Miyashita's talk@"AHAHA"
talk 3:「笑いで食っていくならば」

 歌番組に出るようなアーティーストのバックバンドや、20代前半ぐらいのミュージシャンのCDのクレジットに、思いがけない人を見かける事がたまにある。
 アルバム一枚は出したはずだがセールスが及ばず、なんだか訳がわからないうちに見なくなってしまった、というタイプの人ではない。所謂バンドブーム華やかなりし頃、そこそこの活躍をし、渋公どころか中野サンプラザくらいは少なくともソールドアウトさせた事があったり、下手したら武道館くらいやった事がある、というレベルのバンドのメンバーだった人が、一回りくらい年若な少女の背後で演奏していたり、ブレイク中のバンドのCDにプロデューサーやゲストミュージシャンとして参加していたりする。「おお、今も音楽でメシ食ってるのかぁ」と懐かしく且つ嬉しく思うと同時に、「そおかぁ、でも昔みたいに好きな事をやって食ってはいけないのかぁ」とちょっと寂しくも思えて、複雑な気持ちになる。
 それでもそうやって、志した仕事に携わっていられるのはシアワセなのかもしれない。同じようなバンドにいたのに、あまつさえバンドの中心的人物で作詞作曲もしていたのに、今は何してるんだか全く消息がつかめない、という人だっている。
 加えて、ミュージシャンはまだいいのではないかと思う。バックバンドだのスタジオミュージシャンだの、つぶしがきくからだ。一線を退いてしまった芸人が、多少不自由ながらも笑芸で食べていく、という手段がどれだけあるだろうか?
 サラリーマンだったら管理職についているぐらいの年齢の芸人が純粋に笑芸だけで暮らしているという姿は、それ以外の仕事をメインにしている姿より目に付きにくい。板の上に立っている姿より様々な形でテレビに出ている姿のほうが、無意識に目に入って来る。しかし、そうしてテレビの中にいる人々は、たいがい芸人としての仕事で注目されているのではない。実業家だったり、芸人以外のタレントだったり、別のジャンルのアーティストだったり、はたまた非常に社会的な活動で脚光を浴びていたり。
 ミュージシャンは自分のやりたい音楽をやっていなくとも、音楽に携わっている限りミュージシャンだが、上記のテレビの中の芸人はすでに芸人とは言えないのではないか、と思う。乱暴な言い方かもしれないが。
 それがシアワセか不幸かとか、良いとか悪いとかはさておき。
 自分の才能をしっかり把握し、これこそ我が天分と自信を持って、この道で食っていくと決めたからには、生涯その仕事で生きていくほうが素敵な生き様だと感じる。多少思い通りでなくとも、その道を自分の道と決めたからには死ぬまで全うする方が、尊敬に値する生き方だと思う。
 ところが最近の芸人はどうだろうか? こんな事を一視聴者であくまで受け手である私何ぞが言うのも僭越なのかもしれないが、日の当たる場所に一瞬でも存在できたらオッケーで、続かなかったら辞めて実家にでも戻る、というような、志した道へのこだわりを感じられない人が、前より増えてしまったのではないかと思う。
 人を笑わせるという事が好きで、これで食っていこうと心に決めたのなら。勉強するでも地道に働くでも手段はたくさんあった中で、人を笑わせるという事を生業に選んだのなら。あまつさえ誰か一人でもお金を取って笑わせたのなら。
 自分の選んだ道が間違っていたと思うのなら致し方ない。早めに方向転換を計るのが吉だ。でもそうでないとしたら。どうか簡単に辞めたりしないで欲しい。それ以前の問題として、簡単に芸人の道を志さないで欲しい。
 芸人だけではなく、どんな仕事も選んだ以上の責任がある。うまくいかないからもういいです、なんて、アルバイトみたいな事を言わないで欲しい。
 芸人を生業に選ぶなりの、責任を取って欲しい。
 一方的で勝手な意見なのはわかっている。でも、バックバンドのミュージシャンを見かけた時の寂しくも嬉しく思える気持ちを、違う道へ進んだ元芸人を見た時に味わった事がない。姿を見なくなってしまった時点で残念な気持ちしかない上に、ますますがっかりさせられてしまうというパターンばかり。
 だったら、細々とでも続けていてくれたほうがどれだけ気持ち良く見つめられるだろう。きっと嬉しく寂しい気持ちを持てるだろう。そしてその生き方を応援しようと思えるに違いない。
 性別を超えた、人間的に男前な、とでも言うべき生き様を。

from"AHAHA"Vol.13 99/05/28


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