同時多発テロ

 

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同時多発テロへのコメント                          2001 9・13   山猫

■アメリカ同時多発テロ■

 9月11日夜(現地は昼)、ニュ−ヨ−クの世界貿易センタ−ビルとワシントンのペンタゴン(アメリカ国防総省)等に対し、ハイジャックされた旅客機を突入させる自爆テロが行なわれた。約5万人が勤務していた貿易センタ−ビルでは、数千人の死者がでた模様。これに伴い、太平洋〜米本土〜大西洋にわたる全空域の航空機の運航が停止している。

   ナポレオン戦争に伴う1812年の米英戦争以来、自国が戦場となったことのないアメリカにとって、国防の要であるペンタゴンと経済の要である貿易センタ−ビルが同時に破壊され多数の死者がでたことは、壮絶なショックであった。

■テロの背景にあるもの−アメリカによる世界支配−■

 アメリカは今回の事件を「極悪非道のテロ集団の仕業」として怒りの声をあげている。しかし、この事件は、その規模の大きさから考えても、一部の狂信者による異常行動ではなく、目的を持った集団によって計画的な出来事であると思われる。

 アメリカは冷戦終結後、世界最大の軍事力、経済力を持つ国として世界の警察官を自認してきた。しかし、アメリカが維持しようとする秩序を抑圧と受け取る地域もあり、温暖化防止に非協力であったりするアメリカを独善的だと見る勢力も増えていた。

■今回の事件の原因

○イスラエル問題

 かつて地中海岸東部に住んでいたパレスティナ人(アラブ人)を英米が追い出して、ユダヤ人の国イスラエルをエルサレム(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の聖地)に建国したのが発端である。最近イスラエルによるパレスティナ人に対する攻撃は激化しており、多くのパレスティナ市民が亡くなった。この問題でアメリカは常にイスラエル側に立ち続け、パレスティナ人の非難を浴びている。

○湾岸戦争(1991年)

 クウェ−ト(親米政権)は隣のイラクの原油盗掘を行い、また、クウェ−ト人は周辺の貧しいアラブ人を労働者として酷使し、大きな利益を得ていた。これにイラク(フセイン)が抗議したが無視。このため、イラクはクウェ−トを攻撃、占領した。

 クウェ−トは欧米に支援を要請。米を中心とする多国籍軍が編成され、ハイテク兵器を駆使した大攻勢が行われ、一瞬でイラク軍は粉砕され約30万人が戦死しイラクは敗北した。放射能汚染を招くウラン弾頭も使われ、死者の半数は民間人であった。また、国連の降伏勧告を受け入れ、イラクに戻る途中の無抵抗のイラク軍に対し、米軍は隊列の前後の集団を攻撃し足止めした後、「動くもの全て」を対象とした大殺戮を行い、約1万人のイラク兵を全滅させた。イラクへ向かう道路には死体が累々と並び、「死のハイウェイ」と呼ばれた。これらの行為に対し、イスラム勢力の中ではテロによるアメリカへの報復を叫ぶ者も多かった。

○豊かなキリスト教=自由主義圏、貧しいイスラム教圏

 アメリカ、ヨ−ロッパ等キリスト教文化圏は、産業革命以来、アジア、アフリカを植民地として支配することで、「先進国」の地位を築いた。現在もこれらの地域の資源や食糧を安く入手することで大きな利益を得ている。

 一方、北アフリカ、中東に位置するイスラム教圏は、これら植民地政策の犠牲になった地域であり、今も搾取の対象となり続け、貧しい生活が続いている。

 イスラム教圏では、富める者が貧しい者に施すのは当然であり、施しを受ける側は礼さえ必要とされていない。富める者がその富を独り占めするなら、襲われても当然であると考えられている。そのようなイスラム世界から見れば、「自由」の名のもとに豊かな者が富を独占する欧米社会は理解不能な異様な世界であり、そのような世界の拡大は恐怖であると言える。

 湾岸戦争で、経済的利益を重視し米側に立ったサウジアラビアには、現在も米軍が駐留している。国内原油の乏しくなった米にとって、親米産油国サウジアラビアは重要な存在である。しかし、サウジアラビアには、イスラム教最大の聖地メッカがあり、そこに米軍が存在することを許せないと考えるイスラム教徒も多い。

■今後生じるであろう出来事■

○アメリカによる報復

 従来、アメリカはテロを受けた場合、数倍の犠牲を強いる報復を行ってきた。従って、今回のテロに対しても大規模な報復攻撃が予測できる。しかし、報復を受ける側からすれば、理不尽な攻撃に他ならず、報復が報復を生む可能性は否定できない。

○日本への影響

 既に在日米軍基地からインド洋に向けて、強襲揚陸艦等が出撃し、日本のイ−ジス艦 (ハイテク巡洋艦)も「沿岸警備」を理由に同時に出航している。また、沖縄の嘉手納基地(世界最大の弾薬庫)では、弾薬の移送準備が進んでいると言われている。日本は出撃基地としての機能を開始しており、「銃後」を担う事実が既に進行中である。

 日本はアメリカとの間で軍事同盟の日米安保条約を結んでおり、アメリカが軍事行動を行う際には、日本に対して経済的、軍事的支援を要請するものと思われる。

○経済と軍需産業

 既に世界不況の状況であったところにこの事件が発生したことによって、不況の深化は不可避であると思われる。特に貿易センタ−ビルは世界の金融と貿易を担う主要な多国籍企業の中枢が集中しており、打撃は大きい。

 1929年の世界大恐慌からアメリカが復興するには太平洋戦争開戦の軍需を必要とした。今、世界的に既に民間需要は頭打ちであることは明確であり、今後需要を拡大し経済を回復させるには、軍備強化が必要だとの声も生じる可能性がある。

○中国の動向

 以前より台湾問題で米中の対立は高まっていた。恐らく行なわれるであろう米によるアラブに対する報復攻撃に対し、もうひとつの大国である中国がどのような態度を取るかで、今後の情勢は大きく変動する。

 中国が米側につくか、中立を守るなら、現在のアメリカ主導の国際秩序は揺るがず、湾岸戦争の時と同様、通常兵器による圧倒的な軍事力で相手国を粉砕して、とりあえず先進国には平和が戻ると思われる。

 しかし、中国がアラブ側に立った場合は、アメリカは、報復を思い止まるか、中国との戦争を辞さない覚悟で攻撃するかの判断を迫られる。前者を選択することは国民感情からして極めて難しいと思われる。後者の場合は中国とアメリカの間に位置し、米軍最大の弾薬庫を等を有する日本が戦場になる可能性を否定できないと言える。

■幻想の平和の終焉■

 先進国のみが豊かで平和な時代はこの9月11日を境に過去の歴史となった。この日は後の歴史教科書に大きく記される日となるであろう。

 本来、限定的な世界の中で豊かさを得ようとするなら、他から奪わねばならない。閉ざされた村の中で豊かさを得るには、命をかけて剣を振るい、暴君とならねばならない。

 私たちはしかし、今までなんら手を汚す事無く、暴君でなければ得られない豊かさを享受してきた。今の私たちにとって、暴君の剣は米の核ミサイルであり、多国籍企業の経済力であり、それらは、半ば自動的に収奪を行い、その甘い蜜だけを我々に届けてくれた。

そのような政府を我々は望み、築き上げてきた。

 しかし、鉄壁の核ミサイルでも巨大な経済力でも、この「楽園」を守り得ないことが今明らかになった。甘い幻想の日々は終焉を迎えたのである。

 

■ファイナル・ファンタジ−(最終幻想)■

 昔、アニメの主人公のアイティムであった携帯通信装置は、携帯電話として普及している。世紀末には、日本企業から自然に歩行できるロボットが発表された。科学技術は急速に発達を続けており、様々な情報機器やその応用製品は、ばら色の未来を実現してくれるかのように感じられる。経済学者は、毎年拡大再生産が続き生産が増大し続ける社会こそが、雇用を増大し人々に豊かさをもたらすと主張している。

 しかし、注意深く見ると、急速に発達しているのは情報関連分野のみであり、他の分野では顕著な発展が見られないことに気付く。原理的に重量を持たない情報に関しては、技術の積み重ねによってどんどん高度な伝達、加工が可能になっているが、乗用車の燃費はここ20年間、様々な便利な装備の付加のために悪化を続けており、自然エネルギ−の活用は始まってはいるが、全体のエネルギ−消費が拡大する中でその比率は低いまま推移し、エネルギ−の主力は産業革命期と同様化石資源である。それらの消費に伴う一人当たりの二酸化炭素排出量は今も増大を続けている。我々は植林をする以外に未だ有効な二酸化炭素固定手段を持っていないが、伐採によって減る森林面積は、植林によって増える量を遥かに上回り、温暖化は急激に進行しつつある。科学技術は、本来的に不可能なこと、例えば、太陽光トラック等を実現することはできないし、肥料や水なしで実りをもたらす作物を生み出すこともできない。科学は魔法ではない。

 昔、人々が自分で耕し、自分で食べていた時代、そこで生産される竹の篭には、竹を植えたり育てたりするための竹の生産コストが含まれていた。竹篭が壊れて、風呂の焚き付けになるときに排出される二酸化炭素は、再び植えられる竹によって吸収されていた。

 しかし、現代社会で使われるプラスティックの篭は、原料の石油の採掘コストは含まれていても生産コストは含まれておらず、誰も石油を生産するものはなく、篭が廃棄される際に排出される二酸化炭素を吸収する者もいない。

 働くのを止め、家にある食ベ物だけで生きていこうとするなら楽だろうが、それはただのバカである。しかし、近代化とは、労働で賄ってきた仕事を、枯渇性資源で代替する営みであり、本当の意味での生産を止めてしまうことではなかったか。我々が今の豊かな消費生活を続けられると信じるとすれば、それは家(地球)の中から食ベ物(資源)が無限に湧きだし、糞尿(廃棄物)は自然に消滅するという現実離れしたファンタジ−を信仰していることになるのではないか。目の前に燃えているガススト−ブが、1000年後も燃え続けると信じることは、魔法によって物を生み出し、魔法によって物を消し去ることを可能だと信じるRPGとどこが違うのだろうか。

 現代は剣の時代でもある。究極の剣(つるぎ)である多弾頭戦略核を装備した1隻の潜水艦は、約20分で数億人を殺傷できる。その前では、剣を持たぬ者は平伏す他はない。剣を持たぬ者が絶対に反抗できない中では、剣を持つもの側には絶対的な平和が保障され、大きな戦争は起こり得ない。私たちの豊かさを脅かすもの(我々の蕩尽によって奪われ、怒りの叫びを挙げる者)の戦線は、遥か彼方でここからは見えない。この平和は戦争が存在しないことによる平和ではなく、戦争に圧勝しているがために銃後が安寧であることによる平和であり、それは偽りの平和に過ぎない。

 この最終幻想(ファイナル・ファンタジ−)を堅く信仰し、剣と魔法が支配する幻想世界の主人公として生きるのは楽しい。なんといっても生産せずとも消費ができるなんて、まるで夢のようである。(笑)

 しかし、全ての幻想がそうであるように、それは明らかにリアリティを欠いていた。

 都合のよい幻想が今終わり、リアルな世界に戻っていく。 それだけのことだと思いませんか? 

 

* 9月15日追補

■中国、ロシア、パキスタンが報復に中立または支持■

 ロシア、中国、パキスタン等が、アメリカの報復に対して中立もしくは支持の立場を取りつつある。このため、米中対立という先進国にとって最悪のシナリオは回避され、湾岸戦争同様、ハイテク兵器はアフガニスタン等、反米アラブ勢力の拠点を完膚なまでに叩きつぶすであろう。しかし、それは平和への道だろうか。否である。現状の秩序の維持回復にアメリカが成功するということは、イコールアメリカ一局支配体制の維持、先進国による蕩尽の維持であり、それはアラブ側にとって、途上国側にとって支配と搾取の継続に他ならない。限られた世界の限られた富を一部の者だけが自由に消費する「自由」な世界。その維持は奪われる側の怒りを増殖させるだけではないだろうか。

*9月16日追補

■貿易センタービルが象徴するもの■

 倒壊した貿易センタービルが象徴していたもの。それは近代経済システムであった。先進国多国籍企業が中心となって、あらゆる情報を集積し、あらゆる物を生産、売買する。自由な情報伝達、自由な生産活動、自由な貿易。これらによって先進国は豊かになった。

 中世封建社会にこんな自由も豊かさもなかった。では、今の自由な社会はどこも豊か?決してそうではない。昔のインドの漁民は沿岸の魚を自由に獲って食べることができた。今、魚は猫缶用に買い占められ、日本やアメリカの猫様が食べ、現地の漁民の口に入ることはない。

 近代的経済システムで自由の恩恵を享受するのは、経済的強者だけである。漁民は奪われるわけではない。代価が支払われているという反論は当然であろう。しかし、不当に安い対価は奴隷労働とどれほど違うのか。

 

 もっとも近代は世界全体を豊にしたとも言われる。今確かに着る物のない者はいない。飢えて死ぬ者も減った。多くの食糧が先進国から途上国に流れ、人口を支えている。援助で建設された井戸のポンプは荒野を緑にした。しかし、先進国が供給するそれらの富は誰が産んだのか。先進国の高度な技術と労働の成果だと言われている。果たしてそうか。

 アメリカの小麦は何から生まれているのか、労働だけではない。大量の機械とそれを動かす化石燃料、そして小麦を育てる肥料の一つは化石資源である燐鉱石から生産される。そこには一方向の流れしかない。採掘(資源消費)ー生産ー消費ー廃棄。近代経済システムは、これらの過程を自由に行うことで富を生み出してきた。しかし、そこに純生産はない。常に資源の大量消費がなされており、消費された資源が潜在的に持っていた以上の富が新たに創出される訳ではない。消費された資源を再生産する者は存在せず、経済学上の拡大再生産は、資源が無限に供給され続けるという中世の農夫が聞いたら笑い死にしそうな荒唐無稽な仮定を前提としている。

 貿易センタービルは、あのテロがなくとも墓標となる運命であった。近代経済システムでは、無限の燐鉱石がなければ小麦を作り続けることはできない。無限の石油がなければ車を走らせ続けることはできない。ついでに無限の空間が地球になければ、生産を続けることはできない。なぜなら消費をしても資源も物も無くなるわけではなく、無くなるのは無形の価値のみであって、投入された資源量と最終的に廃棄される物量は全く同量であるからである。

 

*9月23日 追補

■報復が認められる条件■

 人を先に殴っておいて、殴り返されたからといって、それに激怒して殴り返すことを報復とは言わない。今のアメリカは、鞭で叩き続けられてきた奴隷が妻に殴りかかったので激怒している主人とどれだけ違うのか。アメリカによる報復が認められる条件の第一は、実行者の特定ではない。それ以前に、「アメリカが今まで危害を加えたことがない」ことを証明しなければならない。

■近代世界の形成=略奪の歴史■

 世界は中世から近世、近代、現代と進歩してきたという思想が現代では一般的である。しかし、このような考え方が生まれたのは、近代の一時期以降であり、それは決して普遍的ではない。

 中世西欧は世界の中で貧しい辺境に過ぎなかった。その西欧が豊かさへのきっかけを得たのが、アメリカ大陸「発見」である。以後西欧は、中南米を植民地化し、現地の人々を奴隷化して金銀を奪うようになる。西欧社会はこの金銀を通貨として支払うことで、当時何の魅力的商品も生産し得なかった西欧が、インドから綿織物を、中国から陶磁器、茶、絹を買えるようになったのである。

 アメリカ大陸は西欧の侵略によって数千万人もの莫大な人口を失う。そして、西欧は減少する奴隷を補うためにアフリカ人奴隷を使うようになる。更に西欧は北米大陸への移民も開始した。北米大陸への移民は当時のイギリス人口の2割以上の数に達する。イギリスで発生した慢性的な人手不足が、機械化への投資を促進し、また、貿易船建造や生活向上に伴う薪炭消費の拡大が木材資源を消失させ、木炭から石炭へのエネルギー革命を生む。こうして産業革命がスタートした。

 しかし、産業革命=化石資源と機械の文明 は、労働を資源消費で代替するものである。通常地下資源には、その採掘コストは含まれていても、生産コストは含まれていない。あらゆる地下資源がそうである。近代社会は、地球の資源残存量を無限であると仮定することで、低コストを実現しているに過ぎない。地下資源は掘れば減る。正確には掘って消費した分だけ、例えば化石燃料であれば空中の酸素と結びついて二酸化炭素に転化する。ここには中世社会や現代でも「途上国」社会の農村部で維持されている持続性は存在しない。

 持続性と引き換えに産業革命に成功した西欧は、工業力をバックに軍備強化をめざし、その軍事力はアフリカへ、アラブへ、アジアへと向けられた。西欧はこれらの地域の植民地化によって、自在に資源と労働力を得、豊かさを高めていく。アラブ社会の悲劇はこの時から始まる。

 他から奪えば豊かになれるのは当たり前である。植民地支配は露骨な略奪であるが、経済的軍事的な強者の地位を利用しての「自由貿易」もまた、姿を変えた略奪に他ならない。そして、再生不可能な資源消費=廃棄物の排出 は一切の反抗を時間軸によって封じ込めることで実現した次世代からの搾取であると言える。

 近代世界とはこのような搾取によって成り立っている。 イスラム世界には工業国は存在しない。それを西欧社会は「近代化の遅れ」であると批判する。しかし、持続性のない社会になることが果たして進歩と言えるのだろうか。持続性を重視するなら、恐らく世界で最も劣った国はアメリカであろう。

 

10月18日追補

■始まってしまった報復■

 アフガニスタンに対する報復攻撃が始まり、既に幾日も経過しています。病院や民家も「誤爆」を受け、多くの罪もない人々が亡くなっています。そのような哀しみをいったい誰が望んだのでしょうか? 同じ哀しみを抱いたニューヨークのテロの犠牲者の妻や夫や子ども達では決してなかった筈です。

 これ以上悲劇の連鎖を拡大しないためには、報復の連鎖を断ち切らねばなりません。人類はそれすら出来ないほど愚妹であるとは思いたくないです。

 

 

何故近代は崩壊するのか 続きはこちらへどうぞ。

 

 

 

 

 

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