ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

単行本第二巻が出るのって、また一年後??

 

2004年10月16日

 

さて、『PLUTO』の巻

(指定BGM: Popol Vuh / Lacrimae Di Lei (神秘な涙)

 

 

先日単行本にまとまりましたのを、ようやく買い求めて参りましたかの浦沢直樹氏の『PLUTO』。発売に際しまして駅などに大きなポスターが貼られていたりしますので、おそらくご存じのお客様も多いのではございますまいか。

 

浦沢氏が手がけられました著作に関しましては、吾が輩が申し上げるまでもなく 「MONSTER」 や 「マスター・キートン」 など、ヒット作が数多くございますナ。されど吾が輩が氏の作品をみずから購(あがな)いましたのは、じつにこちらが初めて――いえなに、べつにこれまでを万引きで済ませておりましたとか、そういうお話ではございませぬゾ。

あれだけ有名な作品がございますにも関わらず、拝見いたしましたのはほとんど友人の所蔵品。読めば忌憚なく、 『おもしろい』 と感じますにも関わらず、なぜか手元に置いてまでは……と、体温が下がってしまうのでございますワイ。まぁ何事にも “相性” というのはございますからナァ。

 

それがこちら 『PLUTO』 は、連載当初からいずれ単行本が出たら買う気になりました次第。ではこちらの作品のなにが吾が輩の心の琴線に触れたのかと申しますと、これなん……ゲジヒトのムッツリと陰鬱な表情も印象的でございますが、さらに “ロボットなのに禿頭予備軍 という、吾が輩好みの妙なディテール(笑)。

 

吾が輩かねてより浦沢氏に抱いておりました、氏のたぐい稀なる技量としまして、『欧米人を描くのがやたらに巧い』というのを挙げさせていただきたく存じますワイ。あの軽妙な筆致でもって、『ああ、こんなじいさんイギリス行ったら絶対いる!』と思わせずにはいられませぬ味のある顔を、事もなげに描かれますのはまさに氏ならではの特技。なるほどヨーロッパを舞台にした作品が多いのもうなずけますかと――それなのにメインキャラとその周辺が日本人の作品となりますと、なぜか急にマンガマンガした顔になってしまいますのはこれも不思議。あとは何はなくとも目を引きます “鼻” でございますカナ(笑)(注1)

 

さてこちら第一巻の白眉と申さば、『ノース2号の巻』でありますことは言を俟(ま)ちませんかと。天袋には以前実家に帰りました折りに持って帰りました、『鉄腕アトム・朝日ソノラマ版』が第三巻までございますので、早速引っ張り出して比較してみますと――ちょうど第三巻が “地上最大のロボット” に当たるのですナ。相変わらずこういう引きは強いですナァ、吾が輩は。

 

――ともあれ、『PLUTO』におけますノース2号は従軍経験のある(注2)元軍事ロボットでございますが、原作ではスコットランドの古城に住まう科学者の助手的な存在。六本ある腕は通常時は体内に引っ込めてありまして、五本指の手がついた形式と、左右一対になったやっとこ、ドリル、ハンマーを先端にあしらったノコギリ形状の腕(注3)とに切り替えが可能。作品中もっともロボット的で、もっとも人間的な姿から遠く描かれておりますのは同じでございますワイ。

 

『PLUTO』では首から下を常時ケープを羽織ることで隠しておりますが、“脅威”の接近によりその本来の姿をさらけ出すシーンは圧巻。下からおそらくグレネード・ランチャー、ガトリング砲(注4)、通常作業用の腕、そして近接戦闘時の物理攻撃に使用する、ロボットらしからぬ大鎌(注5)。この大鎌こそ、彼が兵器として生まれたがゆえの恐ろしさ醜さを見事に象徴しているように吾が輩はお見受けいたします次第。

 

戦闘シーンは具体的な描写がございませぬが、主人ポール・ダンカン氏の思い出の曲を大気いっぱいに震わせながら雷雲中に闘うその姿は、どうしても 『脳内アニメーション処理』 にて補完せずにはおられませぬ。優しい女性ヴォーカルとしてエンヤ女史あたりをBGMにチョイスし、目の見えぬダンカン氏が事態を把握できぬまま、呆けたように見上げます空のはるか彼方にて、雨風吹きすさぶ暗闇のなか、稲妻のフラッシュバックを受けて死にもの狂いの血闘をくり広げるノース2号……おそらくこのシーンに関しましては、吾が輩と同じ作業をなされたお客様も少なくないかと。ちなみに吾が輩は2回に1回の割合で行います次第。

 

ときにこのノース2号。あの一風変わった頭部(ヘルメット?)は原作のフォルムを再現しているのでございますが、ちょっとイヤ〜ンな感じ。どことなく頬っかむりをした坂田利夫師匠に見えなくもないような。さらにはあのコンパクトなガトリング砲も、それなりの装甲を施しているであろう敵ロボットにどこまで有効なのか。さらにはあの大鎌も、踏ん張る足場がないと力が逃げるので空中戦には不向きなのではございませぬかナァ……ハテ?そちらのお客様。「なに無粋な憶測なんか入れてるんだ!」でございますか? いえなに、このたびはさすがの吾が輩も、こうでもして思考ベクトルを曲げませんことには、どうにも涙があふれてしまいますゆえ、ひらにご容赦を……。

 

 

――さてそれでは気を取り直しまして、もちろんこちら 『PLUTO』 にも当然のことアトムが登場いたしますが、なんのかんので彼も “大量破壊兵器になりうる” ロボットとしての描写はいずれ入るのでございますかナ。なにしろ彼は “第39次中央アジア紛争” にも参戦し、『可愛いふりしてあの子、割りとやるもんだね』 と言われ続けたロボットでございますゆえ――ああ見えましても、体のそこここに武器を仕込んでおりますかのアトム。指先からレーザー光線。屈んで膝からミサイル。さらに恐ろしいことに、生命活動が停止しますと内蔵した水爆が爆発するという……アレ(注6)

 

さらに原作ではパワーアップのための改造がございますが、そちらもどう料理されますか。やはり急激なエネルギー増加によって一時的に暴走したアトムが、その圧倒的パワーによってプルートゥを沈黙させ、その体をむさぼり食ったりするのでございましょうか。それとも平常時の外見は変わらずに、戦闘時になると前進が赤く変色し、ミサイルランチャーやら何やらと重武装モードで闘うのでございましょうか……(注7)

 

だいいち本作のアトムは、両手両足からジェット噴射できるのでございましょうや。それこそ『十万馬力』もなさそうに見えるのでございますが――さるにても、アトムって学校に通っても、まわりのお友達に影響は本当にないのでざいましょうかなぁ。いつの間にか頭髪がハラハラと抜け落ちたり、はたまた血液中におけます白血球の数が異常に増えたりとか……『アトム君、どうしたの……?』『うん、なんだか体がだるくて……熱でもあるのかな』などと言われた日には、チャイナならぬブラジル・シンドロームでございますワイ。

 

ただこちらの作品にていま少し残念なのは、第39次中央アジア紛争の原因に過日の戦争がそっくりそのままシチュエーションとして使用されている点でございますワイ。風刺なのか、はたまた批判なのかはさだかに量りまねますが、吾が輩はああいう演出は好きではございませぬナァ。現実のにおいは漂わせ加減によりましては、せっかくの世界観をぶち壊しにしかねませぬし。マァ吾が輩がどうこう申し上げましても詮なきことではございますがナ。

 

さるにても、こちらの結末はいかにして付けられるものでございましょうや。原作にはございませんでした『ロボットによる殺人』が絡んできておりますゆえ、原作をそのままなぞるとも思えませぬが……被害者がロボット法擁護者という点から、“ロボットに反目する人間の団体がロボットを使用して脅威を振りまくことで、その信用性を貶(おとし)める” 目的だった――やっぱり人間ほど悪い生き物はいないね、とかいう帰結はベタすぎてイヤでございますワイ。

 

そこで、吾が輩が大胆にもこちら『PLUTO』の結末を予測いたします次第。う〜ん、ムムム……ルールールールー、予感がいたしますワイ。遠からず戦いに負け、記憶ならびに思考回路がイカれてしまったプルートゥは日本の科学省に引き取られ、再生後のリハビリをかねて入学させた高校で光画部に入り、とんでもないセンパイたちとひと騒動を繰り広げる、と出ておりますワイ――あッ、あなた様は!!

『不許可――ッ!』(続いて響くハリセンの音)

 

 

 

 

注1:吾が輩も鼻が大きめなので、「浦沢顔」などと言われたことがあったりなかったり……(笑)。

注2:浦沢氏の漫画におけます登場人物は、なぜか軍隊経験を避けて通れないような気がいたしますの吾が輩だけでございましょうか。

注3:「歯車やネジのひとつひとつまで分解してやる」 という台詞から、戦闘隊形ではないらしいですワイ。22P7コマ目で右側面の孔が4つ空いてるのはナイショ。

注4:あの縮尺だと12.7oあるのでございましょうか。

注5:やはり “ノコギリ形状の腕” からヒントを得てらっしゃるのでございましょうかナァ。

注6:それは004ことハインリヒ。

注7:お茶の水博士役は故・高品格氏。

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2004.10.16 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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