笑いの効用


脳の血流量が増加し、細胞が元気に
−脳神経外科医が落語で実証−


 笑いは、体の免疫力を高めるといわれるが、脳にも良い影響を与えるようだ。中央群馬脳神経外科病院の中島英雄院長は、笑うことによって、脳は、血液の流れが活発になって、元気になることを突き止めた。

●笑わないと血流低下

 同病院では、月に1回「病院寄席」を開いており、中島院長も“落語家”として高座に上がっている。こうした環境の中で、笑いが脳にどんな変化を起こすのかを、患者の協力を得て調査した。
 患者は、35歳から78歳までの22人(男性14人、女性8人)で、脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害で入院していた。
 この調査は、脳の血液の流れ(脳血流量)などをカラー画像で見られるSPECT(スペクト=シングルフォトン・エミッション・コンピューティッド・トモグラフィー)という装置を使って、脳の数カ所を測り、寄席の前後で比較する方法で行った。
 その結果、血流量は、14人で増加し、5人で低下、3人は測った場所によってばらつきがあった。
 「血流が増加した人は、落語が面白かったと感じた、つまり笑った人たちで、低下した人は、疲れたとか、面白くなかったと感じた、笑わなかった人たちでした」と中島院長。

●くつろぐ脳波も増加

  脳血管障害などが起きると、患部付近の脳細胞は死んでしまい、再生しないため、脳梗塞患者には半身のまひや言語障害が起きる。
 細胞は酸素や栄養がなければ生きていけない。細胞に酸素や栄養を運ぶのは血液であり、血流量が増加すれば、脳細胞も生き生きと元気に働くことになる。
 「患者は一般に、なぜこんな病気になったのか、これからどうしようかと、暗く沈んでいます。そんな状態では、脳の元気もなくなり、体にも影響します。落語にしろ映画にしろ、何でも面白いと感じるものに接して、大いに笑ってください」
 中島院長は、脳波も調べたが、落語を聞いて笑った人は、くつろいでリラックスしているときに出現する脳波と、考えようとして脳が働くときに出現する脳波が、共に増えていた。この結果からも、笑いで脳が元気になることが分かった。「今後は、ビデオテープなどを利用して、笑いを脳梗塞後のリハビリに取り入れるなど、笑いの効用を活用していきたい」と中島院長は話している。