ほらふきだんしゃくてきぐこーろく

記憶のデータ変換と保存の技術って、開発されたら儲かりそう。

 

2005年02月11日

 

さて、『ブルーレイディスク一枚分の夢』の巻

(指定BGM: Yellow Magic Orchestra / 邂逅 )

 

 

なにやらブンガク作品くさいタイトルになってしまいましたが、人体の神経を通過します信号も畢竟0と1の二進数――要しまするに膨大な数の回路によるオン・オフの総合となりますれば、夢をデータ化しての取り出し&保存も遠からず技術的に不可能ではございませぬかと。ただ、容量としてどれだけの大きさになるかでございますナ。まぁキャプチャ後の再圧縮は必須かとは愚考いたしますがナ。

 

して、前回 『その人個人が実際に体験した事柄以外は夢に出てこない』 というお話をしましたが、今回はそちらと真っ向から対峙できますような、『どの体験をアレンジしたら、斯様に独創的なお話になるのでございましょうや?』 という、あふれんばかりのオリジナリティは Throbbing Gristle のごとし、という夢をいくつか紹介していきたく存じ上げます次第。

 

 

では第一弾。リンドバーグの新曲プロモーション・ヴィデオでございますワイ。

吾が輩はリンドバークの名前こそ存じておりましたものの、一連の “応援歌ロック” の面々が大キライでございましたので、おそらくは聴いて判ります曲はふたつあるかないかになると思われますワイ。そんな吾が輩がある夜(もう夢の中のお話)『ワンダフルなんか観ててもナァ……』 と、退屈きわまりない気持ちのままテレヴィジョンをザップしておりましたのでございます。すると、とあるチャンネルで見知らぬ音楽番組が目に留まりましたら、前置きもなしにいきなりプロモヴィデオが始まりだしたのでございますワイ。

 

『なんだ、リンドバーグってまだ演(や)ってたんだ!』。たしかもう解散して久しいはず(注1)――吾が輩はおどろき怪しみつつも、画面の左上に 『新曲!』 なる表示がございますので、再結成でもしましたものかとしばらくはそのまま耳を傾けておりました次第……そうしますと、まず曲が結構よろしいことが判明。ノリばかりではなく凝ったフレーズが随所にちりばめられまして、クロウト受けもしますこと間違いなしのなかなかな出来。そして一番のネックとなります歌詞も、ありきたりな青臭さはなく胡散臭い理解者ヅラもせず、青田高校の中西球道ばりの直球勝負を挑んできたのでございますワイ。言葉で飾らぬ代わりにストレートな心情を声に乗せたその歌は、吾が輩を初球でサードゴロに転がさせ(注2)見事アウトに打ち取利りました次第。

 

『すごいよ、リンドバーグさん!』 と、すっかりシャポーを脱ぎましたのと同時に、『あれ、こりゃ夢っぽいゾ』 とうすうす感づいて参りました吾が輩は、なればこの素敵な歌詞は吾が輩に著作権がありますことと、夢の中に埋もれさせるのは惜しいセンスでしたので、『ここはいったん起きて、憶えている限りをメモしよう』 と考えたのではございますが、そこで曲は二番が始まってしまったのでございますワイ。

 

そうしますと、『せっかくだから、二番も聴いておくか』 などと欲をかきましたのが運の尽き。結局はそのまま 『男はつらいよ』 シリーズのオープニングよろしきオチがついてしまったのでございます。もちろん歌詞はおろか、今にいたりますまで題名までも思い出せませぬ次第――さるにても、その時歌われました詞そのものは吾が輩の記憶の中にストックがございましたものか、あるいは再構成させるに足る元ネタがございましたものか、ないしは脳味噌がリアルタイムでこさえ上げた即興詞のたぐいでございますものか……いずれにしましても、脳の機能を考察しますうえで、非常に興味をそそられる夢でございましたワイ。

 

 

――このテの(歌関係の)夢は、実際いくつか思い出せるのでございますが、肝心の歌詞や曲そのものが再現できませんことには、こちらでお客様がたにお伝えいたします意味がございませんので、ここいらで吾が輩としましても一番インパクトの強かった夢をば披露させていただきましょう。

 

 

こちらの夢は週刊誌の漫画形式で展開し、吾が輩がページを一枚々めくるように話が進んでいくという、それだけでも一風変わったものでございましたワイ……その漫画のタイトルとはこれなん、『ホームレスQ太郎』 でございます。

 

東京は台東区とおぼしき一角に、まわりの町を一望できますくらいの小高い丘陵がございます。その頂上には巨大なご神木を祀ります浅草寺に似たお寺があり、周囲にはおみやげ屋やお食事処などが建ち並び、まんま浅草の様相を呈しているのでございます次第。されど、お寺の境内の裏にまわりますと空気は一変し、人気のない代わりにちらほらと青カン(注3)をする人たちが目につくようになります。

 

主人公のQ太郎はアダ名で、こうした暮らしに身を置くようになりました人々の常としまして、本名やここに至るまでの来歴はおおよそ不明とされております。ヨレヨレの作業服の上にボロの黒コートを羽織り、髪は蓬髪で髭もボーボー。両目はくりっと大きくて、やはりQ太郎と呼ばれるだけありまして唇も大きく厚くなっております次第。

 

さらに、こちらにはQ太郎Q太郎たります所以(ゆえん)がございまして……それは雨風の強い日ならびに冬場に野宿します際、顔を保護するべくスーパーの大きめのビニール袋を頭からかぶり、飛ばないように手提げ部分に両手を通して寝るからという説明が入るのでございますワイ。もちろん、急な移動と会話の簡便のため、目と口を開けてありますから、なおさら風体が “オバQ” っぽくなるのでございますナ。

 

――吾が輩ここまでのくだりで、『なんとも回りくどい……』(注4) と、感心しましたり呆れましたり。ちなみにこちらの漫画、画風で申しますと、永井豪先生と水島新司先生のエッセンスを混ぜたような感じ、でございますカナ。

 

さらに読み進みますと、いつも側には佐藤蛾次郎風味の弟分とその他少数の同業者がいて、平素は食堂の残り物をもらってまわるか、あるいは境内や商店街の掃除を手伝い、いくばくかの日銭を得て日々を生活しておりますご様子。そこへ、たまに現れますQ太郎の。さすがにP子というベタな名ではございませんで、こちらは弟分とおなじく未詳。その妹は永井先生のキャラ 『ちィ子センセイ』 に似た、ガタイが良くて気も強そうな女丈夫。彼女も定職には就いておりませんで、三人の子分を引き連れて繁華街をブラブラしたり、男を作ってはそこへシケ込んだり、どちらかと申しますと60年代後半〜70年代前半の “フーテン”(注5)といった趣が感じられました次第。

 

その妹。ある日Q太郎に対してこう言い放ちます。

『アンちゃん、あたいバス働くよ!』

 

バス……と言われましても、吾が輩皆目見当がつきませず、『まさかイキナリ運転手ということもございませんでしょうし、あるいはバスガイドさん?』 などと首をひねっておりますと、これがまた珍妙。次の場面では水着姿となりました妹が、スチーム風呂(注6)と簡単なベッド(ビニールマットではない)のある部屋でオヤジ客をお迎えしているではございませぬか――要しまするに、

“バス = Bath = 風呂 =トルコ風呂

という、この漫画内におけますフーゾク業界の隠語だったというわけでございますワイ。とはいえ、描写の限界かどうかは判りませぬが、そちらで妹が施しておりました入浴サーヴィスは、普通の垢擦りとマッサージに止まっておりました次第。

 

その程度の仕事内容でございますから、別段妹もうしろめたさを感じず、彼女の子分たちも(注7)周囲からそれほどヤイのヤイの言われることはないのでございますが、逆にフーテン渡世がいざ働こうにも、まっとうな仕事にはそう容易にはありつけないという世の中の厳しさが描かれていましたように思われますナ。

 

それでも働きたかった妹には、兄Q太郎に言葉にはせずとも訴えたいことがあったようでございますワイ。

 

――ここからはワク線外が黒ベタになりまして、いわゆる “回想シーン” となるのでございますワイ。かつてはそれなりに大志を抱き、東京で一旗揚げるべく故郷(注8)を発つ場面や、暮れには何かしらのおみやげを抱えて帰省したQ太郎。この期に及んで立身出世の夢を追えとは言わないまでも、自らの体を資本に地道に働き、カタギな生活に戻ってほしい――妹には、そんな思惑があったようでございますが、当のQ太郎はふて腐れることもなく、さりとて達観しきれた様子でもなく、言葉少なに寝返りをうつだけでございましたワイ。

 

妹は稼いだお金で里帰りをするべく、長距離バスに乗り込むのでございますが、別れ際に、『お店のボイラー室で釜焚きを探してたから、行ってみなよ』 と言い残します。折しも暮れの寒さのうえに、霙(みぞれ)混じりの雪が降り始め、野宿には厳しい時節柄。Q太郎はひとこと謝辞を述べ、走り去るバスをずっと見送っておりましたとサ……。

 

こちらの “Q太郎” は都合三回ほど見ました記憶がございまして、おそらくはその中でも印象の強かったエピソードのみがこのたび皆さまに披露できたものと思われますワイ。忘却の彼方に消えてしまったエピソードは探す当てがございませぬのが残念でございますが、憶えておりませぬくらいでございますゆえ、大して面白くもございませぬかと(笑)。

 

ともかくも、以上の夢を見ました際に朧気ながら考えましたことには、何はなくとも設定のディティールやレトリックはいつ出来上がったか、という点に尽きますワイ。脳内未使用領域の仮想 “夢フォルダ” 内に無意識のうちにメモリーされているのか(注9)、あるいはオンタイムであんな七面倒くさい組み立てを瞬時に編み出しておりましたものか――まぁそちらをあれこれ愚考しましたところで、無意識の世界のお話でございますゆえ検証はむずかしいものがございますが、ただ、『さすがは吾が輩の脳味噌!』 と、頼もしさを強く確信できましたのは喜ばしいことかと。

 

 

他にも、『ホームコメディ風ローティーン青春ドラマ』 や、『スカイネットCATVオリジナル魔法少女アニメ』 など、いくつか夢ネタはあるのでございますが、こちらは記憶とたどりながら文章にしていく作業がかなりの重労働であることがこのたび身に染みて判りましたので、まことに勝手ながら当分お蔵入りとさせていただきますので悪しからず……。

 

 

 

 

 

 

 

注1:このあたりはまったく興味がございませんでしたので、いっさい正確な情報はナシ

注2:『打たせて取る』 のもっとも効率のよいパターン

注3:ここでは野宿の意。

注4:読者の視点なので感想は第三者的になりますワイ

注5:漢字は表意文字でございますだけに、とてもで元字を表記することはかないませぬワイ。

注6:正しい名称かは未詳。首を出して入る箱形の簡易サウナ

注7:なぜか一斉に同じ店で働きだした。

注8:方言の様子から福岡近辺っぽい。

注9:もしそうなら、コンピュータウィルスに感染しているのとあまり変わらない!?

 

 

 

 

 

 

おいおい、そっちじゃないぜ!

 

 

2005.02.11 (C)Mephistopheles von Münchhausen

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