ハムスター地下室(6)


《寿命は何年が正しいの?》

よいこの みなさん!

ハムスターは、いくつになったら
おじいさん おばあさんと よべるのでしょう?
2さいくらいでしょうか? それとも、5さいくらい?
あなたは いくつだと おもいますか?

老化
老化状態が顕著な 老ゴールデンハムスター
(画像の説明と ハムスターの老化について)
(↑ しばらく お待ちください)

病気やケガをさせないようにと、心をこめて世話をしてきた大切なハムスターだったのに、たった2年で死んでしまった。
ほとんど同じ条件で飼われているはずの友達のハムスターは、先日、5歳の誕生日を迎えたらしいけど、自分の飼い方はどこか間違っていたのだろうか・・・?

ハムスターを飼っていると、こんな疑問がわいてくることがあります。
一般的なハムスター寿命は、本当は何年くらいなのでしょうか?

本にしっかり書いてあるだろうと思って調べてみても、飼育書によって、1年半から6年くらいまでのばらつきが見られるのです。
非公式の記録では、8年以上生きたというハムスターの話もあります。
どうしてこんなことが起こるのでしょう?
ペットとしてのハムスターには、目安となる寿命はないのでしょうか?

目安がない訳ではありません。
しかし、絶対にこれが正しいと、決まっている訳でもありません。
まず最初に、『1歳半過ぎたらシニア説』 について調べてみましょう。

『1歳半過ぎたらシニア説』 とは、ハムスター生殖能力(の限界)を基準にした考え方です。
1歳の誕生日を迎えると、ハムスターのメスの多くは、次第に子供を産めなくなってきます。
交尾は成功しているはずなのに妊娠しなかったり、生まれてくる子供の数が減ったりするのです。
さらに1歳半を過ぎると、もうほとんど難しいと言えるでしょう。
2歳前後で出産できたハムスターのメスは立派ですが、出産に耐えられるほどの体力が、もしも、わずかに残されていただけだったとしたら、かなりの負担を強いられたことになります。
これで万が一、子供たちに飲ませるお乳が出なければ大変です。

オスは子供を産めない代わりに、メスよりも生殖可能期間が長い傾向が見られるようです。
それでもさすがに2歳を越えると、交尾してもまったく無駄に終わってしまうことがあります。
つまり、メスもオスも、1歳半頃が最後の結婚のチャンス、となる可能性が高いのです。

飼い主さんの中には、自分の愛ハムがそろそろお年寄りになってきたからと、あわてて伴侶(?)さがしをする人もいらっしゃるようですが、そろそろお年寄り・・・と気がついた時には、すでに繁殖能力がなくなっている場合もあります。
ですから、本当に愛ハムの子孫を残したいのであれば、愛ハムが生後半年くらいの時には、真剣に考えていなければなりません。
元気な良い子を産んでもらうためにも、ハムスターの繁殖は、生後3ヵ月から1年くらいの間に計画した方が良いでしょう。
(メスハムスター未熟なうちに妊娠させると、出産に失敗して母子とも死亡してしまうことがあります。特に、幼い頃からオスとメスをひとつのケージに入れて飼っている人は、じゅうぶん注意してください)

以上のことから、ハムスター1歳半頃からご隠居さんになりやすいことが、おわかりいただけたと思います。
そして、生物は繁殖や子育てができなくなった時が一生の半ば過ぎ、すなわちシニアだという考え方が、『1歳半過ぎたらシニア説』 の根拠ということになります。
実際には、繁殖(産卵)を終えるとすぐに死んでしまう生物もいますし、生殖可能年齢がよくわからない生物もいます。
ですから、目安としてはあいまいなほうですが、それでも、1歳〜1歳半の2倍の年数である寿命2〜3年説は、かなりうなずける部分もあります。
実際に、ペット用ハムスター多くが2〜3年で老化していくところを見ると、統計的には当たっているような気がいたします。

ただし、これ以上は、比較的最近の学説である 『利己的遺伝子』 の話にも、一部触れることになりますので、あまり難しくならないように(筆者の頭が混乱しないうちに)、簡単に述べてしまいましょう。

生物(ハムスターも生物ですね)は、普通に繁殖活動ができる年齢までは、子孫を残すという重大な使命があるため、基本的な寿命が約束されています。
(もちろん、明らかな病死や事故死等は、寿命とは言いません)
生殖と子育てを終えて、未来をつなぐ役目を果たした生物は、あとは主に自分のためだけに生きていくことになります。
そこから先は、運良く上手に生きた者は長生きをし、そうでなかった者は、どこかの時点で一生を終えることになります。

ところが 『運』 と一口に言っても、努力次第で避けられるものと、避けられないものがあります。
避けられるほうが 『環境』 で、避けられないほうが 『遺伝』 です。
また、避けられるはずの 『環境』 も、時と場合によっては、避けきれない状況にしばしば遭遇しますので、『運』 に対する個体差は、相当大きいものであると思われます。
(実験動物としてハムスターを選ぶ時、血統や飼育環境にこだわるのは、まさしくこの 『運』 に対する個体差をなくすためです)

『遺伝』 によって長生きできるハムスターがいることは、長寿の家系が存在することからも推測できます。
あなたは 『10年ラット』 と呼ばれるネズミの話を聞いたことがありますか?
一般的なラット(ネズミの一種)の寿命は、それこそハムスターと同じようなものなのですが、『10年ラット』 の一族だけは、その名の通り、10年近くも生きることができるのです。
彼らの世界では、長寿とは遺伝によってもたらされるもので、環境はその次、ということになります。

逆に、長寿の家系出身とは認められない個体でも、飼育環境がその子にとって大変優れていたために、老化のスピードが遅くなった場合もあるのではないかと思われます。
ですから結局、『遺伝』『環境』運良くクリアした者が、5年以上生きられるハムスターなのでは? と、筆者は考えているのです。
8年以上生きたハムスターの話が本当なら、その個体は、まさに心肺寿命の限界まで生き抜いた、100万ドルくじに当選したような子だったのだろうと思います。

そして、遺伝と環境のバランスによって左右される 『体力』 についての問題も、ハムスターの寿命を語る上で、無視することはできません。
『体力』 にポイントを置いた飼育方法には、大きく分けて2つのタイプがあると思います。

1つめは、温度、湿度、餌、運動量などを人工的に管理し、常に最適だと思われる環境を、限りなくパーフェクトに近い状態で維持していく飼育方法です。
当然、衛生面にも細かく気を配っているため、ケージの中は非常に清潔です。
言葉が悪いのですが、『温室育ちタイプ』 と言えるでしょう。

2つめは、極端な場合(気温差が激しすぎるなど)でない限り、なるべく自然の環境に近い状態で飼育してやる方法です。
(と言っても、ハムスターの真の故郷の自然環境を再現するのは、大変難しいことですが)
エアコンで常に気温は一定・・・などと、甘やかすようなことは滅多にしません。
餌もあまり加工せず、野菜や種子、果物にゆで卵などをミックスして与えます。
巣には本物の土を使うこともあります。
ハムスターはもともと、土の中に穴を掘って暮らしている生き物だからです。
(つまり、地下室ライクな住まい、という訳ですね)
こちらは、『野生(野性とは違います)強化タイプ』 と呼びましょう。

この2つの飼育方法は、どちらも長生きの秘訣として語られることがあります。
正反対の考え方のように思われるこの2つが、です。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
実は、お互いの長所が短所に、短所が長所になっているのです。

『温室育ちタイプ』 は気楽なものです。
何もかも飼い主任せで、自分で切り抜ける必要性がほとんどありません。
彼にとって忍耐とは、環境の変化に耐えることではなく、自分の希望(時にワガママ)が満たされない不快感に耐えることです。
それ以外のストレスは、基本的にはありません。
しかし、暑さも寒さも病原菌も知らない彼は、厳しい世の中の変化(?)に、素早く対応できないおそれがあります。
つまり、万が一の時に、自力で乗り越えられる可能性は低くなるのです。

『野生強化タイプ』ハムスターはどうでしょう?
普段から何かときたえられているので、環境の変化に対しては、比較的タフになっています。
自然に基本的な体力アップを望めますから、飼育に成功すれば長生きもできるでしょう。
少なくとも、人間が守ってやりさえすれば、天敵に襲われる心配はほとんどありません。
ところが、もともと体力のないハムスターの場合は、かえって早死にすることもあると考え、覚悟しなければなりません。
自然淘汰の運命に逆らわない、やや厳しい飼い方と言えるでしょう。

ハムスターの飼育は、人間の子育てと似たところがあると思いませんか?
どちらのタイプを選ぶかは、養い主の手にゆだねられているという訳です。
筆者はどちらをおすすめすることもいたしませんが、最初から体力のなさそうなハムスター『野生強化タイプ』 を試みたりすると、かなり危険だということだけは、忘れないようにしてください。

さらにもう1つ、やや極端な例ですが、ここで紹介しておきたいと思います。
それは、好きなものを食べたいだけ食べさせ、遊びたいだけ遊ばせるなど、ハムスター好き放題にさせてしまう飼育方法(?)です。
たとえそれが原因で早死にしたとしても、本ハムは幸せに違いない、という考え方も、この世の中には存在するのです。
この考え方に関しては、後ほど少し触れますので、とりあえず 『太く短くタイプ』 と命名しておきましょう。

ちなみに筆者は、通常は 『ほぼ温室育ちタイプ』 を選んでいます。
自然の気候や食品を利用してはいますが、エアコンと固形飼料を手放したことはありません。
消毒していない巣材や、非衛生的な飼育器具などは問題外です。
(最初から 『非衛生的』 なものは少ないのですが、飼い主の怠慢で非衛生的になりやすいものはたくさんあります。どちらかと言えば飼い主側の責任になるので、器具のお手入れも忘れないようにしましょう)

筆者がなぜ 『ほぼ温室育ちタイプ』 を選んでいるのかというと、エアコンを取り付けるスペースが確保できたから(?)だけではなく、体の弱い子やケガをしている子を扱うことが多いのも理由のひとつです。
つまり、自宅の子は1匹たりとも脱落させたくないのです。
犠牲的な自然淘汰を許さない、現代の人間社会とよく似ていると思います。
しかし、病気の悪化などで余命いくばくもないと診断された子に対しては、『温室』 の原則を破ってしまうこともあります。
『太く短くタイプ』 の考え方が頭に浮かんでいるのは、そんな時です。

正直に申しますと、医療従事者としては裏切り行為のようで、後ろめたい気持ちを拭い去ることができません。
しかし、大好物(ヒマワリの種など)を、思いっきり口に押し込んでいる時のハムスターの表情に、一瞬、喜びを感じるのも事実です。

まったくワガママな話ですが、飼い主は常に、嬉しそうなペットの姿を望んでいるのであって、病気などで苦しんでいる姿は見たくもないし、考えたくもないのです。
ペットが元気な時は飼い主も幸せな気分になれますが、逆に苦しそうな表情をしていると、飼い主の体調まで一緒に悪くなることさえあります。
これは、とてもとても辛いことです。
食べすぎると良くないとわかっている餌であっても、調子の悪いハムスターにいつもより多く与えてしまうのは、実は、ハムスターのためと言うよりも、飼い主の胸の痛みを和らげるためなのです。

そんなワガママに負けるくらいなら、やはりここはぐっと我慢して、衰弱したハムスターにも健康的な餌のみを与え続けたほうが良いのでしょうか?
理想的な答えは 『YES』 で、少なくとも医療の現場では、この答えが一般的です。
人間の世界でも、自分の子供に対して 『太く短く』 式養育をするような親は、たいてい後ろ指をさされます。
もし、
『嫌いなものは食べなくていいのよ。好きなものだけ、お腹いっぱい食べなさい』
と、自分のママに言われたら、あなたは、やさしい親だと心から感謝できますか?
あなたの寿命を縮めてしまうかもしれないのに?

けれども、ここでひとつ忘れてはならないことがあります。
それは、ハムスターにとって 『食欲』 とは、元気のバロメーターになりやすい、という事実です。
栄養バランスを崩すおそれのある危険な餌でも、食べることによって食欲が回復すれば、衰弱から抜け出す新たなチャンスがおとずれるかもしれません。
そうなれば、再び正攻法の治療をきちんと受けて、奇跡の復活を体験する可能性も出てくる訳です。

すべては 『可能性』 なのです。
生き物の飼養とは、より良く生きる 『可能性』 を見いだすことなのです。


補足

ペットマガジン 『かわいい小動物(フロム出版)』 1998年5月号の、44ページに掲載されている飴屋法水氏のエッセイは、今回のテーマに関して、大変参考になることが書かれています。
秋えいき氏の 『ハム・ハム ハムスター 上級編(どうぶつ出版)』 34ページからの話は、直接、ハムスターの寿命について述べられています。
また、『Hamster-Mailing List』 1998年4月後半の記事の一部からも、興味深いご意見を拝読することができます。
機会のある方は、目を通しておかれると良いと思います。

なお、筆者(NEZUMI)の考え方に賛同できない、というご意見も、当然あり得ると思いますので、よろしければメールをお寄せくださいませ。
当ページに(追記として)全文掲載させていただこうと考えています。
よろしくお願いいたします。


原文&画像提供:NEZUMI(愛玩動物飼養管理士)


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