Chapter-13

Chase

■Chapter-13 Chase■

日本橋三越本店前の交差点から、50m程はいった角に10階建ての白いビルがある。大きな玄関ガラスの奥にはアタッシュケースをもった外国人数人がゆったりとしたソファーで日本人ビジネスマン達と商談する風景が見える。受付けカウンターの女性の後ろには5メートル大の世界地図と各国の時差表示の時計が時を刻んでいた。
慌ただしい午前も間もなく昼の休憩に変わろうとしているとき、割腹のいい50半ば過ぎの男が秘書役と思われるすらりとした女性を従い、金縁のめがねを掛けた男性と共にエレベーターホールから玄関口に向かってきた。外には黒のキャデラックリムジンが待機していた。金縁の男は車には乗らず、窓越しに「それでは後程、社長のご自宅の方へ報告にまいります。」と見送った。
ドガッティのバイクに跨り、ヘルメットをつけたまま、俺は二人を乗せて走り出したキャディの後を追った。あれが美貴の話していた叔父とやらか。

車は銀座通りの4丁目交差点から晴海通りを曲がり、国会議事堂を半周して、議員会館脇の急な坂を下った。そしてかってビートルズが宿泊したことのあるヒルトンの正面玄関にキャディは停止した。そして小一時間ほどすると2階奥の日本庭園に囲まれた寿司屋から、議員バッチを襟につけた男とその男性秘書とともに一緒に広いロビーの方へ出てきた。

例の叔父は二人の男の乗ったベンツに深々と頭を下げると、間もなくして到着したキャディに女性秘書を伴なって乗り込んだ。車は日比谷高校脇の坂道を登り、間もなく溜池通りに出ると、又すぐにピンク色の外壁の赤坂東急ホテルの地下駐車場に滑り込んでいった。

かれこれ2時間は過ぎたろうか、先ほどのキャディが地下駐車場から上がってきた。通りを左折しようと止まっている車を覗くと、さっきまで髪をアップにまとめていた秘書の髪は、長く垂れ流していたのを俺は見逃さなかった。そして車はまたも国会議事堂方面に向かい、首都高速ランプに消えていった。俺はドガッティを麻布方面へ向けた。


かってチンチン電車が通っていた六本木の交差点は、首都高速の立体交差でだいぶ周囲が暗くなった感がある。交差点角のアマンド脇の芋洗坂を下り、元麻布の坂道をドガッティは野太い音を立てながら駆け上がった。善福寺の傍に例の叔父の家があると聞いていた。幾度か周囲を回り、桂川の表札のある家を見つけた。このあたりとしてはさほど大きい敷地ではなかったが、今風のコンクリート作りの家が見えてきた。高い塀で回りを囲み、周囲との交流を拒絶する意図がはっきりと見て取れる家構えであった。
確かに美貴の言うとおり、貿易会社らしき叔父の会社、そして元麻布の家は確認できた。ドガッティを手押ししながら車の往来のある通りに出掛かった頃、メルツェデスのSLが急に角を曲がってきて危うく俺のバイクのハンドルを擦りそうになった。若い女がハンドルを握り、そのとなりに親と思われるケバイばばあが座り、よそ者が何でこんな奥に用もないのにくるのよといった風な目でこちらを睨みつけていた。
今日のところは無視しよう。振り返るとそのメルツェデスは先ほどの今風のコンクリートの家の前に止まった。そして若い女の方がガレージの扉を開けて車を入れようとしていた。
<そうか、あれが例のターゲットだったのか。もう一人娘がいるはずだが、さっきの若い女は、長女のほうか、次女の方だろうか?
なんとなく美貴と反りが合わなかったという長女の方の予感がする>
<ひとまず、下調べの所在地確認は済んだ。次に美貴との約束の報酬確認にいこう。>

薄暗くなった麻布の高台を後にし、荻窪のロメオのおいてあるマンションに向かった。




以下、続きをチューニング作成中。しばらくお待ちください。

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