく落下してきた。 全く揺れておらず、落下するはずのない状況であった。

「あ、お兄ちゃん、危ないっ」

由香が叫び、両手を置き時計に向けて伸ばした。 すると置き時計は空中に停止した。 由香がそのまま手を上げると、置き時計は元の位置に戻った。

「由香....今の....」
「わからないの....夢中で止めなきゃって思ったら....」
「テレキネシスもか....」
「へ?」
「テレキネシス。念動力だよ。手を触れずに物を動かす能力だ。」
「私、それができたの?」
「そうだよ。もう一度何かを動かしてごらん?!」
「うーん、うーん。」

由香が再度置き時計に向けて両手を伸ばし唸った。 しかしビクともしない。他の物でも同様だった。

「じゃ、もっと軽い物にしよう。」

長谷川豊はティッシュを丸めてテーブルの上に置いた。

「これを動かしてごらん。」
「うーーーーん。動いた動いたよっお兄ちゃん。」
「そりゃ、テレキネシスじゃない。鼻息だっ。(苦笑)」
「なぁんだぁ。そっかぁ。キャハハハハ。」


その数時間後、某所では、

「ヘルエンジェルよ、相馬の所のクローンの様子はどうだ?」

鋭い目つきの男はコート姿の人物に尋ねた。

「それが、テレパシーやテレキネシスは使えるようですが、 それも完全ではないようです。 それ以外は全く普通の少女のようです。」

コートの人物は帽子とサングラスで顔を隠しているため表情は見えないが、 声には全く感情がないかのようだ。

「そうか。お前の実力を知らしめるためには、 そいつを倒す必要がある。だが、もう少し様子を見るんだ。 どこか人目につかない場所に行くのを待て。」
「はい。」
「よし。明日に備えて部屋で休んでいろ。」
「はい。」

コートの人物は無表情のまま部屋を出て行った。 それと入れ違いに別の男が入って来た。

「所長、各国の軍隊からヘルエンジェルの戦闘能力の報告の催促が 殺到しておりますが。」
「そうか。標的も大夫成長しているようだ。もう少し待ってもらえ。」
「わかりました。」

所長と呼ばれた男は一人になると、窓の外を眺めて呟いた。

「相馬佳男め、今度こそ俺が勝つ。」


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