ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

超人オリンピック=無法な地下プロレス<グラディエーター

 

2004年09月12日

 

さて、『エポック・メイキング』の巻

(指定BGM: オラセラル / カリフォルニア・ドリーム

 

 

その昔、かのダイナミックプロにて石川賢氏が“ゲッターロボ”(注1)の作画をまかされた際、「各キャラの乗機が合体し、それぞれ異なった特徴のあるロボットに変形する」というコンセプトの消化に四苦八苦されていたとか……なにしろ各機の基本形態と合体後の三種の戦闘形態との整合性がどうにも取れませんことに、それはそれは頭を悩ませられたそうでございますワイ。

それを見かねた御大・永井豪氏が、チョチョイのチョイといとも簡単にデザインを手直ししていくその手際を見て、『そっ、それアリなんですか?』と思わず叫ぶ石川氏。それに対して御大が放たれましたお言葉ベストファイヴ。

 

『だってマンガじゃん。もっと自由な発想で描かなきゃ』

 

とのこと。このひと言で石川氏の肩の力も抜け、その後真っ向からゲッターに取り組むことができましたとサ……めでたし、めでたしなお話でございますが、こちらのエピソードを拝見しました吾が輩もまた、眼からウロコが落ちる思いでございましたワイ。さすがは豪ちゃん、一時代を築いた(おとこ)ならではの逸話でございますナ(注2)

 

 

それから時を経まして数年後……世は昭和から平成へと移りゆきますその直前、またもや漫画界にひとつの“革命”が起こされておりました。これなん――『ミスター味っ子』でございますワイ。

 

とは申しましても、当時吾が輩は――マァ具体的な年齢のお話は抜きにいたしまして、ゴリゴリのハードコア・パンク(注3)に没頭しておりましたもので、原作はおろかかのアニメすらおぼろにしか存じ上げません次第。

して、さらに時は流れまして21世紀も4年目となりまして、ようやく吾が輩も腰を据えましてこちらの作品を拝見できます機会を得ましたのでございます。自作PC好きの知り合いが原作のファンでして、併せてアニメもきちんと録画しておりましたのを、吾が輩同様キャプチャして自作DVDにまとめておりましたのをレンタルさせていただきましたのでございますワイ……まさに、“類は友を呼ぶ”の典型でございますナ(笑)。

 

最初のうちは原作→アニメのあいだでピンポンするかのように順繰りで話を追っていったのでございますが、早くもラーメン対決のあたりから原作とアニメとの激しい乖離が発生!!具体的に申しますれば、

どどんがど〜ん

でございますワイ。味皇こと村田翁におけます、アニメ技法を駆使しました超絶的な美味しさの表現はすでに現出しておりますが、こちらはグルメ漫画でございますゆえ、当然避けて通れませぬ描写。されどキャラクターの演出そのものは、おおよそが原作が手がかりとなるのが常套かと。されど、寺沢大介氏の漫画には、ラーメン名人・甲山氏に関しましてはただのひとコマすら、キラウエア級活火山の背景画は挿し入れられておりませなんだ?そちらのソースは一体いずこから??

 

そのほかにも、各キャラクターごとにアニメならではの色づけが多々なされておりますが――と申しますより、アニメ版独特の色が、みないい感じに染みておりますのは見事の一言に尽きるものでございますワイ。言わずともがな、全編のそこここに輝きます演出の巧みさもさることながら、そこにふんだんに盛り込まれます縦横無尽な表現のイデーこそ、監督・今川泰宏氏の恐ろしいまでの才能ではないかと存じあげます次第。

 

それはあたかもステラ・コイルに超高圧電流を流し、次元の壁に穴を開けたかのごとき自由な発想。先の甲山氏をはじめとしまして、お好み焼き屋の大将が大ダコに変身し、ノリにノリまくる味皇は大阪城天守閣を破壊し、果ては料理の食感を遊園地めぐりの要領で解説したり、毎度毎度の対決時におけますどハデな視点移動やカット割りなど、まさに「せっかくアニメなんだからこれくらいやらなきゃ損だ!」くらいの意気込みと熱さでもって、念入りに創り上げられました極上のエンタテインメントが、テレヴィジョンの画面せましと繰り広げられていくのでございますワイ。

 

さらにアニメ版は幼なじみの女の子などオリジナルのキャラクターを多数加え、筋自体も一人歩きをはじめてラストも独自の帰結へと至るのでございます。よくマンガならずとも小説などでも、「テレビと原作は別物」などとファンも作者も言及されることが多うございますが、こちらもその言葉が当てはまりますなぁ……もちろんいい意味で。

 

して、そのあまりのインパクトと完成度から、アニメよりもやや影が薄めとなってしまいがちな観のございます原作でございますが、こちらもどうしてどうして、読み進んでみますれば「この原作あってあのアニメ有り」がよく判ります力作でございますワイ。

まず“料理”というフィールドに立ちながら、なにかしらの事件が起きて“対決”せざるを得なくなり、主人公の陽一くんが奇抜な発想と料理への“情熱”でもって難題を克服するという展開。マンガの見せ場でありキモとしましては、なによりも陽一くんの発想と情熱でございますが、実はより重要とされますのが、劇中で語られます料理におけます技術や食材に関します基本的な知識なのでございますワイ。

 

こちらがなまなかな上にテキトーでありますと、陽一くんのアイデアそのものも生まれてこないばかりか、読み手のリアリズムに訴えるところがなく、「どうせウソッパチじゃん」と、ただの荒唐無稽なマンガとして早々に愛想を尽かされていたのではないかと愚考いたします次第。事実、かのマンガで開陳されております“料理うんちく”は、およそ吾が輩の存じ上げますかぎりでは基礎的な部分でのインチキな情報はございませんご様子。キチンと裏打ちされたデータが存在するからこそ、陽一くんの作ります料理の凄さと美味しさの信憑性もいやましに高まる、というワケでございますワイ。

 

収集したデータの真偽なども含め、毎回のストーリーも担当の編集さんと膝突きあわせて詰めていらっしゃったのでございましょうナァ……さらに、その対決の構図から使用する食材ならびに料理法などを吟味し、その回の話に組み上げて作画する――この一連の多忙な作業を、週刊誌でなさっておられたというのを考えますと、吾が輩このたびもシャポーを脱がざるを得ませぬ次第(注4)

 

それゆえに、当時あれだけ空前の“グルメ・ブーム”に沸き返っておりましたなか、雨後の竹の子のごとくさまざまな雑誌の誌面をにぎわせておりました料理マンガがございましたのにも関わらず、「美味しんぼ」とならびなましてこちら「ミスター味っ子」も、その名を残すに至ったわけでございますナ……ハテ?そちらのお客様は「極道ステーキ」でございますか? うむむ、吾が輩そちらのマンガの名は存じておりますけど、拝読したことはございませぬゆえ、なんとも……。

 

――して、吾が輩が敬意をこめましてこちらのマンガを評させていただきますれば、

 

『グルメ漫画界のゲッターロボ

 

でございますナ。キモの部分でございます“難題打開のアイデア”は、これまた自由な発想ができませぬと連載そのものも打開できませんでしたことでしょう。ただ……いえ、無粋を承知で申し上げさせていただきますれば、せっかくの『陽一風○×』も、発想どおりの効果と美味しさがきちんと追随しておりますれば、文句なしの満点でございましたのですが……(笑)。こちらに関しましては、単行本巻末の“激烈カバ”なる4コママンガでも扱われておりましたナ。当時のクラスメートのひとりに、料理好きの姉にマンガどおりの手法でハンバーグか何かを作ってもらったばかりに、非常に悲しい思いをしたという実話がマジございましたが、サテ……。

 

 

それではそろそろ今回の〆をば。ゲッターにせよ味っ子にせよ、「本当に美味しいのか?」とか「構造的にムリがある」「物理的におかしい」などと賢しげなツッコミをなさます御仁が少なからずいらっしゃるものでございますが、そんな方々も軽快なトランペットの音色で、「あっ、ゲッターロボ!」と、ならびに「うまいぞー!」で「あっ、味皇!」と脳直デフォルトで思い浮かべてしまいます時点でもうスターリングラード。それは作り手の大攻勢に大敗北を喫してしまいました、なによりの証しなのでございますワイ。

 

昨今ではゲッターの新シリーズが、そして味っ子のメモリアルDVD-BOXがリリースされているご様子。せっかくの機会ですから、両者のおもしろさを再確認されるのも一興かと存じますワイ。なかでも新ゲッターは、登場人物たちが原作によりちかいヴァイオレンス性をまとっておられますとか……ふへへ

 

 

 

 

※曲解説: るーおしば、っきいいけだ、きねつとむの頭文字の組あわせでオラセラル。しっとりとした女性ヴォーカルでオリジナル通りに始まり、途中から
ルー大柴のクドい声がからんできて “ギャグ歌” へと変化。されど女性の声とルーのシャウトが妙にいいコンストラクションを形成し、思いのほか
せつなく聞ける隠れた名曲。

 

 

注1:あれだけヴァリエーションがございますのに、やはりゲッターと言いますとのイメージが強うございますナ。

注2:双葉社刊 「ゲッターロボ號・第一巻」 の巻末に掲載。

注3:ブルーハーツ大キラ〜イ、Crass系アーティストだ〜いスキな毎日でございましたワイ。

注4:佐藤賢一的表現。

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2004.09.23 (C)Mephistopheles von Münchhausen

GeoCities Japan