Chapter-11

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2時を過ぎてうっすらと雲の中に気力をよみがえらす太陽がぼんやりと映り始め,雪がようやく降り止んだ模様だ。
腹こしらえをすまし、帰り支度を始めると山荘の男は雪道と美貴の身を案じた。通行止めで自分も車を使えなかったとのこと。しかし、雪もやみ、強硬に帰る事を告げた。 男に礼を言い、美貴を連れてロメオのおいてある駐車場に向かった。

サクサクと雪を踏みながら、チェーンのつんである事を祈った。ドアーヒンジの脇に隠すようにつけられたトランクオープナーレバーを美貴に引かせ、ロメオのかわいい小さなお尻のトランクを開け中を覗いた。バッテリー脇の小さな箱に少し錆のでたチェーンが入っていたのでほっとした。
チェーンをリアータイヤに装着し、林道を抜け138号線の坂道にでた。乙女峠の下りはかなり深い雪が残っていて、新しいタイヤの後が見えない。しかし、登りの道は除雪のトラックが通ったらしく、かなり雪は除かれており、箱根側から帰ることにした。

一旦、乙女峠を上がり、トンネルを抜け、強羅、宮下、湯元へと行けば何とか山を下りられるだろう。ロメオは、くねった雪の山道を登った。ヒーターをガンガンたいたせいか、それとも狭い空間に二人も乗っているせいかロメオの窓ガラスがくもる。

トンネルの入り口にたどり着くと、除雪車の作業員達が一休みしていた。通行止めのはずの道に車が走ってくるのにびっくりしたらしい。

トンネルを過ぎると今度はほぼ下りばかりである。真っ白な仙石のゴルフ場を右目に、カウンターをあてながらカーブの連続の山道を進んだ。標高500mを下がると急に雪が薄くなり、宮下付近までくると、まるで嘘のように雪が融けていた。登山鉄道の線路下の道路脇でチェーンを外した。ガタガタ走っていた不快感からやっと開放された。温泉宿の湯煙が早い夕暮れの中にほっと揺らいでいた。

箱根ターンパイクの急斜のスロープが国道1号線と箱根新道に合流する小田原付近は、点々と続く車のライトの光からかなりの渋滞が予測された。
真っ暗になってしまった小田原−厚木道路へようやく入るとすーっと渋滞はなくなり、かぶり気味だったプラグのかすを吹き飛ばすように、ロメオに鞭を入れ、高輪の美貴のマンションへ急いだ。但し、この付近に出没する覆面のパトカーに気を使いながら、慎重にスロットルを操作した。

そして美貴の身辺、叔父の存在、財産横奪の事実等、密かに調べ上げる計画に思いをはせながら東名・厚木に入っていった。今夜は美貴のマンションの確認を済ませたら、ひとまず逗子へ帰ることに決めていた。
美貴の案内で魚藍坂のマンションについたのは7時半を廻っていた。





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