ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

“売れる” からにはワケがある……???

 

2004年10月30日

 

さて、『So What?』の巻

(指定BGM: Anti Nowhere League / So What? )

 

 

先日は休日というのにまったく予定がなく、さらに掃除洗濯もあっさりと片づけてしまいましたものの、さりとて買い置きの小説(佐藤賢一氏著:二人のガスコン(上))を読む気にもなりませんでしたので、さればネタを仕込みにと “まんが喫茶” へと足を運んでみましたワイ。

吾が輩このテのお店を訪問しますのはじつは初めてでございまして、マァつとに時間内でございますればマンガ読み放題のドリンク飲み放題、さらにお店によりましてはインターネットもつなぎ放題とは聞いておりましたので、とくに店内にてそわそわしたりしませんでしたが、『これでホントに採算がとれておりますのかナァ』という日頃からのギモンを、なおのこと深めました次第。

――して、せっかくお金を払ってまでマンガを読みに来たのでございますから、普段は手を出さないジャンルでかつ巻数もそこそこある作品がイイと棚を見回してみますと……今回はこちらを拝見してみますことに。これなん、

“天上天下”でございますワイ。

 

こちらは原作もさることながらアニメも大人気と聞いておりますし、コスプレ会場でもかならず一人はレイヤーさんを見かけるくらいですから、きっと話のタネになるものと思ってさっそく手にしてみますと……まず基本的に絵はキレイ。キャラクターもキライじゃない線で描かれておりますし、巻頭のカラーイラストなどは非常にハイレヴェル。内容としましても格闘モノでございますゆえ、吾が輩の好みの範囲内――のはずですのに、なぜか寄ってしまいます眉間の縦ジワ

 

なんと申しますか、ページ全体から漂ってきます雰囲気に、どうしても生理的嫌悪感を禁じ得ないのでございますワイ。第一話からこの調子ですので、『このまま読んでいくとストレスが溜まるだけカモ』と躊躇しないワケではございませんでしたが、苦手なジャンルこそ平素の接点がないことと、『流行りモノは不許可』という吾が輩の弱点を矯正すべく、“コワい顔” をしたまま読み進みました次第(注1)

 

するうちに吾が輩が感じましたのは、『あ〜なってこ〜なって、あ〜なるんだろうナ〜』という展開の予測。要しまするにぜんぜん “ワクワク” しないのでございますワイ。このあたりは巻末の作者近況4コマにて、初インターネットの際に検索した最初のサイトにて、『目新しさがない』という批判的な意見が掲載されていて凹んでしまったというエピソードにもあります通り、正直 “ベタ”と申しますればかなりベタ。多少読みを裏切られましたところで、『ふ〜ん』程度の反応しかできませんでしたワイ。

 

さらに自称“不良(チンピラ)”であります主人公コンビの振るいます暴力も、とどのつまりは“暴力”以外の何物でもなく、そこを端緒としておりますから“執行部”だの“凶祓いの血”だの持ってこられても、行使するための正当な理由になっているのかどうか……。すこし前に『アストロ球団』でふたたび脚光を浴びられました中島徳弘先生のもうひとつの代表作に『朝太郎伝』という作品があるのでございますが、こちらは吾が輩がはじめて全巻そろえましたほど熱中しました漫画でございます。この作品中でいまでも忘れませんくらい吾が輩の心に残りました台詞がございまして、これなん『力のない正義も、正義のない力もどちらも醜悪というもの。おそらくはこの点あたりの描き方の差異が、吾が輩の嫌悪感を誘ってやまないのでございましょう――だいたいチンピラ風情に、(おとこ)という大切な文字を使って欲しくございませんワイ。

 

『天上〜』の劇中にては暴力を行使しますことを、“本当の強さを求める”手段のように描かれる場面もあったりするのでございますが、その果てに何があるのかを考えますとものすごく空虚。紀元前十世紀レヴェルでの部族の長(おさ)の決め方なんぞが連想されます次第――あるいはまさか、そうした “原初的な暴力”=“本能的な破壊欲” として読者の深層心理に訴えかけるからこそ、この作品に人気が集まるのでございましょうか?――っつーか、

だったら『はじめの一歩』を読め!と、激しく申し上げたいですワイ。

 

 

それでも、キャッチーな登場キャラ群や丁寧で写実的な画風、それに加えまして絵と同等にハイクラスなファッション・センスは、確かに女性ウケする理由が判りますナ。『JoJo』の荒木飛呂彦氏もキャラに着せます服装に関しましてはかなり“おしゃれ”ではございますが、あちらはかなり“飛呂彦オリジナル”でございますゆえ、かなり “グンバツなスタイル”(注2)と、ある意味 “勇気” がございませぬとなまなかでは着こなせぬと思います次第。その点では『天上〜』なればよりリアルな服装センスに訴えるところはあるかと存じますが……ただ、ストーリーはスッカスカ

 

なんと申しますか、『伝えたいことが(明確に)判らない』あるいは『3で済む手順を7も8も手間をかけてまどろっこしい』のが正直なところ。読んでおりまして途中で何度か蹴躓(けつまづ)く感じがしましたのは、遠からず話の運びと展開のテンポが妙を得ておりませんからかと。こちらはプロットをしっかり組んでおりませんか、ないしは演出の手腕の問題でございましょうか。マァ三回で終わる予定でした“過去編”が三巻もかかったという裏話が載っておりましたくらいですので、さもありなんではございますが――それ故に “エロい”シーンはいくつか思い出せても、“名場面”のような印象に残るシーンがひとつもございませなんだ。こちらはなにも作者のみの問題ではなく、担当されてます編集者さんの責任でもあるかと存じ上げますワイ。

 

もちろん劇中では何度もターニング・ポイントや見せ場は多々あるのでございますが、それらも作者が格好イイと思っているのであろう薄っぺらなカットの羅列を見せつけられ、そのうえいやに感傷的で安っぽい台詞を並べられて、それで吾が輩にどうしろと?まさか感動しろと?――とくに執行部との因縁が発生した“過去編”にそれが顕著で、こちらは作者がむかし大好きであったのであろう『ヤンキー漫画』へのオマージュとおぼしき節をお見受けします次第。加えまして、作者ご自身もよほど高校生活に思い入れあるのか、妙なこだわりが感じられて仕方がございません分、こちらとしての感情移入が難しいのも確か。なにやらかつて“戦闘録”にて映画『レオン』におけますベッソン監督に言及しました際の、『面白がっているのは作者だけ』を思い起こさずにはおられませんでしたワイ。

 

荒木氏の名前が出ましたついでに申し上げさせていただきますと、氏の漫画には “精神的に貴族” というスタンスがございますが、それはなにも氏の漫画の中でだけのお話ではないことをつくづくと感じました次第。おそらくはかのスピードワゴンがこの『天上〜』を読みますれば、怒りのあまりキャンドル・スタンドを蹴り飛ばしてまいますことでございましょう……もちろん、独特の “飛呂彦ポージング” にて。

 

左様でございますから、舞台背景や一族の恩讐などのディテールを語られても、「だからどうした?」とスルーしてしまうのを禁じ得ませぬ。英語で申しますと「So What?」でございますワイ。ちなみに今回の指定BGMでございますこの曲は、「So fucki'n what!」から始まります冒頭のシャウトが、かの電気GrooveのANNにおけます“スター対抗バカ合戦”で使用されておりました次第。パンクのついでで申し上げますと、何巻かのトビラ絵で主人公の凪が缶バッヂのたくさん付いた革ジャンを着ているのがあるのでございますが、その中にCrassのマークとFlux Of Pink Indiansの物があるのにはどうにも許せませぬワイ(注3)。せめてExploited周辺のバンドでありますればまだシャレになったのでございますが……。っつーかブルーハーツとジュンスカでも聴いてろ!!でございますワイ。

 

――そんなこんなで、結局9巻まで腹を立てて……漫画のレヴェルに合わせますと“ムカついて”おったのでございますが、なぜか10巻から画風やマンガのノリに若干の変化が現れましたので(注4)、現行最新刊の12巻まで読みました次第。それでも、『この先話をどう持って行く気なんだろう』、『開いた大風呂敷をきちんと畳めるんだろうか』というふたつの疑問が残り、結果的に最悪ではないまでも、読後の後味の悪さは否めませんでしたワイ……なにしろお金と時間をそれなりに費やしておりますからナァ。チト“こちトラ自腹じゃ!”な心境。

 

ざっくばらんに評させていただきますと、こちらの作品は『青年誌の表現を許された少年ジャンプのマンガ以外の何物でもございますまい――と申しますより、足枷になるようなくだくだしい説明や舞台設定はサラリと流して、明快な目標と単純なストーリー展開で進めていった方がずっと好感が持てますかと。ヘンに奥行きをつけようとしますから、全体のバランスが崩れてしまって勿体のうございますワイ……主人公が置いてけぼりになりがちなのがいい証拠!!(注5)

 

――やや手厳しい口調になりがちでございました今回のコラム。これでも読み終わりました直後よりお時間を経てございますゆえ、かなり頭は冷えておりますのでございますゾ。それこそ――マァあの時点のお話は置いておきましょう。思い出しても得はございませぬゆえ。ただ、同じく苦手なジャンルでありますれど、“一騎当千”はまだ素直に読めましたコトを考えますと、吾が輩の一方的な嫌悪ではない点がお判りいただけますかと。

 

ともあれ、あの日は最終的に『はじめの一歩』の“海人(ウミンチュ)・島袋編”から“デンプシー・ロール破りの沢村編”までを読みまして、どうにか気分を整えて帰宅しました次第。それでも最新刊までまだまだありますゆえ、こちらも読破しておきませぬとナァ。――っつーか、『天上〜』の作者には、

 

やっぱり『はじめの一歩』読んどけ!と、激しく申し上げたいですワイ。

 

 

 

 

 

注1:端から見ましたらものすごく不審でしたでございましょうナ(笑)。

注2:荒木風表現

注3:Crass系アーティストは、いまに続きます吾が輩の反骨精神の礎となりました。それゆえにファッションで出してほしくありませぬワイ。

注4:ギャグ絵が多くなったのと、テンポが妙に良くなった。

注5;と申しますか、読むまで棗姉妹が主人公だとずっと思っておりました次第。

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2004.10.30 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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