私の日記です

 抜けるような青空に、京の勝利を告げるアナウンスが

響きわたる。連勝に継ぐ連勝でひとり勝ちを続けている

こともあって、歓声はひときわ高く上がった。

 突き上げた拳を振り下ろし満足そうな笑みを浮かべた

京は、降りそそぐ紙吹雪を打ち払いながらチームメイト

が立つスタンディングゾーンを振り返る。

「あらら、」

 留めた視線の先には困ったような笑みを浮かべている

ちづると、このうえなく不機嫌な気を漂わせている庵の

姿があった。

 今日が本戦二試合目、エキジビションと合わせると、

計四試合連続で三タテを重ねたことになる京は、二人に

ほんのひと払いほどの余地もなく、試合を終わらせてし

まっている。

(沸いてやんの・・)

 露骨に顔に出さずにして、よくそこまで怒れるものだ

と半ば感心しながら、片手を上げてゾーンに近づいてい

く京に、庵はつと背を向けた。

 フェンスで仕切られたバトルステージ・ゲートの電子

ロックが外れるや否や、耳障りな音をたててフェンスド

アの金網を蹴り開けてステージから下りていく。

「たく、あそこまで怒るか普通」

 跳ね返ってきたドアを押し開けて道を譲った京の、と

ぼけているようなぼやきに、先にステージを下りたちづ

るが笑って振り返った。

「あら、わざと八神を不機嫌にさせてるんじゃなかった

んですか?」

「んなワケねぇだろ」

 相変わらず歓声が続く花道をふたり後先になって歩い

ていき、スタンドからスタッフ専用通路へのドアを入っ

たところで、京は解放されたように大きく伸びをした。

「私はともかく、八神はすっかり燻ってますよ。いいん

ですか?」

「いいのいいの」

 廊下を進んで間もなく、選手控え室が並んでいる場所

に辿りつくと、京はドアに貼られた草薙の文字をみつけ

て足を止めた。

 もう数歩先まで歩き、斜向かいのドアの前に立ったち

づるは、ノブに手を掛けながら京を振り返る。

「草薙」

 呼ばれて振り向いた先にあったちづるの笑みは、何で

も知っていそうに穏やかで、ひとりっこの京に良くでき

た姉のイメージを思い浮かばせた。

「オレ、わがままなんだよ」





「夏の虫かな。」vol.1
2002年08月17日 01時41分07秒


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