Chapter-12

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高輪の魚藍坂のマンションに美貴を送り届けた後、逗子に帰るには少し遠回りであったが、気になって例の九段の土地の建設現場に向かった。
鉄板に囲われた現場の敷地は、靖国神社の近くであった。夜まだ浅い時間であるがまったく人通りのない所で、黒い木立が残された閑静な住宅街であるが、最近、建ち始めたようなビルが多く並ぶ通りに面していた。


明かりのついた工事現場事務所から離れた場所にロメオを停め、歩いて現場周辺を一周した。ゲート入り口の建築確認の看板には、建築主の欄に「桂川交易」と記されていた。例の叔父の会社名であろう。確かに1000坪は優に超える敷地で資産評価も相当な額になるであろう。
数軒先の大きな門の表札には、かっての大物政治家とおぼしき名が掛けられていた。


美貴はここを奪い返すと言っていた。恐らく建物のおまけをつけて取り返すつもりだろう。俺に女房と二人の娘を間接的に復讐させ、叔父にはどんな手段か解らぬが直接の復讐を果たす心積もりなのであろう。
今夜は確かに魚藍坂と九段の一応の確認はとれた。明日以降、日本橋にある叔父の会社、元麻布の自宅、そして俺の分担させられた女房と女子供、そしてその叔父本人とやらを確認しよう。それから俺の報酬としての御殿場の別荘の土地の名義もだ。


車に戻り、ロメオをスタートさせ、横浜新道経由で逗子に向かった。
2日続けて夜をともにした美貴と離れた夜を送ることに少し物足りなさを感じだしたのは、単に性的欲求だけでない何かであった。

おとといの晩、簡単に俺についてきたときには、よくいる尻とおつむの軽い女と思ったが、徐々に接触するうちにただの女でなく、相当な妖しい執念と度胸をもった女であることに気づかされてしまった。しかも計画的なのか俺を復讐の味方につけ、今や俺の主体性までも脅かし始めている。
 幼くして両親も知らず、世間への不信の中で育った俺だ。ようやくいっぱしまでのし上がってきた俺にもチャンスが来たのか?女を踏み台にさらに金をつかんでのし上がるためには、男の沽券などくそくらえだ。そのための女としては美貴は申し分ない。さらに例の女房と娘達への美貴の復讐役を通して、ここでも何かチャンスが掴めるかもしれない。久しぶりにおもしろくなってきたぞ。

逗子・小坪の漁港を通過したのは11時近くになった。黒い海と潮風が冷たく心地よかった。





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