// Snow Drop //
Pure white snow hides all.
It is pure white snow to hide all.

(C) meili_xiangyue 2002-2003


   03/03/01 本日第一信
 03/02/27 本日第一信
 03/02/23 本日第一信
 03/02/05 本日第一信
 03/02/01 本日第一信
 03/01/25 本日第一信
 03/01/19 本日第一信
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 03/01/02 本日第一信
 02/12/31 本日第一信
 02/12/22 本日第一信
 02/12/20 本日第一信

 


03/03/01 本日第一信

 無事に任命式を終えましたので、時報が3月1日を告げると同時にワタシの肩書きから「見習」という言葉が外れました。

 やはり緊張します。

 これからは王宮魔術師としての場面を、これまで以上に責任持って果たす必要が生まれたのです。

 ワタシはちゃんと。やっていけるのでしょうか?

 けれどこの答えは今はなく。いつかどこかで、奏でられるものだと思いますので、その時に答えに恥じない自分がいたらいいなと思います。

 任命式の後、元老院議事室の前でとある人と待ち合わせをしました。

 ディーパさまにスタフの調整のために試合する相手を探していると話したところ、「殺しても死なない適任者がいる」とおっしゃって……

 お名前や肩書きは教えてくださらなかったのですが、そこで待ち合わせとのことでした。

 任命式を終えてそのまま向かったので、傍らには黒豹のニュイを連れて。遠目に見えたのは懐かしい久しぶりに会う方――ガイルさんでした。

 ワタシをみて「なにをしているんだ?」と声をかけてくださって……待ち合わせのことを話して云いのかわからずに濁して話していると、ワタシをひょいと持ち上げて歩き出されました。

 逆にガイルさんがなにをされているのかと思えば、鼻の頭にかなりくっきりと噛み痕が……

 王城で噛み付くものといえば、外庭に放たれている番犬達ぐらいでしょうか。そして王城で仕事をしているということは、てっきり掃除夫さんだと思ったのですが……

 結論からいえば、ただの掃除夫さんではありませんでした。

 聖堂騎士――クロノが誇る一騎当千の騎士。

 ……ひどいです、最初にそう名乗ってくださればいいのに………………

 そして。ガイルさんがディーパさまがおっしゃった「殺しても死なない試合相手」の方だったそうです。


 

03/02/27 本日第一信

 考え事をするのに静かな場所がいいかと思い、まだいった事のない丘陵にいってみることにしました。

 どこまでも広く見渡せるそこは、夜に浮かぶ月明かりで荘厳な静けさで心地良いものでした。が、同じようになにか悩みがあったのでしょうか、ジンジャーさんが御一人でいらっしゃいました。

 後ろから近づいてはびっくりするでしょうから、姿がわかるようにと近づいて……やはり何か考え事をされていたようですが、その流れで練習試合を申し込まれましたので、お受けしました。

 体調万全とはいきませんでしたが無理なく動ける具合でしたし、ちょうどワタシも、スタフの様子をチェックしたかったので。

 試合そのものはコンパクトに。最後にひとつだけアドバイスをさせていただきました。

 ジンジャーさんは次の王宮魔術師試験を受けるご予定だそうです。受かるようにお祈りしたいと思います。


 

03/02/23 本日第一信

 市場に買い物に出かけたところ、かなり具合が悪そうな顔つきで歩いているリルルに会いました。

 立っているのもどこか辛そうだったので、休めそうな喫茶店に誘って……その具合が悪い理由を聞きました。その内容は、なんて……言えば言いのか、わからないけれど……でも、もう二度とそういうことが起きて欲しくないと思うことでした。

 魔樹は退治したとのことですが……森で一体何が起こっているのでしょう。気になります。

 時間を見つけて一度、調査をしてみるとしましょう。昨年の暮れ辺りから、イロイロな事象が予期せぬ動きを持っています。調べておいて損はないことでしょうから。


 

03/02/05 本日第一信

 今日から暫く、スタフの最終設計のために山篭もりを始めました。山篭もりっていう表現もすごいのですけれど、他の妥当な言葉が分かりませんので、一応そういう風に。

 基本設計や構築はルベライトさんとディーパさまの協力のおかげもあって、かなりいい出来です。(その分、お金もかかりましたけれど……(はぁ))

 テストを兼ねた模擬戦闘をディーパさまにお相手していただけたので、だいたい追加を必要とする機能や補強箇所のアタリもつきましたので、あとはワタシ自身が考えるシステム設計を行い補強や組込みをして……、そうですね、3月中旬にはロールアウトを目指したいので、頑張ります。


 

03/02/01 本日第一信

 今日、ニュイが誕生しました。これからの長い永い時を……ワタシと共にいてくれる、最高にして最後のパートナーです。

 仲良くできたらいいなと思います。時にけんかをしても、仲直りできるように。

 

 協会の中庭で、………知人に出会いました。魔術の鍛練をされていたらしく見物を申し出たのですが、言外にあっさり断られました。まぁ、しょうがないことですね。

 先だって手合わせを願われましたが…… 修練を見せる事も厭うようなのに手合わせを願うというのも、何か矛盾しているなと思いますけれど、そういうモノなのでしょうか?よくわかりません。

 ただ、もしかしたら手合わせをお断りするかもしれないです、ええ。

 

 彼が願ったことは、叶えようと思います。その願いだけは本心から言ったのだと、そう告げられた事だから。

 ――どんなときでも、笑顔でいること。

    笑顔が好きだとおっしゃっていました。だから。どんなときでも笑顔でいましょう。

 忘れてはいけません。彼は本心を明かさぬ人だという事を。

 忘れてはいけません。自分はフィアー・ローダーだという事実を。

 だから大丈夫。

 一人きりでも笑顔を浮かべて、歪み狂う事すらも許容してみせます。狂気に犯されても、ワタシはワタシであるままに、笑顔を浮かべます。

 ええ、どんなときでも、幸せに満ち溢れた笑顔を。

 過去の全てを忘れぬうえで、有刺鉄線に絡め捕られた笑顔を。


 

03/01/25 本日第一信

 書類が片付かないのは、ワタシの能力不足なのか、書類の量が多いのか、今一つわかりません……

 珍しく正装したレトさんが、いえ、レトシーラさんが見えられました。手合わせの申し込みにきたとのことで……一応、了承しました。

 彼の瞳はいつもワタシの長耳を見ています。よほど長耳が好きなのでしょうね、あの感じからすると。きっと、長耳の女性なら誰でも大好きだといいそうですけれど…… それもまたレトシーラさんらしいかと思いました。

 彼の視線は長耳だけでなく、イヤーカフも捉えて……その話しを口にされましたが、ワタシはもう彼にそのことを喋るつもりはありません。

 笑顔が好きだというごまかしで、ワタシのことだけは聞きたがる、本当に不思議な人です。誤魔化されてあげてもいいのですが……譲れない線も、ありますもの。

 だから。“本当”はあげません。“嘘”もつきませんけれど。


 

03/01/19 本日第一信

 忘れ物を、返してもらいました。


 

03/01/18 本日第一信

 久しぶりの花売りはまずまずの売れ行きでした。王宮魔術師見習いになりましたので、お給料も安定して頂戴しているのですが……まぁ、趣味みたいなモノ、ということでしょうか。

 人の中に混じっていることによる安堵と不安。

 一人きりでは生きていけないとわかっているけれど、一人きりでなければならない戒めの有刺鉄線。その狭間が常に視野を覆います。

 噴水広場で一息している時にレトさんに出会い、お茶に誘っていただけたので諒承したのですが……

 どうしたら。彼の言う事が本当なのかどうか、わかるのでしょうか。

 そんな魔法があったら欲しいです。

 王宮魔術師といわれようと、人の心を読む事はできません。


 

03/01/17 本日第一信

 森で木々への癒しをしながら散策している途中で、第七師団の団長にお会いしました。

 空から闇夜を従えて現れた夜魔の王――ヴァンパイア。

 真紅の瞳とその指先が生み出す魔力……

 眠りそうになったときに語られた一言。――眠りは安息である。

 それに対してつぶやいた一言が。ウァロ団長にウケたというか……笑いをおこさせたようです。

 なぜ私がそうつぶやいたのか聞きたいと言い残して、ウァロ団長は朝霧に紛れるように姿を変えて消えていかれました。

 いつか時が訪れたなら、答えたいと思います。

 初めてお会いした財務次官――紗叉さんとウァロ団長の間では、謎めいたやりとりがありました。難しかったです。


 

03/01/10 本日第一信

 今月の末にはニュイが起きる予定です。それまでにベッドを大きいものに買い替えるつもりなので、ベッドカバーも新しいものを作る事にしました。

 パッチワークなら、ちょっとした時間の合間に少しずつ手をつける事もできるし気分転換にもなるので、先月から作り始めました。お気に入りのたんぽぽ色と深緑の組み合せで図案を描いて……あと少しで出来上がる頃に、お客さまが見えました。

 先日のレトさん闖入汚職事件……あ、違います、お食事事件です。えと、それがあったので、セキュリティを強化してカウンターマジックをしかけておいたのですが……それにひっかかったのは、レトさんでした…(はぁ……)

 最初から普通に呼び鈴を押せば、ロースト一歩手前に行く事もなかったですのに……

 相変わらず悪戯好きなようですね、命懸けの悪戯です。いつの日にか悪戯が発端で死に目に合うような予感がしますが、それを想定して悪戯を止めるようにも思えないです。レトさんらしいとも思いはしますが、悪戯にそこまで命をかけるのは、かなり危険だと思います。

 

「笑顔でいられる強さ」は、一人きりでも笑顔でいられる強さでありたいということです。誰も隣りにいる事がなくとも、笑顔を浮かべられる強さが欲しいということです。

 フィアー・ローダーであれども。笑顔でいられる気持ちを持てるぐらいに強くありたいから。

 けれどもしかしたら。レトさんは、違う事を考えていらっしゃるのでしょうか。

 ワタシの隣りで、ワタシの笑顔を見る為に。


 

03/01/07 本日第一信

 久しぶりに、ちゃんとしたご飯を食べた気がします。

 帰宅すると、レトさんが夕食の支度をしてくださっていたからです。レトさんのお料理の腕はなかなかのものでしたが、ニンジンとピーマンとニンジンとピーマンとニンジンとピーマンとニンジンとピーマンがたくさん入ったスープは、香いが強かったです(けほほっ)

 それにしても……、レトさんはどうやって我が家に侵入したのでしょう??

 早急にセキュリティを見直して、強化しておかないといけません。

 

 レトさんとちゃんと普通っぽく喋れたので、よかったです。でも油断大敵、気をつけないといけません。


 

03/01/04 本日第一信

 昨晩からずっと……協会の自室に泊まり込んで、本を開いて読んでいたのですが一向に頭に入ってこないので、諦めて外に出かけました。

 外にでてから、さてどこに行こうかと迷い……。町外れに湖があると聞いたことがありましたので、そこに向かってみました。

 誰一人としていない張り詰めたどこまでも深い夜気の中、水の精霊たちは楽しそうに歌を唄い流れて風の精霊たちと踊っていました。彼女たちの歌声をもっと聞きたくて、その冷たい湖の水に手を差し伸べました。

 凍てつく氷のような水が、ずっとずっとずっと考え事をしていて睡眠不足で呆けていた意識を硝子の破片のように鋭く突き刺して、覚醒を促がしていきます。

 そう、本を開いていても……考える事はこの数日に目まぐるしく起きた出来事ばかり。

 彼は、なにを思っているのでしょう。なにを思って、あのような行為をしたのでしょう。

 そしてワタシは。今更なにを、望もうとしたのでしょうか。

 彼が思う事が、ワタシの望みと同じだという確証もなく。

 誰かを傍に置けば不幸とすることにも変わりはないです。

 ならば。これからの全てを。

 もう一度。一人きりで始めてみましょう。いつかきっと、答えは見つかると信じて。


 

03/01/03 本日第一信

 楽しい夜のお茶会にお呼ばれしました。主催はジンジャーさんで、リルルも来るそうです。教えてもらったお店はとても上品でかわいらしい酒場兼喫茶室のような場所で、なんでも女性専用なのだそうです。それならこの佇まいも納得できます。

 ちょうどリルルと同じぐらいに店について。

 ジンジャーさんのだんな様のお話と、リルルの初恋の思い出話と、ワタシの最近のことについて、おいしいお茶とパンケーキをいただきながらお話しました。

 ジンジャーさんはとても幸せそうで少し恥ずかしそうでしたが、お話の途中でなぜか赤くなりつっぷして、何度か息切れされていました、なにかご病気でないといいのですが…… でも、ジンジャーさんは医療の腕も確かな神官なので、ご本人が平気というからには、多分大丈夫なのだろうと思います。

 リルルの帯剣が、お話の途中で何度か鍔なりの音をさせたのが不思議で気にしていると、長刀を手渡して見せてくれました。それが闇の波動を纏う魔力の剣であることは、鍔なりをしている段階で身体を抜けていく強い波動を何度か感じていたので、分かっていました。意外と強い波動でした。ワタシが鞘越しに触れた後で、その剣がおっしゃることをリルルが翻訳してくれました。「手合わせを望む」と…… それも楽しそうだなと思いましたので、見習期間を終えた時にと、お答えしておきました。

 その後ジンジャーさんが、レトさんとの衝撃の出会いについてお話してくれました。その話で始めて、レトさんには奥さんと子供とだんな様が、それも各々複数いることを知りました。びっくりです。(当然、レトさんのあのからかい好きな性格が、そうおっしゃってしまったのでしょうけれど……)

 本当にレトさんは、嘘か本気か分からない「からかい事」をおっしゃったり、したりすることが好きな方です。

 もしかしたら、そうやって御自身のうちにある「何か」を誤魔化さずにはいられないほどに思う事が、あるのかもしれません。ワタシなどが考えても考え付くようなことではありませんが、なんでしょう、ワタシが一人のときに沸き上がってくるあの感情に近い、言葉にできない「何か」のようなものなのかなと、ふと思いました。

 なんだかイロイロとあったせいか、どうにも家に帰る気分になれず……そのまま協会にある自室へと向かいました。ベッドの中で眠れぬ夜を過ごすぐらいなら、誰にも邪魔されぬ空間で勉強に費やしたほうがまだマシです。


 

03/01/02 本日第一信

 全て。嘘のような気もします。夢だった気がします。

 でも。本当にあったのかもしれないとも、思います。

 ただ。手の温もりがあったことは事実だと思います。

 ただひとつ。

 彼がどこまで本気だったのか、本心であったのか、何を思っていたのか、明確にはわかりません。

 夢と現実の狭間。真実と嘘の狭間。演技と心の狭間。偶然と人の狭間。

 愛するすべての者たち、愛する唯一人。

 全て。見極める事も出来ず、信じる事も疑う事も出来ません。

 けれど。

 もう一度始めてみましょう。いつかきっと、答えが見つかると信じて。

 手の温もりがあったという、ただ一つの事実を抱いて。


 

02/12/31 本日第一信

 今日は図書館勤務年内最後の日でした。

 お一人、本を返し忘れていたというご高齢の方がいらっしゃって、その方のお宅まで受け取りに行った帰り道。あまりにも澄んだ夜空と月に誘われて、寄り道してしまいました。どうせワタシの勤務時間は過ぎていた事ですし、少々の寄り道も構わないかと思ったので。

 新しき年を迎える歓びの歌を、誰もいない夜空の下、月明かりだけを観客として唄うことは気持ちよかったです。が、どうやら誰もいないというのは思い込みだったようで……

 走り去っていく人影は、「オデン」を教えてくれた人。草原で薬草取りの最中にであった人。すでに何度かお会いしているのに、まだ名前を伺うことができていないことに気付きました。次にお会いできた時には、伺えるといいのですが。

 芝生に腰を下ろして。今年のことを、いままでのことを思い出していたら、優しい声と共に後ろから抱きすくめられるとは、想像していませんでした。

 今だけの温もりを。今だけの優しさを。今年最後の思い出に。

 明日からは、新しい年です。すべてが幸せであるように。


 

02/12/22 本日第一信

 昨夜は市場でお買い物をしたら、少々買いすぎてしまいました。けれどどれも大事なモノなので、よしとします。

 ニュイが目覚める予定日まで、待ちきれないほどにドキドキします。今はまだ深い眠りに抱かれている、ワタシの永遠の相棒となるMAUSS……


 

02/12/20 本日第一信

 魔術師協会の2Fに、王宮魔術師さまたちの個室が並ぶ一角があります。ワタシも見習となったので隅っこの方に一部屋、頂ける事になりました。

 頂いたお部屋は三間続きのかなり立派なもので、なんだか申し訳無いです。

 入ってすぐの部屋は毛足の長い絨毯が引かれており、大きな窓があって開放感があります。応接セットに諸事を行う為のどっしりと大きな机、座り心地のよい椅子……王宮魔術師として扱われるということがどういうことなのか、しみじみと感じました。

 この部屋は来客ももてなせる応接間として使い、奥の幾分小さいサイズの2部屋は好きにしてよいとのことでしたので、実験器材などを揃えた開発室と、書斎を兼ねた仮眠室にしました。

 そうですね……どうせなら扉にプレートを飾りましょう。季節の花やたくさんの緑を溢れさせた、気分が和らぐようなリース飾りを。

 今日もそこで本に埋もれて調べものをしていたのですが、少々本が不足したので図書館へ行って探してこようと扉をでたところで、レトさんにお会いしました。ずっと言おうと思っていた仮装大会でお世話になった事のお礼をして……

 普段がんばっている“ご褒美”として、キツネリスに変化する飴玉を食べさせられるところでした。危なかったです。

 でも大丈夫、キツネリスになったのはレトさんの方。さきほど家のベッドで丸くなって眠っていました。ちょっと不貞寝っぽい感じもしましたが、レトさんですから大丈夫でしょう。明日の朝にはおいしいご飯を用意してあげましょう。

 なにより、ワタシの危険対応も素早くなったものです、いいことです。


 

02/12/15 本日第一信

 MAUSSを作る事に必要となる呪文の調整をしようと思い、訓練場に行ってきました。

 人気がないことに自然ほっとして。剣や精霊環を外して、訓練場の隅で呪文を試します。

 詠唱力を高めてマナのエレメンツへの変換効率を向上させかつ変換の高速化を行い、身体負担を軽減できる「天詞聖声― Angel Voice ―」は、かなりよい感じです。とてもとても心地良く気持ちよく、伸びやかに高らかに唄う事ができました。このまま魂までも昇華(唱歌)できたなら……心地良く逝くことができそうだと思いました。

 そんなことを考えていたら、突然ワタシを取り囲む風景が変わっていました。どなたかがワタシを草原の中にいるような幻術を生んでくれたようです。ちょうどよかったので、MAUSSを作るのに必要でなので試験的に構成術式を書き上げていた「疑似生命― Atomic Life ―」を唄ってみました。語り掛けるメッセージは複数の小動物たち……草原にいるにふさわしい小動物達の生き生きとした脈動を。

 生まれたのはウサギや小鳥たちでした。皆、幻術の中の疑似生命であれども、力強く何か語り掛けて存在しています。

 風景と歌声に惹かれて、イロイロなことが思い浮かびます。昔のこと、最近のこと、少し前の事、この間のこと……

 ワタシの声なのですが……こないだから少し変わった気がします。失恋したからでしょうか?

 こんな一大事の時に、何を呑気なことを考えているのでしょうね、ワタシ……

 フィアー・ローダーだという事実を何度確認しても、愛される事はないと言われた事実を受け止めても、それでも……好きだと思ってしまう事を、愛しさを感じてしまう事を、止められない自分がイヤになります。

 ええ、いっそ、殺したいほどに……

 そうすれば少なくとも、誰に迷惑をかけることもありませんから。


 

02/12/14 本日第一信

 王宮魔術師見習いになったので、約束どおりカイトさんの二回目のインタビューを受ける事になりました。ただ、少々忙しかったので無理を言って、図書館の喫茶室でお会いするようにお願いしました。

 約束の時間に少し遅れてしまったのですが、カイトさんは笑顔で大丈夫だと伝えてくれて、嬉しかったです。しかもとっても素敵なお祝いのケーキまでいただきました。街で評判のお店で特注してくださったそうで……ハートの形をした可愛らしい紅白の8つのケーキは、とてもおいしかったです。赤い奇麗なリボンは、記念にとっておこうと思います。

 今回のインタビュー内容も、書いておきたいと思います。「尊敬する王宮魔術師とその理由」「大切なもの」「魔術師と騎士はどうあるべきか」との3つでした。どぎまぎしつつもできるだけちゃんと考えてお答えしたつもりなのですが…やはり少々不安です。なんというか、間違ったことを言っていないかと、不安になりますが……率直に思った事を答えたので、多分大丈夫だと思います。

 けれど何よりびっくりしたのは、インタビューを始めようとしたトコロで、天井からリルルが落ちてきたことです。リルルは転移トラップにひっかかったのだと言い張りましたが、カイトさんがおっしゃった迷子の方が、ちょっとだけ正しいと思います。ワタシとしては友達のリルルの言葉を味方したいのですが、説得力があるのはカイトさんの迷子説の方だったからです。

 わざわざリルルはワタシに伝えたい事があり、会いにきてくださったとのこと。その言葉が嬉しかったです。

 以前おしゃっていた辻斬りの件、とりあえず解決したと。けれどその代償は、いささか重いものだったようです……

「もしも」

 この言葉を使う時は。未来を向いて、希望を見つめて、無限の可能性を秘めて言うのでなければならないと思います。過去に向けていくら言っても、何も変わらないのですから。

 リルルに告げた言葉達が、偽善と欺瞞に満ちていることは、ええ、自覚しています。なぜならワタシは、未だに過去状の二重螺旋に絡め捕らわれているのですから……

 それでも。もしもリルルの未来が、少しでも明るくなるのなら。痛みが軽くなるのなら。かまいません。


 

02/12/13 本日第一信

 粉雪が舞う夜でしたが、外にでかけました。調合に使う薬草が切れていることに気づかなかったのです。いちおう厚手の外套を着ていったのですが、長時間いたせいか、少々寒かったです。

 少し珍しい薬草のため、かなりの時間草原で探したのですが… 結局見つけることができませんでした。困りました、どこかでまた探さないとなりません。

 探している最中に、以前市場でオデンを売ってくれた青年に出会いました。彼は雪の中傘もささずに、薬草や食草を探していたようです。私が小さなくしゃみをしつつずっと探しているのを見て、近づいてきて……御自身が集めた中に探しているものがあるかと問われました。残念ながらそこにはなかったのですが……凍傷のせいか出血している彼の手を見て、思わず布をまいてあげました。そして……治癒の法も。

 けれど彼は困ったような顔をされて……どうやらまた、おせっかいをしてしまったようです。

 どうしてワタシはこんなにも、イロイロなことを間違えてしまうのでしょう。

 誰かを護る事も、愛する事も、愛される事も、殺す事も……癒す事も、話しを聞く事すら、満足にできません。けれど、そうですね……そうなのかもしれません。

 彼が去っていく姿を見送って、ふと思い出したのです。ワタシが呼ばれていた名前を。

 ――“フィアー・ローダー” 禍唄の紡ぎ手、恐怖と破滅を呼ぶ歌姫。

 愛した者に、愛してくれる者に恐怖と破滅の禍唄をもたらす魔物に、なんとふさわしい名なのでしょうか。ワタシを表す単一にして全てを内包した真実の名……

 遠い昔のことではないのに、自然と忘れようと思っていたのかもしれません。

 狐たちも恋人が傍にいてとても幸せそうだというのに……ワタシは一人。でも、それは、ワタシは誰にも愛されることがないという事実の証拠。それだけわかれば充分です。


 

02/12/11 本日第二信

家周りを確認して泥だらけになっているワタシのもとに、全魔術師宛ての伝令が届きました。手を洗って泥のついた服を脱いで着替えてから、気持ちを落ち着けるジャスミンティをいれて……魔術師協会の蝋封を外しました。

中には1枚の指示書。

「全クロノヘイム規模での未曾有の災害が発生しうる状況を鑑み全土の市民の生命と国家の財産を保守するために一層奮励努力せよ」

詳細としては全魔術師に対する非常呼集命令でした。「召集に対しすぐさま駆けつけられるように自宅もしくは持ち場にて待機するように。」とのことです。

文面には、ひとつの事実が書かれていました。

「《預言者》アーカネルさまでも、明日午前二時以降の未来が、われわれの側からは因果律によっては探索することが、できない」

文末に署名された日付は10日…それから察するに、昨夜未明に起きた地震の時間と未来が見えなくなっている時刻、妙に符号があいます。まるで神の符号のよう……

とにかく身の回りのモノをまとめて、何かあったときにはすぐに動けるようにしておこうと思います。家のことも整理して、週末からは図書館に泊まり込んでいるほうが、すぐに身動きがとれるかと思いますので、司書さんと相談してみようと思います。

ワタシの胸騒ぎが……気のせいではなかったようです。ならば、来るその時に備えて万全に近い形でいれるように、できうることを手を打ち整えておきましょう。

まずはMAUSSの作成。これを急ぎましょう。


 

02/12/11 本日第一信

突然襲った地震にびっくりしました。幸い、家は壊れていませんが、朝になったら家周りの確認をしておかないと危ないですね。家の中の被害といえば、台所においてあったコップが1つ落ちて割れただけですんだのでよかったです。とはいえ、寝室に積まれているたくさんの資料本や実験器材などもぐちゃぐちゃになってしまったので、お掃除に数日掛けなければならないですが……

かなり大規模な地震でした。揺れが大きかったです。ここで暮らし始めてまだ数ヵ月ですが、このような地震を感じたのは始めてですし……気になることがありました。

地震は地を司る地精か、地中に眠る焔を司る火精によって起こる事が多いはずなのに、今回の地震では精霊力をまったく感じませんでした。その為に前触れを感じることすらできませんでした。

つまり……精霊力作用による地震ではなかった可能性が高いと思うのです。でも、そんな地震があるとしたら……なにか他の作用が働いて起きたということです。

なぜでしょうか、胸騒ぎがします。気のせいですんで欲しいような胸騒ぎです……


 

02/12/10 本日第一信

今日は図書館きん

【突然文字がぶれたようになって判読不能の悪戯書きのような文字がいくつかと、インクをこぼしたらしい大きな染み】


 

02/12/06 本日第一信

さっそく、王宮魔術師見習いとしての日常が始まりました。

ええと、王宮魔術師に向けての準備として、いろいろとやらなければならないことや、勉強しなければいけないことが山積みです。新しいエレメンツ属性に向けての勉強や、スタフの作成を行う事と、それに伴なうオプション関係の作成などなど……

きっと楽しい事ができます。わくわくします。そしてそれと同じだけ、大変な思いもあるのだろうなと、ぼんやりとも思いますが。わくわくする気分が一番です。それを少々げんなりさせるのは、目の前にいくつも作られた資料の山や、実験器材に錬金術の道具たちですが、大丈夫、頑張ってこなしていきたいと思います。

とりあえずまず。相棒をどうしようか考えたいと思います。

ワタシと共に、これからの永い時を過ごしてくれるだろう大切な相棒です、真剣に一生懸命考えたいと思います。


 

02/12/05 本日第一信

なんとか…気持ちが落ち着いたので……ようやっと日記を開きました。

昨日はさすがに気が動転していたのですね、すごい内容で日記にすらなっていないです。

気持ちを決めて昨日、噴水広場の掲示板を見てきました。思っていた通り、王宮魔術師試験の結果がでていました。やっぱりすぐに見るのは勇気が必要で、魔術師試験の結果をみて今回は受験者がいなかったんだとか、騎士試験の結果や、あまり関係のない聖堂騎士試験の結果までも一言一句読みふけってから…… 意を決して「王宮魔術師試験の結果」を見ました。見て……動きが止まってしまいました………

驚く事に、そこに自分の名前を見つけたからです。

なにから書けばいいのかわかりません。あの動転しつつも喜んでしまい、困ってしまうぐらいににやけていた自分をどう表現すればいいのか……

これから、たくさんのことを頑張らないといけないと思います。

ワタシにできること。ワタシだけにできること。ワタシにしかできないこと。ワタシだからできること。

たくさんのワタシからワタシへの問いかけに、ワタシは答えていきたいです。

ずっといつまでも。ずっと、ずっとずっと。この大切な問いかけが、終わらないように。


 

02/12/04 本日第一信

ええと……ええとっ

【ひどく慌てた文字でそれだけ】


 

02/12/03 本日第一信

とりあえずアカデミーの部屋から自宅に戻りました。

まだ左耳の具合はよくありません。出血は止まったのですが、微弱な鎮気(刺激)がずっと続いているのです。そのせいか、頭が痛いようなカンジがぬぐえません。

もうしばらく様子をみようとは思っていますが、あまりに続くようでしたら、ディーパさまに進められた施術院にいってみようと思います。

そろそろ王宮魔術師試験の結果が発表されているだろうとは思うのですが……

なんというか、身体、ではないですね、気持ちが……それを確認しにいこうという前向きな姿勢にならないようです。

発表を見るのが怖い、そんな気持ちが少し有ります。受かっているはずはないと思いますが、お見舞いにきてくださったディーパさまの最後の言葉が少々気になりますし…

いつまでもこうやって篭もっていられるわけでもないので。明日思い切って、行ってみようと思います。


 

02/12/02 本日第一信

ディーパさまが、看護婦さんの服装でお見舞いにきてくださいました。

びっくり、しました……


 

02/12/01 本日第一信

さっき、眠りから目覚めました。

身体の負傷は、ほぼ治っています。やはり王宮魔術師のかたがたの治癒術というのはすごいです。

すごいといえば…… 昨夜の試合もそうでした。

まさかお相手をしていただくのがディーパさまだとは…驚きました。前回魔術師試験を受けた時はレトさんがお相手してくださいましたので、てっきり同じように王宮魔術師志望の方とお手合わせをすると思っていたのです。しかしこれもいい機会です。こんなことでもなければ、ディーパさまとお手合わせができることなどなかなかできないことでしょうから。

試合そのものは、かなり過激だったような…… 最後に到っては意識を失っていたので判然としませんが、途中までは覚えています。多彩なディーパさまの技についていくのが精一杯でした。でも、楽しかったです。ディーパさまの放つ術にどんな術でどんな風に対応していこうか瞬時に考えて魔術を選び身体を動かすのは、とてもとても楽しかったです。

もっともっと。試合をしたかったです。もっともっと、楽しいことができそうです。

今現在考え得る自分の全てを弾き出して試合をした満足感と、思い出すほどにもっとああすればこうすれば…という気持ち。

まだまだ、ワタシには足りないものがたくさんあります。試合で感じたことや思ったこと。もっともっともっと。ワタシは求めていきたいものがあるようです。

そのために。今は休養をとって。明日からはまた、勉強を始めましょう。

ワタシがワタシのままで強くなれるように。


 

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