ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

インディー色の強い音楽シーン(パンク、テクノ等)は海外にも強い

 

2004年10月09日

 

さて、『アルティストのお仕事』の巻

(指定BGM: グリーグ / 山の魔王の宮殿で )

 

 

前回のコラムの〆あたりにて、ふと『H.R.ギーガー(注1)氏のいま』などに思いがめぐりましたワイ。このところは、映画にて新しいクリーチャーや、メタル系のバンドのジャケットをデザインされたとか聞き及びませぬ次第。されど氏のあれだけ特異な作風なれば、コアなファンは世界中でいらっしゃいましょうとも、どうしてもお仕事を選んでしまいがちになりますのはある意味仕方がございませんこと……マァ、たんに吾が輩のアンテナが感知しておりませぬだけなのかもしれませぬが。

 

もはや氏レヴェルの知名度でございますれば、資産的にも悠々自適の毎日なのでありましょうが、それでも遊園地や街頭で三脚を立てて似顔絵を描かれたり、地元の新聞に四コマ漫画を連載されたり、パン会社の点数プレゼント絵皿のデザインをされたり、クイズ番組に出演されて高正解率を誇られたりと、意外な活躍をなされていらっしゃらないとも申せませぬ。

 

もう十年ほど昔の “なるほど・ザ・ワールド” の特番にて、工藤静香女史だか誰かがスイスの氏のお住まいを訪問し、愛蔵品である本物の人の頭蓋骨(注2)を見ておびえていたのを思い出しますが、お仕事としましてもそれよりやや少し前の映画 「帝都物語」 におけます “剣の護法童子” をデザインされましたことが思い起こされますワイ――まぁサイズ的なものは制作サイドの意図するところでございましょうが、その “トカゲの電ノコ” 以外に形容のむずかしいひねりの足りないフォルムは、原作ファンとして、ならびに氏の世界観を好みます吾が輩としましてはひどく落胆したものでございますワイ……とはいえ、原作の描写そのままを映像にするのも、そのじつ不可能なのでございますが(注3)。特撮映画にしていちばんリアルだったのが、主役の加藤保憲を演じられました嶋田久作氏でありますというのもいかがかなものかと(笑)。

 

こちらは “アルティスト” と申しますよりは、“プロフェッショナル”のお話になりますが、「来た仕事はどんな話(ジャンル)だってこなしたよ。だって、それがプロだって思ってたから」とは、かの「萬画」家・石ノ森章太郎氏が売れっ子となり、精力的に仕事をこなされていた若かりし日々を思い起こされました際のコメント。たしかに氏はあまたのSFドラマでもっとも知られておりますが、その作品群は時代物からギャグまで、さすがに多岐に渡られておりますワイ――おそらく当時のことなれば、少女マンガなども手がけておられますはず(注4)。ああ、そう申さば「となりのたまげたくん」や「UFOガッパくん」は、漫画文庫になっておるのでしょうかなぁ……。

 

そのクチでは、先頃お亡くなりになられました御大・横山光輝先生もキャパが広うございますナ。昨今でございますれば歴史大作マンガ家としてご存じの若人のほうが多いのかもしれませぬが、「昔はSFの大家だったんだけどな」と、三国志を読みながら吾が輩の養父がもらしたように、数々のSFヒット作品を世に送り出しましたのは、こちらも先頃かの今川泰宏監督により再映像化がなされました“鉄人28号”がいい証拠になりますかと存じます次第。

その横山先生のもう一つの得意ジャンルが“忍者物”。影丸やら赤影やら、白土作品とはまた違った切り口の活劇が人気を呼びました。さらには番長物「あばれ天童」や、なんと馬賊物(!!)の「狼の星座」というものまでございますのは、ひしひしと時代を感じずにはおられませぬワイ。あと横山先生の少女マンガなら、「魔法使いサリー」を忘れてしまってはモグリでございますゾ!(注5)

 

神様・手塚治虫先生はもう多ジャンルというレヴェルではございませぬゆえ、つまびらかには申しませぬが、ここでは逆にかの神様でも、意外と未完作品が少なくない、という点にふれさせていただきますワイ。

後期の作品で吾が輩の好きなのは「どついたれ」(週刊ヤングジャンプ掲載)と「一輝まんだら」(なんと漫画ゴラク掲載!!)なのでございますが、こちらはどちらも未完……と申しますよりは打ち切りっぽい感じ。とくに「どつ〜」は敵役をバッサリ斬ったところでバッサリやられたまま縫合もせず、というイキナリな終わり方で、「一輝ま〜」のほうはそれなりに“第一部・完” っぽい締めくくりはしておりますが、あとがきで 「どこかの雑誌社で、この続きを掲載させてくれませんか」と、手塚先生によりますミもフタもない血文字がしたためられておりましたのは、まじめな話まこと正視に耐えられませんでしたワイ……。

 

どちらもまだ話の半ばにも至らず、どう見ても導入部でしかないのでございますが、それでも打ち切り――吾が輩は先生の無念さをおもんばかりますとともに、「話がまだこれだけしか進んでいないのなら、後に続く話もずっと長いに違いない」と、その構想力の凄さにうならざるを得ませんでしたのも確か。いくらピーク時に比しまして先生の仕事量が減っていたとしましても、まさか途切れることはありますまい。それなのに先生はいかにして新作のソースを探しあて、物語の方向性のヒントを得て、帰結までのプロットを組んでいけますのか……う〜ん、やはり吾が輩、今回もシャポーを脱がざるを得ませぬ次第(注6)

 

「ど〜」がおそらくは戦後日本の高度経済成長期あたりまで、「一〜」が中国の義和団の乱から始まりながらも、おおかたは2.26事件まで(注7)を扱う構想であったことは想像にかたくないのでございますが、どちらもそのラストがとても期待されます物語でございますワイ。されど、もはやどうしたってそちらを読むことが叶わないのは厳しき現実。ここは手塚プロのみなさんに優秀なイタコさんをお雇いいただき、降霊にて先生のご意志をあおぎ、両作品の続きを作成していただくことは無理でございましょうかナァ、ハテ……。

 

 

 

 

 

 

注1:言わずと知れました映画 『エイリアン』 シリーズのデザインなどで高名でございますナ。一月ほど前にBS深夜映画で放映されておりましたワイ。

注2:こちらは少年期に薬剤師であられました実父からいただいたそうでございますワイ。

注3:「がんばれロボコン」でいうところの “ロボパー” 以上なので。

注4:なぜかあの世代の作家さんならかならず通る道。とくに仕事のない新人がよく依頼されていたらしい。かの赤塚不二夫氏も初期はそればかりだった。

注5:最初は 「サニー」 だったのが、スポンサーの意向で 「サリー」 に変えられたとか変えられないとか。

注6:ひさびさの佐藤賢一風表現。

注7:「一輝」 とは 「北一輝」 の一輝なので。

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2004.10.09 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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