Chapter-2

Battle on the tomei hwy

俺のロメオの前に4メートルと近づいたインジェクションの<02>は、突然、尻の下がったダックテールを左右にふりだし俺に挑発を始めた。仕方なく一気にノーズを左に切ると、一瞬大きな反動を感じた隣のフェロモンの女が眠気をそがれたのか面倒くさそうに髪をかき上げながら、「どうしたの?」と身を起こした。

「ちょっとこれから遊ぶから、もう一度寝てな」と女の大きめのバスト越しに腕を押さえて寝かしつけた。

「あんまり恐いことしないでね。」と女はやや平らに近くなったリクライニングシートにもう一度身を委ねた。

ロメオを<02>の左隣の車線に寄せ、運転席を覗くとどこかの放蕩のガキらしき奴がこちらを向きながらハンドルを握り、ギアーのアップ・ダウンを繰り返しながらアクセルをふかし、不用なマフラー音を轟かせている。

うざっとい野郎だ!こんなガキとのバトルに負けてたまるか!たいしたテクもねえくせに。こっちは忙しいんだ。こんな幅広い飛行場のような安全な道路でバトルかよ、とひつこい<02>についに頭に血を登らせてしまった。するとそれまでの優雅な運転が豹変し始めた。右足踵で大きくアクセルを吹かすとトップの5速ギアーからヒールアンドトウで一気に3速にシフトダウンした。

するとさっきまで眠そうであったエンジンが急に息を吹き返し、アルミ製ツインカムユニットが咆哮を上げ出した。同時にソレックスからウェーバーに換えたばかりのキャブがゴボゴボとガソリンを飲み込んだ。まもなくリアーのアンサー製マフラーからは高らかなカンツオーネのエクゾーストノートが歌われ始めた。ロメオに完全にカツが入った。(ディーラーの伊藤忠オートのメカが内緒で施してくれた大幅なボアアップとハイカムにかけたコストは十分に満足できる!)

路面が下りに差し掛かったとき、コニースポーツの赤いダンパーとピレリーで強化した足回りは、がっちりとアスファルトをグリップしながら一瞬のうちに右旋回して奴の<02>の前を陣取った。この時、イェーガーのスピードメーターは160kmに跳ね上がった。そして、さらにシフトダウンし奴の前に出てスピードを押さえパワーを貯えたところで、一気にアクセルを床まで踏みつけた。瞬間、奴の<02>は大きく離され、100m程に奴のヘッドライトが後ず去った。

するとこん畜生とばかりに猛然と<02>が追いすがってきた。そして奴の<02>がおよそ5mに近づいた瞬間、今度は私のロメオは奴の目の前から消え去るように一気に左にステアリングを切って奴の車の後ろにロメオを廻し込んだ。元気づいたツインカムの咆哮とうねりを下腹で感じながら<02>のリアーバンパーに1mと近づけると、奴もオカマを掘られまいと必死に逃げようとスピードを上げた。 左脇の走行車線を走る長距離トラックが、まるで駐車してるかのようにトロトロ走っている。

メーターは190kmを指し始めていた。アルピナ仕様の<02>は、このあたりからの出足が鈍くなりだした。ここらあたりが奴のパワーの限界なのかそれ以上走り出す元気がない。もはやふんづまりか?さらにロメオは容赦をせず、追い討ちをかけるように煽った。時に10mくらいの距離を置いたかとおもうと、又一気にバンパーが接触するほどの50cmをキープ。そしてまた緩くブレーキングして離れ、また一気にオカマを掘るごとく近づいた。挑戦的に突き出たロメオ独特のシフトノブを、激しくシフトチェンジするが、たまに入り損ねたトランスミッションから金切り声の悲鳴が聞こえてくる。正に「ギアャー!!」だ。

激しく移り変わる黒い窓外に、パール入りのグリーンペイントの標識の「厚木」の蛍光文字が浮かびあがって来た。

ふと見ると500mくらい先に、130kmくらいで走るバトルと無関係の国産GTたちの車が右側追い越し車線を占領していた。やっとこちらのパッシングに気づいた様子だが、我々の余りの早い接近にどう対処したらよいか車体が迷っている様子が見てとれる。最後尾を走るスカGの50m手前で車線を変え、しかたなくトロイ国産GT車たちの左脇を2台のバトラーは一気に横を摺り抜けた。

バックミラーにはひやりとしたのか、ようやく国産GTたちが左にウィンカーを出して隊列を組んで走行車線におとなしく入っていった。久々の緊張感と満足感が全身に漲った。

「ねえー、何キロだしてんの?あんまり飛さないで。眠いんだから・・・。」と天井に薄目を開けながら女は聞いた。「そんなに出してねえよ。120kmくらいだろ」ととぼけた。「そうお。」と女は床下から伝わる強い振動にビクビク疑いながらも押し黙った。奴の尻からは白いオイルの煙がすこしづつ出始めている。さあて、息切れ間近の<02>とそろそろお別れしようか。

こっちも、そろそろダイムラーのブレーキパッドとゴールデンロッジのプラグを冷ましてやるか。

それからもう一度奴の車の後ろに1mくらいに接近して煽ったのを機に、一挙にパワーを貯め悠然と勝ち誇るように<02>の前に踊り出た。 そしてさっきのお返しとばかりにスピンぎりぎりにロメオの尻を振った。すると前方300M先にトロイ車が邪魔していた。鋭くパッシングをあてるとやっとこちらの追いつきに気付いて、ほとんど俺と同時に左車線に寄った。危うく接触しそうになりふわっとテールが流れ中央分離帯に激突しそうになったが間一髪の所でカウンターをあてながら態勢を立て直した。(冷やっとさせるぜ)
その後やせ我慢も手伝って<02>の前後を行ったり来たりしながらからかったが、そろそろおさらばとばかりにアクセルペダルが床を抜くほどに踏みつけた。するとあっという間に、<02>のヘッドライトが遠ざかっていくのがバックミラーに写った。 ベルトーネ所属のジウジアーロがデザインしたのコンパクトなお転婆娘のロメオの車体は225kmを境にスピードを緩めていった。

15分か20分ほどのバトルであったろうか?ついに奴の車のヘッドライトらしきものが見当たらなくなった。どうしたろ奴は。オイル上がりのような白い煙はその後収まったのか。ひょっとしてJAFに救援を頼んだろうか?

車道はいつしか3車線から2車線に変わり、先ほどまでの興奮を静めながらカーブの多い大井松田の山中に入っていった。あたりは黒い山肌に囲まれ時折、対向車線の車のライトが段差のある反対車線から植え込みを通して入ってくる。静寂と漆黒の闇が戻ってきた。まもなく「御殿場」までの案内表示が2kmと出始めた。


...続く..........Chapter-3 Battle on the bed