〜教育心理学の歴史〜


<教育心理学と心理学>
心理学=「こころ」を実証科学的に研究する学問。
   実験・観察・調査・心理検査などを発展させる。  ※人の意識を科学的活直接観察する方法はない。
   内観法(内省法)・・・人間の行動を研究の直接対象とする。
@現代心理学の始まり・・・1879〜
   ヴントがライプチッヒ大学に実験心理学を創設した頃から。
A行動主義の誕生・・・行動主義ワトソン
   刺激と反応の法則を見つけ出すことが研究テーマ。客観的な行動のみを研究対象とする。
   進化論ダーウィン経験論ロック、バレー)が背景に。
   反復学習やプログラム学習の発想基礎となる。
 ・新行動主義=トールマン・・・刺激と反応の関係の媒介過程を考える。
 ・欲求低減説=ハル
Bゲシュタルト心理学(ドイツ)
   知覚や思考を主な研究主題とし、ある知覚が生み出されるための内的過程を分析。
   ケーラー、ウェルトハイマー、コフカらが主張。
C精神分析学フロイト
   人間には自分でも意識化することのできない心の領域(無意識)があると考える。
   幼児期体験によって、成人してからの性格が決定されると考える決定論の立場。
  →多くの学派の台頭
     ・個人心理学アドラー    ・分析心理学ユング 
     ・青年心理学エリクソン   ・ネオ・フロイディアン=ホーナイ、サリヴァン、フロム
Dその他
 ・児童教育=プライヤー(独)
 ・個人差研究=ゴールドン・・・大規模な家系調査により、遺伝重視の優生学をうちたてた。



〜発達の理論〜



<発達の理論>
発達=固体の発生から死に至るまでの人の様々な変化。精神的な質的変化。
成長=身体的、生理的変化を中心とした量的増大。
@発達の一般的段階区分=乳幼児期、幼児期、児童期、青年期、老年期
   ・乳幼児期 ・・・生後2歳頃まで。母子の愛着関係が成立し、歩行と言葉の獲得期。
   ・幼児期   ・・・5、6歳頃まで。基本的な運動能力、生活習慣、言語、自我などが発達。
             自我の発達による自分の欲求と親のしつけとの間の葛藤の現れである
             第1次反抗期が見られる。その一方で、他者の視点が理解できずに、自己中心的に
             なったり、物質にも生命があると考えるアニミズムなどの未熟さがある。
   ・児童期  ・・・12歳頃までを含めて学童期とも言う。身体的、知的にも著しい発達が見られる時期。
             具体的思考や社会性が発達し、仲間関係が生まれる。
   ・青年期  ・・・20〜30歳頃まで。第二次性徴期に伴い、心身ともに著しく変化する。
             親への依存から独立へという心理的離乳を果たそうとする。
   ・成人期  ・・・60歳頃まで。独立して社会的な活動により生計を営み、多くの者は家族を形成する。
   ・老年期  ・・・心理的、身体的機能の減退が見られる一方、価値観や自己統合が確立する。
A人の発達の特殊性・・・人間は、生後1年ぐらいは自力で生存できない未熟児→生理的早産(ポルトマン)
                環境の改善や適切な教育・学習の機会を得ることで発達の遅れや生涯を軽減する
                可能性を持っている。
B発達の要因
  ・環境優位説・・・行動主義ワトソンが主張。発達は環境によって決まる。
  ・成熟優位説・・・ゲゼルが主張。レディネスの証明。
  ・輻輳説   ・・・シュテルンが主張。発達は遺伝的要因と環境的要因が加算的に作用し、
             両者が収束して一つの発達に結実するという考え方。
  ・対極説   ・・・ルクセンブルガーが主張。ある特定の遺伝的要素が強ければ、環境要因は弱くなる。
  ・環境閾値説・・・ジェンセンが主張。発達はいでんと環境の相互作用であるが、
             ある特徴(身長や賢さ等)によってその割合が変化する。
  ・相互作用説・・・遺伝と環境が単なる加算ではなく、互いが相乗的に作用し合って発達を決定する
             という考え方。現在では、このような考え方が主流。

カリカック家・・・父親が同じであっても、母親が精神薄弱の場合、知的に優秀な場合は、その子孫に大きな
             相違が生じる。 →遺伝要因の重要性を示す。
ホスピタリズム・・・発達の初期に病院や保護施設に長期間収容された子に特有の、心身の発達障害。
             スピッツが用いる。=マターナル・デプリベーション(母親剥奪)
             →環境要因の重要性を示す。

<発達段階説>
@フロイトリビドーの発達段階理論
   自我の発達=リビドーの発達・・・特定のリビドーの発達段階では特定の身体部分が優位となり、
            様々な精神的な特性が見られる。口唇期、肛門期、男根期、潜伏期、性器期の5つに
            区分される。
    ・口唇期・・・出生〜1年。哺乳に関してリビドーが集中。吸うことが活動の主体。
    ・肛門期・・・2〜3年。衣服の脱衣、清潔、食事、排泄など。特に排泄に関わる器官が支配的。
    ・男根期・・・3〜5年。後半にはエディプス期に入る。超自我が形成される。
    ・潜伏期・・・学童期。発達は一時沈静する。
    ・性器期・・・性的活動が再開される。
Aピアジェ知能の発達段階説(発生的認識論)・・・論理的思考の発達に注目し、発達段階を区分。
    ・感覚運動期 ・・・0〜2歳頃。反射的な行動を基礎としながら、適応行動が発達する段階。
    ・前操作期   ・・・2〜7歳頃。言語活動が開始されるが、思考は自己中心的な段階。
    ・操作期    ・・・7〜11歳頃。具体物が目の前にあれば、論理的思考が可能となる。
                保存概念が獲得される時期。
     ・形式的操作期・・・11〜15歳頃。ことばや記号による抽象的推理や仮説演繹が可能となる。
Bエリクソン心理社会的発達論・・・発達における自我の役割を強調。
    ・信頼 ― 不信(0〜1歳)・・・「環境及び将来に対する信頼を持つこと」―「不信」
    ・自立 ― 疑惑(1〜3歳)・・・「自己統制感を持つこと」―「恥、自己嫌悪の感情」
    ・自主性 ― 罪悪感(3〜6歳)・・・「自発的に行為する能力」―「罪悪感、不満感」
    ・勤勉性 ― 劣等感(6〜11歳)・・・「学習能力」―「そこで生じる劣等感」
    ・自我同一性 ― 同一性拡散青年期)・・・「統合された自我」―「自己に対する混乱」
    ・親密 ― 孤独(成人初期)・・・「他者を愛する能力」―「愛情関係形成不能」
    ・生殖性 ― 自己陶酔(成人中期)・・・「家族・社会への関心」―「自己のみへの関心」
    ・統合性 ― 絶望(老年期)・・・「管制官、満足感」―「不満感、死に対する絶望」
Cハヴィガースト発達課題・・・特定の発達段階で学習によって形成されるべき課題。
            発達課題が達成される要因=身体的成熟、社会の文化的圧力、個人の価値と願望
    ・乳幼児期・・・歩くことを学ぶ、話すことを学ぶ、排泄をコントロールすることを学ぶ。
    ・児童期  ・・・小名時年頃の仲間とうまく付き合っていくことを学ぶ。男女の社会的役割の学習。
             読み・書き・計算の技能(3R’s)を学ぶ。社会集団、制度に対する態度の学習。
    ・青年期  ・・・自己の身体構造を理解し、自己の役割を認識すること。両親からの情緒的独立、
             経済的独立に関する自信の確立。
Dコールバーグ道徳性の発達段階説・・・道徳判断についての3水準6段階からなる発達段階。
    ・前習慣的水準 <第1段階>罪の回避と権威への服従。
               <第2段階>道具的で相対主義的な志向。
    ・習慣的水準   <第3段階>対人的な調和あるいはよい子志向。多数派への同調。
               <第4段階>「法と秩序」傾向。自分の義務、権威を敬い、社会秩序の維持。
    ・後習慣的、自発的水準 <第5段階>社会契約法的な志向。
                             正義は、個人的な価値の問題という相対的態度。
                     <第6段階>普遍的原理的志向。
                             正義に対する良心による決定と倫理的な選択。

<発達の諸相>
@身体発達・・・一貫した方向性。「頭部―尾部匂配」、「中心―周辺匂配」
 ・スキャモン・・・人間の発達における各種の臓器の発育過程を4つに大別。
           一般型、神経系型、リンパ型、生殖型
 ◎乳幼児の身体発達=環境に対処できる反射が備わっている。 ◎児童期の終わり=第2次性徴期
   ・モロー反射・・・光、音などの強い刺激を与えると、両手足を広げ、抱き込むような形になる。
   ・バビンスキー反射・・・足の裏をなでると指を扇状に広げる。
   ・把握反射・・・手のひらに触れたものを強い力でにぎる。
   ・口唇探索反射・・・唇の周りに触れたものに吸いつこうとして頭を向ける。
A社会性の発達・・・社会適応能力の発達。  ◎発達の過程=社会化
   ・児童期・・・同年代の子ども同士が数人の仲間を作って行動する=ギャング・エイジ
   ・青年期・・・自我の発見を通して家庭から独立し、自己を確立する=心理的離乳
 ◎集団ひとりごと=人がいるところで発せられるが、伝達の意図のない発話のこと。
B知的発達  ◎ピアジェ・・・知的発達を理論化。
  ・人は外界に能動的に働きかけ、外界の知識を自分で構築してゆく。=知能 ◎1歳半頃→象徴遊び
  ・幼児期後半=直観的志向、保存概念の未獲得。  ◎自己中心性
C言語の発達
  ・乳児期・・・なん語(意味不明の特徴的な発生)
  ・1歳頃〜 意味のある言葉(初語)が出てくる。
  ・幼児期・・・単語をつなげる、文法理解、話す意慾の向上、コミュニケーション技能を獲得。
  ・5、6歳・・・言語能力の飛躍的進歩
Dサイモンズの「親の養育態度」と子どもの性格
  ・子どもの性格形成には、親の接し方、育て方が重要なカギを握っている。
  ・親の養育態度について、横:拒否―保護(受容)、縦:支配―服従の軸で養育態度の型を表す。
    ・残忍型・・・逃避的、不安、神経質
    ・無視型・・・攻撃的
    ・甘やかし型・・・独立的、反抗的
    ・かまいすぎ型・・・幼児的、依存的

<発達の重要語句>
@アタッチメント(愛着)=生後間もない乳児が特定の人に対して抱く情愛的な結びつき ⇔人見知り
  ・ボウルビー・・・乳児の発信的行動に対して母親が自然に反応するという生得的システムが関係。
  ・ハーロウ・・・隔離されて育った子ザルの行動をアタッチメントで解釈。
Aインプリンティング(刻印付け、刷り込み)
  ・ロレンツ・・・刷り込みの成立する時期=臨界期
    ◎臨界期=発達途上で、ある時期にはある種の環境上の
            出来事が大きな影響を与えるという現象のこと。
B自己同一性(自我同一性)
  ・エリクソン・・・青年期の課題として、自我同一性の確立を挙げる。
    心理社会的モラトリアム=青年期後期に、生活の方向性を求めず、経験を重ねて模索している状態。
Cマターナルディプリベーション=発達初期に、母親による母性的な養育をしなかった子どもに認められる
                     情緒知能性格。ボウルビーが提唱。
Dストレインジ・スチュエーション=アタッチメントの形成の程度と質を調べることができる。
                      エインスワースが開発。
E発達の最近接領域・・・ヴィゴツキーの指摘  ◎発達と教育の相互作用
   自主解決は不可能でも、適当な助言や教示が与えられると解決し得る領域。
Fピーターパン・シンドローム・・・カイリーが提唱。
   いつまでも大人社会への参加を拒否している男性が示す心の症候群。
Gシンデレラ・コンプレックス・・・ダウリングが提唱。
   依存状態にある未熟な女性に関する概念。自立を回避し、他者(男性)によって救われたい
   という依存概念。
Hレディネス
   ある学習状態を行うための発達の準備段階。
I境界人(周辺人)・・・レヴィンが提唱。
   異質な複数の集団に同時に属しているもの、またはいづれかの集団にも属さない立場にあるもの。
J生理的早産・・・ポルトマンの言葉。
   人間は生後1年間ほど、自力で移動したり、食べ物を食べたりできない未熟な存在である。
Kアニミズム・・・ピアジェの考え。
   幼児は生物以外の物にも生命があると考える。
L人工論・・・人間が作った物と自然物との相違が分からず、全ての物は人間が造ったと考える。








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