守旧派のみなさんへ
<<新しい歴史教科書をつくる会 山形県支部>>

『児童・生徒のみなさんへ』を読む

守旧派のみなさんへ



なぜ「守旧派」か

 県内24議会に教科書採択制度の改善を求める請願が提出された昨年の12月議会での議論を通して、私どもの教科書改善運動に反対される方々の考え方がかなり明確になってきました。
まず現行の採択のありかたについては、教育は教師が国民全体に直接責任を持って行われるものであり、主たる教材である教科書を決定する権限が教師にあるのは何ら問題ないとされます。
教科書の内容についても、たとえば、わが国からみればふさわしくないはずの柳寛順は、「祖国に土足で入って来る外国の軍隊に対して、身体を張り命をかけて民衆の先頭に立った少女」であり、また、教科書改善運動が大きく広がるきっかけともなった「従軍慰安婦」は「アジア各地から日本帝国の関与のもとに強制連行され、肉体的にも精神的にも堪え難い犠牲を強いられた、国家関与の性犯罪」として、教科書で取上げることはなんら不都合ではないと考えておられます。
日本の現状の教育をどうやったら正常な姿に戻すことができるだろうかというせっぱ詰まった問題意識から出発した私どもからすれば、このような考え方からは、現状の改革を認めず、現状の既得権に必死でしがみつこうとするかのような守旧派的姿勢しか見えてこないのです。そんなわけで、本来「革新政党」を標榜されてきた方々が「守旧派」とみなされることについては不本意なことかもしれませんが、教科書問題については、本来の保守が「改革派」で、革新であるはずが「守旧派」という構図になっていることをご理解いただきたいと思います。


守旧派が守ろうとするのは占領政策の精神

 守旧派の方々の議論の源流へ遡ると熕阯sき当たらざるを得ません。
 「現場の先生方へ」で述べたことの繰り返しになりますがGHQ(占領軍総司令部)は、戦時中よりも厳しい徹底した言論の検閲を行い、戦争に至る日本の立場の正当性を主張することも、広島、長崎の原爆の悲惨さを公表することも禁じました。その一方で、日本国民を一般国民と支配階級に分け、「国民は支配層にだまされていた」という宣伝によって、国内対立があおられました。
GHQが戦争に関する罪悪感を徹底して日本人の心に植え付けるために行った宣伝計画をWar Guilt Information Program(戦争犯罪宣伝計画)といいます。占領軍は周到な計画の下に、新聞、雑誌、ラジオ、映画とあらゆるメディアを使い、日本の戦争が不当なもので日本人は残虐なことをした、と強調しました。
戦後日本の教育は、このような占領下でスタートしたのです。
占領政策の柱をなしたのは徹底した検閲でした。占領軍の検閲基準として、「禁止30項目」というのがありましたが、それを列記しますと、

1.占領軍総司令部批判 2.東京裁判批判 3.占領軍総司令部が日本国憲法を起草した事実への批判 4.検問への言及 5.米国の批判 6.ソ連の批判 7.英国の批判 8.朝鮮人への批判 9.支那の批判 10.その他連合国の批判 11.連合国の全般的批判 12.満州での日本人処遇への批判 13.連合国の戦前の政策への批判 14.第3次世界大戦への論評 15.ソ連と西側諸国との対立への論評 16.戦争弁護の宣伝 17.神国日本の宣伝 18.軍国主義の宣伝 19.民族主義(国家主義)の宣伝 20.大東亜に関する宣伝 21.その他の宣伝 22.戦争犯罪人の正当化または弁護 23.占領軍将兵の占領地女性との懇交 24.闇市場の取引 25.占領軍の批判 26.飢餓状態の誇張 27.暴力行為と不穏状態の誘導 28.嘘偽の陳述 29.占領軍総司令部への不適当な言及 30.時期尚早の発表(Press Pictorial Broadcast Division / Monthly Operation Report 1946.11.25 )

とりわけ赤字に注目していただくと、今もってこの検閲基準に忠実である方ほど、教科書改善に反対している方であることがおわかりいただけると思います。守旧派とは、この占領政策の精神をどこまでも守り抜こうとする考えの方々と言えます。こうした占領軍によるマインドコントロール状態を是とせず、そこから脱け出て、日本人としてのアイデンティティ(誇りある自覚)の確立を目指さねばならない。教科書改善運動とは、こうした占領以来の洗脳状態から日本を解放するための運動です。


教員経験者の述懐

12月議会で明らかになった守旧派の方々の考え方と私たちの考えの違いについて述べる前に、昨年暮れ産経新聞(12/29)に掲載された教員経験者の方の投書を読んでみてください。

「戦後民主主義に染まったころを悔やむ」
    無職 森田厚 70  (東京都日の出町)

 二十世紀は明治34年から平成12年までの百年間である。この間、二度の世界大戦が起こり、社会主義国家ソ連の誕生と崩壊もあった。大戦を背景に兵器は飛躍的に進歩し、それに伴う科学技術の発達や経済の発展は過去の百年間に比べ目覚ましいものがあった。
 しかし、人間の心はそれに反比例して堕落の一途をたどってきたように思う。この現象は米国を中心 とした先進国に著しく、わが国も例外どころか、むしろ他の先進国より憂うべき状態にある。
 昭和5年生まれの私は二十世紀の大半を生きてきた。しかも人生のほとんどを中学校教師として過ご してきた。そのため、教育問題や若者たちの残虐な犯罪、非常識な言動に強い関心を持っている。同時 に教育者としての自分の無力さもしみじみと反省している。
 戦後の思相や教育行政の大変革は、軍国少年として育ってきた私に大きな衝撃を与えた。「今まで教 えたことは皆、誤りであったから忘れろ」と、当時の教師に言われたことは今でも忘れられない。  それまでに教わった教育勅語や日本の歴史を忘れようと努め、皇室や神社、祖先を崇拝することもお ろそかにした。
 その半面、日本国憲法、教育基本法、児童憲章などは、絶対正しいものであると教えられた。  戦後民主主義をたたき込まれたのである。
 教師になってからは組合(日教組)に入り、その指示のもとに行動した。時の権力や政治に反抗する ことが正義と考えられていた。組合主導の学校に勤務したこともある。
 自由、平等、人権尊重のもとに、自己中心的で他人に対する思いやりに欠け、わがままな子供たちを 育ててきた。その結果、義務や責任、奉仕の精神を失わせてきた。心の中では「これでいいのか。ちょ っとおかしい」と考えるようになったのは40代に入ってからである。
 そのひずみが現在、学校のみならず、さまざまな社会現象として表れてきた。対策として歴史観や憲 法、教育基本法、少年法、それに家庭教育の大切さなどがようやく見直され、少しずつ改善されつつあ る。
 来年からは二十一世紀である。教育改革の意識を多くの人に広げ、新しい世紀の中で人間として、日 本人として精神の復興を図ってもらいたい。

 教科書改善の運動は、こうした方々の思いにも支えられて広範に広がっていることをご理解ください。


採択制度についての守旧派の誤り

 私どもは、実際の採択権が現場の先生方に握られているような現状をなんとか改めねばならないと考えます。こう言うと多くの先生方は不本意と思われるかもしれませんがu裏検定」の問題があります。現場の先生方の教科書採択への実質的権限を背景に、特定なイデオロギーが教科書採択のみならず、教科書作成にまで影響を与えているという実態があるのです。「裏検定」の実例として蜊緕s同和教育研究協議会・大阪府同和教育研究協議会作成の『反差別l権の視点を教科書に』という冊子にある「検討の視点」をごらんいただくとsの教科書への影響力の程がうかがい知れるはずです。【資料参照】しかも、この冊子の意に沿った教科書ほど採択シェアが高いという現実があるのです。守旧派の方々は、「何を教えるかは教師に権限があるのであり逑燉eへの行政の介入は教育基本法第10条の『不当な支配』にあたる」と言われるわけですが、むしろ現実は、特定イデオロギー団体によって不当に支配されていると言ってもいい状態です。
 こうした現実に対し文部省は、昨年9月、都道府県・指定都市教育委員会教育委員長・教育長会議において、最終的には教育委員会が責任をもって採択する体制にするように指導しました。(「教育委員のみなさんへ」【資料A】)
 守旧派の方々は逑燉eを決定するのは現場の教師であるかのように考えておられるようですがc会の承認を得て任命される教育委員にこそその権限が付与されていると考えるのが議会制民主制の当然の筋道です。
 また、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」によって、複数の教育委員会による採択地区協議会を設定し、採択地区内では同一の教科書を使うようになっていることについては、協議会は調整機関であると位置付ければ、教育委員会に決定権があることになんら矛盾をきたすものではありません。かりに協議会で調整不能という事態になれば辷S員による協議会の開催も考えざるを得ないのは当然です。教科書採択は、教育内容に直接関わることであるだけに熏l慮すべき重大な問題であるはずなのです。


教育内容について

 「お前の親は悪いことばかりしてきた」と言われつづけて育った子どもとuお前の親は実に立派な親だった」と言われつづけて育てられた子どもとではどちらがよく育つかというごくあたりまえの問題です。このごくあたりまえのことが判らなくなってしまうほど{人は見事に洗脳されてしまった、その結果が今の日本です。
 柳寛順について「祖国に土足ではいってくる外国の軍隊を命をかけ、身体を張って民衆の先頭に立つ15歳の少女」と言う守旧派の方にとって、「祖国」は朝鮮であり{は「外国」です。まずもってこの倒錯をおかしいと気づく正常さを取り戻していただかねばなりません。
 「従軍慰安婦」という言葉については、すでに決着済み。歴史的根拠がないということから、現行のすべての教科書から削除されることになっています。そもそも後の造語にすぎない「従軍慰安婦」という言葉を年端もゆかぬ中学生に教えようとすること自体曖
 そしてまた、歴史の真実を教えることが歴史教育の最大の課題と言われるなら謔蜷樒れる{なのかどうか阯}インドコントロールから自由になって考えてみるべきことは多いはずです。ちなみに、ルーズベルトが日本を戦争に引きずり込むことにいかに腐心していたかを、新資料によって明らかにしたR.スティネット「欺瞞の日」があちこちで話題になっていますがSを持っていただきたいです。(http://www.melma.com/mag/15/m00000115/a00000097.htmlがよくまとまっていますのでぜひ一読されることをお薦めいたします。)

【資料】


現行教科書は以下の指示通りに書かれている!


―大同協の45項目の「チェック基準」―


(『反差別・人権の視点を教科書に−1997年度用中学校教科書検討資料(社会科)』より 「検討の視点」歴史的分野)

1.農耕生活が始まると、階級分化が起こり、支配ー被支配の関係が形成され、国家が誕生していく過程が 論理的に記述されているか。

2.大和国家の大王の位置づけが、皇室の祖先として強調されて記述されていないか。

3.律令時代における税制と農民の生産や生活の問題が詳しく記述されているか。

4.律令性のなかにみられる支配ー被支配関係で、生まれによる身分差別等について記述があるか。(良民―賎民、奴婢などとその関係)

5.記述の内容が、皇室中心の物語として改作されたことが明記されているか。
          

6.奈良時代の農民の生活や労働と抵抗のようすがのべられているか。

7.中世農民のたちあがりに関して、土一揆や一向一揆などが民衆の生きるための団結した闘いとして記述されているか。

8,検地・刀狩りによって兵農分離が確立し、封建的身分制度が固められたことが記されているか。

9,民衆文化(芸能、造園など)が、身分の低いとされてきた散所、河原者のあいだからおこったことが記述されているか。

10.「えた」身分、「ひにん」身分などに関して、支配者の分断政策のしくみとして記述されているか。同じく、被差別身分の人々の社会的位置づけがされているか。

11.農民・町人身分の統制についても社会的位置づけがされているか。

12.蝦夷地についての記述とアイヌ人の権利の侵害、また、アイヌ人の抵抗について記述されているか。

13.独立した文化を有する琉球国にたいする島津藩の支配、さらに中国による二重支配にふれられているか。

14.封建制に村する批判的思想(安藤昌益、司馬江漢等)が、紹介されているか。

15.被差別部落大衆の抵抗や闘いが、分断支配の強化の中で強まったことが、具体的事例をあげて明記されているか。(渋染め一揆や竹皮値下げの闘い)

16.「解放令」が出されるにいたった政治的背景が述べられているか。

17.「解放令」による賎民廃止を明記しVたな天皇中心の「身分制度」が確立されたことが記述されているか。

18.「解放令」の歴史的意義とその限界についてどのように記述されているか。

19.中央集権国家の形成と減免措置廃止、血税一揆、「解放令」反対一揆等が記述されているか。

20.北海道や沖縄、また天皇制下における民衆の生活の矛盾や問題点について記述があるか。

21.日本の資本主義と大陸進出の項で日露戦争下における庶民の困窮化と反戦の動きにふれている記述があるか。

22.韓国併合が朝鮮の植民地化を意味し、それに対する朝鮮半島での反対運動について記述されているか。

23.日本の朝鮮侵略政策の流れが、途切れなく記述されているか。(強制連行まで)

24.朝鮮人民の抵抗・独立運動がそのつど明記されているか。

25.朝鮮人にたいする日本人の差別意識についてふれているか。

26.工場労働の実態とその社会問題化が具体的史実をもとに記述されているか。  

27.足尾銅山と田中正道の反対運動についての記述があるか。

28.労働運動の起こりと労働組合の組織化について具体的事例をあげて記述があるか。

29.社会主義・民主主義運動に村する弾圧についてふれられているか。

30.第一次世界大戦と民族解放運動の関係が世界的規模で関連づけられて記述されているか。

31.21カ条の要求と中国民衆の戦いが記述されているか。

32.米騒動が生活苦に対する民衆運動として位置づけられて記述されているか。また、被差別部落の人々も民衆とともにたち上がったことや、それに対する為政者の民衆を分断する弾圧にもふれられているか。

33.全国水平社の設立の歴史的意義、差別にたいする組織的闘いと日本最初の人権宣言としての意義がどのように記述されているか。

34.世界の民主化運動・日本の社会運動の高まりが関連づけて記述され、それに対する弾圧として治安維持法についても記述されているか。

35.ファシズムの胎動と日本の軍国主義化が関連づけて記述されているか。

36.15年戦争が侵略戦争と位置付けられる内容で明記されているか。特に南京大虐殺についての記述があるか。

37.沖縄戦を象徴とする戦時下における民衆の生活について記述されているか。

38.日本人による反戦、厭戦運動について記述があるか。

39.部落解放運動の再出発について、どのように記述されているか。

40.ベトナム戦争と日本の関連について米軍基地と日本の関連について記述があるか。

41.ベトナム反戦運動について日本や世界の状況にふれられているか。

42.沖縄の本土復帰と復帰の問題点、ならびに反対運動について関連づlナて記述されているか。

43.人権獲得の歩みにふれて国連(難民条約や子どもの権利条約等)や各国の闘い(アパルトヘイトへの各国のとりくみ等)について具体的な記述があるか。

44.「同対審答申」とその後の課題について記述されているか。

45.戦争責任に対する補償の問題が、政府の課題として今なお残されていることが明記されているか。


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