長島名誉監督を突然襲った病
…心原性脳塞栓症

早期治療で後遺症軽減−−発症3時間以内に薬投与

長島茂雄名誉監督(68)が脳梗塞で入院して二週間。 脳梗塞の一種、「心原性脳塞栓症」と診断された。東京都済生会中央病院 副院長で神経内科部長の高木誠さんに、この病気の基礎知識を教えてもらった。

■心房細動が引き金に

 脳梗塞は「脳卒中」の一つで、脳の血管内に血の塊(血栓)が生じて詰まる「脳血栓症」と、 脳以外の部分にできた血栓が、血流に乗って脳に流れ込んで詰まる「脳塞栓症」がある。 脳塞栓症のうち、心臓の中でできた血栓が詰まるのが心原性脳塞栓症。 多くは、不整脈の一種である「心房細動」が引き金になる。  心臓は一定の電気信号で規則的に拍動しているが、心房細動になると、心房が勝手に 興奮して震え、不規則に動いてしまう。すると、特に左心房で血液の流れがよどみ、血 栓ができやすくなる。温めたミルクを放っておくと薄い膜ができる。そんなイメージだ。  その血栓がはがれて心臓の外へ飛び出すと、七、八割は脳へ向かう。

■目立った前兆なし

 血栓が左脳で詰まると右半身、右脳だと左半身のまひが生じる。ろれつも回らない。 左脳が詰まった場合は、言語中枢をつかさどっているため、言葉を発することや読み 書きも難しくなる。小脳で詰まると、強いめまいや吐き気が先に表れることもある。  脳血栓では、一時的に血管が詰まって手足にまひが起きたり、ろれつが回らなくなっ たりする「一過性脳虚血発作」という前兆が起きることがあるが、脳塞栓の場合は 大きな血栓がいきなり詰まるため、目立った前兆は見られない。  一方、心房細動は、不規則な脈や胸部の不快感を感じることがあるが、自覚症状がな い人もいる。

■CT、MRTで診断

 脳出血と症状が似ており、正確な診断にはCTやMRI(磁気共鳴画像装置)検査が 欠かせない。「とりあえず、かかりつけ医に」ではダメ。 救急車を呼び、きちんとした検査や治療ができる病院へ急行すべきだ。症状が出ても、 詰まった先の脳細胞がすべて死んでいるわけではなく、"仮死状態"の脳細胞がある。  この細胞に早い段階で血流を再開させれば、後遺症が少なくてすむ。 このため、発症後三時間以内、遅くとも六時間以内に、薬物で血栓を溶かす治療が望まれる。 ウロキナーゼという血栓溶解剤が一般的だが、欧米では新薬「tPA」を発症後三時間以内に 使うと特に有効とされている。この薬は国内では未承認で保険が利かない。

■生活習慣病にご用心

心房細動のある人は、脱水状態になると血栓ができやすくなるため、水分を多く摂取 することが必要。サウナや炎天下のゴルフなどはなるべく避ける。たばこや過度の飲酒、 睡眠不足にも気を付けたい。  心房細動に加え心機能低下、高血圧、糖尿病などがあると、脳塞栓症の危険性が高くなるため、 ワルファリンという抗凝固薬を飲み続けた方が良い。  心房細動は、心臓の老化現象でもあり、予防しようがない面もある。しかし脳塞栓症の 予防のためには、生活習慣病にならないよう心がけることが大切だ。

(読売新聞2004-3-16)