書評等メデイア評

 

・ 絵 本

『 逆 立 ち の で き る ロ バ 』

/高木 剛 絵/杉林恭雄 発行 フェリシモ出版 18001992320

  ロバが新聞を読んでいた。逆立ちのできる馬を求める求人広告を見つけた彼は馬らしくなって採用されようとする。馬らしくなろうとデパートへ行くと次々と服や靴買わされてしまう。それらを身につけたロバは電車賃もなくなり窮屈さに苦しみながら雇い主の家を目指す。疲れたロバは、ついに馬になるために買った服を脱ぎ捨て4本の足で歩き始めた。・・・・・・・

『らしさ』の為に物を買い、物の為に『自分』を失う。そんな現代人に対するコミカルなパロディ。

 

作/立松和平 絵/伊勢英子 発行/ポプラ社 定価1200 19909

 団地の15階が清一の家。そこで彼は長い間学校を休み、言葉を忘れたかのようにだまって過ごしていた。そんな彼を、両親は山奥の祖父に預ける。祖父はもう、息子である父さえ分からず、清一を幼い日の父だと信じ込む。

 鶏を襲ったイタチを、祖父は檻に入れ山に向かう。「おまえにごちそうしてやらなくっちゃいけないから、しっかり働いてもらうことにしたよ。」

 祖父は清一の目の前でイタチを川に沈めて殺す。「よく見ておくんだよ。こいつがおまえに見せてくれているんだから。」と言いながらイタチを裂く。「かわいそうだね」清一は自分の声を久しぶりに聞く。皮からはがした肉を祖父は水に流す。「あれも魚のえさだよ。たべたりたべられたり。山の中のものは何もむだがなくて、全部がぐるぐるとまわっているんだよ。」 祖父はイタチの皮を竹竿にしばり、水につける。イタチの皮は祖父にあやつられ、命を取り戻したかのように泳ぐ。驚く魚が網に入る。『イタチ漁』である。祖父は竿を清一に渡す。「あわてたらだめだよ。はじめたら、一気にうごかすんだ。イタチの気持ちになって。」水の感触をイタチは全身であじわっている。あわてふためく魚たちが、イタチには見える。

 連なる生態系の中で生きる生命。その命の哀しさと気高さ。拙い要約では作品の深い輝きを伝えられず残念です。いきものの『死』を彼方に追いやった現代の食卓は、食べる側の人間の『死』の哀しみを、さらには、『生』の輝きをもかき消そうとしているのかもしれません。

 

・ マンガ

愛人   AI-REN

著者田中ユタカ   発行白泉社  2002年夏5巻で完結予定、現在4巻まで既刊 

崩壊する世界の中で、人は生きる価値を見出し得るのか、愛し合えるのか。重厚なテーマに真正面からぶつかる大作。

 

 

・ 映 画

『 僕 ら は み ん な 生 き て い る 』 19933月公開

監督/滝田洋二郎 原作・脚本/一色伸幸 出演/真田広之 山崎努 岸辺シロー 早見優

 出張先の途上国は軍事独裁政権。平凡な日本人サラリーマンの彼は自分の案件を巡って飛び交うワイロに驚く。突然銃弾が襲う。それは独裁政権をたおすクーデタの始まりだった。そして彼は知る。これは極悪独裁政権対正義の解放軍の戦いではなく、誰が日本からの金をつかむかを争っているに過ぎないことを。自分が設計した橋を戦車が通り、現地の人々の何の役にも立たないことを。そんなくだらない『仕事』と『会社』のために妻や子を捨て闇雲に働いてきたことを。

近ごろの邦画には珍しいコメディタッチ社会派アクション。感動の超大作。

 

・ 書 籍

『石油はいつなくなるのかー検証・エネルギー問題の全てー』

著者小山茂樹 発行時事通信社 1998年12月 

 新たに発見される油田は、どんどん小規模になりつつある。緻密な検証により、間近に迫る石油資源の枯渇時期を推定する。また、天然ガス、石炭などの他の化石燃料、原子力、風力など他のエネルギーの将来性と問題点を明らかにする。

 

『貧困の世界化ーIMFと世界銀行による構造調整の衝撃ー』

著者ミシェル・チョスドフスキー 発行つげ書房新社 1999年5月 

南の貧困、北の豊かさを固定している経済システムの実像に迫る。

 

『別冊宝島 276 実録!日本沈没 ーこの国が破産するこれだけの理由!ー』

発行/宝島社 1996年10月

 国債、地方債、財投、特殊法人、第三セクター等々、積み上がった累積債務、総額700兆円。日本は、これらの公的部門の赤字によって崩壊するのではないか。

 

 

『都市を滅ぼせ 』

著者中島正  発行/舞字社 1994年10月 

 持続不可能な蕩尽を続ける都市に対して、農民は食糧を供給すべきではない。安藤昌益の思想を実践する自給自足者の提言。

 

『 アジアを食べる日本のネコ』

著者/上智大学 世界食糧デーグループ ペットフード班  発行/梨の木舎 1994年10月 

 新鮮な魚をふんだんに使ったペットフード、その生産現場へと目を向けることで、食糧を巡る露骨なまでの南北間の不平等問題に肉薄する。

 

『飢餓の世紀 』

著者/レスター・R・ブラウン  発行/ダイヤモンド社 1995年5月 

 近未来に於ける、途上国の人口爆発と工業国の蕩尽による食糧危機を鋭く指摘する警世の書。

 

『アメリカの戦争犯罪 』

著者/ラムゼイ・クラーク  発行/柏書房 1992年12月 

 湾岸戦争は、石油戦略の一環としてのアメリカのシナリオの下で、イラクに対する挑発によって開始されたのではないか。そして、この戦争の中で多くの残虐行為を始めとする戦争犯罪があったのではないか。このような疑問を緻密な調査によって明らかにする。 

 

『 舗 装 と 下 水 道 の 文 化 』

著者/岡 並木 発行/論創社 定価20601985310

 日本はヨーロッパをめざし、社会資本の整備を続けてきた。その中心は道路舗装率と下水道普及率の向上であった。しかし、道路が舗装されていること、下水道が完備していることがはたして『ゆたか』なことなのか。

 舗装は雨水の地下水化を阻害し、地表を流れる水量を増やす。その対策が下水道の始まりであった。舗装とビルに埋め尽くされた都市では下水道は不可欠であるが、それは地下水と河川水の減少を招く。水がその場で地面にしみこめば、気温が高いときには地面からの水の蒸発が生じ、暑さを和らげる。舗装と下水道は水のそのような働きを阻害し、都市のヒートアイランド化を助長する。地下水が減れば、古くからの井戸や泉も涸れてしまう。河川水が減れば、川の生き物は大きな被害を受け、川そのものが持つ浄化能力も失われる。文明の尺度とされてきた舗装と下水道は、今、都市を砂漠化しているのではないか。

 山も海も川も、村も町も都市も、どこもかしこも可能な限りコンクリートで覆い尽くそうとする、土建国家日本に対する厳しい批判の書である。

 

『 田 舎 さ が し 』

著者/宮崎光 発行/森林書房 定価/1500円 1990年9月5日

 地元不動産屋、ブローカー、知人、親類など、あらゆるルートにアクセスし、何年もの歳月と無数の小旅行の結果、ついに著者は『田舎』を手に入れる。これは田舎さがしのサクセスストーリーである。本来『田舎』はそれを手放す売り手にも、それを求める買い手にも値段はつけがたい。業者抜きで売買を成立させるのは、買い手と売り手の人間関係である。

 

『 生 き る 歓 び 』ーイデオロギーとしての近代科学批判−

著者/ヴァンダナ・シヴァ 発行/築地書館 定価/2987円 1994年11月1日

  著者はインドでチプコ運動等に取り組む女性たちの支援を行いながら、工業国の搾取をエコフェミニズムの立場から鋭く批判してきた。彼女は、近代ヨーロッパ文明=資本主義的家父長制が、サスティナブルな社会を破壊してきたとして、現在アジアで工業国主導で行われている開発援助を非難し、それにかわるものとして自然との共生を目指す女性原理の再生を主張する。

 

『 檜 原 村 の 台 所 か ら 』 ー山のくらし、土の恵みー

著者/玉木昭子 発行/柴田書店 定価/1545円 1984年 9月5日

 奥多摩の檜原(ひのはら)村に移住した著者は、村の力強い主婦達に教わりながら、畑を耕し、山の恵みを集め、兎を殺して山村での生き方を体で学んでいく。全体の2割が写真、7割が山村での暮らし方のノウハウのイラストであるが、山菜から蛙まであらゆる山の恵みの調理法、さらにはカマドの使い方まで、その情報量は膨大である。

 

『 百 姓 に な る た め の 手 引 』

著者/今百姓三人衆、自然食通信編集部 発行/新泉社 定価/123619942

  新規入植者へのアンケートを中心に農的くらしの実像に迫る。自己資金150万円、農地は借地、住宅は借家、耕作面積3反、年間総支出150万円(生活費+農業経費)という平均像は、参入は容易だが生活は厳しいというところか。類書が少ないだけに貴重な本である。巻末には農業研修や援農受け入れ先などのリストが載っている。

 

『 わ た し は 趣 味 の エ コ ロ ジ ス ト 』

著者/室田武・赤星たみこ 発行 メディアファクトリー 130019931025

  エントロピー学会の重鎮室田武とギャグマンガ家赤星たみこがエコロジーについて語る、これ以上はない異色対談。エコロジー史、石油文明、リサイクル、有機物循環、開放定常系理論、砂漠化、炭素税、水土、酸性雨、ごみ、エントロピー、原発、江戸モデル、魚付林、割り箸、米、地球環境史、井戸水、etc。話のネタは数知れず、環境対策の誤った常識を覆し、ギョーカイ(環境問題の専門家とその周辺)で今話題のテーマにも詳しい。

これ一冊でエコロジーの入門から最新理論まで概観できる平易で濃密なガイドブック。

 

『 水 の 環 境 戦 略 』

著者/中西準子 岩波新書 定価 5801994221

  人々は安全な水、清潔な生活、豊かな自然を求める。しかし、完璧な安全性を求めれば、下水の再利用はできない。清潔願望の拡大は際限ない水需要を生み、自然を破壊し村を沈める新たなダムを必要とする。十分な水量と完璧な安全性と環境の保全は両立しないのである。

  『公害問題』ではリスクを生む企業が利益を得、リスクを被るのは、企業の利益とは無関係の市民であった。従って、市民は団結して、企業やその行為を許容した行政の責任を追及すればよかった。しかし、『環境問題』では『市民』はリスクの発生者であると同時に利益を得る者であり、さらにリスクを被る被害者でもある。

  このような問題の解決には、生じるリスクを評価し、どのリスクを排除し、どのリスクを許容するかを決定し、総合的な対策を立てる視点が必要とされる。日本の一人一日当たりの生活用水使用量は350リットルであるが、世界平均は50リットルに過ぎない。生活の場では、例えば、『洗濯や入浴の回数の増加=限りない清潔願望』の見直しが迫られる。

  リスクの除去は望ましいが、利益とのバランスでしか、それはできない。また、人間にとってのリスクの除去が環境を破壊する場合もあり、その際には程々の安全で我慢する必要も生じる。

 水問題を通し、広く環境問題、南北問題を考えさせる好著である。。

 

『 パ パ ラ ギ 』

著者/ツイアビ 訳/岡田照男 発行/立風書房 定価7501981430

 著者のツイアビは西サモアのある島の酋長。彼は1900年頃のヨーロッパを見てまわった。そして、彼は島の人々へ語る。パパラギ(白人)に近づくな。本書はその演説である。

・パパラギは、たくさんの人の住む石造りの箱が並ぶ場所を『都市』と呼び自慢する。しかし、 そこには空の青、明るい風、森もない。

・ヨーロッパでは農村が都市に食糧を供給している。しかし、都市の人々は食糧がどこから くるのか考えない。都市の人々は土から離れてデスクで稼げることを自慢する。

・職業を持つということはいつでも同じことを繰り返すということである。たいていのパパ ラギは職業以外のことは何もできない。人間は手、足、頭のすべてが働いてこそ喜びを感じ る。パパラギは職業の為に病気になっている。

・パパラギは他人から略奪し、豊かで快適な生活をする。パパラギに近づくな。

初めて『文明』を見た彼は、『文明』の本質を鋭く見抜く。彼の主張はまるで現代の社会に向けられているかのように明快である。

  

 

・ 雑 誌

『 自 然 食 通 信 』ー食べものと暮らしをあなたの手にー

発行/自然食通信社 発売元/新泉社 隔月刊 定価570円 直接年間購読料 4050

рO3−3816−3857 郵便振替 東京5−78026

大阪では紀伊国屋書店にバックナンバーがあります。

 下記のような、魅力的な特集記事を中心に、豊富な書評、各地のエコロジカルショップの紹介、各種市民運動の集会案内、わたしたちのようなエコロジー関係の団体紹介(もう少しサークルが安定して来たら載せてみたい気もします。)、援農や農業研修の募集など、盛りだくさんな内容です。

・最近の特集

*60号(94、6) 風味抜群!自家製酵母パン

 工業化されたパンの酵母(イーストフード)は添加物タップリ。それに対し、本当の パン作りを目指している人達の全国からの声の特集。全国自家製酵母パン屋さんのリ スト付き。

 

*59号(94、3) 味覚を壊す「アミノ酸」流行り

テーブルに化学調味料を置くことは少なくなった。しかし、だしのもと、ブイヨン、 シチューのもと、マヨネーズ等を通じて、知らぬ間にとっている化学調味料。その問 題点を様々な視点から考える。具体的なそれらの商品と自然なものとの試食チェック 表付き。

 

*58号(93、12)水を汚しているのは誰?

家庭からの合成洗剤、工場からの有機溶剤、農地からの農薬、ゴミ処理場からの多様 な汚染物質等水を汚している様々な原因について考える。

少し古いものでおもしろそうなのは

 

*53号(92、8)元祖エコロジスト・百姓から言わせてもらえば

脱サラ百姓、農家の嫁、農協職員、もともと百姓など、様々な立場の人が、”農”を 語る。

 

*52号(92、5)始めてみませんか「自然食・エコロジカルショップ」

自然食のレストラン、自然食品製造、無農薬八百屋など、エコロジカルショップの実 態、楽しさ、問題点、はじめたい人へのアドバイス等。特に、エコロジカルショップ を始めた133人に聞いたアンケートは興味深い。

 

*50号(91、10)エコロジー・ブームに水をさすようですが

この号は10周年特集号。普段の2倍の厚さ。エコロジー・ブームの問題点を生産、 流通の両面から考える。特に、過疎化のため、労働力が確保できず、耕作放棄地が続 出している生産地の訴えは深刻。

 

*49号(91、3)耕したまえ街びとよ 自然の味わい方「農園リゾート」 /降り注ぐ酸性雨

山梨のクラインガルテン(会員制市民農園)、長野の市民農園、千葉の「自然塾」の 紹介。

都市に降り注ぐ酸性雨による農業被害の実態。

 

*35号(871112) グルメ消費者にはなりたくないー”無農薬”なら安心ですか2ー

当時は、スーパーや百貨店に無農薬野菜が並び始めたころ。流通企業に無農薬農産物 を出荷していた農業者の側から、無農薬農産物を流通ルートに乗せることの問題点を 掘り下げる。

 

*19号(841112) 「消費者」とは付きあいきれん 討論会←この号が一番のお薦めです。

安全なものフルコース、売り買いしてればいいんですか

いいものだけのつまみ食い?!まるごと農とつきあいますか

無農薬ヤサイがたくさんできると思っている消費者なんてダマスのカンタン

安くて安全な「自然食品」がまともな農業をつぶしてしまうんだなア

みんなで足をひっぱろう、工業優先社会

など、刺激的なタイトルがずらりと並ぶ。その問題意識は見事に本質を突く。

  

・ テ レ ビ

『 森 と 文 明 』 環境考古学の視点

講師/安田喜憲 NHK人間大学 19944月−6

教育テレビ 水曜 23-2330分 再放送 木曜 1530-16

・1 東の森・西の森 ・2 草原からの旅立ち ・3 ノアの大洪水と都市文明の誕生

・4 エブラ王国の炎上とレバノンスギ ・5 地中海文明の興亡と森林破壊 以上放送済み

・6 東・西の蛇信仰 (5/11) ・7 森を支配する一神教の誕生(5/18)

・8 メドゥーサの目・モアイの目(5/18) ・9 ペスト大流行と魔女裁判 (6/1)

10 近代化と森林破壊 (6/8) 11 滅びゆく楽園 (6/15)

12 新たなる文明の創造 (6/22)