脳卒中、発病直後から回復訓練 超早期リハビリに注目

◆早ければ2、3日目から

 脳卒中は一命を取りとめても、後遺症で寝たきりや身体まひになることが多い。これを防ぐため、発病直後から回復訓練をする「超早期リハビリ」が注目される。「発病後は安静が必要」という“常識”は、過去のものになりつつある。

 昨年8月、横浜市磯子区にオープンした市立脳血管医療センター(300床)。24時間体制での救急からリハビリまで、一貫して行う初の専門病院だ。

 高度な治療を行う最新機器はもちろん、4人のリハビリ専門医はじめ、理学療法士、作業療法士ら50人以上の専門スタッフがそろう。広々とした運動療法室(700平方メートル)、病室も一人あたり6畳と、ゆったりしている。

 副センター長の山本正博さんは「まず脳外科病院などで治療し、容体が落ち着いてからリハビリ施設に移るのが、これまでの一般的な流れ。しかし、当センターでは、当初からリハビリ専門医が診療に加わり、早ければ発病後2、3日目からリハビリを始める」と胸を張る。

 救急治療が終わると退院を迫られ、満足なリハビリを受けられないことも多いのが実情だけに、救急とリハビリの総合的な治療を重視する。医療機関の紹介状があれば、市外の患者も診療する。

 防衛医大リハビリテーション部助教授の石神重信さんによると、脳卒中のリハビリで重要なのは、まずベッドから体を起こし、座ったり立ったりすること。心肺機能が高まり、筋力もつくからだ。

 意識がはっきりしていることなどが条件だが、米国では、発病2〜3日後に始めると回復が早く、後遺症が残る割合も減るという報告がある。

 これまで発病後2週間をめどに行う場合が「早期リハビリ」とされたのに対し、こうした試みは「超早期リハビリ」とも呼ばれる。

 しかし、日本の多くの病院でリハビリを始めるのは発病3〜4週間後。「患者を動かさないことで寝たきりにする恐れがある」(石神さん)。

 一人ひとりの病状や、社会復帰など目標に合わせた訓練を行うことも大切だ。

 神奈川県に住む経営コンサルタントAさん(55)は昨年9月、中部地方の出張先で脳卒中に襲われた。

 この日昼過ぎ、東京都内の事務所を出た時から歩くのに左足が地に着かない感じ。次第に足が動かなくなり、目的の駅で降りようとして、車内で倒れこんだ。

 意識ははっきりしているのに、左手足がまひし、言葉がもつれる。救急車で最寄りの病院へ運ばれた。脳血管に血栓(血液の塊)が詰まる脳梗塞(こうそく)。ただちに血栓を溶かす薬の点滴が始まった。

 「絶対安静」を指示され、リハビリを始めたのは、入院10日後だった。

 一般病院としては早い方だが、横浜市立脳血管医療センターなら、もっと早くリハビリを始めるケース。倒れた2週間後にセンターに転院、遅れを取り戻すように、歩く訓練が始まった。

 Aさんの最大の目標は仕事に戻ること。運動療法室で平行棒につかまって歩き、直径60センチほどの風船に腰かけ、バランスを取る練習もした。通勤で階段を上り下りできるよう、「ひざの力をつけたい」とスタッフに要望。スポーツジム用の自転車をこいだり、退院後に自宅でできる「自主トレ」メニューを作ってもらったりした。

 左手足にまひが残るが、先月から仕事に復帰、出張もこなしている。リハビリテーション部係長の理学療法士、今吉晃さんは「自ら目標を示してリハビリを実行したことが良かった」と振り返る。

 センターは、脳梗塞の血栓溶解療法など、高度医療にも力を入れている。発病直後に血栓を溶かす薬剤を点滴する治療で、死亡や後遺症が減ることが米国で報告されているが、この薬は日本では未承認。このため院内の倫理委員会は、独自に承認、センターの負担で近く実施。また脳梗塞をいち早く診断するため、拡散強調画像と呼ばれる新しいMRI(磁気共鳴画像)装置も導入している。