Chapter-10

Confidences

私の手元のソーダ割りのブランデーは、何回目のお替わりになったろう。 美貴は、テーブルの私のグラスに新しい氷を追加した。
山荘の暗いベッドルームの時計は午前2時過ぎを指していた。先ほどの食事の世話をしてくれた男も美貴の指示で10時頃に帰っていく車の音がした。 美貴の話に付き合い食事を終えベッドルームに移ってからもう2時間は経っていた。

「それでお前はその叔父とやらに、それからどういう仕返しをしたんだ。」と、私は話を引き続き聞こうとした。
すると美貴は一休みしたいのか、
「ちょっと待ってね。ひどい顔になっちゃったから」と言いながら、泣きぬれた顔を直したいとバスルームにむかった。
私は銀のダンヒルで煙草に火をつけて立ち上がり、窓のカーテンを少し開け、真っ暗な外の森の様子を眺めた。深閑と静まり返った冷たい木々が薄ぼんやり写るだけであった。

すこしして、美貴が戻ってきた。
「寒いわ。こんな話に長い時間あなたを付き合わせてごめんなさい。昨日の晩もかなり遅かったものね。」と含み笑いを浮かべながら、美貴は椅子に戻らず、ベッドの上に座り直した。
「そういえば、結構遅かったっけな。俺も少し疲れてきたし、足元も寒くなってきた。」と私も美貴の脇に腰に手を廻しながら座り直した。

それからごく自然に抱き合いベッドに倒れ込んだ。

ひんやりとした寒さに目を覚ますと、カーテンの外が薄明るかった。11時を廻っていた。隣には美貴の安らかな顔がある。昨日までの派手さは消え、少女のように眠る素顔には、これまでの薄幸な人生の面影は見えてこない。そして改めてよく見ると凛とした知的な美しさを備えている。これは血筋の良さか。
美貴を起こすまいとゆっくりとベッドから離れ、窓のカーテンを少し開けると深い銀世界に変わっていた。しかも、シンシンとした雪が降り続いていた。 灰皿のあるテーブルにいき煙草に火をつけながら、眠っている美貴の姿をぼんやりと眺めた。
こいつも結構苦労してきたんだな、と自分の生い立ちと重ね合わせ同情の気持ちを持つものの、一方でこの女のしたたかさに戸惑っていた。

あの後のベットの中での話しは、 ここに子供のように眠る若い女の仕打ちとは到底思えない内容の復讐の話しであった。
間もなく、女が私の煙草の煙に気づいたのか起きだしてきた。

それにしても私への依頼とは、叔父の長女と次女、それにその母親を犯し、さらに愛人を暴き出して家庭崩壊に至らしめることである。
そして報酬は、この山荘を含めた2万坪の叔父の土地とのことである。
それにしても、いったいこの女の話しは本当なのか、まずそのことを調べよう。それに何故、自分に依頼するのかその本当の理由も調べておこう。

しばらくして昨日の男がドアをノックし、遅い朝食の準備が出来たことを伝えに来た。





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